トリニティとミレニアムで極秘に共同研究が始まった数日後、ミレニアムにて秘密の会合が行われる。
「やっほー。お招きいただきありがとね」
「失礼するね。いつ見てもモニタだらけだよねえ」
トリニティからミカが、先生と一緒に特異現象捜査部を訪れていた。
「ほう――ここが、人の噂にすら上がらない強力な防壁を備えた極秘の研究施設とやらかね」
ついでにウタハも来ている。
「うん。ようこそ、特異現象捜査部へ。ヒマリ部長ももうすぐ来るよ」
「初めましてだね。私は聖園ミカ、あなたは?」
「私は和泉元エイミ」
「……へえ、けっこう強い子だね。ミレニアムのリオ会長肝入りの部活ってのも頷ける」
「分かるんだ」
強者同士で通じるところがあるのか、二人向き合ってかすかな笑みを漏らす。
「あら、お疲れ様です皆様方。お待ちかねの美少女の登場ですよ」
そして、遅れて自走する車椅子に乗ったヒマリがやってきた。この特異現象捜査部の部長、であるのだが。
「これは……また強烈な個性の子が出てきたね」
「おやおや、ミレニアムの超天才病弱美少女ハッカーが馳せ参じたと言うのに。歓迎の拍手は無いのですか? こう、パチパチパチ…というような」
「……先生?」
「いや。私に言われても」
妙な沈黙が降りた。
「ごほん。ところで――デカグラマトンのことについてです」
ヒマリが自ら仕切りなおした。
「うん。『ビナー』のデータ調査について協力してもらってたね。ミレニアムでも独自に動いていたみたいだけど――」
「……はい。美少女のお腹に興味を持たれてしまうのは仕方ないですが、しかしいたずらに隠して探られるのもよくないので言ってしまいますが」
「ああ。うん、なあに?」
ミカは苦笑している。ミレニアムの一部が極秘に動いていることまでは調査できても、確かに中身までは分かっていない。実際、今もその思惑を探ろうとティーパーティーの情報部が動いている。
「一連の敵……デカグラマトンの軍団を構成する”主”と接触しました」
「廃墟地区の水没はそういうこと!?」
さすがにミカとて驚愕せざるを得ない。先生と一緒に何かをやっていたのは情報部が掴んでいたが……まさかボスが出てきたとは想像できなかった。
「はい、トリニティはよく調べていますね。ですが、彼に到達することはできなかった。まあ、話しかけてきたのは彼の方からでしたが」
「そのボスさんは廃墟地区に潜んで予言者を作り上げた……?」
「作り上げた訳ではありません。キヴォトスにて人類を脅かす予言者達は、彼に感化された機械達です。デカグラマトンは、どうやら話しかけることで機械を変質させることができるらしいのですね」
「……ま、トンデモの一つや二つは出てくると思ってたよ。信じられないとは言わない、それが特異現象だもんね。そのデカグラマトンとやらは何を目的としてるの? 話したんでしょ」
「誇大妄想に囚われたAIは、自らを絶対者として証明するために行動を起こしたらしいです。なにやらそのために私たちを廃墟地区におびき寄せ、自分ごと水の下に沈めて見せた」
すん、と沈黙が落ちた。聞いている人間は頭の上にハテナが浮かんでいる。知っているから聞いていないエイミは黙々と自分の仕事をしているけど。
「――いや、意味が分からないんだけど。結局何がしたいのさ?」
「さて。ですが、誇大妄想が招く結果など碌なものにはならないことは分かり切っています」
「まあねえ。……ねえ、先生。一緒に行ったの?」
「うん、行ったね。あまり手伝えなかったかもしれないけど」
さりげない感じで聞いたミカが、途端に頬を膨らませる。
「もう、先生! 危険な場所には行かないでっていつも言ってるでしょ!」
「あはは、大丈夫大丈夫。問題ないって言ってるでしょ」
ミカは唇を尖らせてそっぽを向いてしまった。
「……その先生の”大丈夫”だけは信用ならない」
「いつも平気なのにな」
先生がぽりぽりとほおをかく。
そこでヒマリが仕切りなおす。別にヒマリとしては特に心配していない。どうせ今まで無事だったのだから。まあそこは心配性か否かということだろう。
「――ところで、ですが。みなさん少し寒くはありませんか? 人間が暮らす文化的な室温は少なくとも3から始まると思うのですが」
「ヒマリ部長。3度がいいの? なら、そうするけど」
「お待ちなさい、エイミ。あなたとはよく話し合う必要があるようですね。3度など、人が生存できる環境ではありませんよ」
「もっと下が良かったり?」
「……はい」
「え? ミカさん……?」
ミカがヒマリの肩に自分の上着をかけた。
「エイミちゃんも、3度が無茶な室温だなんて分かってるでしょ? というか、普通のエアコンは3度設定なんてできないし。ね、せっかくエンジニアなんだから冷却コートとか用意できない?」
「冷却コート? ……なるほど、良いアイデア」
ぽんと手を打ったエイミはそのままモニターに向き直って一心不乱にキーボードを弄りだした。モニターの一画に意味の分からない数式が羅列されていく。
「――ねえ、二人は大丈夫? 私は強力な力を持つがゆえに病のような体調不良に悩まされた子を知ってるよ。暑がりも寒がりも、度を過ぎれば病気なようなものでしょ」
「それは……」
「でも、簡単になんとかなれば苦労はないからね。体調不良ともなんとか付き合っていくしかないけど――それで他人に迷惑をかけるのもよくないから。自分で何とかできる範囲はそうした方が良いでしょ? 無茶な温度設定をするよりも、着るもので調整した方がいい」
「――気に止めておきましょう。私は人の意見を聞き入れることができる美少女ですので。椅子に機能を追加してもいいかもしれませんね」
「うん、そうするといい。自分が我慢するのでも、他人に我慢させるのでもなくて、アイテムを使って対応できるのが一番良いからね」
しみじみと呟いた。
「……エイミ! いつまでも設計などしていないで本題に入ってください」
「あ……そうだった。ビナーの欠片の研究もあるからね、この際トリニティと一緒になって調べた方がいいんじゃないかってヒマリ部長が」
「うん、そうしてもらえるとありがたいかな。この問題はトリニティだけじゃない、キヴォトスに住む者は誰も無関係ではいられない。……連邦生徒会は頼りにならないしね」
「人を信じられないドブ川のような性根を持つあのビッグシスターとも、そこだけは意見の一致をみせています。しかし、私は人を信用することができる心清らかな美少女なので相互協力をもちかけることができるのです」
「……よろしく、ヒマリちゃん」
「よろしくお願いします、ミカさん。手土産にケセドとの交戦データも渡しましょう」
握手した。その直後に通信が入ってくる。
「あら、チーちゃん?」
ヒマリがモニタに目を向ける。お相手はヴェリタスの各務チヒロ、特異現象捜査部で仕事をしているヒマリに代わって部長代行のようなものをしている少女だ。
「通信ユニット『ハブ』を観測した! どこに居たかと思ったら、ミレニアムの地下300m付近からこっちに接近中!!」
鬼気迫る声。緊急の証だ。
「ヒマリの力がないとキツい、すぐに対応お願い!」
それだけ言うと、通信が切られてしまった。部屋の中は皆、一瞬呆気に取られて顔を見合わせるが即座に頭を切り替える。
「……新しい予言者かな」
「なるほど。ここで『ハブ』……もとい、デカグラマトン第8の予言者『ホド』の襲撃ですか。超絶美少女ハッカーの日々は忙しいですねえ」
ミカとヒマリは揃って苦笑する。協力を取り決めた先からこれだ。だが――
「私も戦うよ。お相手の様子は?」
「……エイミ、どうですか?」
「地下を掘り進む能力、明らかに感化される前よりも強化されてる。それに、ホドだけではなく子機が周りの機械を侵食してる……? これは、インベイドピラーとでもいうべきかな」
「その名称を採用しましょう。現在展開中のインベイドピラーは?」
「3機が展開中。――早めに壊さないとミレニアムがマズいかも」
「なら、ちょうどいいね」
「先生……?」
いきなり、蹴り破る勢いで扉が開かれた。下手人の小さな少女は得意げに勝気な笑みを浮かべている。
「よお、先生。ミレニアムの危機たあ面白そうじゃねえか」
「来てくれてありがとう、ネル」
C&Cの4人がそろい踏みで来た。先生がモモトークを送っていた。
「別にいいぜ。だが、つまんねえ相手だったら承知しねえ」
不敵な笑いをこぼすネルに、後から到着したこれまた小さな子が人差し指を突き付けて叫ぶ。
「……チビメイド先輩が居ます!」
「あん? んだよ、アリスも来たか」
そしてゲーム部も到着する。やはり先生が呼んでいた。
その少女は部屋に突入すると中を見渡し、妙なポーズを取りながら宣言する。
「パンパカパーン! アリスがパーティーに合流したっ!」
ちょこちょこと落ち着きなく先生のところまで走って行く。
「緊急クエストが発注されたと聞きました! なんでもミレニアムの危機だとか。これは回避不可のクエストですね! 終わると新しい依頼が張り出されるので、前もって他の依頼は終わらせておく必要があるやつです!」
「なんだよ、緊急クエストって。……で、真ん中のモニターに映っているのが敵ってことでいいのかい?」
「その通りです、ネルさん。元は各種通信ケーブルの敷設や接続を行うために造られた修理機械でした。が――予言者になるに当たってどのような能力を獲得したのか」
「一つは分かってる。インベイドピラーで周りの機械を侵食して支配下に置く力」
「へえ、ヤベエ能力だな。特にミレニアムだとマズイことになりそうだ。……おまえら、ピラーども片付けられるか?」
「当然」
「もちろんです」
「じゃ、お前らとあとゲーム部の奴らもそっちな。本体はアタシ一人で十分だ」
自信満々に言い切った。
「さて、それはどうかな? あいつら滅茶苦茶硬いからね。私もついて行ってあげるよ。ほら、私って最強だし☆」
「あ? キヴォトス最強なのはアタシだぜ。……面白いコト言ってくれるじゃねえか。付いて来てもいぜ。ついてこれるなら、の話だがな」
不敵な笑みで挑発しあう二人。どうやら最強にはこだわりがあるらしい。
「アリスも行きます!」
そして、アリスも元気よく手を上げるのだが。
「いや、お前はザコの方を担当しろって。悪いこた言わねえから」
ネルは苦笑している。
「いいえ、これは勇者にとって必要な試練です! 勇者には退けないクエストもあるのです!」
「うん、こうなったアリスは聞かないよ。ええと、私もついて行ってお世話するから。どうかな?」
「おいおい、モモイまでそう言うのかよ。なあ、どうするよ先生」
「うーん。じゃあ、行こうか!」
「いや、先生はここで指揮やってね。頼んだよ、ヒマリちゃん」
「承知しました。エイミは彼女たちと一緒に本体の相手をお願いします」
「ん。効率的に行こう」
無表情に頷くエイミ。先生の方は、少し顔が暗かった。
「……仕方ないか。じゃあ、本体の討伐はネル、ミカ、アリス、モモイにエイミでお願いしようか。指揮は私がするから、ヒマリはルートの確保をお願いするね。それと、できれば侵食をできるだけ食い止めて」
「難しいことを言ってくれますね。ですが、超天才清楚系病弱美少女ハッカーに不可能はないことを見せてあげましょう」
「微力ながら私も手伝おう」
「あら、ならお願いしましょうか。ウタハさん」
「他は子機の破壊をお願いするよ。さあ、やろう!」
「「おう!」」「「「了解」」」」「うん」
まったくもって揃わなかった。
お釣り計算機AIの話はミカが居ても原作と特に何も変わらないので、全カットとなりました。まあ、経験談と得られたデータはヒマリから貰ったので。
20万PVの同人誌は誰がいい?
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ナギサ様
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セイアちゃん
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ミカ(二冊目)