聖園ミカの弱くてニューゲーム   作:Red_stone

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サイドストーリー・ライブイベント:第2話 勘違いされる二人

 

 

 ティーパーティーの部室で駄弁っていた三人は、ミネが居るという部屋に向かう。

 ミカが無遠慮にノックして、「――少し、考える時間をいただけませんか?」などと聞こえてくる声など無視して返事も待たずにドアを開く。

 

「やっほー☆ やってるう?」

 

 ニコッと完璧な笑顔で決めた。まあ、向けられた方は困惑しているのだが。マリーなどは退室しようと思った矢先に出口を塞ぐようにミカが現れてびっくりして後ずさった。

 

「ラーメン屋ではありませんよ、ミカさん。それと、不摂生などしておりませんよね? こっそりと外に出ては買い食いをしていましたが――度を過ぎると人前に出れなくなりますよ」

 

 慣れているミネが対応する。そして小言も忘れない。療養生活でミカとセイアは救護騎士団所有の建物で暮らしていたことがある。

 そこでもミカは好き放題やっていた。

 

「ちゃんと運動してるから大丈夫☆ むしろセイアちゃんの痩せ具合を心配したら?」

「セイアさんは……あまり問題ないようですね。謝肉祭の準備で大きな負担がかかることを心配していましたが」

 

「ああ、問題ないよ。それに、仕事はナギちゃんがやってくれるのでね」

「……いい加減に代理ホストの座はお返ししたいのですが。あと、私は心配していただけないので? ミネさん」

 

「あなたは患者ではありませんから」

「……なるほど。そういう感じですか。――さて、サクラコさんとマリーさんがいらっしゃるようですが。何の用で集まっているのでしょうか?」

 

「ごきげんよう、ナギサさん。それと、ミカさんにセイアさんまで。ティーパーティーのトップ三人が見るものなどないと思いますが。マリーさん、ご挨拶を」

「はい。シスターフッドの伊落マリーです。よろしくお願いします」

 

「ふふ、マリーちゃんだね。知ってるよ。あの時はお世話になったね」

「……はい。その節は」

 

 クスリと笑うミカに、ぞわりと悪寒を感じるマリー。実は二人が思い浮かべたのは全くの別画面。

 

 ミカはマリーが補習授業を訪れたことを知っている。アズサに会いに行って、爆破されてしまったその顛末を。まあ、最後にはきちんと伝言を伝えられたのだが――それを聞いた時には笑ってしまったものだった。

 

 そしてマリー。シスターフッドに忘れられないトラウマを刻んだあの事件。ナギサ誘拐事件解決のために、補習授業部が奔走していたが――そこで援軍を頼まれたシスターフッドは主犯のミカ一人に叩きのめされた。

 その最後は補習授業部に倒され、しかもティーパーティーが内々に処理してミカの罪状はうやむやにされた。

 その関係でシスターフッドの敗北も誤魔化されたのだが……しかしティーパーティーに対する影響力は陰りが差した。

 

「んんー。マリーちゃんがここに居るってことは、マリーちゃんがアイドルになるのかな?」

「……えっ!? い、いえ。その……えと」

 

 あわあわとあっちこっちを見て助けを求めている。トリニティの秘密主義は筋金入りだ、内部の事情を明かすことそのものにアレルギーをもっている。

 

「教えていただいて構いませんよ、マリーさん。実は、とある目的のため……私はサクラコさんとアイドルをしようと思ったのです。彼女にはアドバイスをお願いしました」

 

 ふふふ、と鬱蒼と笑う。まるで世界征服を進める秘密組織のボスのようだ。さすがにそれで目くじらを立てるミカではないけれど。

 

「ふうん。アドバイス……ねえ。マリーちゃんはアイドル似合いそうだけどな。――で、ミネちゃんは大丈夫かな」

「大丈夫……とは? 私はサクラコさんと違って今風にも詳しいので問題はありません。確かに今の主流は、マリーさんのようなかわいらしい人になるでしょう。ですが、古き良き誇りある歌手路線もあります」

 

「騎士団誓約を歌詞に入れた人がなにを……いえ。確かに私たちには似合っていないかもしれませんが、所属する組織の地位向上を願う気持ちは同じです。ええ、私は普通にしているのに腹黒とか疑われて……!」

 

 サクラコがぼそりと不満を漏らす。まあ、こういう風にかろうじて聞こえるくらいの音量で恨めし気に言うのだから、後で襲撃されるどうこうを疑われるのだけど。

 

「ああ、そういうのが目的ってことは聞いてるよ。でもさ、事実じゃない?」

「事実……とは?」

 

 不満げな目線のサクラコに加えて、ミネまで挑戦的な視線で返す。ミカはいやあそっちの負けは決まってると思うけどなと、苦笑しながら指摘する。

 

「ミネちゃんは病床のセイアちゃんを背負ってティーパーティーの子を轢きながら市街を爆走してたし。あれ、まだ語り草だよ」

「――うぐっ!」

 

「サクラコちゃんだって、ユスティナ聖徒会の遺産を隠し持ってたじゃない。それでマダ……おっと、アリウスとは関係ございませんってのはちょっと厳しいよ。ま、あれらは勝手に発掘されたものだったんだろうけどさ」

「……あううっ!」

 

 二人が痛いところを突かれて崩れ落ちた。マリーは横であわあわと慌てているが何もできずに手をさまよわせている。

 

「でもさ、二人がその『誤解を解きたい』ってのは分かるし、同じ志を持つ子で組むのも手軽だよね。でも、二人は互いを信用できる? トリニティの”仲間”なら簡単、後ろ手に銃を隠し持って握手できればそれでいい。でも、それはアイドルをやる仲間とは違うよね」

「アイドルの仲間……ですか」

 

 ミネがじっとサクラコを見る。懐疑の視線だった。この誤解を撒きまくる人物を信用できるかと言うと……

 実はティーパーティーはトップの仲が改善した結果、目に見えてクリーンになっている。

 逆説的に今一番疑わしい組織はシスターフッドが浮上している。他から見れば救護騎士団もどっこいだが、自分の組織は疑わない。

 

「え――。はい、ミネさんのことは信じておりますよ。誰にも言えない秘密はあるものです」

「……ッ! あなたは、なんのためにアイドルを!?」

 

 不敵な笑いを浮かべたサクラコに、一瞬で顔色を変えたミネ。どんな秘密をもってアイドルに臨むのだと、睨みつける。

 

「ま、待ってください。サクラコさんは秘密を隠してる訳じゃないんです……!」

「ですが、明らかに何かを隠している言動でした……!」

 

「そんなわけで、背中を預けるにはまた格別の信頼が必要なんだよね。ね、ナギちゃん。こんな風に――ね!」

 

 身をひるがえし、ナギサと背中をあわせてハードボイルド風に指で銃を形作って見せるミカ。

 

「ミカさん……敵を倒すならおひとりで十分では? あなたの背中は荷が重いです。というか、ついていけません」

「……見捨てられたっ!?」

 

「いやいや、ナギちゃんは君なら一人で十分だと言っているのだよ。こと戦闘力に限ればね。君のように殴って解決の人ではないのだ」

「酷いなあ。私、そんなに暴力に訴えたことはないよ? ま、誰が相手でも負けないけどね」

 

 ふふん、と偉そうに胸を張るミカをスルーしてセイアはじっとマリーのことを見つめる。

 

「な……なんでしょう? その、セイア様にじっと見つめられるようなことはしていないと思うのですが」

「いやいや、謙遜することはない。謝肉祭は必ず成功させねばならないのだから――二人に失敗してもらっては私も困る。ステージ上を陰謀論の場にされることもそうだが、逆に滑稽な笑いものになられてもたまらないのだよ」

 

「そ、そうですね……? はい、生徒の皆さんに親しみをもってもらうことが目的ですが、失敗しては本末転倒ですものね」

「ああ。だが肝心な二人は見ての通りなのでね。――君には、期待しているよ」

 

 じいっと見つめるセイアに恐怖を感じる。というか、今さらながらにとんでもないことを引き受けてしまった気がする。

 だが、そもそも引き受けることを決めていただろうか……? などと考える暇もなく、ただ恐縮して頷くしかない。

 

「ひゃいっ!? あの、頑張ります!」

「あははっ。がんばってねー☆」

「何か協力できることがあれば言ってください。私たちも協賛の枠で出演しますので」

 

「ティーパーティーがアイドルをするのですか!?」

「それが聞いてよ、マリーちゃん。何が悲しくてか古臭い聖歌なんか歌わなきゃいけないんだよね。しかもアカペラで」

 

「お三方の聖歌ですか。きっと素晴らしいものなのでしょうね。楽しみにしています!」

「……聖歌大好きな子だったか。そりゃシスターフッドだもんね」

 

 ううん、とわざとらしく額に手を当てた。マリーは純粋に賞賛しているのでハテナ顔だ。そして、ティーパーティーの方も出演するのだから気合を入れないとと思いなおす。

 

「――分かりました。私が必ず二人のアイドルライブを成功させてみせます」

「二人、ねえ。うん、がんばって」

 

「? はい、がんばります!」

 

 実は、この三人が入る前は答えを一旦保留にしているのだが……いつのまにかやることになってしまったマリーだった。

 

 

 





アイドルマリーちゃん来てくれなかったので、天井でお招きしました。

20万PVの同人誌は誰がいい?

  • ナギサ様
  • セイアちゃん
  • ミカ(二冊目)
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