聖園ミカの弱くてニューゲーム   作:Red_stone

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第25話 陰謀の果て

 

 

 そして、ミカはアビドス砂漠にたどり着いた。

 

「……なに、これ?」

 

 ずっと代り映えのない砂漠を歩いていたはずが、いきなり軍事基地が見えてきた。まずもってありえない光景だ。

 ――いや、理由があるのなら軍事施設も建てるのだろうけど。ヒナのことを信じていない訳ではなかったが、実際に目にするとやはり驚きが先に立つ。

 

「アヤネちゃんにはここに地下資源は無いって聞いてる。……でも、これは明らかに開発現場。あちこちに飛んでいたドローンも、正気を失ったオートマタも人避けのためだったのね……!」

 

 それをするだけの理由は分からない。……だけど、これはそれをするだけの理由がある。ミカはいくらカイザーでもさしたる理由もなしに軍事基地を建てられないのは知っている。

 あそこは”企業”だ。冷静どころか冷血に利益だけを追い求める”大人”の組織。であれば、無駄遣いなど許されない。

 こうするだけの理由があるはずなのだ。それだけの金をつぎ込む理由が、必ず目の前にある。

 

「さて……と。ここで暴れれば大ごとだね。噂のFOX小隊に追いかけられてしまうかも。……まあ、ここで発掘している”もの”を公表できればだけどね」

 

 くすりと笑う。カイザーは前からとても気に食わなかった。支配者気取りで何にでも口を出してくる。

 ただ大きい企業というだけでインフラを握ったつもりになって。結局、生徒会がなければ犯罪も抑えられないくせに。

 

「あは。あははははは! 滅茶苦茶にしてあげる。こんな辺境で悪だくみなんてするから、お金が無くなるんだよ。いっつもいっつも金金金と、馬鹿の一つ覚えみたいにさあ――」

 

 なら、ここで潰しておくのもいい薬だろう。

 どんな企みだか知らないが、どうせ悪いものに決まっているのだから。実力行使に否やはない。

 そう、聖徒会と戦ういい演習だ。ミカはその辺の主人公とは違う。先に起こることが分かっているならば、先に対策を講じて練習もしておく。たかがカイザーの部隊ごときにやられるようでは、無限に湧き出るそれを夜を徹して叩き続けるなどできはしないと断じている。

 

「ガラクタにしてあげる」

 

 銃を構える。狙いは定めた、覚悟も決めた。あとは身体を動かすだけ。身体を動かすのは得意なのだ。

 

「ああ……そういえば、正体を隠しておく必要があったんだったね。トリニティに逆恨みなんてされたら、ナギちゃんに迷惑がかかっちゃうもの」

 

 ケープを脱いで白い制服を着る。それなりに防弾性能があって動きやすい市販のコスプレ用品だ。

 最初からこうなると知って来ているのだから、準備くらいはしておく。弾薬も、たっぷりと持ってきた。

 

「……そういえば、7囚人だかに怪盗だのが居たんだっけ。罪、押し付けちゃおうかな☆」

 

 けらけらと笑って、警備兵の前に飛び出した。

 

「――誰だ!?」

「ここは私有地だ! さっさと出ていけ!」

 

 怒鳴りつける声に対して、ミカは銃弾で返す。

 

「私は怪盗。あなたたちが大事にしているものを奪いに来たよん☆」

 

 実はミカも、その怪盗とやらを特に知っているわけではないのだが――

 

「まさか、7囚人……慈愛の怪盗か? だが、あれが盗むのは美術品のはず……」

「し……知っているのか?」

 

 しかし、まあこの見張りも中途半端にしか知らないのだ。知らない方はついでとばかりに蹴りとばしておく。

 

「おや、私のことを知っているんだ? そう、私は慈愛の怪盗。こういうのが表に出ないのは……公表できると思う? あれの正体も、あなたたちの失策も」

 

 仮面の奥でフフフと笑う。多分、かなりサマになっているはずだ。

 

「馬鹿な……ただの怪盗ごときが、カイザーPMCに立てつこうというのか?」

「し、知ってるなら何とかしてくれ……がくり」

 

 コントのような一幕は須臾に過ぎ去った。

 

「じゃ、あなたもおやすみ」

 

 怪盗を知っているそいつも銃で打ち抜かれて倒れた。

 

「さあ、どんどん行くよ!」

 

 門を蹴り開けて、銃弾をバラ撒いた。死屍累々の有様が広がった。が――さすがに傭兵。それで全滅することなどない。

 

「くそっ! 侵入者だ。撃て撃て撃て撃て!」

「メーデー! メーデー! 本部、応援よこせ!」

 

 向かってくる女に向けて弾幕を張りつつ、応援の要請を行う。

 

「あは! 遅い遅い! ゲヘナの風紀委員会は襲撃を受けたら即応するよ! 悠長にお電話なんて、お行儀の良いお利口さんでも相手にしてるつもり!?」

 

 だが、ミカは弾幕を耐えて前に進み敵を撃破する。多少のダメージを受けても前に進んだ方が結局は負傷が少ないのだ。

 即席のバリケードごと粉砕してやれば、立ち上がれる敵などもういないのだから。

 

「さて。こういうゲリラ戦では敵の武器を使うのが重要なんだっけ。あまり良くない銃だなあ。握りつぶしちゃいそう。まあ、これは適当に使えばいっか」

 

 自分の銃を背中に背負い、奪った二丁のライフルを構える。

 

「くそっ。第3キャンプの連中がやられてる!」

「仇を討て。撃ちまくれ!」

 

 そして、また集団がやってくる。

 

「敵の武器を奪って使う。聖徒会と戦っていたときはやってたけど……さて。どこまで行けるかな?」

 

 二丁拳銃で碌に狙いも付けずに撃ちまくる。さらに奪った手榴弾と弾薬をまとめて蹴り上げて敵本隊に叩き込む。

 もはやワンマンアーミーどころか火薬庫を叩きつけるような脳筋思想だ。

 敵の武器は使えたらラッキー、適当に使い捨てる。自分の武器はあくまで惜しむ。その両面を成立させることがコツと、あのときの戦いで思いついた。ならば、今度は実戦練習だ。

 

「くそっ! 俺たちの武器を使いやがって……!」

「だが、慣れていない武器でどこまで戦えるかな!?」

 

 強い敵が弾幕の中を潜り抜けてきた。しかも――

 

「うわ!? ジャムった!」

 

 給弾不良……弾はあるのに出てこない。こういうのは乱暴に扱うと暴発するから本来は丁寧に処置しないといけないのだが。

 

「我々の武器を奪って使ったツケが来たな! カイザーに逆らったことを後悔しながら死ねぃ!」

 

 敵が、近くまで来ている。ミカの異常な耐久力と言えど、近くから攻撃を喰らえば相応にダメージが入る。

 

「あは☆ なら――殴る!」

 

 ロボットの装甲がひしゃげるほどの一撃を叩き込んだ。更に暴発、彼の頭部に致命的な被害を与えながら、その脅威はミカにすら迫る。

 

「よっと!」

 

 ぶんと腕を振って衝撃ごと叩き飛ばした。

 

「あと、手榴弾はいくらでもあるよ。まったく、こんなに弾薬を揃えて何を相手するつもりだったんだか!」

 

 また箱に詰まった手榴弾を蹴り上げる。バラバラと降り注ぎ――そこに別の銃でしゃにむに弾丸を叩き込んでやると敵部隊が壊滅した。

 

 

 そのころ、カイザーでは。

 

「――どうなっている!? 何が……何が起こっているというのだ!」

 

 カイザー理事が激高していた。カイザーにとって一番重要なアビドス砂漠の基地が7囚人、慈愛の怪盗に襲われているという事態。しかも、SRTとか7囚人全員であろうと相手取れるようにと用意したはずの部隊はどんどん溶けていく。

 敵は明らかにゲリラ戦の妙手の動きだった。まさか正義実現委員会や風紀委員会といった最強格でもなし、止められるほどの戦力を配置したはずだった。

 

「それに、アビドス自治区を制圧する部隊も次々とやられています! 先生とアビドスだけではありません! 他の自治区から増援が……!」

「対策委員会……! ずっと奴らが目障りだった。これまで、ありとあらゆる手段を講じてきた……それでも滅びかけの学校に最後まで残り、しつこく粘って、どうにか借金を返済しようとして!」

 

「カイザー理事……どうしますか!? 対策委員会の奴ら、アビドス本校に向かっています。これでは、『黒服』との契約が……!」

「あれほど懲らしめたのに、徹底的に苦しめたのに、毎日毎日楽しそうに!! 奴らのせいで、計画がっ!!! 私の計画があぁぁっ!!!!」

 

 激高して拳を机に叩きつけた。酷い音がして机が粉砕された。

 

「か、カイザー理事……」

「はぁ……ふぅ――。元々対策委員会は潰す手はずになっていた。そうだな?」

 

「は……はい。部隊は用意しています。ですが、予想外の増援が……」

「トリニティか? だが、トリニティだけならどうにかなる戦力だったはずだ。東から呼び寄せておいた兵力が奴らに足止めされたとしても、北から進軍する手筈となっている部隊がいただろう」

 

「そ……それがゲヘナの風紀委員会も参戦しています。たったの三人ですが……しかし、北からの部隊が全て押しとどめられています」

「おのれがァ! 全軍をもってしても打ち破れ! 対デカグラマトン大隊も呼び寄せろ!!」

 

 切れて叫んだ。

 

「ここは貴様に任せる。黒服との契約を果たせ! できなければ、もはや貴様にカイザーの居場所はないと思え!」

「……では、カイザー理事は」

 

「私はアビドス砂漠へ発つ! そこにはカイザーの悲願が眠っているのだ!」

 

 ヘリでミカの戦う場所へ移動する。ホシノのことについては、部下に任せる。とにもかくにも、カイザーの悲願のためにはアビドス砂漠の施設を守らねばならないのだ。

 

 

 

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