聖園ミカの弱くてニューゲーム   作:Red_stone

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サイドストーリー・ライブイベント:第6話 ミレニアム

 

 

 次の日、マリーはやはりいそいそとシャーレに向かう。今度はどこに行くのかと、デート気分で楽しみにしていた。

 そして、扉を開けると。

 

「こんにちは。マリー、今日もよろしく」

「はい、よろしくお願いします」

 

 ふわりと微笑むマリーを先生は手ごろな席に案内する。

 

「調子はどうかな? ミネとサクラコはちゃんと踊れるようになったかい?」

「はい、おかげで順調に進んでいます。あとは曲の問題を解決すれば」

 

「――すれば、もうおしまいなんですね……」

 

 少しうつむいてしまうマリー。

 

「どうかしたの?」

「い、いえ! では、アイドルソングについて――」

 

 気を取り直して言い始めたところにノックの音がする。そして、答えを聞かずに扉は開け放たれた。

 

「やあ、先生」

「……?」

 

 ちょうどマリーが扉に顔を向けている位置関係だ。親し気に挨拶する彼女を前にハテナを浮かべる。

 いや、単純に知らない顔で――そして、和服を着ていたからだ。そんな服はキヴォトスではほとんど見ない。気崩したものではなく、パシっと決めたものなど。

 

「先生、お客さんが」

「この声は……ウタハかな」

 

 振り向いて手を上げる。

 

「話は聞かせてもらったよ」

 

 彼女は不敵な笑みを浮かべ、手を振り返す。

 

「水臭いじゃないか、先生。そういうことなら私に相談してくれても良かったんじゃないかい? こんな面白そうな――いや、大事なイベントを前に」

 

 先生が突っ込みを入れようとした瞬間に声が飛ぶ。

 

「しかし、あなたは専門家ではないのでは? 『マイスター』の白石ウタハさん」

「おや、あなたは――」

 

「どうぞお見知りおきを。桐藤ナギサと申します」

 

 別の机からナギサが歩いてきて優雅に一礼した。これはこれは丁寧に、とウタハも返礼する。

 

「桐藤……トリニティのお偉いさんだったかな? 残念だがエンジニア部の最新装置はあまりお買い上げいただけていないようだが」

「トリニティは最新鋭のものとはあまり相性が良くありませんので。しかし、ミレニアム製の機械はよく購入させていただいております」

 

「そうですか。まあ、そちらは私とは関係のないことですね」

「……」

 

 沈黙が降りた。ナギサは目を丸くしているが――まあ、技術者というものはこういう人なのかと純粋に驚いているだけだ。

 

「はは。まあ、ナギサには馴染みのない人だよね」

「ええ、マリーさんはどうです?」

「私ですか? ええと……普段会うのはシスターと信者の方ばかりですので。最近は驚くことばかりです」

 

「ふむ、住む世界という奴か。だが、違う世界に住む者が交わることもある」

「その機会に謝肉祭を利用してくださるのであれば、実行委員としては喜ばしい限りです。もしかして、あなたもステージへ上がられますか? 確かにミレニアムからも参加いただいていますね。……そう、エンジニア部からも」

 

「もちろん、私もステ-ジには立たせてもらう。だだ、ヒビキ達とは音楽性の違いがあったのでね、歌うのは私一人でということになってしまう。だが、私のステージに立つ姿を見てくれればきっと気付いてくれるはず」

「ええと……何にでしょうか?」

 

「アイドルの、役割に……」

「――アイドルの、役割……?」

 

 マリーはごくりと唾を飲み込んだ。

 

「ああ、そうさ。アイドルの役割は人それぞれだからね。それぞれ気持ちを言葉に乗せて感情を伝えるんだ」

「……気持ちを。感情を」

 

 噛み締めるように呟くマリーに、ウタハは頷いて見せる。ナギサはちょっと言いたげな表情だが黙っているだけの分別はあった。

 

「私の場合、ついでに『雷ちゃんミラーボールVer』を披露したりもする。大事なのは――『心』」

「心……ええ、そうなのですね。いえ、きっとその答えはすでに私の中にあったもの。それをどう表現するか、伝えるかが『アイドル』……!」

 

 胸のあたりを握りしめて、陶酔した表情でウタハのことを見上げる。

 

「ま、そう言う訳でストックしていたアイドルソングを数曲進呈しよう」

「いいのですか?」

 

「今回の演目とは違うからね。しかし音楽性は違えど、同じアイドルとして応援するよ」

「え……同じ、とは」

 

 ここでマリーがきょとんとして聞き返した。

 

「ん? 君がアイドルライブに出るのはないのかい?」

「い、いえ。私は――」

 

「では、先生が?」

「いやいや、私も出ないよ」

 

「ならばナギサさんが?」

「出ますが、マリーさんとは別口です。演じるのは伝統なので、あなた達とはやはり違う演目ということになるでしょう」

 

「――ふっ。そうでもないさ。なぜなら、観客を笑顔にしようとする心は変わらないだろう?」

「それは……いえ、そうですね」

 

「では、カラオケに行こうか。そこで歌ってみて決めるといい。ああ、だがその前に――先生、少しだけいいかな?」

「うん、もちろん」

 

 先生が立ち上がって少し離れていった。残されたマリーはナギサと会話する。

 

「……ナギサ様も居たのですね。ティーパーティーの方々はよくシャーレに?」

「ええ、先生の仕事を手伝うために。――それと、やはり現在のキヴォトスはおかしい。『シスターフッド』も気付いているでしょう?」

 

「気付いているとは、何を?」

「『シャーレ』から秘密裏に発令された作戦の数々を」

 

 なんてことのないように、その極秘事項を口にする。

 かつてキヴォトスを滅ぼすところだった、”空から堕ちたタワー”。それに端を発する戦闘、それがまだ終わっていないと。

 

「――ッ!」

「だからこそ、謝肉祭は成功させなければならないのです。戦いばかりでは人は生きていけないのですから」

 

「そ、それは……」

「言いふらしてはいけませんよ、マリーさん。ですが、シスターフッドにもいずれ協力してもらうかもしれません」

 

「……ウタハさんは」

「むしろこの戦いはミレニアムが最前線に立っていると言えるでしょう。ウタハさんがどう関係しているかまでは分かりませんが、『マイスター』であるなら……」

 

「これから、どうなるのでしょう……」

「いいえ、楽しめばいいと思いますよ。私たちは絶望するためではなく、今を楽しむために生きるのですから」

 

「……ナギサ様」

「これはセイアちゃんが言っていたことですけどね。先生の話も終わりましたし、行きましょうか」

 

「ナギサ様もカラオケに!?」

 

 それを聞いて、今日で一番驚いた。

 

「――だめでしょうか?」

 

 悲しそうに首をかしげるナギサに、マリーは恐縮してしまう。そういうつもりではなかった。

 

「い、いえ。ですが、ナギサ様がカラオケに行くというのが意外で」

「何度か行ったことはありますよ。ええ、最近にも一度」

 

「……そ、そうなのですか。……あの、私は初めてなので教えてもらっても?」

「もちろんです。――私は、ミカちゃんとデュエットでアイドルソングを歌ったこともありますからね」

 

「い、今どきですね……!」

 

 その後、四人でカラオケに行く。

 

 

 

 そして、部屋に案内されて各自ドリンクバーから飲み物を取りに行く。

 

「知っていますか、マリーさん。このドリンクバーの飲み物にたくさんの種類があるのは、混ぜるためなのですよ」

「そ、そうなのですか!? ナギサ様は物知りですね」

 

 得意げな顔で解説するナギサ。そして後方で笑いをこらえている先生とウタハ。

 

「まずは氷を入れます。後で入れると飛び散ってしまいますからね」

「はいっ!」

 

 ナギサの後について真似するマリー。

 

「次はベースを決めます。私は紅茶にしておきましょう。コーラでも緑茶でもよいそうですが、ここは少な目に入れてください」

「ナギサ様は紅茶以外を、ええと……ベースにしたことがありますか?」

 

「いえ、私は紅茶だけですね」

「なら、私も。……おや、紅茶が1種類しかありません」

 

「そういうものらしいです。なんでも、ペットボトルのものだとか」

「そうですか。普通のやつですね」

 

「普通……? いえ、次に行きましょう。フレーバーを入れます。私はオレンジジュースにしますね。果物のジュースがおすすめですよ。調子に乗って紅茶にコーラを入れたミカちゃんが、コップを入れ替え損ねてひどい目にあっていました」

「あ、はい。コーラはダメなんですね。では、私はレモンジュースを」

 

「では、ウタハさんと先生もどうぞ」

 

 後ろの二人の様子に、マリーはもちろんナギサも気付かない。

 

「あ、ああ。では私はオレンジジュースとメロンジュースにしようか」

「二つともフレーバーを……! 上級者なのですね」

 

「ふふ、なにせ私は『マイスター』だからね。なんにしても極めないと気が済まない性分さ」

「ならば、私はコーラにオレンジジュース、さらにアイスコーヒーだ……!」

 

「――先生。さ、三種だなんて……。そ、それは……大丈夫なのですか?」

「問題ない、私は大人だからね」

 

 キリっと決めた先生。なお、後で先生だけが撃沈した。

 

 

 

20万PVの同人誌は誰がいい?

  • ナギサ様
  • セイアちゃん
  • ミカ(二冊目)
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