魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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第六話『はぐれと最悪の再会』

~地球・駒王町~

 

今日も今日とて悪魔稼業。

イッセーは自転車を駆ってお宅訪問へと向かう。

 

え?

なんだって悪魔が自転車を漕ぐかって?

それはイッセーの保有魔力が少な過ぎて転移できないからだ。

そのため、こうやって夜になると自転車を漕いで悪魔を必要とする召喚主の元へと向かうわけだ。

 

そして、目的地の一軒家に到着する。

ふとイッセーは思う

 

「しかし、堂々とチャイムを鳴らして入っていいものか?」

 

『どうも、悪魔で~す』、なんて自分でもアホな姿を想像してしまうイッセーだった。

 

そんなことを考えていると、玄関が開いてることに気づく。

 

「こんな深夜に不用心だな…(あれ? でにこういうのってよく漫画やアニメだと嫌な展開になるような…)」

 

実際、イッセーの中の本能的なものが危険を知らせ、背筋に嫌な汗を掻いている。

 

「(でも…ここで引き下がるのもなぁ…)」

 

もしも悪魔が来なかったというクレームを貰ってもいけないと感じたイッセーは勇気を持って家の中に入ることにした。

 

「こんばんは~(まるで寝起きドッキリだな…)」

 

小声で中の様子を窺いながらゆっくりと家の中に侵入…もとい入ろうとすると…

 

「は~い、こんばんちゃ~」

 

目の前に神父服を着た白髪の少年が現れる。

 

「うお!?」

 

バタンッ!

 

イッセーは驚きのあまり反射的に玄関を思いっきり閉めてしまった。

 

が…

 

バゴンッ!!

 

少年神父は玄関を蹴破り、そのついでとばかりにイッセーも蹴り飛ばす。

 

「ぐぁっ?!」

 

「ん~ん~、こんな時間に誰だい? つか、悪魔が転移するのを待ち伏せしてるつもりが玄関から来るとか、バカなの? アホなの? 死ぬの?」

 

少年神父はそんなことを言いながら玄関から出てきてイッセーを見下ろす。

周りを見渡せば結界も張られていた。

 

「まぁ、悪魔祓うのが俺達の仕事だし、恨むんなら悪魔に生まれた…いや、転生させた主を恨みなよ!」

 

そう言って少年神父は刀身のない剣の柄と、銃を取り出すとそれらをイッセーに向けた。

 

「お、おい! 中の人たちはどうしたんだよ?」

 

そんな状況の中、イッセーは家の中の人がどうなったのか気になっていた。

 

「あん? そんなん聞いてどうすんの? 悪魔だけに冥途の土産にでもすんの? あ、俺ってばもしかして上手いこと言った? 座布団何枚くれんの?」

 

「質問に答えろよ!」

 

「あ~もう、うっせぇクソ悪魔だな。わぁったよ、わかりましたよ、教えてやんよ。中の人、瞬殺惨殺、ユーオッケ~? なんつって! クソ悪魔召喚なんてする奴は家族纏めてオールキル!! 所詮クソ悪魔を呼ぶのはクソ人間ってね!」

 

「なっ!? 人間が人間を殺してもいいのかよ!!」

 

それを聞き、イッセーの中に怒りが込み上げてくる。

 

「はぁ? 何言ってんの? あらやだ、このクソ悪魔ってば正義感が強いのかしら? チョーウゼェーー!!」

 

どっちがウザいのやら…。

 

「クソ悪魔に頼る人間なんてのはゴートゥヘル! 死んでも仕方ないのさ! 悪魔だって人間の魂、貰ってんだろぉ? それをとやかく言われるなんてのは心外だぜ!!」

 

「それでもお前、人間かよ!!」

 

「はぁ? クソ悪魔がいっちょ前に俺に説教ですか? わぉ、マジで殺す! でも一応答えとこうかな。人間です、人間ですよ? 人の道ってのはとっくの昔に踏み外したけどね~!!」

 

「最悪じゃねぇか!!」

 

「最悪頂き増した! でも問題ない! だってお前は此処で死ぬから!」

 

そう言った後、神父は柄から光の刃を生成してイッセーに斬りかかってきた。

 

「意味が分からねえよ!」

 

その斬撃をなんとか避けながら道路に出る。

 

「逃がすと思うのかよ! このフリード・セルゼン様がよ!!」

 

そう叫ばれた瞬間、イッセーの足に激痛が走る。

 

「ぐぉっ!!?」

 

倒れながらも後ろを振り向くと、足が撃たれていた。

 

「(いつの間に撃たれた!? 銃声なんか聞こえなかったぞ!?)」

 

「はっはー! いつ撃ったのかって不思議そうな顔だね? 特別に教えてやんよ! 光の弾丸さ! 堕天使様の加護でもらった光だから、音なんか出るわきゃねぇだろ!!」

 

「(光の弾丸!? そういや、あの時も…こんな感じの…)」

 

天野 夕麻ことレイナーレに殺害された時のことを思い出すイッセーだった。

 

「ほんじゃま、サクッと逝っちまいなよ!!」

 

「くっ…!」

 

フリードの刃がイッセーに突き刺さろうとした時…

 

「ま、待ってください!!」

 

イッセーを庇うように一人の少女がフリードの前に立つ。

 

「おんや~? これはこれは助手のアーシアちゃんじゃあ~りませんか。つか、何してんだテメェ? 悪魔庇うとか、頭おかしいんじぇねぇ~の!?」

 

「あ、悪魔…? この方が…!?」

 

少女…アーシアが振り向くと、そこには先日会ったばかりのイッセーの姿があった。

 

「あ、アーシア…!?」

 

「え…イッセーさんが…悪魔…?」

 

イッセーもイッセーでかなり驚いていたが、アーシアの動揺もかなりのものだった。

 

「あらら? なになに? 2人ってばお知り合い? わぉ! これまたビターな再会ってやっちゃな!」

 

下品な言動を撒き散らしながらフリードは嘲笑う。

 

「…ごめん…アーシアを騙す気はなかったんだ。正直、もう二度と会わないように…」

 

「……っ」

 

イッセーの言葉にアーシアは涙を流す。

 

「ほいほい! ほんじゃま、今度こそ始末すっから、アーシアちゃんはそこを退きなよ!」

 

しかし…

 

「退きません!」

 

「え…?」

 

アーシアの言葉にイッセーは驚く。

 

「はあああ!? なぁに言っちゃってんの?! そこにいるにはクソ悪魔! そして俺とアーシアちゃんは教会関係者! 命を奪い奪われる立場だぞ!? その悪魔を助けるぅぅ? 頭、ホントに大丈夫でちゅか~??」

 

フリードもまたアーシアの言動にほぼキレたような反応を示す。

 

「私も悪魔は悪い人ばかりだと思ってきました。でも、悪魔にだって良い人はいます!!」

 

自分自身でも混乱しているだろうに強い意志を持ってそう言い放った。

 

すると…

 

バキッ!

 

「きゃっ!?」

 

フリードはそんなアーシアの頬を銃を握っていた手で横薙ぎに殴っていた。

 

「アーシア!?」

 

倒れそうになるアーシアをイッセーは足を引き摺りながらも受け止める。

 

「寝惚けたこと抜かしてんじゃねぇぞ! このクソアマが!!」

 

「テメェ!!」

 

イッセーはフリードの言動に激怒し、左腕に篭手を出現させる。

 

「お? 俺とやり合う気か? レベルの違いってやつを見せつけ…」

 

フリードがペラペラと喋ってると…

 

「さっきからいちいちうっせぇんだよッ!!!」

 

アーシアを座らせると、足の痛みを我慢しながら渾身の一発をフリードの顔面にぶち込む。

 

「ぶへっ!?」

 

その一撃を受けて大袈裟なくらいに吹き飛ぶ。

 

「いってぇな…クソ悪魔が…もうプッチンキレたぞこの野郎! テメェで人体何処まで細切れになるか世界記録に挑戦してやらぁ!!」

 

しかし、フリードはすぐに立ち上がるとイッセーに向かって飛び掛かる。

 

すると…

 

ブォンッ!

 

イッセーとフリードの間にグレモリーの魔法陣が現れる。

 

ガキンッ!

 

そこから現れた木場がフリードの剣を受け止める。

 

「やぁ、兵藤君。無事かい?」

 

そして、後ろにいるイッセーに声を掛けていた。

 

「あらあら…これは…」

 

「…エクソシスト…」

 

さらに魔法陣からは朱乃と小猫も出てきていた。

 

「みんな…!」

 

イッセーは現れた仲間たちにどこか安堵した気持ちを覚える。

 

「悪魔様の団体の御出ましですか~? いやぁ、今日はなんだか大量祭りな予感! ついでに聞くけど、君が攻めで、向こうの彼が受けなの? それとも逆?」

 

鍔迫り合いしてる最中にも関わらず、フリードはふざけた言動を止めはしなかった。

 

「下品な口だね。いや、だからこそ"はぐれ"なのかい?」

 

「え~え~、そうですとも。それがなにか? 別にクソ悪魔ぶち殺せりゃ俺ぁ何処にだって行きますとも! だってそれが俺のアイデンティティ~ですもの!!」

 

フリードがそう叫ぶと共に魔法陣からさらに人影が現れる。

 

「下品極まりないわね。堕天使もよくこんな人間を使ってるわね」

 

「お褒め頂き恐悦至極! でも、そんな弱っちぃ人間下僕にしてるアンタには言われたくないねぇ!」

 

一旦木場から離れたフリードがリアスの言葉にそう返した瞬間…

 

ギュインッ!!

 

「うっほっ!? あっぶねぇ!!」

 

リアスが怒りのままに魔力を放ち、フリードがそれを避けるが、避けた先の道路は陥没…というか綺麗サッパリ"消滅"していた。

 

「おっと、これはもしかしてあれ? 悪魔様の逆鱗に触れちった? でも、事実なんだから仕方ない!!」

 

フリードのふざけた言動がリアスから魔力を引き出し、他の眷属もまた殺気を強めていた。

 

その時、小猫がある反応を察知する。

 

「…堕天使、複数来ます」

 

それを聞き…

 

「イッセーを回収してこの場は退くわ。朱乃、ジャンプの用意を」

 

「はい、部長」

 

そう言って転移の準備に入った。

 

「おっと、逃がすと思うのかい? こっからが形勢逆転! 悪魔の殺戮パーティなんだよぉ!!」

 

そう言って再び襲い掛かろうとしたフリードだが…

 

「……えい」

 

小猫が地面を殴るとコンクリートの地面が割れ、それを畳返しのようにして持ち上げる。

 

「あべしっ!?」

 

それに激突したらしくフリードの声が聞こえてくる。

 

「ぶ、部長! あの子、アーシアも…!」

 

転移魔法が発動する中、イッセーは地面に座ったままのアーシアに手を伸ばそうとするが…

 

「残念だけど…この転移魔法陣は私の眷属しか運べないの」

 

非情にも聞こえる答えが返ってくる。

 

「そ、そんな…アーシア!」

 

それでも手を伸ばそうとするイッセーを見て…

 

「イッセーさん…ありが…」

 

アーシアは笑みを浮かべてそう言いかけたところで…

 

パァンッ!!

 

グレモリー眷属は転移してしまった…。

 

………

……

 

翌日。

イッセーは足に受けた光の弾丸が完治していなかったので学園を休んでいた。

 

「はぁ…」

 

そんな不完全な状態に関わらず、近場の公園にやってきていた。

そして、ベンチに座って色々なことを考えていたのだが…

 

「うじうじ考えてても仕方ないか。どっかに何か食いにいこ…」

 

そう言ってベンチから立つと…

 

「イッセーさん?」

 

「え、アーシア?」

 

昨日の今日でアーシアと出会ってしまっていた。

 

 

 

それから2人は一緒に昼食を食べ、海鳴市の方まで足を伸ばして夕方まで遊んだ。

遊んだ後、2人は海の見える海鳴臨海公園で休んでいた。

 

「あ~…せっかく休み貰ったのに結構な距離を歩いちまったな…」

 

そう言ってイッセーは昨日フリードに撃たれた足を少し擦っていた。

 

「イッセーさん…怪我をしてるのに…私と…」

 

そんなイッセーを見てアーシアは悲しい表情になる。

 

「大丈夫だって、このくらい遊んでる時には忘れてたし」

 

そう言って足を伸ばすが…

 

「あたたた…」

 

案の定、痛がるイッセー。

 

「イッセーさん、傷を見せてください」

 

「え? いや、このくらい平気だって…」

 

「いいから、見せてください」

 

アーシアの言葉にイッセーは渋々傷を見せようにズボンの裾を捲り上げた。

そうすると、アーシアは傷痕に手を当てて淡い緑色の光を発していた。

 

「これで大丈夫だと思います」

 

その言葉通り、イッセーの足は不思議と治っていた。

 

「これって…もしかして神器?」

 

「はい。主から賜った癒しの力です」

 

「俺も神器を持ってるけど…篭手ってだけでよくわからないんだよな…」

 

周りに人がいない事を確認すると、イッセーは篭手を出現させてみせてすぐに解除した。

 

「そういう意味ではアーシアが羨ましいよ」

 

「そんなこと、ありませんよ」

 

そこからアーシアは自分の身に起こったことをイッセーには話した。

傷を癒せる聖女から、悪魔でも治せてしまった魔女としての人生を…。

 

「そうだったのか…」

 

アーシアの話を聞いた後…

 

「よし! じゃあ、今日から俺とアーシアは友達だ! 悪魔だの契約だのは関係ない。俺がアーシアと友達になりたいからなる。それでいいよな?」

 

イッセーの言葉にアーシアはきょとんとする。

 

「私とイッセーさんが…お友達?」

 

「あぁ、今日一日だって普通に過ごせたじゃないか。それはもう友達ってやつだよ」

 

「本当に…私とお友達になってくれるんですか?」

 

「あぁ。もちろんさ」

 

そう言ってお互いから笑みが浮かんだ時だった。

 

「面白いことを言ってるけど…」

 

「そんな幻想…叶う訳がないでしょ?」

 

海鳴臨海公園の入り口の方からそのような声が聞こえてくる。

 

「っ…カーネリア様…レイナーレ様…」

 

アーシアが声の主の名を口にする。

 

「堕天使が何の用だ!!」

 

「汚らしい悪魔の分際で私に話し掛けないでくれるかしら?」

 

そう言ってイッセーを無視すると…

 

「逃げても無駄よ。あなたの神器…『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』は私たちの計画に必要なんだから」

 

レイナーレが一歩前に出ながらアーシアにそう言う。

 

「(計画ね。ま、私には関係ないけど…)」

 

その様子をジッと見ながらカーネリアは内心で呆れ混じりの笑みを浮かべていた。

 

「そこの悪魔を殺されたくなかったら私達と共に来なさい」

 

レイナーレはめんどくさそうにアーシアに言う。

 

「ふざけんな! 誰が殺され……」

 

ヒュドドドド!!!

 

イッセーの言葉が終わる前に黒い光の槍が雨の如く降り注ぐが、一本も当たっていなかった。

いや、むしろ…

 

「外してあげたわ。これで一体何回殺されたのかしらね?」

 

クスクスと笑いながらカーネリアがイッセーに告げる。

 

「なっ!?」

 

一歩も動けず、神器を出す暇さえなかったイッセーは力の差に愕然とする。

 

「カーネリア、あのまま殺してもよかったんじゃないの?」

 

その様子にレイナーレがカーネリアに一言文句を言う。

 

「だってその坊やには興味が無いもの。それに殺すならもっと楽しみたいし」

 

「相変わらず悪趣味ね」

 

「アンタに言われたくないわね」

 

憎まれ口を憎まれ口で返すと、カーネリアはアーシアの元へと移動し…

 

「さ、行くわよ」

 

「……わ、わかりました…」

 

アーシアの手を掴んでその場から去ろうとする。

 

「っ! アーシア!」

 

イッセーが手を伸ばそうとするが…

 

「邪魔よ!」

 

レイナーレが光の槍をイッセーの足元に投げる。

 

「くっ…」

 

それに阻まれ、イッセーはまたしてもアーシアの手を握ることはなかった…。

一度目は昨夜、そして二度目は今…。

イッセーはアーシアを助けるための力を欲した…。

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