魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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第百七話『皇鬼の継承者』

皇鬼との戦いから早二日が経とうとしていた。

 

真祖の力によって忍の体に起きていた不調は現在、他の力を全て取り戻した影響なのか、かなり落ち着いてきていた。

おかげで今は忍も普通の食事も出来るようになり、日中においても以前のような活力を取り戻していた。

 

解放陣と七煌龍の魂の結晶の欠片を回収し、7本の牙も結果的に入手してしまったが…。

 

そして…

 

………

……

 

・皇鬼の書斎

 

「これを…お主に授けようと思う」

 

書斎に呼び出された忍は二日前に言われた通り、牙とは別の刀を差し出されていた。

 

「こんな立派な刀…本当に、貰っていいのか?」

 

渡された刀を簡単に調べると、忍はそんな疑問を浮かべていた。

それだけの業物なのかもしれない。

 

「うむ。儂に二言はない」

 

そうキッパリと言われてしまうと逆に返し難くなってしまう。

 

「……銘は?」

 

「『神威(かむい)』という。牙のような力はないが、儂と共に戦乱期を生き抜いた逸品じゃ。もしも、儂に何かあり、この鬼神界の未来に陰りがあるようなら、儂の認めた者に神威を渡したいと決めておったのでな」

 

そんなことを言う皇鬼に対して…

 

「だから、縁起でもないことは言うもんじゃない…」

 

忍もそう返していた。

 

「果たして、そう言い切れるものかの?」

 

「……相変わらず痛いとこを突く」

 

しかし、皇鬼は忍の言葉からある程度の未来を予測しているらしく、忍もそれ以上は何も言えないでいた。

 

「だからこそ、儂は今の内に出来うることは全てやりたいと思っておる。無論、お主のことも含めてな」

 

「それが…俺に神威や牙を渡したり、俺を鍛えることだってのか?」

 

「うむ。そして、願わくば未来へと帰してもやりたいが…こればかりは儂等にはどうにも出来んしの…」

 

「………………」

 

それを聞いて忍も押し黙ってしまう。

 

「なに、そう悲愴になることもあるまい。ただ、儂等のこの魂もお主に託したいのじゃよ」

 

「魂を?」

 

「うむ。儂等は人間に比べれば長寿故な。魂を少しくらい削ろうが、問題はないのじゃよ」

 

「それは、どういう…?」

 

忍が疑問に思っていると…

 

「時に忍よ。解放陣に新たな力は欲しくないかの?」

 

不意に皇鬼はそのようなことを聞いていた。

 

「え…?」

 

「儂等…『鬼』の力じゃよ」

 

皇鬼はニヤリと笑っていた。

 

………

……

 

・皇城地下『儀式の間』

 

「武天十鬼よ。揃っておるな?」

 

忍を伴って地下へと降りた皇鬼は既に招集をかけていた武天十鬼に声を掛けていた。

 

「はっ。武天十鬼、揃っております」

 

皇鬼の登場に月鬼は跪いていた。

 

「相変わらずお主は堅いのぉ」

 

「それが性分故…」

 

「まぁよい。お主達との付き合いもそれなりに長いからの。だからこそ、改めて言わせてもらおうと思ってな。こうして集まってもらった」

 

改まった言い方に他の武天十鬼達も皇鬼の方を見て首を傾げる。

 

「? 皇鬼様?」

 

月鬼もまた疑問を抱いていると…

 

「我が武天十鬼達よ! 次の大戦には儂自らが出る! そして、絶魔との因縁を断ち切ってくれようぞ!!」

 

『ッ!!!』

 

皇鬼自らの出陣宣言。

その宣言を受けて武天十鬼の誰もが息を呑んだ。

そして、それが意味するのは…。

 

「っしゃあ! 頭が出るんなら俺らも全員参加の大喧嘩ってことだよな!?」

 

炎鬼が盛大に叫んでいた。

そう、次の戦いで絶魔との戦争に終止符を打とうというのだ。

 

「皇鬼様! しかし、それは…あまりにも危険です!」

 

「そうだよ! だってもし皇鬼様に何かあったら…!!」

 

氷鬼と水鬼が不穏なことを言う。

 

「口を慎め。聖上に万が一があってたまるものか!」

 

そんな2人に鉄鬼が釘を刺す。

 

「……………不可解…」

 

「だね。なんだって、御大将が今になって前に出るんで?」

 

しかし、地鬼と風鬼が皇鬼に疑念の目を向ける。

 

「………………」

 

その問いに皇鬼は…

 

「儂がこの手で決着を着けたいのじゃよ。そして、それが今という時期なのじゃ」

 

そう答えていた。

 

「「………………」」

 

その答えに地鬼と風鬼はあまり納得していないようだが…

 

「じゃが、まぁ…万が一、ということもあるでの。儂は忍に未来を託したくなったのじゃよ」

 

『ッ!!?』

 

次の一言に武天十鬼の誰もが驚く。

 

「ちょっ!? そいつがお嬢とくっつくって事っすか!?」

 

重鬼が何の躊躇もなく皇鬼に聞く。

 

「儂はそのつもりじゃがの」

 

「「反対です!!」」

 

その皇鬼の言葉に氷鬼と水鬼が揃って反対する。

 

「まぁ、本人にもまだ確認しておらんからの。それは置いておくとして…儂等の力を忍へと託す。これは決定事項じゃ」

 

前半はともかく、後半の言葉は真面目に言っていた。

 

「だから、我等をこの儀式の間に呼んだのですか?」

 

月鬼が皇鬼にそう問うていた。

 

「そうじゃ。我等の魂の一部と妖力を用いてそれぞれの武具を創造する。そして、それを忍へと託す」

 

『………………』

 

それを聞き、武天十鬼も押し黙ってしまう。

 

「反対する者がおるなら、今ここで申せ。それを聞いた上で武天十鬼を解任する」

 

「なっ…!?」

 

その言葉に月鬼が言葉を失う。

 

「これより先の戦い…儂は修羅道に入る。それについてこれる者のみを連れて行くつもりじゃ。その最初の一歩として忍への力の継承を行う。それが嫌なら、今この場から早々に立ち去るがいい!!」

 

圧倒的で威圧的な覇気をその場に放ちながら、皇鬼は覚悟の言葉を紡ぐ。

 

「ッ!!」

 

その覇気を受け、月鬼は怯んでしまう。

 

だが…

 

「俺ぁ、頭に付いていくぜ? それはあの時、負けてからずっと変わらないからな」

 

「だな。オラも大親分に付いていくんだな」

 

炎鬼と雷鬼は皇鬼に付いていくことを表明していた。

 

「お前達!?」

 

そのあっさりとした表明に月鬼も驚いて2人を見る。

 

「旦那は違うのかい?」

 

「おやっさん、オラ達はずっと一緒だろ?」

 

「………………」

 

その簡単過ぎるようで真意を突いた言葉に月鬼は…

 

「……まさか、お前達に諭される日が来ようとはな…」

 

苦笑いを浮かべていた。

 

「あ、それどういう意味だよ!」

 

「んだ!」

 

そんな月鬼の言葉に炎鬼と雷鬼が抗議する。

 

「申し訳ありませんでした。皇鬼様。あの時、唯一の敗北を味わった日から、あなたに仕えようとしたのは我自身です。それを今更放棄するなど出来はしません。例え、その道が修羅道だとしても、どこまでもお供します」

 

それを無視し、過去を思い出しながら改めて皇鬼に跪くと、共に行くことを誓っていた。

 

「やはり、お主は堅いの。じゃが、炎鬼も雷鬼もよぉ言うてくれた。感謝するぞ」

 

初期から仕えてくれた3人の言葉を嬉しく思い、皇鬼は礼を述べていた。

 

「へへっ、頭に礼なんて言われる日が来るなんてな…」

 

「あんま褒められたことないから嬉しいなぁ」

 

そんなことを言っていると…

 

「今更口に出すのが恥ずかしいだけで、お主達には感謝しとったぞ?」

 

皇鬼もそのように言っていた。

 

「無論、他の者達にもじゃが……さて、残りの者はどうする?」

 

月鬼、炎鬼、雷鬼以外の者に改めて尋ねる。

 

「あたしゃ、御大将には色々と恩義があるからね。今更逃げるなんてことはしないさ。それにあの絶魔ってのを放置してたらゆっくりも出来なさそうだし……何より、あいつらの今の生活を守ってやらんとね。修羅道、上等だよ!」

 

風鬼は最近になって家族を持ってきた元子分達のことを考え、そう答えていた。

 

「我が命は既に聖上に捧げている。それに我が使命は聖上の道を最後まで見届けることでもある。それが武天十鬼に入った条件でもあったはずだ」

 

鉄鬼は自らの使命に殉じる覚悟で皇鬼の道を共に行くつもりらしい。

 

「僕は学者であって戦士じゃない。だからこんなのに付き合う義理もないんだけど…資金提供者に死なれても困るんで、仕方なく同行しようと思います。まだまだ研究し足りないんで…」

 

なんだかんだ言いながらも樹鬼もここまで来たのなら最後まで付き合うらしい。

 

「…………それで…子供達の未来を守れるなら…」

 

地鬼は地鬼で鬼神界の子供達のことを案じており、それを守れるのなら命は惜しまないとばかりに言っていた。

 

「まぁ、元々好き勝手にやらせてきたからの。別に理由はどんなもんでもいいんじゃ。さて、残るは…」

 

皇鬼は未だ答えていない氷鬼、水鬼、重鬼の3人に目を向ける。

 

「私は…姫様のため、皇鬼様を必ず連れて帰らねばなりません。それは武天十鬼としてではなく、筆頭侍女としての務めでもあります。故に例え、武天十鬼を解任されたとしても私は裏方として皇鬼様をお守りします」

 

「あたしは…姉さん程の覚悟はない。けど、姫様を守るくらいなら出来るから…武天十鬼を解任されたとしたら、そっちに力を注ぐよ」

 

「男のために俺の魂を削るなんて真っ平っすよ。それに武天十鬼を解任するなら勝手にどうぞ。そんなかったるい道に付き合う気なんてないんで…」

 

それぞれの言い分をしてからその場を立ち去ろうとする3人に…

 

「そうか。残念じゃな…」

 

皇鬼は心底残念そうな声を漏らす。

 

「………………」

 

すると、事の成り行きをずっと見ていた忍が3人の前を阻むように立ちはだかると…

 

「本当にそれでいいのか?」

 

神威を引き抜き、その切っ先を3人に向けて問う。

 

「いいも何も、それが私達の選んだことです。それにあなたのことは認めていませんので」

 

「そうよ! 誰がアンタなんかに姫様を…!」

 

「つか、邪魔なんだけど? もう武天十鬼じゃねぇんだし、勝手にやらせてもらうから」

 

三者三様の言葉を受け、忍は…

 

「俺は…武天十鬼ってのはもっと誇り高い者達の集まりだと思ってた。だからこそ、今まで鬼神界を守ってこれたんだって…そんな想いを抱いてた」

 

そう語りだす。

 

「だが、肝心な時に自らの責務を果たさず、逃げるだなんて…ハッキリ言って失望した。特にアンタら3人の覚悟なんてそんなもんだったんだな…」

 

「「ッ!!」」

 

「うぜぇんだよ! 俺の勝手だろうが!!」

 

忍の言葉を受けて3人は激昂する。

 

「まぁ、百歩譲ってそっちの姉妹はいい。なんだかんだ言ってあのじゃじゃ馬のためだって言ってるからな。問題はテメェだよ、負け犬」

 

氷鬼と水鬼を標的から外し、忍は重鬼に狙いを絞る。

 

「負け…!?」

 

「だって、そうだろ? 結局は自分の意思を持たず、流されるままに生きてきたんだろ? そのくせ、肝心な時にはそうやって適当な言い訳をつけて逃げ出してきたんだろ? だから本気になれない、なろうともしない」

 

「テメェ…言いたい放題言いやがって…!!」

 

イライラしてきたのか、重鬼が妖力を高めていく。

 

「事実を言われて怒るとか、子供か? 俺よりも長く生きてんなら、もっと気合を見せてみろよ。例えば、この場で想いを告げるとか…」

 

ガシッ!!

 

「テメェ、それ以上言ってみろ! 言ったら殺すぞ!!」

 

その言葉を発した瞬間、重鬼は忍の喉を掴み、今にも本当に殺しかねない勢いで締め上げる。

 

「いいや、言うね。今この場に想い人がいて、その人は皇の修羅道に付き従うと言ってるんだ。それを聞いて男として、どう思ったんだ?」

 

ここまで言えば、重鬼が誰を好いているのか明確な答えを言ってるようなものだ。

いや、他の武天十鬼はもう知っていたのかもしれない。

 

『………………』

 

誰一人として何も言わないのだから…。

風鬼に至っては頬を掻いてる始末。

 

「想いも告げず、逃げるってんなら…テメェは男として大切なもんを捨てるってことだ。わかってんだな?」

 

「ッ!!!」

 

ギリッ!というくらい大きな歯軋りをして重鬼はその手に最後の力を入れる。

 

しかし…

 

「なっ!?」

 

いくら力を込めても忍の首は折れない。

 

「悪いが、俺はここで死ねる体じゃないんだよ。俺を待ってる人達のためにもな…」

 

自らの妖力を首に集中させて重鬼の握力に対抗していた。

 

「ちっ…!!」

 

それがわかるとすぐさま手を引っ込める。

 

「で、言うつもりにはなったのか?」

 

「うるせぇんだよ!!」

 

「そんな醜態、見るに堪えん」

 

「黙れって言ってんだよ!!!」

 

「ここまで言ったらもう同じだと思うがな」

 

そう言って周りを見ると、誰もが微妙な面持ちをしていた。

 

「ぐっ…」

 

それを今更ながら気づき、重鬼も逃げるように出ていこうとするが…

 

「結局逃げるのか…」

 

「………………」

 

忍の言葉にその場で立ち止まってプルプルと震えていると…

 

「だあああ!! 言やいいんだろ、言や!!」

 

もう訳も分からんように風鬼の前まで行くと…

 

「風鬼の姐さん! 好きです! 俺と付き合ってください!!」

 

勢いのままやけっぱちになった告白をする。

 

「いや、まぁ…知ってたけど…」

 

言われた本人は困ったように頭を掻いていた。

 

「悪い。お前のことは眼中になかったんだわ」

 

そして、即答に近い答えを告げていた。

 

「………………」

 

それを聞いて真っ白になる重鬼。

 

「まぁ、こんな勢いじゃな…」

 

焚きつけておいてこの扱い…。

忍も大概、人が悪い。

 

「それに素行もね…」

 

「女遊び激しいし…」

 

同じ女性として氷鬼と水鬼の意見ももっともな気がする。

 

「いや、別に女遊びはいいんだけどよ…」

 

「いいのですか!?」

「いいの!?」

 

風鬼の意外な言葉に氷鬼と水鬼は驚く。

 

「なんつうかな? こいつの本気が見てみたいんだよ。それを見れたら、また印象とかも変わるんだろうけどさ」

 

「………………へ?」

 

風鬼の答えの続きに重鬼も変な声を出して復活する。

 

「そ、そそそ、それって…これから本気出しゃ、もしかしてってことも!?」

 

「まぁ、なくはない、かな? あくまで印象が変わるだけかもだが」

 

それを聞き…

 

「っしゃああ!! だったら修羅道でもなんでも入ってやる!!」

 

重鬼は意気揚々としていた。

この変わり身の早さ…。

 

「それで…そっちの2人はどうなんだ?」

 

重鬼のことは見なかったことにして、忍は氷鬼と水鬼に向き直る。

 

「答えは変わりません」

 

「そうよ。あんな単細胞と一緒にされたくないし…」

 

流石に重鬼ほど甘くはないらしい。

 

「それを本当にあのじゃじゃ馬が望んでいるのか?」

 

「それは…」

 

「なんて言うかな…」

 

桃鬼を引き合いに出したものの、少し揺れたくらいだった。

 

「アンタ達ほどの奴が、ここまで来て逃げるなんて姿…あのじゃじゃ馬は見たくないと思うがな」

 

「それはあなたの勝手な想像でしょう?」

 

忍の言葉を氷鬼が一蹴するが…

 

「いや、そうでもない。あいつと拳を交わしたからこそわかることもある」

 

「拳を交わしたからこそわかること?」

 

水鬼が疑問符を浮かべる。

 

「そうだ。あいつの拳からは何も復讐だけじゃない。あの時、お前達を助けたいという確かな想いも含まれていた。それは…お前達のことを慕っているからこそなんじゃないのか?」

 

「「っ!」」

 

「その想いに応える術はそれこそ色々あるだろうさ。けどな、未来のためにその魂を削る奴だってこの場にはいるんだ。その想いを…アンタ達は踏みにじるのか?」

 

「ぐっ…」

 

「そ、それは…」

 

武天十鬼としての付き合いが長いからこそ、それが誰を指すのか2人はなんとなくわかっていた。

 

「別に俺を信用しろとは言わん。だが、桃鬼のために何かを遺すという選択肢もあるんじゃないのか?」

 

「姫様のために…」

 

「遺す…」

 

それは暗にこれから先の戦いで誰かが死ぬことを案じていたが、今この場で追及することは出来なかった。

 

『………………』

 

もう、誰もがその覚悟を持っていたのだから…。

 

「………わかりました」

 

「姉さん!?」

 

氷鬼の心変わりに水鬼が驚く。

 

「勘違いしないことです。私は生きてこの地に…姫様の元に帰ってくるのです。そのために魂の一部を道標として残しておくだけです」

 

「そういうことなら…あたしもそういう風にしようかな…?」

 

氷鬼の言葉に水鬼もそういうことならと腹を括っていた。

 

「これで全員か。皆、すまぬな…儂の我儘に付き合ってもらって」

 

「今に始まったことでもありますまいに…」

 

そんな皇鬼の言葉に月鬼が軽く返していた。

 

「ふっ…違いない。では、始めるぞい!!」

 

『応ッ!!』

 

儀式の間の中央で皇鬼を中心に武天十鬼が輪を作るように配置し、それぞれの妖力を高めていく。

 

『はぁああああああ!!!』

 

己が魂の一部を触媒に自らの妖力を注ぎ込んで独自の武具へと創造する。

 

………

……

 

それからどれほど経ったろうか?

 

皇鬼と武天十鬼の前に様々な武具が顕現し始める。

 

「さぁ、忍よ! 受け取るがよい!!」

 

そして、いち早く完成させたのだろう皇鬼がその武具を忍へと向けて放つ。

 

「ッ!!」

 

皇鬼の魂の一部から作られた武具を受け止めると共に…

 

カッ!!

 

忍の体が光に包まれていき…

 

パァッ!!

 

光が弾けると、そこにいた忍の姿は…

 

「………………」

 

髪が光沢のある純白へと変化し、瞳も両方が真紅に染まり、額の左右(こめかみ辺り)に2本の角が生え、その両腕には有機的でシャープなフォルムの篭手が備わっていた。

その篭手はまるで指先から肘までを覆っており、手の甲の辺りには宝玉を埋め込むような窪みがあった。

 

「我が魂魄と妖力を込めて創りし鬼神界の…皇鬼の継承者の証…『皇鬼双腕(こうきそうわん)』。そして、それを受け取りしその姿こそ、儂の真の継承者の証じゃ」

 

そう言うと、皇鬼は疲れたかのようにその場に座り込む。

 

「皇鬼さん!?」

 

「大丈夫じゃ。ただ、疲れただけじゃよ」

 

慌てた様子の忍を皇鬼は片手を挙げて制す。

 

「しかし、姿まで変わるとは思わなんだが…良い面構えじゃ。儂の魂の影響かの?」

 

「さぁ? そこまではわからんが…凄く力強い波動は感じてるよ」

 

そう言って両拳に力を込めると妖力が迸る。

 

「ふぉっふぉっふぉ、良い塩梅じゃの」

 

その姿を見て皇鬼も満足そうだった。

 

「さて、そろそろ他の者達からも受け取るがよかろう」

 

「わかった」

 

それを受け、忍は武天十鬼からそれぞれの武具を受け取っていた。

すると、不思議なことに武具は忍が受け取るとそれぞれ宝玉という形を取り、まるで数珠のように連なって忍の首に掛かっていた。

武具を渡した武天十鬼も全員、皇鬼と同様にどっと疲れたようにその場に座り込んでいた。

 

「忍よ。儂の創り出した篭手は武天十鬼の武具を受け止めるために(しつら)えておる。武天十鬼の武具を使いたい時は手の甲の窪みに対応する宝玉を填め込むのじゃよ」

 

座り込みながら皇鬼はそのような説明をしてくれた。

 

「アンタ、そんな能力まで組み込んでたのかよ?!」

 

その説明にそんなツッコミを入れてしまう。

 

「伊達に皇をやっておらんでの。そのくらい受け止められるように調整しておいただけじゃよ」

 

「我等は武具を創り出すのに精一杯だったというのに、あなたという人は…」

 

それ近くで聞いてた月鬼が頭を少し押さえながら呟いていた。

 

「これは…色で判別出来るな…」

 

首から数珠を取ると、その色を確かめていた。

月鬼は銀色、炎鬼は赤色、雷鬼は黄色、氷鬼は蒼色、水鬼は水色、樹鬼は深緑色、風鬼は薄緑色、地鬼は茶色、鉄鬼は灰色、重鬼は紫色といった具合になっていた。

 

「これで前だけを見れて戦えるのぉ」

 

忍の様子を見て皇鬼は次の大戦へと意識を向けていた。

 

「武天十鬼よ。次の大戦、後ろは振り返るな。前だけを見て奴等を…絶魔を蹂躙してくれようぞ!」

 

『御意!』

 

疲れていながらも皇鬼の号令に応える武天十鬼。

 

「(絶魔の神がいる以上…果たして、勝てるのか…?)」

 

決して表情には出さなかったが、ただ一人…忍はそんな不安を抱えていた。

 

………

……

 

・忍の部屋

 

「今戻った」

 

皇鬼の呼び出しで書斎に行き、そのまま儀式の間に連れてかれたため、帰りが遅くなっていた。

 

「……お帰りなさい、忍さ……え!?」

 

「………………」

 

しかも新しいビー玉が無かったので、解放形態を維持したままの状態で部屋に戻ってきたので領明やシンシアもその姿に驚いていた。

 

「領明。すまないが、結晶媒体なんか作れないか? 一時的な措置でそれにこの鬼の力を封じたいんだが…」

 

「……は、はい。今、用意しますね」

 

忍の要請を受け、領明が水差しの水を凝固させて簡易的な水晶体を創り出す。

 

「……本当に簡易水晶なので、多分一回解放したら壊れてしまうので早めに取り替えてくださいね?」

 

「十分だ。ありがとう」

 

その簡易水晶を受け取ると、忍は鬼の力をその簡易水晶へと封じる作業を行う。

 

「ふぅ…」

 

やっと解放形態を解けて一息つく。

 

「これで解放陣、牙、七煌龍と…七つずつになったな…」

 

解放陣は真狼、雪女、紅蓮冥王、真祖、龍騎士、牙狼の闇、そして鬼の7種。

牙も7本。

七煌龍の魂の結晶の欠片が7つ。

 

「……解放陣や七煌龍の結晶はともかく…刀の置き場所が困りますね」

 

「そうだな…」

 

改めて並べていると、牙のスペースが大きかった。

しかも神威もあるので、余計に置き場所に困ることになりそうだ。

 

「というか、牙にもいい加減、個別の銘を付けないと分かりにくいな…」

 

こうして集まった以上、いつまでも牙と一括りにするのもどうかと思って銘を考えることにした。

 

「………………七煌龍は?」

 

シンシアが気になったように尋ねる。

 

「ん? あぁ…そういや、真龍の話じゃ、集めたらなんか起きそうなことを言ってたが…」

 

集まったはいいが、結局何も起きていない。

 

「ま、欠片じゃ仕方ないわな」

 

そんなことをボヤいていると…

 

キィィィ…

 

突然、七煌龍の魂の結晶の欠片が宙を舞い始める。

 

「あれ…?」

 

その現象に忍は間の抜けた声を出す。

 

「……あんなことを言ったから気に障ったのでは…?」

 

「え、ぁ…」

 

領明に言われ、流石に失言だったと思っていると…

 

カッ!!

 

欠片達が一ヵ所に集まり、目映い光を放っていた。

 

「くっ!?」

 

「……きゃあ!?」

 

「………………!?」

 

部屋にいた全員が光から目を隠す。

 

 

 

果たして、七煌龍に何が起きたのか?

そして、忍の考える牙の銘とは?

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