次の日、正義実現委員会と風紀委員会の戦車隊がアビドスに集合する。ゲヘナとトリニティで綺麗に2分して整列している壮観な光景がここにある。
総兵力が1000に達しようとかと言う大軍勢。その片翼をチナツが、そしてもう片翼をハスミが従えている。ビシリと乱れなく並んで微動だにしない軍団は、敵として見るなら寒気を覚える光景だろう。
「皆さん、本日はよくぞお集まりいただきました」
即席の壇上からナギサが宣言する。その壇上には右にナギサ、そして左にヒナが立っている。
ナギサの後ろにはミカとサオリ、そしてセイアが立つ。ヒナの後ろにはイオリとチナツが立っている。
先生は貴賓席として設けられたパイプ椅子に座って、微笑ましそうに皆の様子を眺めている。
「我々は長いこと争ってきました。ですが、今日この日がその歴史を塗り替える日となります。共に手を取り合い、未来への道を切り開きましょう」
「長年に渡る抗争……無限に続く諍いの連鎖を断ち切る機会を得られたことを嬉しく思います。憎しみを大事に握りしめるのではなく、手を開いて歩み寄れるように。たとえ小さな一歩だとしても、分かり合うため互いに一歩ずつ踏みよれば見えてくる景色があります」
「かつてのサンクトゥス、世界の危機はまだ終わってはいないのでしょう。かの敵が利用した人類の敵は、しかし未だ健在なのですから。ですが、我々が脅威に負けることはないと信じています。我々は生きる、負けたりはしない」
「――手を取り合い、助け合えば我々の手で必ずや勝利を掴むことができるのです! 我々は長年戦ってきたからこそ、互いの力は知っております。我々が力を合わせれば、倒せない敵など世界のどこにも存在しない!」
ボロの上で、しかし毅然とナギサは言い放つ。それすらもすべて計算づくの演出だ。政治において、ナギサの右に出るものなどいない。
ナギサが一歩下がると、ヒナが代わりに前に出る。
「聞いて。敵はサンクトゥスが利用した敵の一体……『ビナー』。ヘイローを持つ機械で、人類に敵意を持っている。滅ぼさなければならない敵よ」
それだけ言って下がってしまう。口下手なのだ、それにヒナは強すぎて作戦行動を取ることに慣れていない。
仕方ないと、ミカがナギサからマイクを奪う。
「さて、注意事項を伝達するよ。敵の姿は各自のスマホで確認すること。確認された攻撃手段は口のビームとミサイル、ただし他の攻撃手段があるかもしれないことを忘れないこと。直接相手をするのは私たちだけど、万が一直接対峙することになったらその巨体に気を付けてね」
事前に渡された資料に記載されている情報だが、確認するのは重要なことだ。このような軍事作戦では一つの失敗が作戦そのものを揺るがしかねない。
ナギサがミカからマイクを受け取り、口を開く。
「では、先生。お言葉を頂戴したく」
無数の生徒の目線が一斉に先生を向く。参ったな、と頬をかいて立ち上がる。
「……まあ、皆、気を付けてね。任務の達成よりも、怪我無く終わる方が重要だからね」
わずかに緊張が抜けた。
「もう、先生ったら。けれど、先生らしい一言ですね。作戦を伝えます! 作戦名『ウィリアム・テルの一矢』。敵の位置情報を探知し先遣隊を派遣、動きを止めた後に一斉砲撃を実施し敵を撃滅します!」
「あ、それと――敵が砲撃部隊を襲ったら無理しないで逃げること。この指揮所は問題ないよ。なぜなら、ここの防衛を担当するのはツルギちゃんだからね」
「キヒヒっ!」
先生の後ろで凶悪な笑みを浮かべツルギ。
「あはは。ま、そんな事態になったらおじさんも働くかなー」
先生から少し離れるようにしてだらしなく座っているホシノが手を振った。キヴォトスを何度も危機が襲っている今、ホシノの強さは知る者には伝わっている。実際、先生にとってアビドスは動かしやすい戦力でもある。
「皆さんはそのために集められた戦力です。普段の練習の成果を十二分に発揮していただけると信じています」
言葉を切ると、眼前に隊列を組んだ軍が沸き立った。タイミングを測り、その歓声を手で止める。
「先遣隊のメンバーを発表します。トリニティ、ティーパーティー……聖園ミカ」
「ま、任せておいてよ☆」
鷹揚に手を振った。
「ゲヘナ、風紀委員会委員長……空崎ヒナ」
「……仕事は果たすわ」
一言で終わる。サービス精神はないようだ。
「トリニティ、アリウススクワッド……錠前サオリ」
「必ず任務を完遂する。それが今の私の生きる意味だ」
悲壮ささえ覗く表情で頷いた。本人にとってはアリウス分校から地続きになっている現実だ。衣食住こそめざましい改善があったが、仲間を守るためには任務を成功させなければならないことは変わらない。
たとえ、どれほど過酷な任務であろうとも。
「他三名」
「「「「――」」」」
他の3名も個性を出すことなく頷いた。
サオリの覚悟はわかっている。そして、任務を完了すれば生きていけるというのはやはりアリウスに居た時と変わらないのだ。
失敗してもナギサならば最悪にはしないと、信用するにもスクワッド側の心の準備が要る。
「ゲヘナ、風紀委員会……銀鏡イオリ」
「任せろ。活躍して見せるさ」
少し気おくれしていたのもなんのその。本番となれば間違わない。
自信がある訳ではなかった、戦闘力は委員長とは比べ物にならない足手まとい。それが事実だと飲み込んだうえで、なにくそと前を向く。
委員長が居なければ何もできないなどと言わせないために、戦うのだ。
「それと……先生にはこの指揮所から直接指揮を行っていただきます」
「人に危害をくわえる悪いやつだ。ぶっ飛ばしてしまおう。……本当は、私一人でなんとかできれば良かったのだけどね」
先生は苦笑する。その言葉はむしろ戦意を高揚させる。
「ご安心ください、先生。歴史を紐解いてもここまでの戦力が一つの作戦に投入されることはなかったでしょう。このトリニティ・ゲヘナ連合軍が先生の悩みを快刀乱麻に切り捨てて見せますから」
ナギサが感じ入ったように静かに呟く。声のない熱狂が刻一刻と高まっていく。これから参加する作戦は、それだけの意義と規模がある。そして正当性までもシャーレが保証してくれている。
迷う理由はどこにもない。人類の敵と戦う『正義の戦争』がここにある。
「以上7名、先遣隊として『ビナー』と正面切って戦ってもらいます!」
壇上の7名が涼しい顔をしてその静かな熱狂を受け止める。――歓声が爆発した。ナギサはその中で叫ぶ。
「ここに指揮所を築きます。私桐藤ナギサ 、そして百合園セイア。ゲヘナからは火宮チナツ。そして先生が総指揮として皆さんをサポートします! ご安心して戦闘にご参加ください」
さらに一際大きい声で叫ぶ。
「作戦開始! 総員、配置につきなさい!」
秩序ある怒号が帰ってくる。
「「「「「サー!」」」」」
20万PVの同人誌は誰がいい?
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ナギサ様
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セイアちゃん
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ミカ(二冊目)