トリニティとゲヘナ連合軍が結成され、アビドス自治区に展開した。そして、先遣隊の7名が歩を進めていく。
狙いは人類の敵、『ビナー』。砂漠を根城にして足を踏み入れた者を気まぐれに撃退している。倒せば人類にとっての益となることは間違いがない。
「んー。ねえ、ヒヨリちゃん。ゲヘナのファッションセンスってどう思った?」
「え、えへへ……そーですねえ。指揮所に残った方、なんでしたっけ。天雨さん……? すごい恰好をしていらっしゃいましたねえ。恐ろしいヒナさんはいつもの格好で、でも近くで見ればかわいらしいものでしたが――。あの……風紀委員会、でしたよね?」
「ああ、横乳? しかもベルまで付けてるなんて、さすがの私もあの恰好をする度胸には敵わないかな。いや、サクラコちゃんのハイレグならワンチャン……?」
「うう――最先端のファッションセンスというやつですかねえ。ちょっと私には真似できません……私のなんかがこぼれてもお目汚しでしょうし」
「何言ってるのさ。ヒヨリちゃんはすごいおもちを持ってるんだから、卑下する必要なんかないよ。ま、私としては全体のコーデで見るべきだと思うけどね☆ うん、あれはちょっと狙いすぎで……」
「おもち……? ちょっとおなかが空いてきました」
けらけらと笑いながら仲良さげに歩くヒヨリとミカに、たまらずといった具合でイオリから突っ込みが入る。
「待て! 確かにアコちゃんの恰好はアレだが――ティーパーティーにだって、とんでもないのが居ただろう!」
「……?」
ミカが首を傾げる。
「百合園セイアだって似たような恰好じゃないか! ベルがない分、背中なんてまる見えだったぞ!」
「えー。ほら、だってセイアちゃんは……ひんにゅ……いや、子供だからいやらしくないじゃん?」
「その言い分はどうなんだ……?」
イオリがジト目で見つめる。そして、サオリから冷酷なまで冷たい声でツッコミが入る。
「本人に聞かれたらまた投げられるぞ」
「いや、ほらそこは黙ってくれればいいからさ」
つつ、と目を逸らすミカを全員があきれた目で見た。
『こうして通信がつながっているから、黙っているどうこうの問題ではないのだがね』
最後に、通信機から絶対零度の冷たい声が響いた。
『ううん、仲が良いのはいいことだけど。ちょっと緊急の事態があるんだ』
「おや、先生。何かあった?」
『それがね、対象だけどそっちに向かってる』
「「「――ッ!」」」
全員が息を呑んだ。
『カイザーから得たデータにはない行動だね。けれど、カイザーの戦力程度では脅威とみなされなかった可能性がある。君たちを敵と判定して排除しに来たのかもしれない』
「私たちの後ろには指揮所があるけど、それは?」
『まだ判断材料が足りないね。ただ――呑気におしゃべりしていられる事態でもなくなってしまった』
「了解。みんな、いつミサイルだのレーザーだのが飛んでくるか分からない。気を引き締めて」
「了解」「「「了解」」」
アリウスの面々は素直に指示を受け入れる。
「……」
ヒナはただ軽く頷いて返す。
「当然だ。そもそも気を抜いてなんかない」
イオリは、虚勢にも近い気を張っている。
「さて――じゃ、ナギちゃん。どうする? これからの策は?」
『前進です。そのまま進んでビナーと会敵してください。敵が我々の排除に動くというなら好都合……真正面から叩き潰します』
『はい。あんなロボットごときにヒナ委員長が負けるはずないのですから』
アコも口を挟む。まあ、そこは対抗意識と言う奴だ。
「なら――走ろうか。ここからは無駄口を叩いてる余裕はなさそうだねえ」
「無駄口を利いているのはお前だけだ、聖園ミカ」
「そうね。ミカはおしゃべりだものね」
「サオリちゃん。ヒナちゃんまで。……ああ、もう。行くよ!」
走り出す。
「お前たちは後からついてこい」
サオリもすぐに横に並び、スクワッドは手慣れた様子で後ろにつく。
「……」
ヒナも無言でミカの横に並ぶ。
「――くそっ。ついていってやるさ!」
イオリも走る。遅れないように、必死に。
そして、何分もしないうちにとてつもない距離を踏破して『ビナー』と会敵する。それは蛇型の機械だった。
白い装甲に黒色の蛇腹、四つ目の凶悪な顔。長大な体には無数の兵装が積まれているのだろう。そして――頭上にはヘイローが浮かんでいる。
一目見ただけで分かる。それは尋常ならざる脅威であると。……人間の敵であると。
「あは! でかいねえ! どれだけ硬いのか――な!」
まずミカがあいさつ代わりの銃弾を放った。
「――!」
敵を認識したビナーが咆哮を上げ、放たれた銃弾はあっけなく装甲に弾き返された。
「うわ……傷一つついてないよ」
「少しどいていて、ミカちゃん。こいつの出番…」
ヒナが愛銃デストロイヤーを抜く。紫色に彩られるいくつもの敵を屠ってきたマシンガン。その無慈悲な破壊力が開陳される。
「――!」
その破壊力すら意に介さず敵は口を開く。その口に光が収束していく。
『高エネルギー反応を確認! とてつもない出力です!』
『みんな、右に避けて!』
アコと先生の警告にしたがって全員が飛ぶ。……が。
「そんな。ヒナ委員長の攻撃ですら通じない……?」
イオリが呆然と黒い光を見つめている。逃げ遅れた。
「……イオリ!?」
ヒナが叫び――
「危ないっ!」
ヒヨリがイオリに飛びついて危険域から撤退する。
「えっ!? うわ――」
呆然とした眼前に極太のビームが通り過ぎて行った。とてつもない威力、ただ一発喰らっただけで戦闘不能になりそうなほどに凶悪な熱量が足元の砂を焼いた。
「前線は強い人に任せましょう。私たちは弱いなりにできることをやるんです」
「……弱いなりに――」
ヒヨリはイオリを下ろして他のメンバーと合流する。
「ヒヨリちゃん、そっちは大丈夫だった!?」
「はい、イオリさんは無事ですよ。ミカさん!」
「そう。なら――もう少し本気を出そうかな!」
ほっと一息ついたミカはさらに奇跡を籠めて銃弾を叩き込んでいく――が、敵の強靭なる装甲の前にすべてが弾き返される。
「あは。かったいねえ。なら、近くで当てなきゃ!」
それがどうしたとばかりにビナーの長大な体に飛び乗り、その体の上を駆けながら銃弾を叩き込んでいく。
揺れる体、装甲の隙間をアスレチックのように跳んでいく。もっともわずかでもタイミングをミスるか足を踏み外せばゲームオーバー、そんな状況でそれを選ぶのは並大抵の度胸ではない。
「これが……『デカグラマトン』。やはりサンクトゥムが生み出した複製とは違う……!」
ヒナですらもその装甲には歯が立たない。
だが、こちらはその羽を用いて飛ぶ。縦横無尽にビナーの周りを飛びながら銃弾を叩き込んでいく。
飛べるからこそのアドバンテージ。騒動の種に事欠かないゲヘナでテロリストどもを押さえつけている実力が遺憾なく発揮される。
「先生、指揮をお願いします!」
『うん、ヒヨリ。まずは装甲の隙間から狙っていこうか。――サオリ!』
「承知している。聖園ミカ、空崎ヒナ、好きに動け。後ろのフォローは私がやる……!」
そして、サオリはビナーの真ん前に仁王立ちする。
「私でも役に立てます……!」
ヒヨリは獲物の対物ライフルで小気味よい調子で装甲の隙間に弾丸を叩き込んでいく。のだが、やはり意味がない。
白色の装甲が硬ければ黒いところを狙えばよいと、そんな簡単な話であるはずがなかった。
「――!」
それどころか、ビナーはビームを撃ち放つ。
「ぐぅっ…!」
サオリが受け止め、苦悶を漏らす。
「ちっ。ほら、こっちだよ!」
「こちらも忘れてもらっては困る」
ミカやヒナが攻撃するとそちらにターゲットが移り、ビームが四方八方を薙ぎ払う。ビナー自身の体にさえ当たるが。
「うっわ、ダメージ0じゃん。ズルくない!?」
「自分の攻撃でも無傷……! なんて防御力」
『イオリ、口の中を攻撃!』
「あ、ああ――分かった!」
なにくそと、イオリが言われた通りに攻撃するがやはり意味がない。
「桐藤ナギサ! 戦車隊は!?」
『もう少しで攻撃準備が整います。ですが、現状のまま攻撃を開始しても……』
「弱点を見つけろと言うことか。ヒヨリ!」
「ダメです! 地上に出てる黒いところは全部撃ってみましたが弾かれました!」
「……姫!」
「見つからなかったよ、サっちゃん。純粋に、すべてが硬すぎる……! 可動部でも攻撃が通らない」
攻撃が通らなくても場所を変えて探っていた。しかし結論は無慈悲――分かりやすい弱点などはない。
「チっ。あの二人も――有効な攻撃手段は見つけていないだろう。先生……策は?」
『その前に。サオリ、生徒にダメージを与える際に有効な箇所はあるかな?』
「一言で言えば、そんなものはない。特殊な状況でもなければ狙いを付けることに意味はない。……そういうことか」
『なら、地道に攻撃を続ける以外にないね』
その声は全員に通じている。もちろん、ミカとヒナにも。
「あはっ。まあ――私は一晩戦いつづけた経験があるからねえ。やれるさ。ヒナちゃんはどうかな!?」
「それはすごいわね。私は……そうね。テロリストグループを5つぐらい潰した時は5時間ぐらい連続で戦っていたかしら」
だからこそ、諦めずに攻撃を続ける。実際のところ、キヴォトスでの高レベルな戦いにおいてはゲームのような局面を見せる。
HPが1になっても万全なままに戦い続けられる……のは言いすぎだとしても、負傷を与えるには攻撃を積み重ねる必要がある。まったく利かない、のはままあることだ。
「さあ、来い。Vanitas vanitatum et omnia vanitas.――貴様も、すべては虚しいものと知れ……!」
サオリもまた、ビナーとの戦闘に再開する。だが――
「――!」
ビナーが恐ろしい咆哮を上げる。だが、今までと行動パターンが違う。ビームを撃つのではなく、体を持ち上げた。
『ビナーの身体各部に熱源反応! 新しい攻撃パターンが来ます!』
『避けられん。迎撃しろ!』
ナギサの悲鳴。そして、セイアの勘。始めに気付いたのは、空を飛ぶヒナだ。
「ミサイルよ! 撃ち落として!」
ヒナが真っ先に銃弾を浴びせ誘爆を誘う。さらにミカも二つか三つのミサイルを発射前に撃ち落とす。
だが、撃ち漏らしたもの――数発のミサイルがサポートに回った後ろの組に襲い掛かる。
「ぐぅっ!」
「きゃあっ!」
サオリが盾になってもかばいきれない。悲鳴を上げて爆炎に呑まれた。
「みんなっ!」
「――ミカちゃん、だめ! 早く敵を倒さないと……!」
「そうだ。敵を倒せ、聖園ミカ……! 任務を果たす以外に、生き伸びる道などないのだから。et omnia vanitas!」
血を流しながらも目を見開き、全力での一撃を叩き込むサオリ。
「倒れなさい……!」
さらにヒナのマシンガンから放たれる集中砲火がまるでレーザーのようにビナーの装甲を叩く。
「そうだね。……全ては、コイツを倒せば済む話! 祈ってあげる。機械にも、導く
そしてミカが、必殺の一撃を叩き込む。着弾地点から宇宙のようなエネルギーが生み出されて再収束、弾けた。
「――――ッ!」
悲鳴のような声が上がり、ついにビナーが頭を垂れた。ダウンを取った。
「先生、今だ! 集中攻撃を叩き込め!」
『イチカ、チナツ。頼んだ!』
先生の号令が耳を叩いた。その直後、無数の砲火がビナーに突き刺さる。満を持した戦車隊の一斉砲撃が開始されたのだ。
一つの戦場を終わらせるに足る火力が、ただ一体の敵に向かって集中する。トリニティとゲヘナが手を組むという前代未聞の事態、消費される砲弾の量も空前絶後。
ミカとヒナはすばやく離れ、他と一旦合流する。
「とんでもない火力。これなら」
「はい。これほどの砲火にさらされて生きていられるはずがないでしょう。痛いですよね? 苦しいですよね?」
「機械が痛いだとか苦しいとか思うか?」
「それはわかりません。でも、意思をもっているなら怖いとかも思ったりするんじゃないですかね」
「だから私たちを潰しに来た。敵を倒すための戦いに臨んだ。……詩人だね、ヒヨリちゃん」
「見ろ、聖園ミカ。白い装甲版が砕けて落ちた。このまま攻撃を続ければ――」
「うん。ナギちゃん、これで作戦は成功かな。ここで敵を逃がすような間抜けはないしね」
「油断してはだめ。まだ、終わってない」
ヒナが諫めた。その瞬間、ビナーの目に再び光が宿る。
「――!」
咆哮した。
「あはっ! まだやる気?」
その瞬間、即座に全員が銃を向ける。おしゃべりはしても油断はない。もし動けば攻撃する、それができるだけの精鋭を集めている。
「けれど、ね! 別にこっちは油断してる訳じゃ……なっ!?」
だが、予想外の攻撃が来た。敵が尾を動かして砂嵐を巻き起こした。風がどうのの規模ではない、明らかに奇跡による特異攻撃。
ヒナとてあんな小さな羽で飛べるわけがない。物理法則を超えた挙動は、ここに居る全員が使っている。敵も超常現象を扱えたとして不思議はない。
だが、砂嵐など予想できるわけがない。そんな攻撃は使っていなかった。ぶつけられる砂と塞がれる視界により照準がブレた。
ゆえに最初の何発かが装甲を叩いた以外は見当違いの方向へ飛んでいく。
『――隠れて!』
先生が悲鳴のような声で指示を下す。皆が弾かれたように伏せて身を隠した。襲ってくる砂嵐のせいでまともに立っていられないのだ。
『口に超高エネルギー反応を確認! 先ほどとは桁違いの威力が来ます! 注意して!』
「違う。これは違うよ、ナギちゃん! 狙いは私たちじゃない!」
『ビナーが頭を上げた? まさか、指揮所の方角を見ているとでも言うのですか!』
『そうだ。狙いは我々の急所、頭に相当するここを潰せば後は烏合の衆と言うわけだな……! 戦術を解するか、機械め!』
ナギサの悲鳴。そして、セイアの恨めし気な呟き。
「先生! 先生――逃げて!」
ミカの悲鳴がこだました。
20万PVの同人誌は誰がいい?
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ナギサ様
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セイアちゃん
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ミカ(二冊目)