聖園ミカの弱くてニューゲーム   作:Red_stone

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アフター6話 火の不始末

 

 

「入るよ。やってる?」

 

 ティーパーティーの部屋にまで呼び出された先生が、そのお茶会の部屋に入る。慣れたもので緊張とかもなく、まるでラーメン屋に入るような気楽さがあった。

 

「ようこそ、先生。今日はお忙しいところお呼びだてして申し訳ありません」

「そうそう。珍しいものが手に入ったからってナギちゃんが張り切っちゃってさあ。まったく、自慢話に付き合うのも疲れちゃうよね」

 

 仲が良さそうに言い合う二人を見て、先生はかすかに安心したような笑みを漏らす。どちらも前は思いつめていたようだったが、今はそんな風に笑い合えるようになった。

 自分が助けてあげられたのかは分からないけど、結果としてそうなれたのだから先生としては感無量だった。

 

「あはは。まあ、別にそれでも構わないよ。それにこのお茶会はおいしい紅茶が飲めるしね」

 

 いそいそと椅子に着く。そこで供されるものはラーメンとは比べ物にならない値段だけあって、先生も役得だと思っている。

 

「だって、ナギちゃんはこのために色々と準備してるもんね? 今日だって」

「いえ……まあ。先生もそう言うなら持ってきてしまいましょうか。ええ、最近珍しいものが手に入ったのです」

 

 ナギサが椅子から立ってお茶を淹れに行く。

 

「コンブチャ、だって。先生は知ってる?」

「昆布茶のことではないよね。それは紅茶かな」

 

「ナギちゃんったら詐欺に引っかかりそうになって、キレてそこを潰しちゃったの。もう一国一城の主はできないね。ま、ただの昆布茶を偽って値段を吹っ掛けてたから自業自得ってものだけど」

「……ううん。やっぱりキヴォトスでは、私の居たところよりもちょっと多いね。私も、もうちょっと何とかできればと思ってるんだけどね」

 

「連邦生徒会にやる気がないのに、先生だけが活動しても焼け石に水じゃんね。ま、詐欺なんてものは市民の一人一人が気を付けるしかないと思うよ。さて、本当のコンブチャとやらの味を見せてもらおうかな」

「うん。滅多に飲めない高級な紅茶かあ。……はは、違いが分からないと恥ずかしくなってしまうかな」

 

「先生につきましては、お気になさらず気楽にご賞味いただければ。こういうのも経験でしょう」

「ふうん。香りについては。うん、昆布茶と間違える訳がない香りだね」

 

「そもそもコンブチャとは、昆布茶はもちろん紅茶とも少し異なるものです。ゲル状の培地で発酵させた発酵飲料に当たりますね。なので葉ではないのですよ。紅茶キノコとも呼ばれます」

「キノコ? ううん。キノコの香りではないね。先生は分かる?」

「うん。これをキノコの香りと間違える訳はないな。ええと、でも紅茶の香りに近い気がする……のかな?」

 

「はい。色々フレーバーがありますが、これは花の香りですね。ジャスミンやラベンダ-の香りも感じられます。オリジナルミックスのフレーバーのようです」

「そっか。じゃあ、味はどうかな。……うん、おいしいね」

「へえ! クリーミーな口当たり。こんな感じになるんだ。それにかすかにバニラみたいな香り、深みがあるね」

 

「はい。これは中々に良いものですね。職人の拘りが感じられます。ベースの紅茶はニルギリでしょうか……? 複雑な味わい。ええ、それだけの価値はありますね」

 

 ナギサはうんうんと頷く。もしや干した詐欺会社に想いを馳せているのだろうか。先生は話を逸らすためにお茶菓子に供されたケーキにフォークを刺す。

 

「うん。このケーキもおいしいね」

「ふふ、先生は何のケーキか分かるかな?」

 

「うえ? ええ……と。これが……? ……オレンジやマンゴーが乗ってるけど、普通にショートケーキだよね?」

「あははっ。先生、大正解。ま、本来は長ったらしい名前がついてるけどそれで合ってるよ」

 

「ミカちゃん。妙なイタズラをして先生を困らせないでください」

「こんなの、ちょっとしたジョークじゃん。仲の良い人同士の小粋な小噺ってやつだね」

 

「先生が振り回されているだけに見えますが……いえ、そんなことはどうでも良いのです。というか、これも本題ではありません。さすがにお忙しい先生をコンブチャを飲んでもらうためだけにお越し願うわけには参りませんので」

「私は下らない用事で毎日でも呼びつけたいけど」

「毎日はともかく、アリウスへの授業のついでだから三日に一度は顔を出してるよね」

 

「はい。その件についてはありがとうございます。……アリウスの皆さんは学力が低すぎて。……救護騎士団の皆さんも、少しは教えるのに慣れてもらえたようですが」

「それについては私こそ本業だしね。むしろ週2でしか出来ないことが申し訳ないよ。せっかくこの話を持ってきてくれたのに」

 

「いいえ、十分感謝しています。ああ、また話が逸れてしまいましたね。ミカちゃんが居る限り、本題にたどり着くのは難しそうです」

「いや、今のは私話してなくない?」

 

 わざとらしくきょとんとした顔をするミカを無視してナギサは居住まいを正す。

 

「ご存じかもしれませんが、私とミカちゃんに妙な噂が立っているのです。ああ、それとヒフミさんやセイアちゃんにも」

「……ふむ? 妙な噂とは」

 

「ええと……その」

「ああ、それで先生を呼んだんだ。何を話すかは聞いてなかったけどさあ。でも、そんなことで先生を呼んじゃう?」

 

「仕方ないじゃないですか。こんなの、どうしていいか分からなかったんですから。なぜか私がミカちゃんを監禁していることになって。ヒフミさんがミカちゃんを攫おうとする怪盗で、セイアちゃんが被害者だったり私の共犯だったりするんですよ」

「……ああ」

 

 矢次早に相談の内容をまくしたてるナギサ。だが、先生も話を理解していない訳ではないが言葉に困って黙ってしまう。

 

「いや、まあ本当に? とか思うかもしれないけど実際にあるんだよ。マジで変装しないで外に出ると、今日はナギちゃんと一緒じゃないとか隣に居る女は誰とか噂されるの。ま、サングラスと帽子で隠せる程度の有名税だけどね」

「そっか。……ええと、そこまで困っていない。いや、そこそこには困っていると言うことかな? それで私に相談を?」

 

「はい。何とかできるものなら何とかしたいんです。ミカちゃんはいいですよ、囚われのお姫様なんですから。なんですか、私はまるで魔女じゃないですか。しかも想う相手を監禁するヤンデレで、ヒフミさんと日夜女の戦いを繰り広げていることになっているんですよ」

「……そっか。うん、そっか。ええと、セイアはどんな具合なのかな」

 

「セイアちゃんはトリックスターな気質で、元からインドアの神秘的な子なんだよねえ。まあ、面白がって妙な噂を作ったりしてるね。けっこうやりたい放題」

「ああ、うん。そっかあ。……えっと、力になりたいのは山々だけどねえ」

 

「どうにかなりませんか、先生! セイアちゃんもミカちゃんもこんな調子でまともに噂を消そうとしないんです! 犯罪抑止と言うことにして散歩させたら監禁の噂は減って来ましたが、今度は二人だけのスイートルームがどうだのと言う話に変化してしまったんです!」

「あのパトロール、噂を消すためにやらされてたの!?」

「……へえー。二人とも、大変だね」

 

「先生! どうか、どうかお力を貸してください!」

「あー、いやー。そう言われても。……実はトリニティの子ではないけど、自分が怪しくないことを説明してくださいと頼まれたことはあるけどね」

 

「あー」

「ああ、ご苦労をおかけします」

 

「トリニティの子じゃないって言ったよね!? まあ、頼まれた時には既に観客が集められていたから講演せざるを得なかったんだけど。……うん、あの時も力になれたとはちょっと言えないなあ。ごめんね?」

「ああ、いえ。……ですが、何かありませんか? 今すぐにとは言いません。また来た時にでも聞かせてもらえれば……」

 

「……あまり期待されても困るけど、うん。考えてはみるよ」

「くすくす♪ 面白い答えを期待してるね。さてと、ナギちゃんはお代わりのケーキも用意してるはず……」

 

「はは。……どうしたものかね」

 

 先生が苦笑して肩をすくめた。ミカはごそごそと物色中だ。

 

「話は聞かせてもらった!」

 

 そこで唐突にバンと扉を開けたのは。

 

「セイアちゃん? あなたは用事があると言っていませんでしたか?」

「ふふふ。一度このセリフを言ってみたかったのだよ、ナギちゃん」

 

 小さく、身体も細いのは相変わらずだが悪戯気に笑うその様子は以前よりもずっと精力に満ちている。

 

「あ……はあ。そうですか。あなたには以前に相談していたはずですが?」

「ああ、黙っていたが策があるのだ」

 

「策、とは――」

「その前に、先生。これを見てくれ。ミカちゃんとクレープを食べに行ったり、アズサとパフェを食べに行ったりした写真なのだが」

 

「そっか。楽しんでいるみたいで良かったよ」

「セイアちゃん、その前に私の話を……」

 

「それがこれだよ。人の噂も七十五日と言うが、SNSが発達した今は違う。誰かが火種を投入し続ける限り燃え続けるものだが、あいにくと我々の噂は世の女子達が好む恋愛話であり、そして燃やしたい人がいくらでも居る政界の不祥事だ。いくら待っても燃え尽きることはないだろう」

「はい。だからこそ、先生をお呼びして対策会議を開いたのです」

 

「……あ、対策会議だったんだね。これ」

「先生、次はモンブランにする? それともショコラケーキ?」

 

「ならば他の手段を取るしかない。なに、人が意識できる数などたかが知れている。様々な噂をバラ撒いてしまえば、じきに追えなくなって飽きるさ」

「様々な噂とは?」

 

「友人など、何人も居るものだろう? 遊び歩いて多数の噂を撒けば、融合したり派生したりで訳が分からないことになるだろうさ。舞台に10人も用意してやれば、組み合わせは無限大になるのだからね」

「そうすれば、噂は要領を得なくなって人々が気にすることもなくなるということですね。……私、仕事が忙しくてそのような噂は作れないんですが」

 

「なんとかしたまえ。でないと、今度は君を放って私たちが遊び歩いていることになってしまうからな」

「……仕事を手伝うとは言ってくれないのですね。――ミカちゃん?」

 

「さあて、ショコラケーキも食べたし次は何食べようかなー」

「ミカちゃん、太りますよ。ケーキは二個までにしておきなさい」

 

「うぐっ。あ、先生。これの次はアリウスのところに行くんでしょ? 私も一緒に行っていい?」

「ああ、ミカがいいならもちろん」

 

「ふむ、では私も行ってみるとするか」

「ならば私も行きましょう。現場を見ておく必要もあるでしょうし」

 

 4人で連れだってアリウスが勉強している施設に向かうのだった。なお、後日にはナギサがパパ活をしているという噂が立つのだった。

 

 

 

20万PVの同人誌は誰がいい?

  • ナギサ様
  • セイアちゃん
  • ミカ(二冊目)
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