聖園ミカの弱くてニューゲーム   作:Red_stone

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連合軍編10話 ケセド消耗戦

 

 

 ナギサはその後に話をまとめ上げ、二日後に次なる作戦を発動する。すでにデカグラマトンの兵器工場である予言者・ケセドの居城の目途は付けていた。

 

『ご参加いただきありがとうございます。C&Cの皆さま、ヒナさん、そしてツルギさんとハスミさん』

 

 ティーパーティーが作った急ごしらえの通信装置、観測装置を拵えた仮設テントをはさむものの、彼女は特異現象捜査部の部室から通信を行っている。

 そこが総本山、前に指揮所を狙われたから前線に置いて仮設テントは5つも用意した取り換えの利くものだ。最低限2つが残っていれば指揮系統は維持できる。

 

「いや、問題ねえよ」

「人を守ることも私の仕事」

「いーひひひひひひ!」

 

 目標は予言者・ケセド。対するは少数精鋭、C&Cの4人はともかく風紀委員会からはヒナ一人。正義実現委員会からはツルギとハスミの2名のみだ。

 最強を集めた夢のパーティ。これで撃破できない敵が居れば、それはすなわちキヴォトスの危機だろう。それほどの戦力だ。

 

『相手はデカグラマトンの機械軍団、その兵器工場であるケセド。今回の作戦は敵軍団の戦力を低減させることにあります。過去の戦闘においても予言者討伐の実績がない以上、作戦目標は敵の損耗とデータ収集にとどめます。ケセドとの交戦は最小限でお願いします』

「「「――」」」

 

 帰ってくるのは沈黙。分かっているのか、と言いたくなるが。

 

『デカグラマトンに人の世界を好き勝手にさせる訳にはいきません。なので、まずはその軍団から削ります。新たに生み出される速度を上回るほどに破壊して敵の行動を制限します。傲慢な機械に、キヴォトス3大国家を相手にすることの意味を教えてさしあげましょう』

 

『なので、あなた方を失ってしまっては困ります。今回の作戦はあくまで精鋭によるノーリスクでのハラスメント(いやがらせ)だと言うことをお忘れなく。どうか怪我なくお戻りください』

 

 再三作戦目標を繰り返す。

 総戦力を見れば、いくら機械でも3大国家に敵う訳がない。だが、問題なのはテロリズムなら総戦力を相手にする必要などないことだ。それこそ、敵の首魁――ナギサでも先生でも倒したければ陽動でも用いれば最強生徒など無視して直接狙えるから。

 だからこそのいやがらせ。陽動でも作戦行動にしても戦力は必要だから、削れるだけ削ってやるのが今日の作戦だった。

 

「……は。心配性だなあ、お嬢様はよお。安心しろよ、あたしらがさっと行ってぶっ飛ばして来てやる」

「けっへっへ……げへへへへ……暴れる時間だあ!」

 

「三方向から進攻だったか。壊した数で勝負としゃれこもうじゃねえか。それとも二人じゃ不安かい?」

「敵は、敵はどこだ! この力を、使わせろ!!」

 

 とはいえ、そんな作戦目標のこと分かっていなさそうに見えるが。この問題児の最強どもは。

 

「二人とも、分かってるの? 今回の作戦は――」

 

 ヒナが少し睨みつけるが、むしろ挑発的な笑みを返すだけ。怖いなら退いてな、と。

 

「うっし、行くぞ!」

「げっげっげっげっげっげっげ」

 

 ダン、と凄まじい勢いで二人が駆けだしていった。他のメンバーは飛び出していった彼女たちについていく。

 

「まったく。けれど作戦を忘れた訳ではなさそうね。……面倒だけど、私も行こうかしら」

 

 ヒナはその翼で飛んでいく。

 

 

 ナギサは、横にいる先生に聞く。

 

「彼女たち、大丈夫でしょうか?」

「大丈夫だよ、あの子達は強いから。……ほら」

 

 ティーパーティーの子が部室でキーボードを操作していく。モニターには今の戦況が表示されている。

 

「敵兵力、凄まじい勢いで減少しています」

「現在レーダーで確認した敵の36%を殲滅完了、37%……38%」

 

 敵の兵力は予言者ほど強くない。それこそ最強クラスの生徒では時間稼ぎすらもできないほどに――弱い。

 彼らはただの端末であって、ヘイローも持っていないのだから。

 

「工場からの敵援軍を確認。確認された敵を加算すると開始時から183%、まだ増えます」

「建物までの道を28%まで踏破。各人のバイタルは正常」

 

 今のところ順調と言える。いくら戦力を吐き出そうと、その戦力を擦り潰すことが目的なのだからもっとやってくれた方がいい。

 逃げ道なら指揮所で確保している。その程度やれなければ管制している意味がない。

 

「不気味なほどに順調。……ッ!?」

 

 ナギサが不安に襲われた瞬間、ブザーが鳴る。

 

「なんですか……!?」

「これは美少女の仕事範囲ですね。怪しげな信号をキャッチしました」

 

 ヒマリがキーボードを操作する。他に何か起らないかを警戒して管制はティーパーティーの娘に任せていた。

 ここで何かが出てくるのは願ったりだ。本命の第2チームを残してある。

 

「信号……とは?」

「待ってください、解析します。……これは」

 

「ヒマリさん?」

「以前に観測したデカグラマトン……いえ、予言者の主が発した信号――に似せたものです」

 

「それは……いえ、似せたもの? ですか」

「この天才美少女ハッカーの目は誤魔化せません。このわずかな違いは見落とせませんね。ですが、ここまで精巧に似せるとなると――発信源はオリジナルのデータを持っている可能性が高いです」

 

「ケセドを失うことは予言者にとっても痛手。向こうが作戦行動を開始することも考えていました」

「我々は協力しているからこそ、2正面でも3正面でも可能です。むしろ下手な策を打たれるならば、各個撃破することまで狙っているのが今回の作戦でしたね」

 

 ナギサが振り返る。ミカが手を振っている。そして、トキは付き人のように後ろに立っている。今回が会うのも初めてなくせに、絵になっている。

 

「――なら、私たちの出番って訳だ。今回は正式な作戦、スクワッドも居る。トキちゃんだって、せっかく来てもらったことだしね?」

「最強のメイドモードを披露させていただきます」

 

「だってさ、ナギちゃん」

「それと、私も行くとしよう。まだ体力に不安があるが、そろそろ私とて戦えることを見せておかねばな」

 

 さらに、セイアが腰を上げた。

 

「ミカちゃん、セイアちゃん。分かりました――お気を付けて」

 

 ナギサが重々しく頷いた。

 各校の委員長を集めた対ケセドの最強チームと、本命の特異現象捜査部とミカを中心としたドリームチーム。

 ここが隠しておいたドリームチームの使いどころだ。

 

「先生、無視ですか?」

「いつもの格好と変わらないでしょ。まあ、それは置いておいて……今度は私も一緒に行くよ」

 

 トキの冗談に苦笑しつつ、けれど今度こそは自分も鉄火場に付いて行けるとひそかにやる気を燃やす先生。

 

「……ヒマリちゃん、発信源は?」

「氷河です。心配することはありませんよ、天才美少女ハッカーも一緒ですから」

 

「ますます心配になったけど。でも、仕方ない。――行こうか」

「こちらも乗り物の準備はできております。最新装備で氷河でも暖かいですよ」

 

「さすがに外まではカバーできないだろうけどね。ヒマリちゃんは中で?」

「いえ、中で待ち構えるのを決め込むわけにもいかないでしょうね。私は柔軟な対応ができる美少女なので」

 

 ドリームチーム出発の算段を立てているところに、交戦中のネルから通信が飛んで来る。

 

『おい、そっちに動きはあったかよ?』

「ああ、ネルちゃん。今大丈夫? 銃撃の音が聞こえるけど」

 

『あ? ミカか? 話してようが雑魚相手に遅れなんか取らねーよ。で、どうだ?』

「デカグラマトンに似た反応が氷河に出た。確かめに行くよ」

 

『チッ。当たりは待機の方だったかよ、失敗したぜ』

「そっちだって大変でしょ。ま、本体の相手まではしない手筈だけど」

 

『ハハッ。そんな悠長なこと言ってられっかよ』

 

 ガン、と扉を蹴り開ける音が通信に載って聞こえてきた。

 

「美甘ネル、工場内に侵入!」

「ああ、もう――ネルちゃんったら言うことを聞かないね」

 

 管制の声も無視してネルは奥に入っていく。

 

『クハハハッ! 一番乗りだぜえ!』

 

 そして、それを聞いては黙っていられない。

 

『ぬぅはははははは、当然、私たちも行くぜェ! きぃへっへっへっへ……』

『C&Cに手柄を独占される訳にもいきませんからね』

 

『手間が増えるけど……確かにその方が早く終わるわね』

 

 ネルの侵入を知った他の突入班も工場の中へと突っ込んでいく。作戦とは違う行動に、皆が頭を抱えた。

 そこで、ミカが唐突に声を上げる。

 

「あ、そうだ。皆――ちょっと聞いて」

 

 スマホを向ける。それは通話状態になっている。

 

『ミカさん、こっちには動きなし。あいつ、修理してんのか休んでるのか分からないけど……』

『――ミカさん聞いてる?』

「ん、ありがと。ビナーの状況を監視してくれてるんだよね」

 

 相手はアビドスだ。予言者の一体、ビナーの様子を頼んでも居ないのに監視してくれている。

 

『ふん、なんならうちの砂漠を勝手にうろつく不良機械なんて私たちで倒――ブツッ

「てなわけ」

 

「ミカちゃん、セリカさんは話の途中でしたよ?」

「寝言を聞いてる暇はないじゃんね。ヒマリちゃん、ホドは?」

 

「そちらは地下深度1000mオーバーで動きを停止しています」

「つまり、残るは廃墟地区で出会ったと言うケテルのみ。あれの信号はつねに行方不明、ならば今が好機ですね」

 

 そういうわけだ。すでに場に出ている敵のカードは拘束済み。それに何かをしたくても妨害するだけの戦力も残している。ナギサ傘下の戦車隊が待機中だ。

 不明な戦力はデカグラマトンの護衛であったケテル一体を残すのみ。何かをするには絶好の機会だ。もちろん、まだ見ぬ予言者が居るから警戒は必要だけど。

 

「あはは。みんな血の気が多いねえ。ナギちゃん、そっちは頼んだよ」

「セイアちゃん。ミカちゃんと先生を頼みましたよ」

 

「任せておきたまえ」

 

 「なんでー」とミカが抗議の声を上げた。あはは、と笑って――出発する。

 

 





セイアちゃんが実装されましたね。もちろんお迎えしました。
予想より齟齬が少なそうでびっくりです。サポーターじゃないどころか殴りかかりに行くとは思いませんでした。

20万PVの同人誌は誰がいい?

  • ナギサ様
  • セイアちゃん
  • ミカ(二冊目)
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