マダムを倒し、更にその後片付けに奔走した三人。ティーパーティーの三人が結束した分、弱っている今のうちにと襲い掛かってくる敵も多かった。
ミカも、ただ散歩していただけでなくスクワッドと共に敵勢力を片端から潰していた。ナギサやセイアもやり方が違うとは言えど似たようなことをしていた。
「――ふう。なんか……三人で落ち着くのも久しぶりって感じだね」
「まあね。だが、本来なら準備と後始末に奔走するのが我々の立場だからね」
「少し集まることならともかく、腰を落ちつけて話すのはマダムを倒す前のことになるでしょうか」
ミカは背もたれに身体を預けてぐでんとしているし、セイアなんて椅子の肘掛にもたれかかるから身長もあって子供っぽく見える。
ナギサだけはびしっと背筋を伸ばしているけど、やはりどこか気の抜けた雰囲気がある。
「なんか倒す前は一杯一杯でなんとか回してた――って感じだったけど、でも倒したら倒したでやっぱりてんやわんやなんだよねえ」
「バーン、バッタリ。悪は倒れたメデタシメデタシで終わるのは漫画の話で、現実では気の遠くなるような後始末の作業が待っている。よく言われることだね」
「しかし、乗り越えるためになりふりかまわず手を回していたころよりもよほど気楽です」
「ああ、ナギちゃんは酷い状態だったもんね。凄い疑心暗鬼になっちゃって、誰彼構わず疑っちゃって」
「……ミカちゃんのことは疑っていませんでしたよ」
「むしろ、そこが問題だろう。そこまで執着するから未だにミカちゃんを監禁しているという噂が消えんのだ」
「言いますね、セイアちゃん。しかし、私とミカちゃんは幼馴染なのですよ。というか、そう言うミカちゃんだって相当に病んでましたからね。今でも退院許可が出ないじゃないですか」
「まあ、違うとは言い切れないね。でも、私は演技がうまいんだよ。小粋なジョークを飛ばすくらいの余裕は取り繕えてたよ」
「君たち二人は追い詰められていた。誰の話も聞かなくなるほど、目の前の敵も分からなくなるほどに。だからこそ、ミカちゃんが誰かに助けを求められたのは運命を覆す一手だったと思うよ」
「いやいや、照れちゃうなあ」
「セイアちゃん」
「――たとえ、終わりが最初から決まっていたとしても」
空気が冷え込んだ。
「それは、先生にも言った?」
「当然だ。あそこまで世話になったのだ、隠しては不義理と言うものだろう」
セイアが持っていた予知夢。それはキヴォトスの滅びを予言する夢を見せた。ティーパーティーはマダムを倒したが――それこそ予定調和でしかないだろう。
舞台を盛り上げる中ボスが退場したところで真の脅威が迫りくる。マダムさえ倒せば、などとセイアは言っていないのだから。
「やはり、そこは覆せないのですね」
「私に予知能力は無くなった。だが、それでも断言しよう。私が見たあの夢は決定された未来だ。ミカちゃんが変えたような枝葉の出来事ではない。運命とでも呼ぶべき巨大なうねりは誰にも止めることは出来ないのだよ」
「ですが、マダムとのことも乗り越えられたのです。その破滅にも全力で立ち向かう以外に選択肢はありません。先生と共に。……紅茶を淹れて来ましょう」
ナギサが席を立って話を打ち切る。
「じゃ、私がお茶菓子を用意しとくよ。ナギちゃん、何買ったの?」
「冷蔵庫にマカロンが入っているので、お好きなものをどうぞ」
「……マカロンか」
「おや、セイアちゃんはお嫌いかな? 私はどれにしようかなーっと」
「うむ。なにか口の中に残る感じがしてな」
「セイアちゃん相変わらず食が細いね。大丈夫? ちゃんと食べられてる?」
「君は私と同じものを食べていると思うのだが。あいにくと食べ残した記憶もないな」
「残すとミネ団長が口に突っ込んでくるもんね。ああ、最近はナギちゃんもお世話になるようになったよね。寂しがり屋さんなんだから☆」
「聞こえていますよ。ティーパーティーの2人が一つの場所に居るのです。もう私も行って防御を固めた方が早いじゃないですか」
「あはっ。ま、そういう考え方もあるかなー?」
「さて。私は紅茶が来るまで待っていよう」
「ふへ?」
ミカは既にマカロンをほおばっていた。
「どうぞ。ミカちゃんも喉に詰まらないように気を付けてくださいね」
「ナギちゃん、ひっどーい。私、そんなに意地汚くないよ」
「ふむん。やはりマカロンとか言うのはハイカラすぎてどうもな……」
「セイアちゃんはけっこう好き嫌いが激しいですね。というか、おばあちゃんのような……」
「失礼だな。こんなに可愛い子を掴まえておばあちゃんとはなんだね」
「でもセイアちゃんが用意するお菓子って、なんかおばあちゃん家に置いてありそうなものばかりだし……」
「私は和風が好みなだけだ」
「さて、私も。……おや、ピスタチオ味が無くなってますね」
「美味しかったよ☆ いやあ、流石は滅多に変えない限定品だね」
「確かに女子が好みそうな可愛らしい形だったね。だが、正直そこまでおいしいものだろうか? 緑色なのにほろ苦さもないし」
「10個は用意しておいたんですけど。ああ、もう。ミカちゃんは意地汚いし、セイアちゃんは目敏い……!」
「まあまあ、バニラ味もあるよ」
「そちらはノーマル品ですっ! 私、ピスタチオ味は食べたことがなかったんですよっ!」
「ならばホストの権力を使って買い占めればよいではないか」
「そんなことできますかっ! セイアちゃんは無関係だと思って適当なこと言わないでください! というか、マカロンが苦手なら私のために残しておいてくれても良かったじゃないですかっ!」
「はっはっはっ。さて、今日もこんぶちゃかな? 最近、君はハマっているねえ」
「いいえ、ただのハチミツを入れたアッサムです」
「……舌に感じる甘みはハチミツだったのだね」
「あはは。セイアちゃん、見事に外しちゃった☆ というかコンブチャって独特な臭いしない? 間違えないと思うんだけど」
「セイアちゃんは適当なことをもっともらしく言いますからね」
「二人とも、うるさいぞ。別に紅茶など分からなくても死にはせんのだから」
「あはは☆ 私は味が分かる女だから紅茶なんてお手のものだけど」
「ミカちゃんは産地間違えてたことがありますよね」
「……そんなん当てられるのナギちゃんだけだって! 私別に職人じゃないし!」
「いやまあ、必須と言う訳でもないですが」
「ところで、ミカちゃんにナギサちゃん。私たちは何の話をしていたのだろう?」
「芸能人格付けの話でしょ?」
「いえ、紅茶が分かるかどうかは別に。ああ、最初の話は今後についてでしたか?」
「……どれだけ横道に逸れていたのだね」
「だって雑談でしょ? 会議じゃないもの、話は適当に飛んでどこかに行っちゃうものだよ」
「先生には伝えてありますし、具体的なものが何もないのでどうしようもないですし」
「悪かったね、ふわっとした予言で」
「あれ、私の言葉が無視されてない? いじめ?」
「まあ、ほどほどに頑張ってきましょうか」
「病まない程度にね☆」
「それを病室住まいの我々が言うのはどうなのだろうね」
「セイアちゃん、しまらないです」
「ニヒリズムも繰り返しになると飽きちゃうぞ☆」
「……さて。チョコレート味のマカロンでももらおうか」
見るからにグダグダな話で、落ちもない。けれど、こんな時間を過ごすためにこそ、彼女たちは頑張ってきたのかもしれない。
破滅の予言も――まあ覆すために努力するのだろう。
そして最終章で先生が何とかして脳を焼かれるわけですね。
20万PVの同人誌は誰がいい?
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ナギサ様
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セイアちゃん
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ミカ(二冊目)