魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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第百十三話『神宮寺眷属の強化プラン』

公園から場所を移し、近場のカフェに入ってその一角で秀一郎は藍香と翔霧に今の状況…というよりも本当に自身の近況を伝えていた。

 

アレからテログループ『禍の団』の冥王派に雇われ、それが解散した時に今度は悪魔の依頼で各地のテロに対処したり、その間に何度か初代孫悟空の爺さんと共闘したり…。

それから元冥王派の筆頭『神宮寺 紅牙』の眷属、戦車の一人として今は駒王町を拠点に活動していることと、対テロ組織『D×D』で修行を重ねてきたこと…。

そして、今現在の駒王町で教会の戦士のクーデターに巻き込まれ、それに参戦しないとならないということも包み隠さず話していた。

 

ちなみに遮音結界を張っているので会話の流出はない。

 

「………ってなわけだ。これでも元テロリストだからな。おいそれと連絡出来なかったんだよ。わかったか?」

 

「「…………………」」

 

そんなことを言う秀一郎をジト目で見る藍香と翔霧。

 

「な、なんだよ? 別にいいだろ。お前らにはお前らの、俺には俺の生活があんだからよ」

 

そんな視線を受ける言われはないとばかりに開き直る秀一郎。

 

「はぁ…まぁ、それはそうなんだけど…」

 

「もう少し相談してくれてもいいような…気がしないでもないよ?」

 

「どっちだよ…」

 

なんだかんだで付き合いがあるので、そんな談笑に花を咲かせる。

 

「それにしても…冥族ってのが悪魔の駒みたいな代物を持つなんてね」

 

「そうだね。三大勢力が和平を結んで、それを色んな勢力に押し広げてるっていうのもあながち間違いでもなさそうだし…」

 

「あぁ? なんでお前らがそこまで知ってんだよ?」

 

秀一郎が不思議そうに尋ねると…

 

「ここ数年で私達もそれなりに情報を集めてたのよ」

 

「秀一郎を探し出してお説教するって目的もあったしね」

 

やれやれといった感じで2人はそんなことを言う。

 

「なんで俺が説教されなきゃならんのだ…」

 

解せぬ、という風に秀一郎が言うと…

 

「だって黙って姿消したし」

 

「置いてくんだもん。酷いよ~」

 

そこには若干の乙女心もあったようだ。

 

「うっせぇ。で、そっちはどうなんだよ?」

 

秀一郎は一蹴すると、逆に藍香と翔霧の近況を尋ねる。

 

「別に大したことないわよ。私は"管理局を辞めて"フリーランスの魔導師になって、翔霧と一緒に適当な依頼を受けてるわよ…」

 

「今は藍香と一緒に住んでるんだ。あ、お父さんとお母さんにももう会ってもらってるから…ただ、お父さんは"なんで女なんだよ"って愚痴ってたかな?」

 

こちらも何の気なしに言い合う藍香と翔霧。

 

「ちょっと待て…お前、管理局を辞めたのか? それに一緒にって…大丈夫かよ?」

 

「えぇ。自業自得な部分もあるけど、良い機会だったしね」

 

「なんだか引っ掛かる言い方だけど…大丈夫だよ。女の子2人なんだし」

 

「そうか……いや、そういう意味じゃなくてよ。お前、趣味が趣味だからな…」

 

藍香には相槌を打ちつつ、翔霧を見て微妙な表情をする。

 

「あ~…まぁ、周囲の反応は色々ね。一番の有力が…恋人同士だったかしら?」

 

「だ、だって…その方が藍香の護衛っぽく見えるし、私だってそこそこ強く見えるでしょ?」

 

それを察し、藍香も微妙な顔をして翔霧はあわあわとする。

 

「……ノーコメントよ」

 

「藍香ぁ~」

 

相棒の無慈悲な言葉に翔霧は泣きつく。

 

「そっちは相変わらずみてぇだな…」

 

やれやれといった感じに秀一郎がコーヒーを飲む。

 

と、そんな時…

 

『秀一郎、聞こえるか?』

 

紅牙からの念話が聞こえてきた。

 

『んあ? どうかしたのか?』

 

『あぁ。教会の戦士との戦いに俺達も参戦するのは知ってると思うが…そろそろ俺達も戦力補充を行うべきかと思ってな』

 

『戦力補充、ねぇ…』

 

それを聞いて秀一郎は冥王三人娘と小さな装者コンビ(調と切歌)、それと最近女王になったはやてを思い出す。

 

『まぁ、確かに戦力補充は必要そうだが…当てはあんのか?』

 

装者コンビはシンフォギアの展開が不安定だし、冥王三人娘は落ち着きがねぇし、はやてとかいう姉ちゃんの実力はまだよくわからねぇし、等といったことを考えてそう返していた。

 

『前から訓練に参加している八神の所の騎士達は覚えているか?』

 

『あぁ、あのやたら強いベルカ騎士の姉ちゃん達か』

 

紅牙に言われ、ヴォルケンリッター達の姿を思い出す。

 

『そうだ。今日、そいつらと模擬戦をすることになった』

 

『おいおい、また急だな…』

 

『八神に相談したら何故かそういう流れになったんだよ。場所はいつも使ってる無人の次元世界だ』

 

『ま、あそこなら全力が出せるわな』

 

何故、そういう流れになったのかは置いとくとして、秀一郎もそこは察した。

 

『結果がどうあれ、模擬戦後に眷属になってもらえるよう交渉するつもりだ』

 

『ふむ…』

 

それを聞きながら秀一郎は目の前の藍香と翔霧を見る。

 

『なぁ、紅牙。それって追加参加者を出してもいいのか?』

 

『なに?』

 

『俺の方にもある意味当てがあるっちゃあるからな。今からそいつら連れてそっちに向かわせてもらうぜ?』

 

その言葉に紅牙は珍しいと素直に思ったそうだ。

 

『お前が推薦するとはな。それほどまでの使い手なのか?』

 

『あぁ、そこは保証してやるぜ。眷属になるかならないかはまた話が別だがな』

 

『問題ない。そこは俺の交渉力次第だろう』

 

『じゃ、決まりな』

 

そう言って互いに念話を打ち切ると…

 

「藍香、翔霧。ちょっとした依頼を受けてみないか?」

 

いきなりそう切り出す。

 

「依頼?」

 

「何をするの?」

 

依頼と聞き、表情を変える2人。

 

「なに、俺の今の雇い主にお前達の力を示せばいい。で、その後はお前達次第なんだが…」

 

「どういうこと?」

 

「力を示せばいい、って…戦闘になるの?」

 

秀一郎の適当な説明に疑問符を浮かべる藍香と翔霧。

 

「ま、行けばわかるさ。さっさと行こうぜ?」

 

秀一郎がカフェでの勘定を済ませ、店を出るとそのまま駒王町へと案内する形となる。

 

………

……

 

『第47無人世界』

 

「よ~っす。待ったか?」

 

藍香と翔霧を伴い、秀一郎が集合場所に到着する。

 

「来たか」

 

集合場所には紅牙を筆頭とした神宮寺眷属が集まっていた。

つまり、装者コンビ、冥王三人娘、はやてである。

さらにそこに秀一郎が加わることで現状の神宮寺眷属が揃ったことになる。

 

そして、そこにははやてが連れてきたヴォルケンリッター、秀一郎が連れてきた藍香と翔霧、さらに眷属への勧誘を受けていたユウマがデヒューラとユニゾンデバイスの女の子を伴ってやってきていた。

 

微妙にピリピリした空気もしてるような気がしないでもない。

それに怯えてる人もいるくらいだし…。

 

「知らねぇ奴も多いし、自己紹介からしね?」

 

その空気を感じ取り、秀一郎が紅牙に提案する。

 

「あぁ、そうだな」

 

その提案を受けると…

 

「神宮寺 紅牙だ。一応、という訳ではないが、神宮寺眷属の王になる」

 

その場にいる全員に向けてそう自己紹介をする。

 

「紅牙? なんか男の子っぽい名前だけど…」

 

「(あ、やっべ…)」

 

適当な説明だけで連れてきたため、翔霧に口止めするのを忘れてた秀一郎が冷や汗を流す。

 

「あぁ? 俺は男なんだが…?」

 

見た目…というか女顔を気にしてる紅牙は今発言しただろう翔霧を睨みつける。

さらに魔力がダダ洩れし、周囲に熱気を放つ。

 

「え…!?」

 

「翔霧…」

 

相棒の不用意な一言に頭を押さえる藍香。

 

「まぁまぁ、そう目くじら立てんなって。俺ももう慣れてたから言い忘れてたし」

 

「ちっ…」

 

秀一郎が間に入り、紅牙も舌打ち程度に留める。

 

「てな訳で、神宮寺眷属の戦車をやってる識上 秀一郎ってもんだ。ま、よろしく頼むわ」

 

ついでとばかりに自分の自己紹介を済ませる。

 

「普通、女王が先やないかな? まぁいいけど…神宮寺眷属の女王、八神 はやてと言います。皆気軽に名前で呼んでや」

 

何ともフレンドリーな感じではやてが秀一郎に続いて自己紹介する。

 

「姉…じゃなくて紅牙様の兵士、天宮 早紀だ」

 

「同じく兵士の葛原 沙羅です」

 

「同じく兵士の水杜 紗奈だよ~」

 

「……兵士の一人、月読 調」

 

「同じく暁 切歌デス!」

 

兵士組が連続して名乗る。

 

これで眷属メンバーは一通り自己紹介したことになる。

 

『…………………』

 

まだ自己紹介してない面子はそれぞれの様子を窺うようにしている。

 

「はぁ…デヒューラ・スイミラン。私は別に関係ないんだけど、今日はユウと"ユーナ"の付き添いで来たわ」

 

すると、この空気に耐えかねてか、デヒューラが溜息交じりにそう伝える。

 

「ぁ、えっと…天崎 ユウマです。一応、言っておきますけど…僕は男ですから、そこのところを…」

 

デヒューラに続くようにユウマが挨拶をすると…

 

『え゛っ!?』

 

周囲から驚きの声が上がる。

 

「うぅ…(泣)」

 

その反応にしくしくと泣き始めるユウマ…(不憫である)。

 

「よしよし…」

 

「はぁ…」

 

ユニゾンデバイスの女の子に頭を撫でられて慰められる。

その様子にまたも溜息を吐くデヒューラ。

 

「それで、天崎。俺の僧侶になる決心がついたのか? それとも…断りに来たのか?」

 

仕方ないとばかりに紅牙がユウマに本題を切り出す。

 

「っ…は、はい。それなんですけど…」

 

意を決したように目を閉じてユウマは言葉を紡ぐ。

 

「僕は…争い事が今でも嫌いです。人を傷つけることなんてしたくありません。例え、それがどんな理由でもです」

 

「………………」

 

静かにユウマの言葉に耳を傾ける。

 

「でも…」

 

目を開き、真っすぐに紅牙の眼を見る。

 

「僕には守りたい人がいます。そのために僕は力を欲し、そして目覚めてしまいました。この、"冥王"という力に…」

 

バサァ!

 

次の瞬間、ユウマの姿が白髪金眼となり、背中から3対6枚の真っ白な翼を生やしたものへと変わる。

 

『ッ!?』

 

ユウマの変身に事情を知らないメンバーが驚く。

 

「僕に力があって…デヒューラさんや"ユーナちゃん"を少しでも守る確率が上がるなら…僕は茨の道を進みます。どんなに困難でも、僕は前に進むと決めましたから…」

 

そんな覚悟の言葉を受け…

 

「後悔しないな?」

 

紅牙は最後の確認を取る。

これはユウマが後戻り出来る最後の機会でもあった。

 

「はい」

 

だが、ユウマはそれを蹴って茨の道を進むことを選んでいた。

 

「わかった。お前の覚悟が固いのは理解した。が、お前はまだ実戦に出せるレベルじゃない。冥王スキルだって未だ目覚めていなさそうだしな。あの時、生き残れたのは運が良かったからだと理解しているな?」

 

「それは……はい…」

 

あの時…冥界のアウロス学園での襲撃を生き残れたのはユウマ自身の実力、とはとても言い難い。

いくつもの幸運が重なった結果だと言える。

その事実はユウマ自身もわかっていたのだが、事実を突きつけられるとシュンとしてしまう。

 

「ともかく、今は訓練に重きを置いた方が…」

 

そこまで紅牙が言おうとすると…

 

「ちょい待ち、紅牙。どうせ次の戦いは死者が出ないんだろ? そこで戦場の空気を吸わせるってのはどうだ?」

 

秀一郎がそんな進言をしていた。

 

「確かに情報ではクーデター組での戦闘で死者は出ていない。しかし、そこにクリフォトが出しゃばる可能性も捨て切れん。そんな戦場にほぼ一般人を連れて行くわけにもいくまい」

 

紅牙の言葉も尤もである。

 

「ん~、それはそうだが…こんな絶好の場を見逃すのも勿体ないだろ?」

 

しかし、秀一郎の言葉も捨て切れないのは事実。

 

「その話もええけど…そろそろ他の皆の紹介もしないとやろ?」

 

というはやての声に…

 

「む。それもそうだな…じゃあ、ユウマ。改めて名乗れ」

 

紅牙も本来の目的を思い出してユウマに改めて自己紹介を促す。

 

「え、あ、はい」

 

ユウマが佇まいを直し、改めてその場の皆に宣言する。

 

「神宮寺眷属の僧侶、天崎 ユウマです。皆さん、よろしくお願いします!」

 

トクン…

 

それと同時に僧侶の駒がユウマの中へと溶け込んでいく。

これでユウマも正式な眷属入りを果たしたことになる。

 

「あ、ちなみにこの子の名前は『ユーナ』ちゃんって言います」

 

そう言ってユウマはユニゾンデバイスの女の子こと『ユーナ』を紹介する。

 

「ユーナ、って言います。今は新しいロードと共にある三位一体の融合騎です」

 

前に比べたら言語機能が回復しているようでそれなりに喋れるようになっていた。

 

『三位一体?』

 

ユーナの"三位一体"という言葉にはやて達が反応する。

 

「私は…古代ベルカの時代に創造されたユニゾンデバイスの一騎です。但し、その設計思想はユニゾンデバイス一騎に対し、二名の人間と共に融合するというものです」

 

ユーナから語られた内容に食いついたのは…八神家だった。

 

「融合騎一騎に対して2人の人間と融合!? そんなことが可能なの!?」

 

「我々も聞いたことがありません」

 

「けどよぉ、流石に一騎で2人もユニゾンは出来ねぇだろ?」

 

「そうですよね。流石にそんな机上の空論のような計画があったとは…」

 

『だが、無いとも一概に断言出来ないのも事実だ』

 

「でもでも…もし可能だとしてもかなり危険な気がします~」

 

八神家がユーナの爆弾的発言を議論していると…

 

「だが、実際に融合現象は起きた」

 

紅牙が横からその議論に介入する。

 

「あの戦いの時、まるで魂と魂が重なるような波動を感じた。それが何なのかわからなかったが、もしやユニゾンの波動だったんじゃないのか?」

 

「魂と魂が、重なる…」

 

そう言う紅牙の言葉にはやてもユーナの方を見ると…

 

「はい。私に搭載されているトライユニゾンというシステムは、まずロードと適性者の魂と魂の間に強い繋がりを作ります。深い場所で繋がり合った魂と魂を共鳴させるのが私の役目です。そうした状態でユニゾンを行うことで三位一体の融合…トライユニゾンは成立します」

 

「そ、そんなユニゾン方法が…」

 

ユーナの説明に八神家のメンツが驚いていると…

 

「ですが、トライユニゾンには致命的な欠陥があります。それは、ロードとなる人と、もう一人の融合相手となる人との相性です」

 

『相性か…』

 

「はい。例え、様々な面で優れた人であろうと、ロードの魂と深い繋がりを持てなければ、融合は成立しません」

 

「通常のユニゾンでも相性があるからな。そこにさらにもう一人というと、どれだけ狭き門となるか…」

 

リインという融合騎がいる八神家にとっても相性の問題は熟知しているようだった。

 

「幸い、デヒューラさんとロードの相性は問題なく、ユニゾンレアスキルの発動も可能でした」

 

「ユニゾンレアスキル?」

 

また新しい単語に首を傾げる。

 

「トライユニゾン発動時にロードのパートナーとなった人から得られる情報を基に追加される特殊な稀少技能です。デヒューラさんとのユニゾンで得られたレアスキルは『イメージを具現化する』能力です」

 

そのユーナの言い方に…

 

「ん? それってそいつのパートナーが違えば、別のレアスキルが目覚めることもあるってことか?」

 

ヴィータが何の気なしに尋ねる。

 

「はい」

 

それに頷くユーナ。

 

『……………はぁぁぁ!?!?』

 

一拍空けて八神家のメンツが驚きの声を上げる。

 

「まぁ、ロードの魂と深く繋がりを持つ人間がそんな簡単に見つかるとも思えませんが…」

 

驚きの声を無視してユーナはそう漏らす。

 

ちなみに…

 

『????』

 

ユーナと八神家を除いた面々は頭に?マークを浮かべていた。

当の本人であるユウマですら…。

 

「その議題はまあ後にしろ。まずは互いに名乗るべきだろう?」

 

最初の目的から逸れたが、紅牙が改めてそう言っていた。

 

「そ、それもそうやね。皆、挨拶挨拶」

 

はやても気を取り直してヴォルケンリッター達に促す。

 

「剣の騎士、シグナム」

 

「鉄槌の騎士、ヴィータだ」

 

「湖の騎士、シャマルです」

 

『盾の守護獣、ザフィーラ』

 

「リインフォースⅡです」

 

ヴォルケンリッターが名乗ったのを確認すると…

 

栄崎(さかさき) 藍香よ」

 

「お、音無(おとなし) 翔霧です…」

 

残った藍香と翔霧が自己紹介をする。

 

「藍香は管理局に所属してたんだぜ? で、翔霧の方は…男装趣味だ」

 

2人の簡潔な自己紹介に秀一郎が付け足す。

 

「"元"、ね。今はフリーランスの魔導師だから関係ないし」

 

「ちょっ!? それは言わなくてもいいよね!?///」

 

藍香の淡々とした感じに対し、翔霧は顔を赤くして慌てたようにあわあわする。

 

「だってお前の個性ったらそれくらいだろ?」

 

「うぅ~…秀一郎のバカバカバカ!///」

 

「はぁ…」

 

そんな秀一郎と翔霧のやり取りに溜息を吐く藍香。

 

「元管理局員? その、なんで辞めたの?」

 

現管理局員であるはやてが少し気まずそうに聞くと…

 

「別に大した理由じゃないわ。ちょっと合わなくなっただけの話よ」

 

藍香は藍香でその話をはぐらかす。

 

「それでシュウ。私達は何をすればいいの?」

 

「確か、戦闘になるようなことを言ってたけど…」

 

そもそも秀一郎に具体的な説明もないまま連れてこられたので藍香と翔霧が秀一郎に尋ねる。

 

「なに、単純な話。俺達、紅牙の眷属組と眷属候補との模擬戦だよ。つまり、そこの古代ベルカ騎士の姉ちゃん達とお前達が組んで正規組の俺達と戦う。で、いいんだよな?」

 

そこまで言いながら秀一郎は紅牙に確認を取る。

 

「あぁ、それで間違いない。対戦カードとしてはヴォルケンリッターと秀一郎が連れてきた2人の計7人対…俺、秀一郎、早紀、沙羅、紗奈、そして…ユウマ達だ」

 

「ふぇ!?」

 

まさかの指名にユウマも驚く。

 

「おいおい…俺だけ冥王じゃねぇし…つか、さっきの戦場には出さない発言は何だったんだ?」

 

という秀一郎のツッコミに対し、紅牙は…

 

「よくよく考えてみたらユウマの実力が定かではない。なら、この際だから見極めることにした。八神、調、切歌。お前達は見学だ」

 

そう言ってはやてと調とあたし切歌に見学を命じた。

 

「対戦カードにはリインも含むんだ?」

 

「ユウマもユニゾンを使うならいい見本になるだろう。まぁ、運用自体が異なっていそうだが…これも経験だろう」

 

「なるほど」

 

はやては納得したようだが…

 

「なんであたし達まで見学なのデスか!?」

 

「……理由を求む」

 

解せぬと言いたげな2人に…

 

「お前らの力は時限式だろうが…おいそれと使わせると思ってるのか? 第一、"アレ"は?」

 

「「うっ…」」

 

そこまで言われて調も切歌も言い淀む。

 

「アレも数が少ないと聞いてる。無暗に貴重なサンプルを減らすこともないだろ」

 

正規シンフォギア装者である響、翼、クリスと違い、調と切歌は『LiNKER』と呼ばれる薬物を投与しないと適合係数が上がらず、シンフォギアの発現まで出来ない制約がある。

しかも現在改良型LiNKERの精製方法は逮捕されたウェル博士が知っているため、フロンティア事変以降の彼の所在が秘匿されていることもあり、二課に残った旧型のLiNKERしか使えない状況にある。

それも有限であり、いつかは底が尽きてしまうので時間も問題とも言える。

底が尽きるまでに改良型LiNKERのレシピとそれを精製出来る学者が必要となるのだが…今のところ両方共に目処はたっていないのが現状である。

 

「わかったら大人しく見学してろ」

 

「「……はい(デス)」」

 

しょんぼりしながら調と切歌がはやての元に歩いていく。

 

「魔法やデバイスの使用は無制限だ。能力などもフル活用してくれて構わない。これは互いの力量を知るための模擬戦だからな」

 

そう紅牙が言うと早速サジタリアスを構える。

 

「ま、王がそういうなら遠慮なしで行きますか!」

 

秀一郎もシュティーゲルを指で弾く。

 

「え、えっと…僕も、頑張らないと、ですよね…」

 

戦いに消極的なユウマも一応、ヴァルゴを取り出すが…

 

「お前はまずユニゾンしてみろ」

 

紅牙に釘を刺される。

 

「は、はい…」

 

萎縮しながらデヒューラの元に行くと…

 

「すみません、デヒューラさん…守るって言っておきながら巻き込んじゃって…」

 

「別に…アレを使うのに私が必要なだけでしょ」

 

そう言ってデヒューラが手を出すと、その手にそっとユウマも手を重ねる。

現状、ユウマがトライユニゾンを発動させるにはデヒューラの協力が必要不可欠なのである。

 

「では、参ります」

 

その重ねた手の上にユーナが立つと…

 

「「トライユニゾン」」

 

2人の声が重なり、トライユニゾンが発動する。

 

ユウマの姿は冥王と化し、白髪の毛先が亜麻色に染まり、その背からは薄い桜色のオーラを纏って半透明となったデヒューラが現れる。

 

「これが、トライユニゾンか…」

 

「ほんまに…2人と一騎でユニゾンが…」

 

実際にユニゾンした姿を見て改めて驚く。

 

「では、改めて模擬戦を開始する。サジタリアス!」

 

「行くぜ、シュティーゲル!」

 

「ヴァルゴ、お願い!」

 

正規眷属組のデバイス持ちはそれぞれのデバイスを起動させ、冥王三人娘もそれぞれ冥王の姿となる。

 

「行くぞ、レヴァンティン」

 

「アイゼン!」

 

「クラールヴィント」

 

「雷神!」

 

「風神!」

 

眷属候補組はザフィーラを除く6名がデバイスを所持しており、ほぼ全員が展開することとなった。

 

ちなみに藍香のデバイス『雷神(らいじん)』と翔霧のデバイス『風神(ふうじん)』は数年前にある組織によって対となるように作製された代物であるが、現在の現行デバイス機種にも引けを取らない性能を秘めている。

 

「行くわよ、翔霧!」

 

右手に白銀で三尺の刀身、雷鼓を模した黄金色の鍔、黄色い柄を持つ刀を持ち、藍香が翔霧に合図を出す。

藍香の纏うバリアジャケットは上に黄色いノースリーブを着て、下に縁に黄色いラインの入った白いミニのフレアスカートを穿き、足には黄色いローヒールを履き、その背に雷鼓を備え、頭に二本の角付きの黒いカチューシャを着けた姿となる。

 

「うん、藍香!」

 

両腕に風と翼の装飾を持った緑色の篭手を纏った翔霧もそれに応える。

翔霧の纏うバリアジャケットは上に緑色のノースリーブを着て、下に縁に緑色のラインの入った白いミニのフレアスカートを穿き、足には緑色のローヒールを履き、その背に半透明な白い羽衣を備え、黒いカチューシャを着けた姿となる。

 

「早速来るのかよ!?」

 

その初動を察知した秀一郎は…

 

「(あいつらにぶつけるのはちと厳しいかもだが…)天宮、水杜、お前達に一番槍を譲ってやるから藍香と翔霧の相手を頼むわ!」

 

紅牙の代わりに指示を飛ばす。

 

「なんでお前があたし達に指示出してんだよ!?」

 

「でも、一番槍をくれるって…」

 

「それはそうだけど…なんか納得が!」

 

そんな2人に…

 

「早紀、紗奈、秀一郎の言う通りに動け」

 

紅牙が命令を下す。

 

「わ、わかりましたよ!」

 

「は~い!」

 

そう返事をすると早紀と紗奈は藍香と翔霧へと向かう。

紅牙の言うことは素直に聞くのだった。

 

「沙羅。お前は湖の騎士を牽制しろ。アレの回復は厄介だ」

 

「は、はい。頑張ります」

 

開始の合図と共に下がったシャマルとリインを沙羅が捜索しに動く。

 

「ユウマは後方支援に徹しろ。秀一郎と俺で残りを相手する」

 

「あいよ!」

 

「わ、わかりました」

 

そう言ってユウマは下がりながらハンドガンをポンと出現させる。

 

「(あれが物質創造か。ある意味厄介かもしれんな…)」

 

それを横目で見ながら紅牙はシグナムの前に立つ。

 

「じゃ、俺はこっちのちびっ子か」

 

対して秀一郎もヴィータの前に立つ。

 

「ザフィーラ」

 

『わかっている。あの融合者は私が抑える』

 

シグナムの声にザフィーラも心得たように駆け出す。

 

「あ、待ちやが…っと!」

 

ガキンッ!!

 

秀一郎がザフィーラを止める前にヴィータがグラーフアイゼンを振るい、その攻撃を秀一郎が左腕で受け止める形となる。

 

「テメェの相手はあたしだ!」

 

「ちっ…紅牙、も無理か。ま、あいつにもいい経験になるか!」

 

と叫び、秀一郎は力任せにヴィータを振り払う。

 

ガキンッ!!

 

見れば、紅牙もサジット・ファルコンを剣形態に移行させ、シグナムのレヴァンティンと斬り結んでいた。

 

「(敢えて相手のフィールドで戦う、か…まぁ、そういう場面もあるだろうがな…)」

 

ゴンッ!!

 

両拳をぶつけてから、秀一郎も目の前の相手に突っ込んでいく。

 

 

 

神宮寺眷属、正規メンバー対眷属候補の模擬戦が始まった。

 

紅牙対シグナム。

秀一郎対ヴィータ。

早紀・紗奈対藍香・翔霧。

沙羅対シャマル・リイン。

ユウマ(・デヒューラ・ユーナ)対ザフィーラ。

 

果たして、この模擬戦…どのような結果になるのだろうか…?

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