聖園ミカの弱くてニューゲーム   作:Red_stone

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第16話 出勤! 覆面水着団

 

 

 そして、チンピラを退けた一行は元々の目的、違法武器の情報を求めてブラックマーケットをさ迷っていた。

 武器屋を調べて、情報はないと聞いて次へ。今度は、その違法武器が珍しいものと分かるだけの情報が出たため手ごたえはある。見つけさえすれば情報はたどれると、張り切って探すものの。

 

「ねえー、飽きたー。情報どこー?」

 

 真っ先にミカが不満を漏らす。

 

「はあ……しんど」

「もう数時間は歩きましたよね……」

 

 さすがに見つからなすぎた。こうも歩くと、やる気以前に普通に疲れてくる。アビドスメンバーはハードワークはいつものことだし、ヒフミもペロロを探し求めて数時間歩くのはザラなのでどうこうなることもないが。

 

「これはさすがに、おじさんも参っちゃうなー」

「えっ……ホシノさんはおいくつなのですか……?」

 

 ホシノがだはあ、とため息を吐く。あまりにも年寄り臭いその姿にヒフミは目を剥いた。

 

「ほぼ同年代っ!」

 

 すぱーん、とセリカが突っ込みを入れる。

 

「あら! あそこにたい焼き屋さんが!」

「え? たい焼き? いいねいいね、ちょっと休憩しようよ! 甘いもの♪ 甘いもの♪」

 

 ノノミがちょうどよく見つけた。それを聞くと、即座にミカが騒ぎ出す。

 

「あそこでちょっと一休みしましょうか? たい焼き、私がご馳走します!」

「えっ!? ノノミ先輩、またカード使うの!?」

「先生の『大人のカード』もあるよ~」

 

「ううん、私が食べたいからいいんですよ。皆で食べましょう、ねっ?」

「あ、ああ、あの。私とミカ様の分は、私が出しましょうか?」

 

「いえいえ、ヒフミちゃんもここで待っててください。案内してくれたお礼なので、遠慮しないでください」

 

「そうそう、遠慮することないよ。ノノミちゃん、お金持ちなんだから」

「ミカ様……少しは遠慮を……」

 

「じゃ、行ってきますねー」

 

 そして、まいど、とたっぷりと焼きたてのたい焼きを持って帰ってくる。

 さすがに何時間も歩いているとお腹が空いてくる。大歓迎で受け取り、それぞれたい焼きをほおばった。

 

「いやー、ありがとねー。はむ、うん、おいしい! 安ものだけど、空腹が最大の調味料ってね」

「ミカ様、そんな言い方は……。あ、ありがとうございます。おいしいです」

 

 なぜかヒフミがミカの世話係みたいになっている。

 

「おいしい!」

「いやぁ、ちょうど甘いモノが欲しかったところだったんだー」

「あはは……いただきます」

「ん……先生も」

「いただきます」

 

 アビドスはアビドスで先生と一緒にパクついている。今回はシロコが先生へあーんしている。

 

「アヤネちゃんには、戻ったらちゃんとご馳走しますね。私達だけでごめんなさい」

〈あはは。大丈夫ですよ、ノノミ先輩。私はここでお菓子とかつまんでますし〉

 

 おしゃべりしながら、たい焼きを食べるのどかな時間が流れた。違法武器があふれ、チンピラがどこにでも居るブラックマーケットとは思えないゆるふわな時間。

 皆がたい焼きに舌包みを打ち、落ち着いた雰囲気になるとヒフミが切り出す。

 

「ここまで情報がないなんてありえません……妙ですね。お探しの戦車の情報……絶対どこかにあるはずなのに、探しても探しても出てきません……」

「やっぱり異常かな? この広いブラックマーケットで、あれを売った店を特定するとなると……まあ元から大変だったと思うけどね」

 

 先生が先を促す。

 

「販売ルート、保管記録……どこかで繋がってるはずなんです。仕入れなどがありますから、お店を1軒1軒調べる必要はない。……何者かが意図的に隠しているような、そんな気がします」

「隠している……それは気軽にできるものかな?」

 

「いくらここを牛耳ってる企業でも、ここまで徹底してブラックマーケットを統制することは不可能なはずですね……」

「そんなに異常かな? 秘密主義の企業は割とあると思うけど」

 

「異常というよりかは……ふつうここまでやりますか? という感じですね……。ここに集まってる企業は、ある意味開き直って悪さをしていますから、逆に変に隠したりしないんです」

「え? 隠さなくていいの?」

 

「例えば、あそこのビル。あれがブラックマーケットに名をはせる闇銀行です」

「……闇銀行?」

 

「ブラックマーケットで最も大きな銀行の一つです。聞いた話だと、キヴォトスで行われる犯罪の15%の盗品があそこに流されているそうです……横領、強盗、誘拐などなど、様々な犯罪によって獲得した財貨が、違法な武器や兵器に変えられてまた別の犯罪に使われる……そんな悪循環が続いているのです」

「大変だね」

 

「そんなの、銀行が犯罪を煽っているようなものじゃない!」

 

 セリカが憤懣やるかたないと言った様子で口を挟む。

 

「その通りです。まさに銀行も犯罪組織なのです」

 

 その答えにセリカは絶句する。

 

「ひどい! 連邦生徒会は一体何やってんの!?」

「理由はいろいろあるんだろうけどねー、どこもそれなりの事情があるだろうからさ」

「ま、あいつらに頼ろうってのが元々の間違いかもね。それに、後ろ暗い事ってのはどこにでもあるものだよ」

 

「現実は、思った以上に汚れてるんだよね……アビドスばかりに気を取られすぎて、外のことをあまりにも知らなさ過ぎたかも……。おじさんが、もう少し」

 

 ホシノが暗い顔をする。

 

〈お取込み中失礼します! そちらに武装した集団が接近中!〉

「「「!!」」」

 

 全員が警戒して銃を手に取る。

 

〈気付かれた様子はありませんが……まずは身を潜めた方が良いと思います……〉

「そうだね。あそこらへんのものかげが良さそうかな……」

 

 そして、見つからないように隠れる一行。潜みながら、やってくる集団を見る。車両とそれを囲む歩兵たち。――チンピラとはレベルが違う。

 

「う、うわあっ!? あれは、マーケットガードです!」

 

 ヒフミが小声で叫ぶという微妙な技を披露する。

 

「マ-ケットガードって?」

「先ほどお話しした、ここの治安機関でも最上位の組織です! 急いでここを離れましょう!」

 

「ちょおっと待ってくれないかな、ヒフミちゃん。おじさん、なんだかあれに見覚えがあるんだよなー」

「ええと……パトロールですかね? 何かを護衛しているようですが……」

 

「トラックを護送してる……現金輸送車だよ。あれを守ってるんだ」

「え……現金輸送車に見覚えが? あれ……あっちの方向は……闇銀行の方ですね?」

 

「あ! あ! 見てください……あの人!」

「うん? どうしたの、セリカちゃん。あの人……? あ、あれ!? あいつは毎月うちに来て利息を受け取ってた、あの銀行員!」

 

「えっ!? ええっ……?」

 

 目まぐるしい会話にヒフミはついていけない。

 

「ううん……どゆこと?」

 

 こっくり首をかしげてミカが聞く。

 

〈ほ、本当ですね! 車もカイザーローンのものです! 今日の午前内に、利息を支払ったときのあの車と同じようですが……なぜ、それがブラックマーケットに……!?〉

 

 解説半分、驚き半分で、アヤネが言う。

 

「か、カイザーローンですか!?」

「ヒフミちゃん、知ってるのー?」

 

「カイザーローンと言えば……かの有名なカイザーコーポレーションが運営する高利金融業者です……」

「うへ。有名な……? そこって、マズいところなのー?」

 

「あ、いえ……カイザーグループ自体は犯罪を起こしてはいません……しかし合法と違法の間のグレーゾーンで上手く振舞っている多角化企業で……カイザーは私達トリニティの区画にもかなり進出しているのですが、生徒たちへの悪影響を考慮し『ティーパーティー』でも目を光らせてます」

「ティーパーティー……え、でもトリニティの生徒会と言っても……それは、その、ミカさんの……」

 

「はい、ミカ様もティーパーティーでも一番偉い人の一人です。あ、なんですかその顔は。言いたいことは分かりますが、本当に偉い人なんですよ! それにナギサ様はきちんと色々な仕事を……」

「――ヒフミちゃん? 私だって、ちゃんとお仕事はやってるんだけどな……?」

 

「ひ……ひゃい! と、ところで皆さんの借金とはもしかして……アビドスはカイザーローンから融資を……?」

「借りたのは私達じゃないんですけどね……」

「話すと長くなるんだよねー。アヤネちゃん、さっき入ってった現金輸送車の走行ルート、調べられる?」

 

〈少々お待ちください。……。……ダメですね。全てのデータをオフラインで管理しているようです。全然ヒットしません〉

「だろうねー」

「ま、そりゃそう」

 

「そういえば、いつも返済は現金だけでしたよね。それはつまり……」

「私たちが支払った現金が、ブラックマーケットの闇銀行に流れていた……?」

 

「じゃあ何? 私たちはブラックマーケットに、犯罪資金を提供してたってこと!?」

 

 セリカは忌々しそうに地団太を踏んだ。

 

「「「……」」」

 

 誰もがその憤りには答えられず、走っていく現金輸送車を恨みの籠った視線で見送る。

 

〈ま、まだそうハッキリとは……証拠も足りませんし。あの輸送車の動線を把握するまでは……〉

 

 一応、アヤネが注意を促しておく。

 

「うん、みんな落ち着いて。疑いが濃厚でも、確定じゃない。確定されてない以上、慎重に動かないとこっちが犯罪者になってしまうからね」

「ううむ。先生の言うことはもっともだけど、このまま見逃す理由にはならないよねー。さてさて、どうしたらいいのかな……」

 

「あ! さっきサインしてた集金確認の書類……それを見れば証拠になりませんか?」

 

 ヒフミが良い考えを思い浮かべた、みたいな感じでぽんと手を叩いた。

 

「さすが」

「おお、そりゃナイスアイデアだねー、ヒフミちゃん」

「うんうん、さすがはナギちゃんと仲が良いだけあるね。それに大した度胸だよ☆」

 

 けらけらとあくどい笑みを浮かべるお三方。だが、ヒフミは苦笑する。

 

「あはは……でも考えてみたら、書類はもう銀行の中ですし……無理ですね。ブラックマーケットでも最も強固なセキュリティを誇る銀行の中となると……それにあれだけの数のマーケットガードが目を光らせてますし」

 

 苦笑して、しかし三人の顔を見て悪い予感を覚えた。

 

「それ以外に輸送車の集金ルートを確認する方法は……ええっと……うーん……」

 

 悪い予感がして何かないと探るか、悲しいかな。大した考えは出てこない。

 

「うん、他に方法はないよ」

「そうそう、ヒフミちゃんのアイデアで行こう!」

 

 にっこりと笑ったミカとホシノ。

 

「えっ?」

 

 嫌な予感が止まらなくて他のメンバーに助けを求めるが。

 

「ホシノ先輩、ここは例の方法しか」

「あっはっは、あれか。あれなんだよねえー」

「ふふ、例のあれだよ」

 

 当てになりそうもない様子だ。

 

「ええっ? えっ? あの……何か……すごい悪だくみが……」

 

 どんどん不安になってくる。何をさせられてしまうのだろうか。

 

「あ……!! そうですね、あの方法なら!」

「何? どういうこと? ……まさか、あれ? まさか、私が思ってるあの方法じゃないよね?」

 

 そして、残りの二人もその方法に思い当たったようだ。その反応は、ヒフミに更なる悪い予感を感じさせるものでしかないのだが。

 

「……」

「う、嘘っ!? 本気で!?」

 

「……あ、あのう。全然話が見えないんですけど……”あの方法”って何ですか?」

 

 びくびくと、怯えながら聞いてみる。

 

「残された方法はたったひとつ」

 

 シロコはさっと覆面を被った。お手製のそれは、執念すら感じさせる出来である。

 

「――銀行を襲う」

 

 言い切った。

 

「はいっ!?」

 

 目を剥く。嫌な予感は止まらなかったけど、いざ聞いてしまうと予想の斜め上のとんでもない手段だった。

 

「だよねー、そういう展開になるよねー」

「あはは、銀行強盗なんて始めてだなー」

 

「はいいいっ!!??」

 

 白目を剥いて気絶したくなった。

 

「わあ。そしたら悪い銀行をやっつけるとしましょう!」

「はあ……マジで? マジなんだよね……?」

「ふぅ……それなら……とことんまでやるしかないか!!」

〈……。……はあ、了解です。こうなったら止めても聞く耳持たないでしょうし……どうにかなる、はず……〉

 

 覆面をかぶっていないメンバーまで、続々と覆面を被りだした。

 

「えええっ!!?? ちょ、ちょっと待ってください!」

 

 こうなってはもう慌てふためくしかない。

 

「あ、うあ……? あわわ……?」

 

 止めようと、しかしわたわたと手を動かして……口から出てくるのは言葉にならない声だ。

 

「ねえ、ヒフミちゃん。言い出したのはヒフミちゃんなんだから、覚悟を決めるしかないよ☆」

 

 悪戯気に舌を出すミカ。

 

「ミ……ミカ様!? そんな……バレたらどうするんですか? トリニティの威信に傷がついてしまいますよ! お願いだから、自分の立場を分かってくださいぃ」

「にゃはは。相手は悪い人だから大丈夫だよー。先生の指示だしねー」

 

「ごめん、ヒフミ。あなたの分の覆面は準備が無い」

「うへー、ってことは、バレたら全部トリニティのせいだって言うしかないねー」

 

「ええっ!? そ、そんな……覆面……何で……えっと、だから……あ、あう……」

 

 目を白黒させてバッグの中身をごそごそ探り出す。まあ、覆面なんてものがあるはずがないのだが。

 

「それでは可哀そうすぎます。ヒフミちゃん、とりあえずこれでもどうぞ」

「たい焼きの紙袋? おお! それなら大丈夫そうー!」

 

「え? ちょ、ちょっと待ってください、みなさん……」

 

 慌てふためいているうちに、ノノミに紙袋をかぶせられてしまった。

 

「あ、あうう……あうう……」

「ん……ここをこうして。はい、番号も振りました。ヒフミちゃんは5番です」

 

 そして、被っている紙袋にマジックで番号を書かれてしまう。どんどん後戻りできなくなっていく。

 

「見た目はラスボス級じゃない? 悪の根源だねー、親分だねー」

 

「わ、私もご一緒するんですか? 闇銀行の襲撃に……?」

「さっき約束したじゃーん? ヒフミちゃん、今日は私達と一緒に行動するって」

 

「う、うああ……わ、私、もう生徒会の人たちに合わせる顔がありません……」

「大丈夫! 私も居るよ!」

 

「ミカ様が一緒なのが一番心配なんですぅー!」

 

 あはは、と笑いが起こる。

 

「それじゃあ先生。例のセリフを」

 

 シロコが先生を促す。

 

「銀行を襲うよ!」

 

 先生が宙に拳を突き出し、皆が拳を振り上げた。

 

〈ふぅ……では、覆面水着団。出撃しましょうか!〉

 

 モニターの向こうで0の覆面を被ったアヤネが宣言した。

 

「あ、ところでミカさんはどうするのー?」

「私は隠れて動くよ。覆面もないしね。先生の護衛は必要だし、そういう役どころが一人居た方がいいでしょ」

 

「うへ。おっけ。ま、おじさんはシロコちゃんを補佐してればいっか。一番銀行強盗を分かってるのが彼女だし。ミカさんも、顔を見られないようにね」

「当然☆ 私を誰だと思ってるの?」

 

 

 

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