聖園ミカの弱くてニューゲーム   作:Red_stone

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サイドストーリー・ライブイベント:第7話 ロールケーキ展覧会準備

 

 

 マリーのアイドル探求が終わった次の日。ティーパーティーは三人でお茶会を開いていた。

 ナギサの淹れた紅茶と、お高い茶菓子で優雅にしゃべっている。

 

「マリーさんのことは何とかなりそうですね」

 

「ううん、それはどうかな? ミネちゃんとサクラコちゃんが喧嘩別れしちゃうかも」

「さて。しかし、シスターフッドにとってはイメージ向上は急務だろうから我慢するだろう。救護騎士団の方はアリウス残党には人気があって、必須ではないが」

 

「そちらもこちらの思惑通りですね。ミネさんが恐れられ、下の方を慕っている。セリナさんでしたか? 彼女の言うことならなんでも聞くとか」

「マダムの教育方針がそういうものだからね。偉い人の言うことを聞くように教えられた子供が、いきなり自由を与えられても困っちゃうよ」

「鷲見セリナは権力を志向する人間ではないと調べがついている。ミネを慕って救護騎士団に居るのだ、ひっくり返そうとは思わないだろう」

 

「――うん、とっても”いい”バランス。というか、残党が集まって何かをしようにもサオリちゃんとの接触は禁じてる。そっちでなにかしようとしてもヒヨリちゃんが教えてくれるしね」

「ああ、彼女をスパイにしたのだったね」

 

「スパイとは酷いなあ。私は今どきの女の子で、今どきのファッションに興味があるのさ。だから伝統が服を着た乾物みたいな二人と違って、『意気投合』できるんだよ」

「乾物とは聞き捨てならないね。私はセクシーで、流行の最先端を自称しているのだが」

「いえ、セイアちゃんは背中を開きすぎてむしろ未来に生きていませんか? 一方で歌詞の好みは古臭いですし。……演歌も好きでしたっけ?」

 

「別人と勘違いしていないかな? 私は歌わないよ。クラシックを聞くくらいだ。ああ、子供のころに習わされた聖歌を除いてね」

「それは趣味ではないでしょう。能力に値するものですね」

「でも、ナギちゃんのお茶会趣味はそこから派生したものだよね。マナーは習ったけど、私は自分でお茶を淹れる気にはならないもん」

 

「趣味というのも複雑なものだね。こうしてみると、私は無趣味の寂しい人間かと思えてくるよ」

「え、今さら?」

 

「一つあったかもしれない。君に自らの愚かしさを思い知らせてやるのは――そう、ずっと昔から楽しかった」

「ふふふ……受けて立つよ。今日こそセイアちゃんには負けないからね」

 

「趣味……趣味ですか」

 

 いつものごとく挑発し合うミカとセイアを流してナギサは物思いに沈む。

 

「あれ、どうしたのナギちゃん? なにか悩み事かな」

「なにかあるなら相談するといい。笑うことはしないさ、少なくとも私は」

 

「いやあ、セイアちゃんは笑わなくともすごい皮肉言いそう……」

「君は品性なく笑い転げそうだね?」

 

「――二人は、私がロールケーキが好きなことは知っていますね?」

「ああ、目の前の前にもあるね。それが?」

「自分で作ったりもするもんねえ」

 

「だから、私の好きなもので展覧会を開きたいと……そう思ったのです」

「ケーキではなくロールケーキで?」

「絵画ってこと? え、ロールケーキって食べるものじゃん」

 

 笑いものにしないとか言ったくせに、速攻でけなす二人だった。まあ、ナギサもそういう奴だと分かっているので今さらショックを受けたりしない。

 

「ロールケーキ、です。同志も居るのですよ? 私のと、それとその方々のコレクションを合わせれば展覧会を開くには十分足ります」

「なるほど。さすがに開くまでの目論見は立っているのだね。まあそこはさすがに我々でも助けられないところだったが」

「ま、やってみたらいいじゃんね。別にナギちゃんなら閑古鳥が鳴いても破産するでもなし。思い出にはなるんじゃない?」

 

「――それが問題なのです。だって」

 

 ナギサが深刻そうに言葉を貯める。

 

「だって?」

「だってだって?」

 

 二人はすかさず茶化した。

 

「……お客様が来なかったら、寂しいではありませんか」

「ふっ」

「あははっ」

 

「笑いましたね!」

「いや、君にもかわいいところがあるものだと思ってね」

「うんうん☆ かわいいね、ナギちゃん。安心して、私たちが行ってあげるから少なくとも客が0人にはならないよ」

 

「……反対しないんですか?」

「その理由はないね。聞く限りでは大きな懸念点もないし」

「私はナギちゃんの親友だしね。応援するのに理由は要らないよ、セイアちゃんとは違ってね☆」

 

「お二人に素直に応援されるとは思いませんでした」

「反対してほしいのかい? では、防犯計画を見せてもらおうか。ダメだししてあげよう」

「ナギちゃんのことだから絵画オンリーでしょ。それはちょっとつまらなそうな……」

 

「――まったく。その方があなた達らしいです。待っていてください。今計画書を持ってきます」

 

 そして、持ってきた計画書を三人で突き合わせる。

 

「ふむ。そう簡単には持ち出せない万全の構えだ」

「でも撃たれるのを想定してないね」

 

「……は? 撃たれる、とは」

「キヴォトスだよ。撃って割ろうとする人だって居るよ」

「警備に捕まる、とは言ってもその前に絵画を壊されてしまうのはよくあることだ」

 

「なるほど。もう少し頑丈なケースを発注しておきましょう」

「それで――」

「――」

 

 10分ほど話し合う。それだけで十分だ、細かいことはオーナー側ではなく依頼先のプロにやってもらうのが一番だ。その人たちが口出ししづらいことは決めておく必要があるけど、ここにいるのはそれこそその道のプロである。

 

「……で、思ったんだけどさ――絵画だけってつまらなくない?」

「やはりデザートだからね。実際に口にしたくなるものだ。絵画そのものではなくともね。……ナギちゃん、馴染みの所から来てもらったらどうだね」

「なるほど。そうですね、今回の謝肉祭で出張店を出さないところに掛け合ってみましょうか」

 

「あ、それならお安いところも混ぜた方がいいよ。ごく一部の人しか楽しめないってなると、やっぱり銃撃戦になっちゃうしさ」

「……はあ。ですが、安いところとなると心当たりが」

 

「じゃ、私の方で心当たりに連絡しといてあげる。”ナギちゃんの”展覧会に出品するなら断らないよ、肩書とか大好きな人達だからね」

「ありがとうございます。場所は取っておくのでお任せしますね」

 

「うん。見ててお腹が空くって問題は解決だね。……でも、ううん」

「どうしましたか?」

 

「やっぱり絵を見るだけは退屈だなって。あ、そうだ――ちょっと待ってて」

「ミカちゃん?」

 

 おもむろに電話をかけ始めた。

 

「あ、元理事? ちょっと話があるんだけど」

「ん? 謝肉祭なら出張しない? そりゃ保険屋が店を出さないでしょ。ちょっと食品サプルで技術をもてあましてる連中知らない? カイザーならそこもカバーしてるでしょ」

「……そうそう、ティーパーティーと繋がりが作れるって恩を売りつけてあげるといいよ。良い感じの創作ロールケーキをお願いね」

「ふんふん。――そりゃアナタに美的センスなんか期待してるわけないでしょ。だいじょーぶだいじょーぶ、職人なんて連中は好きなものを作らせてあげると喜んで変態的な作品を仕上げてくるもんだって」

「うん、予算? あははははっ。そんなの心配いらないよ、ナギちゃんの展覧会なんだよ。落ちぶれた保険屋クンとは、訳が違うのだよ」

「……ああ、うるさいうるさい。頼んだからね、じゃ☆」

 

 電話を切る。

 

「良さげな食品サンプルを頼んどいたから、いい感じに配置しといて。やっぱ色々種類があった方が皆が楽しめるでしょ」

「――ミカちゃん。ありがとうございます」

「エンタメについては君に軍配を上げざるを得ないようだ。絵画の方も枚数は確保しているという話だし、残りは宣伝くらいのものか」

 

「はい。少しSNSで上げたりはしましたが……」

「ふうん。でも、こういうのって事前に期待度をあげちゃうと蓋を開けたらがっかりって相場が決まってるものね。客寄せの痛し痒しではあるけど」

「それなら、私にいい考えがある。事前ではなく、謝肉祭の最中に興味を持ってもらって足を伸ばしてもらう方法があるのだよ。それならば期待外れの心配はないだろう」

 

「そんな方法があるのですか、セイアちゃん? 集客は中々に難しいと思っていましたが。いえ、ロールケーキでなくても」

「ミーハーな客を集めて、ちょっと見てもらって楽しかったで終わる――そんなことで良ければね」

 

「いえ、そう思ってもらえたなら上出来です。どうするのでしょう?」

「先生に来てもらって、写真を撮らせてもらえばいい。それをSNSで上げれば客は寄ってくる。そうだね、君が先生に向かって説明しているシーンならちょうどいいのではないかな」

 

「なるほど。先生も見た、というのは良い宣伝ですね。……先生も、展覧会には来てくださるそうですし」

「あ、ナギちゃん私たちの前に先生に相談したんだ」

 

「あうっ! い、いえ――他意はないのですよ。タイミングとか、そういう……」

「まったく、君は先生とどんな話をしているのだい?」

 

「いえ、セイアちゃんだって先生に会いにシャーレに行っていたではないですか! 私たちに隠してることがありますよね?」

「……そんなことはないが」

「セイアちゃん、目を逸らした!」

 

「では、ミカちゃんはどうなのだね?」

「――私にやましいところなんて、ないよ?」

 

 目をそらしたセイアだが、反撃された途端にミカも目をそらす。

 

「…………やめましょう、この話は。不毛です」

「そうだね」

「うん」

 

 一息ついて、話も一段落した。ミカが椅子に座りなおして、ロールケーキの一かけらを口の中に放り込んだ。

 

「そういえば、マリーちゃんはどうしてるのかな?」

「マリーさんですか。アイドルの件は終わったので、普通にシスターフッドの仕事をしているのではないですか?」

 

「それでいいのかな?」

「……それは、マリーさんもアイドルに、と? ですが、本人が望んでないと思いますよ」

 

「本当にそうかな? 自分の気持ちを押し殺してたように見えたんだよね」

「なら、話をしてくるといい」

 

「おや、セイアちゃん。それはいつもの勘?」

「そうだよ。彼女は今公園に居る。行ってくると良い」

 

「……ん。行ってくるね」

 

 後ろ手に手を振って走って行った。

 

 

 

「――マリーちゃん!」

「え、ミカ様!?」

 

 ブランコに座っていたマリーは驚いて立ち上がる。

 

「こんなところに居たんだ」

「え、探していたんですか? 手間をかけてしまいましたね。その、シスターフッドでも他の仕事がなかったので……」

 

「いや、セイアちゃんに聞いたから特に探す必要なかったけど」

「え、そうなんですか。セイア様は一体何者……?」

 

「まあいいじゃん。でも、なんでマリーちゃんはこんなところに居るの?」

「え……と、それは仕事がなかったので……と」

 

「そんなことを聞いてるんじゃないよ! 一緒に回ったでしょ? マリーちゃんがアイドルを追い求めていた時の気持ちを忘れたの!?」

「それは……それは、もういいんです。仕事でしたので……」

 

「違うでしょ! マリーちゃんはアイドルになりたかったんじゃないの!?」

「そんなことは……ミカ様に何が分かるんですか! そもそもミカ様と一緒に居たのもアビドスに行った時だけじゃないですか!?」

 

「時間の短さなんて関係ない。マリーちゃんは本気だった! 本当に――それでいいの!? 諦めるの!?」

「諦める……なんて。そんなことは。そんなことは言われたくないです! 私は、私はアイドルなんて。サクラコ様もミネ様も、きらきらしていて。あの場所には混ざれないんですよ!」

 

「関係ない! なりたいんでしょ、アイドルに! その姿を見せてあげたい人が居るんでしょ!」

「見せて――あげたい人……! それは、そんなの。……分からないじゃないですか」

 

 顔を伏せたマリーに、後ろから声がかかる。

 

「少なくとも、私は見たいと思っているよ」

「先……生……!」

 

「素直になって欲しいな。好きなことをできるのは、生徒の特権なんだから」

「先生、ミカ様。……私、私は――アイドルになりたいッ!」

 

「よく言ったね。これを」

「これは……服? アイドルの衣装……!」

 

「ミネとサクラコに、言ってやりなさい。アイドルとして、ステージに立ちたいと」

「はいっ!」

 

 人目に付かないところで着替えて、ミネとサクラコが練習している部屋に入って行く。

 

「……リーダーが必要です」

「指導者ということですか」

 

 怪しげな会話をする両者の元へ、宣言する。

 

「サクラコ様、ミネ様。私はアイドルになりたいです! 私に――アイドルをさせてください!」

 

 二人は乱入者に目を丸くした後、深く頷いた。

 

「ありがとうございます。あなたのやりたいことを素直に教えてくれて嬉しく思います。……あと、どうも二人だけではうまく行かないようなのでとっても助かります……!」

「なるほど、その心意気は素晴らしい。申し訳ありません、私はあなたのことを誤解していた。ええ、私は恥ずかしい。真面目に仕事をするその裏にこれほどの熱意があったと見抜けないなんて」

 

 歓迎されているようだと、マリーはほっと息をする。

 

「……はい。良かったです」

「それとマリーさん、その衣装は……?」

 

「あ、これは先生が持ってきてくれました」

「なるほど、先生が……」

 

「サクラコさん。先ほどの議論の答えはここにあるようです。あなたにもご賛同いただけるかと」

「……先ほどの。――ええ、もちろんです。マリーさんなら問題ありません」

 

「では、改めて。マリーさん。私たちの――」

 

 すぅ、と息を吸って二人でタイミングを合わせる。

 

「リーダーになってください」

「指導者になってください」

 

 やっぱり合わない二人だった。

 

「……はいぃ!?」

 

 そして驚くマリー。けれど、すぐに覚悟を決める。

 

「こんな私でよければ、喜んで」

 

 素敵な笑顔を見せるのだった。

 

 

「うんうん、良かったねえ」

「うん。マリーの衣装も似合ってた」

 

 扉の横には保護者面する二人の不審者が居た。

 

 

 

20万PVの同人誌は誰がいい?

  • ナギサ様
  • セイアちゃん
  • ミカ(二冊目)
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