聖園ミカの弱くてニューゲーム   作:Red_stone

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第52話 シスターフッド参戦

 

 

 ミカは組んでいたはずのアリウスを倒し、そして裏切りを持ちかけたものの拒否されてしまった補習授業部へその牙を向ける。

 そこに、介入する勢力が来た。

 

「けほっ、今日も平和と安寧が、みなさんと共にありますように……けほっ」

「す、すみません、お邪魔します……」

 

 シスターフッドが、爆破して道を開けつつその姿を表した。

 

「『シスターフッド』、これまでの慣習に反することではありますが……ティーパーティーの内紛に、介入させていただきます」

 

 シスター服を着て銃を構えた集団が、リーダーに率いられてやってきた。そのリーダーが、その深紅の瞳でミカを真正面から見据える。

 

「歌住サクラコ……! 決して動かないはずのシスターフッドを動かしたなんてね! まったく、ハナコちゃんは何を差し出したのかな?」

「ティーパーティーの聖園ミカさん。他のティーパーティーメンバーへの傷害教唆及び傷害未遂で、あなたの身柄を確保します」

 

 踵を返したミカがサクラコを睨み返す。そして、サクラコは返礼に銃を向ける。

 

「……まったくもう。ティーパーティーの言うことを聞かないなんて、困っちゃうよ。確かに命令権はないけれど、それでも好き勝手して良いってことじゃないと思うんだけどな」

「シスターフッドに与えられた特別な権力は、ティーパーティーが暴走したときに止めるためにあるものだと思っております。……しかし我々も無為に人を傷つけることは望みません。降伏してください、聖園ミカさん」

 

「あは、ちょっとムカついちゃうな。そもそも――ユスティナの後継なんかに悪だくみとか裏取引とかを糾弾される筋合いってなくない? あんなものがバラまかれることになるのに……さ!」

「シスターフッドはそのような物騒な組織ではありませんよ。どこにでもいる、ただの善良な生徒がボランティアをしているだけの場所です。ただ、前身となったユスティナ聖徒会の関係で、ある種の特別な地位を頂いてはおりますが」

 

「ある種の? 特別な地位? 先生にも秘密にしていることがあるくせに! 正義の味方気取りが笑わせる!」

「……なっ!? それを、どこで――」

 

 ミカが敵意を濃くする。一触即発の一秒前、迎撃するためにシスターフッドの全員が銃をミカに向ける。

 

「ティーパーティーにすら制御できない秘密組織、その力を今ここで見てあげる! 秘密を守るだけの力もないなら、ここで潰れてしまうがいい!」

 

 ミカが、突進する。

 

「な……!? みなさん、迎撃を!」

 

 サクラコが驚愕して、配下に撃つように命じる。その瞬間にミカは飛ぶ。全てのシスターフッドを飛び越えて逆側に着地する。

 

「……これで、あなたたちに逃げ道はない」

「それがどうしたと? あなたこそ、そちらから走り去ったとしてもシスターフッドの追跡から逃れられるとは思いませんよう」

 

「あっは! 逃げる? 私が? 馬鹿な勘違いだね――正してあげる! 所詮はシスターフッドなんて言っても、私一人で潰せる程度の、脆い組織だってことを分からせてあげるから!」

「舐めないでください! この数を相手に、一人ではどうしようもないでしょう!?」

 

 振り向いたシスターフッド達がトリガーを引く。幾多の銃弾がミカに当たる。

 

「さあ――星の呼び声を聞きなさい……!」

 

 銃弾を浴びるミカの神秘が高まっていく。そして、それは暴力的なまでに空へ駆けのぼっていく。ハナコが叫んだ。

 

「危ない……! 上から来ます!」

「もう遅い!」

 

 隕石が、シスターフッド中央に炸裂。軒並み吹き飛ばした。

 

「うわあっ!」

「きゃああっ!」

 

 だが、前に立っていてミカが飛び越しため後方に位置することになってしまったサクラコは無事だ。攻撃範囲から外れていた。

 反撃準備を整えるよう、号令をかける。

 

「体勢を立て直しなさい! 身体を起こせる者は聖園さんへの対処を!」

「遅いって言ったでしょう? サクラコちゃん!」

 

 取り巻きを撃破した隙にサクラコに急接近、こうなっては味方も簡単には撃てない。乱戦だ、下手をすれば――外せばサクラコや味方に当たる。

 

「な……!? こんな、多勢に無勢の状況に慣れて……?」

「あは! どうしようねえ、サクラコちゃん! 撃てば味方に当たる! 避けても味方に当たるよ!」

 

 サクラコはむやみに撃てはしない。狙いを付けて2発か3発あてる間に、10発は貰っている。

 しかも、その銃弾はやたらと痛い。そして、一人であるミカは滅茶苦茶に連射できる。

 

「ぐ……くぅっ! こんな、シスターフッドの主力部隊を相手に、ティーパーティーがたったの一人で対抗するというのですか?」

「それだけあなたたちが弱いということ。こんなもので、未来の絶望に打ち勝てるつもり? この魔女すら止められずに……!」

 

 サクラコの視界が点滅する。ダメージを貰いすぎた。破れかぶれと紙一重の突撃戦法、だがミカの実力がそれを可能にしていた。

 ただ強いだけの一人を前に、シスターフッドそのものが敗れ去る。

 

「……そんな。そんなことはさせません! たとえ、犠牲を払ってでも……桐藤さんと補習授業部のみなさんを守るために……!」

 

 だから、何をしてでもと銃を捨ててミカに飛びつこうとする。動きを止めて、自分ごと撃たせてでも止めるために。

 

「残念、あなたはもう――終わりだよ」

 

 けれどミカには通じない。アビドスに関わった。先生とともに、問題を解決した。――風紀委員会と、カイザーと戦った。

 それだけの戦闘経験、そして未来の宿敵を倒すための覚悟がミカにはある。

 照準を付けるまでもなく、飛びつこうとするその額の先に銃口をねじ込んでトリガーを引いた。

 

「……ごめんね、サクラコちゃん」

 

 す、と一瞬だけ目を伏せる。その隙に――

 

「サクラコ様の犠牲を無駄にするわけには行きません!」

「その身をもって策を示してくれたのですから!」

 

 他のシスターフッドがミカに飛びついてきた。5人、6人――身動きの一つも出来ない、人の身体で出来た牢獄。

 これで相手を留めている内に倒せと、リーダーの作戦を引き継いだ。

 

「ごめんなさい、後で治療しますから……!」

「どうか、平穏がありますように……!」

「神よ、哀れみたまえ……!」

 

 そして叩き込まれる集中砲火。動きを止めるための壁が盾になるとも、ミカに耐えきれるはずがないと――彼女たちは確信する。

 撃ち終わった。硝煙の煙がこの場を満たす。……数秒をかけて、ゆっくりと霧が晴れていく。

 

「あは☆ 少しだけ……痛かったかな」

 

 飛びついた彼女たちの身体が宙に浮いた。ばん、と飛んでいく。ごろごろと、ボールのように転がっていく。

 ミカはボロボロの身になりながらも、まだその瞳に光を失っていない。暗い――どろどろとした目で周囲を睥睨(へいげい)する。

 

「……ひ」

 

 誰かが悲鳴を上げた。

 

「じゃ、さよなら☆ 力のない秘密組織……!」

 

 残った者を、サブマシンガンが薙ぎ払った。

 

 

 

 そして、ミカは改めて先生の前に立つ。

 

「あは、待たせちゃったかな。ごめんね。ナギちゃんはどこかな? 案内してくれると嬉しいな」

 

 そして、にっこりと笑って補習授業部に笑いかけた。

 

「……それでも、私たちの結論は変わりません。ナギサさんは、あなたには渡しません」

「正気かな、ハナコちゃん。あなたたちの頼りの綱のシスターフッドは私が倒しちゃったよ。なのに……それでも立ち向かおうと言うの?」

 

 絶体絶命の状況を己の腕力のみで切り抜けてしまったミカ。その力の前にはナギサを引き渡すしかない、ように思えるがそんなことはしない。

 

「ふふ♡ 確かにシスターフッドの皆さんは私たち補習授業部よりも強いかもしれません。ですが、お忘れですか? 私たちには先生だって付いています」

「――ふうん。先生に頼りっぱなしなんだ? まあ、私も人のこと言えないかもしれないけど」

 

「それに、シスターフッドの方々が付けた傷は浅くありませんよ。私には、あなたが立っているのもやっとに見えますが」

「あは☆ それはどうかなあ。私はまだまだ元気いっぱいだけど?」

 

 蛇のような腹の探り合い。ミカは、自分でも頭ではハナコに及ばないのは理解している。けれど、それをひっくり返すのが『恐怖』であるのだから。

 

「……ミカちゃん」

「ヒフミ……ちゃん。うん、あなたも私に銃を向けるんだ? でもさ、私が強いのはヒフミちゃんが一番知ってるんじゃないかなあ」

 

 一瞬、ヒフミを見る目が変わりかけたものの魔女としての自分を取り戻す。もうこうなったら走り抜けるしかない。

 いや、自分でももう何をやっているのか分からなくなっているけれど。

 

「話を聞いてもらうために、一度倒す必要があるのなら――私は銃を手に取ります! 覚悟してください、ミカちゃん!」

「あはっ! 来なよ、補習授業部! 未来に抗う力があるのなら!」

 

 ミカにとっては三連戦。とはいえ、補習授業部だってアリウスに対して罠による遅滞戦法からの連戦を潜りぬけてきた。

 消耗しているのは互いに同じ。

 

「いくらティーパーティーだからって、誰かを傷つけていいわけじゃないわ! 正義実現委員会として、あなたを逮捕します!」

 

 コハルが手榴弾を投げる。

 

「へえ! 補習授業部が偉そうに。……それに、この程度の威力じゃ私を倒せない!」

 

 ミカが投げられた手榴弾も構わずに突っ込む。敵が集団なら潜り込むことで同士撃ちを誘発、射撃を躊躇わせる先も使った戦法だ。

 ただ強いミカなら、それが一番強い。特別な戦法など必要ない、ただ猪のように突っ込めば敵は壊滅する。

 

「ふふっ。みなさん、ちゃんと…受け止めてくださいね!」

 

 だが、その戦法は先も見た。あえて散会することもせずに、ハナコは自らの神秘で回復のフィールドを張る。

 ミカにとっても戦域を移すことは容易ではない。相手の回復を阻害することは難しい。

 

「なら、一撃で倒すだけ……!」

「そう簡単には行かない!」

 

 アズサが前に出る。撃って、撃たれて――だが。

 

「ああ、もう鬱陶しい! うろちょろと……!」

 

 アズサはコハルとスイッチする。しかも、目を離した瞬間にハナコの回復に加えてコハルまで回復してくる。

 本当に一撃でなければ倒せない。ミカは、一撃と言っても近づいて一瞬のうちに何発も撃ち込んで倒すスタイルだ。だから、このように連携されては倒し切れなかった。

 

「――準備が出来ました。行きます!」

「ヒフミちゃんか! あの鳥を出す気だね! そんなもの、すぐに潰してあげるよ!」

 

 そして、ペロロ人形の出現。敵の気を引きつける効果があるのは知っている。ならば、無理に逆らうのではなく、すぐに消し飛ばすまで。

 そう、決めたのだが。

 

「……」

 

 一瞬だけ、躊躇した。いや、それを使い捨てているのは知っているのだ。けれど、ヒフミが大好きなものをゴミのように消し飛ばすなんて。

 トリガーを引く指が固まった、その一瞬に。

 

「全てが虚しいものだとしても……諦める理由にはならない! 『intulit mortem』……!」

 

 アズサが渾身の神秘を籠めた強力な攻撃をミカに叩き込む。吹き飛ぶほどの一撃のはずが、ミカはただその脚力と腹筋でその場に踏みとどまる。

 

「かはっ……! 痛い……けれど、こんなもので!」

「ならば、何度でも撃ち込むまで!」

 

 たじろいだミカ、だがすぐに敵に向けて足を踏み出す。そして、対するアズサももう一度銃弾を叩き込もうと銃口を向ける。

 

「させない……!」

 

 向けられた銃を蹴り上げる。彼我の位置は至近距離、もはや逃げられない。あとは気絶するまで銃弾を叩き込めば終わりだと笑う。

 けれど、銃を弾き飛ばされたアズサに浮かんでいるのはやってやったという笑み。

 

「――これは桐藤ナギサの銃。これで、お前を……!」

 

 銃を蹴り飛ばされることを読んで、懐からハンドガンを取り出していた。それはナギサを気絶させたときに奪っておいた銃。

 それは万が一目覚めても背後から撃たれないための処置だったが……

 

「そっか。ナギちゃんの銃か……なら、しょうがないね」

 

 ふ、と微笑して――ミカはその銃弾を受け入れた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 アズサは息を切らせていた。綱渡りだった、何かが一つ違っていたらこちらの方が全滅させられていた。

 

「みんな、よくやったね」

 

 先生が声をかける。

 

「ああ、もうアリウスの増援もない。これで終わったはずだ」

「終わり……か。そうだったらいいのだけど」

 

 先生の顔に影が差す。すぐにその表情を消す。

 

「……先生?」

 

 いぶかしむアズサに答えを返すことなく、コハルへ話しかける。

 

「コハル、悪いけど……ミカを治療してあげてくれるかな?」

「ええっ? でも、この人はこのまま正義実現委員会に引き渡すはずじゃ……それに、そこでも治療を受けられるはずですよ。私なんかがやるより……」

 

「お願い」

「……うう。先生のお願いなら仕方ないわね」

 

 先生ってば私が居ないとしょうがないんだから、と少し浮かれた声で呟いて。ハナコがにやにやと声をかける。

 

「え? 先生のお願いなら何でも聞いてくれるって言いました?」

「ハナコ! あんたはいつもいつも人の話を捻じ曲げて! なんでもするなんて言ってない! エッチなのは死刑!」

 

 条件反射のように噛みついた。が、やはりハナコの方が一枚上手で。

 

「あら? 私はエッチなお願いとは一言も言ってないのですが……」

「あっ……! ……もう! 私は治療の方を進めるから!」

 

 喧々囂々と、いつもの補習授業部が戻ってきた。とにかく、これで終わったのだ。

 

 

 

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