~地球・駒王学園~
時刻は夜。
ここは旧校舎。
オカルト研究部が拠点を置いている場所でもあり、悪魔稼業もここで召喚を待機していることが多い。
そこには今、珍客が数名ほどいた。
「…イッセー。これはどういうことなのか説明してくれないかしら?」
「え~と…何から話していいのやら…」
リアスの言葉にイッセーはたじたじであった。
忍はまだ悪魔の事を知った上で黙ってくれているので問題ない。
それは心配で連絡を受けたら即行で学園までやってきた智鶴に関しても同じだろう。
しかし、問題なのは…
「………」
管理局所属の騎士、流星 朝陽と…
「まさか近隣の学園にこのような場所があるとは…」
特異災害対策機動部二課司令、風鳴 弦十郎がいた。
「実は…」
イッセーは一連の流れをリアスに話した。
忍の証言もあるので信憑性は増している。
「なるほど。そういうことだったのね。だからって部室にまで連れてこなくても…」
イッセーと忍の話を理解したリアスは副部長の姫島 朱乃にお茶を出すように指示した後に部長席に座る。
「彼には悪いとは思ったが、如何せんこちらも情報収集をしたいのでね。悪魔のこと、時空管理局の事を双方から聞きたいと思っている」
弦十郎はそう言う。
「なら、こっちは逆にノイズの事を聞きたいわね。ギブアンドテイク。そっちがこっちを知りたいならそれくらいの情報交換は当然でしょ?」
そこに口を挟んだのは窓際にいた朝陽だった。
「あら、あなたはなかなか悪魔向きの性格みたいね。どう? 私の眷属悪魔にならない?」
リアスが勧誘をするが…
「結構よ。あたしは今の生活に満足してるもの。悪魔だか何だか知らないけど…そんなのに興味はないわ」
朝陽はそれを突っぱねた。
「残念ね。でもさっきの意見には一理あるわ。こっちも詳しいことは話せないし、悪魔は階級制度なの。あまり事を公にしたくないわ」
朝陽のことを残念に思いつつも弦十郎に対しては朝陽と同じようなスタンスを取っていた。
「わかった。ならば、先にこちらのことを話そう」
それからは本当に情報交換が主な会談内容となっていた。
リアスは先日イッセーや忍にも話した悪魔、天使、堕天使との関係と未だ敵対関係が続いていることを…。
朝陽は忍がフェイトから聞いたような時空管理局のことと、多次元世界についてを…。
弦十郎は知り得た限りのノイズの情報と、その対抗策として機密情報であるシンフォギアシステムのことを…。
会談は二時間以上に渡った。
「過去にノイズを見たという悪魔もいたのかしらね」
「そこまでは把握できていないが、古くからいるのは間違いないだろう」
「それが人間や悪魔なんかも襲ってるって? なら、他の次元世界に出現する確率は?」
「不明だが、そういう可能性もあるかもしれんとだけ言っておこう」
「もしもそうなったら冥界も大騒ぎね」
「隊長に報告しないとならない事が山積みね…」
「こちらも似たようなものね…」
「ま、俺が出張って正解だったかな」
そのような会話を最後に会談は終了した。
「俺はこのような情報は公にしないことにしている。なに、もしも火の粉を被ってもそれに対処するのが大人の役割だからな」
帰り際、弦十郎はそう言って旧校舎を後にしていったそうだ。
「あたしも隊長に報告したらそれでおしまいのつもりよ」
「随分とサッパリしてるわね。こちらは上が何というか…」
「あたしの知ったこっちゃないわね。それとアンタ…」
リアスと言葉を少し交わした後、朝陽は忍を指差す。
「は、はい?」
「名前を教えなさい。始末書に書いておくから」
「べ、紅神 忍です…」
「そう。じゃあね」
それだけ聞くと朝陽は転移魔法陣で消えてしまった…。
「な、なんかとんでもない話になってきたな」
「イッセー、半分はあなたが持ち込んできた厄介事でしょ?」
「はい、申し訳ありませんでした!!」
リアスの言葉にイッセーは即座に土下座して謝っていた。
「しぃ君もあまり心配掛けさせないでね?」
「わぅ…ご、ごめんなさい…」
忍も忍で智鶴に怒られて(?)いた。
………
……
…
翌日。
イッセーは表向きの部活動が終わって一人帰路についていた。
「はぁ…もう何が何だかわかんねぇや…」
昨夜起こった出来事を何度も思い返していた。
「(ノイズに対抗できる力が機密とか、色々な次元があってそこを管理してたりする組織があるとか…もう俺の頭はついてけませんよ…)」
そんなことを考えていると…
「はぅわ!?」
後方よりばたりという誰かが倒れたような音がする。
「だ、大丈夫ですか?」
さらにそれを心配するような声が聞こえてくる。
「(あれ? つい最近どっかで聞いたような…)」
そう思ってイッセーが後ろを振り返ると、そこには…
「あ…」
「あっ」
響が転んだであろう金髪美少女のシスターを立たせているとこだった。
しかも昨日の今日で出会うもんかね?
「あなたは、昨日の…」
「あ~、俺は兵藤 一誠。君は確か…」
「あ、立花 響です」
「そうか。で、響ちゃん。そのシスターさんは?」
「実は…」
響は困っていたシスターを放っておけず助けたことをイッセーに話した。
しかし、外国語がわからなかった響はジェスチャーだけで何とか駒王町までやってきたという…。
「凄いね、響ちゃん…」
「いや~、それほどでも。でも、言葉がわからないんですよね」
響は少し照れくさそうに言うと…
「あ、あの…」
シスターが何やら紙切れを差し出す。
「な、に…?(てか、めっちゃ可愛いし!)」
イッセーはシスターを見て一瞬、呆けてしまう。
「ど、どうかしましたか?」
「はっ?! い、いや、なんでもないよ! それでどうしたの?」
すぐさま意識を取り戻すとシスターに向き直る。
「ここに行きたいんですが…どう行ったらいいんでしょうか?」
紙切れに描いてあったのは地図だった。
「(シスターが行くとなると…教会か?)」
地図と記憶を噛み合わせると、そういう結論に達した。
「じゃあ、地元だし俺が案内するよ」
「本当ですか!?」
「あぁ、任せときなって」
そんな会話をしていると…
「ほへぇ~」
響が驚いたような声を上げていた。
「響ちゃん?」
「一誠さんって外国語ペラペラなんですね! 驚きました!」
「(あ…)い、いや、ほら…俺って意外に秀才だからさ」
シスターの手前、悪魔だからといえないイッセーはそんな嘘で誤魔化した。
「人は見かけによりませんねぇ」
「ほっといてくれ!」
そんなやり取りの後、イッセーは響とシスターを連れて教会へと向かった。
「地図だとここだな」
「随分と寂びれてますね」
到着した教会はお世辞にも綺麗とは言い難かった。
「ありがとうございます。えっと…」
シスターはお礼を言おうとしたが、2人の名前を知らないことに気づいた。
「俺は兵藤 一誠。シスターさんもイッセーって呼んでくれよな。。で、こっちは立花 響ちゃんな」
「ありがとうございます。イッセーさん、響さん。私はアーシア・アルジェントと言います。アーシアとお呼びください」
お礼を言った後、シスターも名乗っていた。
「よかったらお2人を教会の方でお礼を…」
そして、そう申し出たものの…
「あ~、その俺はこれから急用があるから…(それに物凄く嫌な予感がするんだよな…)」
イッセーはそう答えた。
「一誠さん、シスターさんはなんて?」
「あ~、その教会でお礼をしたいらしいけど俺は急用があるからさ。あ、あとシスターさんの名前はアーシア・アルジェントだってさ」
すぐにでも教会から離れたいイッセーだったが、響にわかるように通訳っぽいことをする。
「あ~、そうなんですか。でも私もちょっと友達と用事があるので…」
「そ、そっか。アーシア、俺も響ちゃんも用事があるから…」
「そうですか。それは残念です…」
「ま、この街にいたらまた会える機会もあるよ」
「はい!」
その会話を最後に教会の前でアーシアと別れるイッセーと響だった。
その様子を物陰から見る人物がいた。
「あの子がレイナーレの欲していた子ね。それにこの前の…」
教会前のアーシアを一瞥してからイッセーと響の後姿を見るカーネリア。
「生きてたのね。それにこの感じからすると…悪魔に転生したのかしら? 面白そうな子達ね。少しからかいましょうかね」
そう言うと黒い翼を羽ばたかせて2人の進行方向へと先回りをする。
「へぇ、人助けが趣味なんだ」
「はい。困ってる人や動物は放っておけなくて」
そんな会話をしていると…
「はぁい」
目の前に黒い翼を広げながらカーネリアが舞い降りてきた。
「だ、堕天使!?」
「あ、あの時の…!」
イッセーは慌て、響は最初にシンフォギア『ガングニール』を纏った時に出会ってたことを思い出す。
「そう警戒しないでちょうだい。私、弱い者イジメは趣味じゃないの。今日は単なる挨拶よ。それとあの坊やはいないのかしら?」
そう言ってわざとらしく忍を捜す素振りを見せる。
「忍ならもう帰ったよ。今は智鶴さんと一緒のはずだ」
イッセーはいつでも神器を出せるように構えながら答える。
「そう、それは残念。けど、さっきも言ったように私、弱い者イジメは趣味じゃないのよ。神器もろくに使えない子に用はないわ」
「ぐっ…」
カーネリアの言葉にイッセーは悔しさから奥歯を噛み締めていた…。
「むしろ気になるのはそっちの子」
そう言ってカーネリアは響を指差す。
「わ、私…?」
突然、指名されて響も困惑する。
「あなたからはかなり強い破壊の匂いがするの。いつか、あなたの中にある破壊衝動と相対してみたいわね」
「は、破壊衝動? あなたは何を言って…」
カーネリアの言葉に響はさらに混乱する。
「ふふ、いずれわかるわよ。じゃあね」
本当にそれだけの話をしてからカーネリアは再び黒い翼を羽ばたかせてその場から立ち去る。
「なんなんだよ…一体…」
イッセーは知らず知らずの内に左拳を強く握っていた。
………
……
…
その日の夜。
悪魔稼業のために集合していたオカ研のメンバーの前でイッセーはリアスに怒られていた。
「教会には近づかないの。ただでさえあなたは悪魔になりたてで堕天使にだって狙われる可能性が高いんだから」
「はい…」
「しかも堕天使にまた出会ったの?」
「はい…」
「はぁ…よく生きて戻ってこれたわね」
「自分でもそう思います…」
実際、カーネリアはイッセーに興味を抱いていなかったのが大きな要因だろう。
「とにかく、今日はあなたに
「
「そ、チェスは知ってるわよね? それを爵位持ちの悪魔が取り入れた少数精鋭制度。駒の持つ特性を下僕悪魔に与える。駒は全部で6種類。
部室の中央にあるテーブルにチェス盤が置かれて駒も並べられた。
「主たる悪魔が王の役割を持つの。私たちの場合なら私が王。それはわかるわね?」
「はい。何とか…」
「よろしい。昔からチェスは悪魔の間でも流行ってたのだけど…それは置いとくわ。そして、爵位持ちの悪魔は己の眷属悪魔が優秀だと競うようなになっていき、上級悪魔同士で行う大掛かりなチェスゲームにまで発展していったの。それが『レーティング・ゲーム』。それが悪魔の間で大流行していてね。今では様々なルールで大会とかも行われてる一大行事なのよ。駒の強さやゲームでの強さが悪魔の地位や爵位にまで影響を及ぼすぐらい熱狂な行事とも言えるわ」
「そ、そうだったんですか…」
「えぇ。それに『駒集め』と称して優秀な人間を下僕として集めるのも今の主流ね。特に神器持ちの人間を転生させるケースも最近は多いかしら……強い下僕はそれだけで主のステータスにもなり得るから」
「(悪魔の世界に人間と似たようなもんなんだな…規模がかなり違うけど…)」
そんな感想をを抱くイッセーだった。
「部長。それで俺の駒って?」
「そうね。その前に先にイッセー以外の駒の特性から説明するわね」
そう言うと、リアスはまずテーブルに置かれたチェス盤から馬の形をした駒を取り上げる。
「まずは騎士。これは祐斗が該当するわ。騎士の特性はスピード。とにかく速さが増すって考えてね」
騎士を元の位置に戻すと、今度は塔の形をした駒を取り上げる。
「次に戦車。これは小猫が該当するわ。戦車の特性は圧倒的な攻撃力と防御力。簡単に言うと馬鹿げた力と強靭な肉体を手にしてるの」
戦車も元の位置に戻すと、今度は王冠の形を駒を取り上げる。
「これが女王。朱乃が該当するわ。女王の特性は王の次に強くて騎士、僧侶、戦車、兵士の力が全て備わっているわ」
そして、リアスは女王の駒も戻すと、2列目にズラリと並ぶ兵士の駒を持ち上げて告げた。
「そして、イッセーの駒は兵士。特性は…未知なる可能性よ」
「(また随分と曖昧な!?)」
その言葉にイッセーは二重の意味でガックリとうなだれてしまった。
兵士が意味する言葉は…一番価値の低い下っ端であることだ。
「そう気を落とさないの。あなたにはきっと秘められた力があるはずよ。私はそれを信じてるわ」
そう言ってリアスはイッセーの頭を撫でるが…
「(下っ端ですか…あ、あははは…)」
内心では落胆の色が濃かったりするのであった。