魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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第百十四話『模擬戦。後に眷属交渉』

紅牙は眷属の補充と強化のため、模擬戦を開催した。

とは言え、正規メンバー以外はほぼ知人の知人といった構成での模擬戦なので、相手に自分らの実力を示した上で模擬戦後は紅牙が交渉しなくてはいけないわけだが…。

 

また、模擬戦前にユウマも正式に眷属入りしたのでその戦闘能力を確認する意味も含まれている。

そして、模擬戦は開始直後、五つのグループに分かれての戦闘へと突入していた。

 

 

 

~早紀・紗奈対藍香・翔霧~

 

「ったく、なんでボク達が秀一郎の指示を受けなきゃならないんだよ…」

 

「まぁまぁ、修行の成果を見せるチャンスじゃない?」

 

「そりゃあ、そうだけどよ…」

 

そんな風に悠長に早紀と紗奈が話していると…

 

「翔霧!」

 

「うん!」

 

一気に距離を詰めに来ていた2人は直感的に藍香は紗奈、翔霧は早紀へとそれぞれ別の進路を取る。

 

「冥王スキル、バーニング・チャクラム!」

 

「冥王スキル、ミスティック・クリア!」

 

複数の炎の戦輪と霧状の水をそれぞれ出現させると、早紀は両手で二つの戦輪を掴み、紗奈は水を集めて槍を作って構える。

だが、この時点で早紀・紗奈コンビは属性的な意味で相性が最悪な相手と相対することになった。

 

 

 

藍香vs紗奈の場合。

 

「水の槍とは、またやりやすい」

 

「間合いに入らせるわけないでしょ!」

 

紗奈が藍香を間合いに入らせないようにしながらもミスティック・クリアで形成した水弾を放つ。

 

「へぇ…」

 

飛んでくる水弾を刀で斬り落としながら紗奈の隙を窺おうとしてるが、流石に槍を扱ってるだけあって隙がない。

 

「(なら…押し通る!)」

 

バチバチ!!

 

藍香の魔力に反応し、背中の雷鼓が反応する。

 

「いっ?!」

 

それが電気だとわかり、紗奈の表情が明らかに引き攣る。

 

「『迅雷(じんらい)』!」

 

刀の切っ先を紗奈へと向けると、雷鼓から発生する雷を収束して一点に向けて解き放たれる。

雷のレーザーが紗奈へと向かうが、紗奈の属性は『水』。

相性的に悪いので、回避することにした。

 

「流石に避けるわよね。じゃあ…こっちは如何かしら?」

 

今度は刀を頭上に向けると、そこから雲に向かって雷を打ち上げる。

 

「な、なにを…!?」

 

「落ちなさい、『落雷(らくらい)』!」

 

晴れた日であるにも関わらず、その名の通り落雷が紗奈に向かって落ちる。

 

「きゃああ!?」

 

それを咄嗟に水の槍を地面に突き刺し、避雷針代わりにして紗奈自身は逃げることでやり過ごす。

 

「どうにも私とあなたでは相性が悪いみたいね?」

 

「うぅ…こんなことになるなんて…」

 

まだまだ余裕そうな藍香に対し、紗奈は冷や汗を流していた。

 

 

 

翔霧vs早紀の場合。

 

「ふっ! しっ!」

 

早紀に接近した翔霧は軽いステップを踏みながらワンツーを放っていた。

 

「ちっ!」

 

それを戦輪で防御する早紀。

 

「(これくらいは受け止められるか。なら、ギアを少し上げてもいいかな?)」

 

そう考えると、翔霧の動きが速くなり始める。

 

「(こいつ!? まだ速くなんのかよ!?)」

 

翔霧のギアが上がることを恐れた早紀が一旦離れると…

 

「(なら、拘束すりゃいい話か!)飛べ! チャクラム!」

 

戦輪を4枚ほど翔霧に向かって投擲する。

 

「『無風拳(むふうけん)』!」

 

ボァ!

 

それを迎撃した翔霧の拳が戦輪に当たると小さな音を立てて消えてしまう。

 

「なっ!?」

 

その光景に早紀は一瞬何が何だかわからなくなった。

 

「(ど、どういうことだよ!? なんでボクの戦輪が拳一つで消えるんだよ!?)」

 

「吹き荒べ、『疾風(しっぷう)』!」

 

そう言って翔霧が右手で空を一閃すると、風が巻き起こって早紀に襲い掛かる。

 

「くっ、このくらいで…!」

 

この攻撃に直接的なダメージを与える威力はない。

が、火を消すには十分な威力と速度を持っていた故に…

 

「あ、ボクの戦輪が!?」

 

早紀の戦輪が綺麗さっぱり消えてしまっていた。

 

「風は火を強くするけど、消しもする。その応用だね」

 

などと言う翔霧に…

 

「嘘だろ…」

 

早紀はある意味で相性が悪かったと今更ながら実感した。

 

 

 

そうして一対一では敵いそうもないと判断した早紀と紗奈はすぐさま合流した。

が、これも悪手になるとは本人達は思いもしなかった。

 

「紗奈! 沙羅がいない分は攻めで補い合うぞ!」

 

「わかってるよ!」

 

早紀と紗奈が合流したのに合わせて藍香と翔霧も合流する。

 

「なら、こっちも本領発揮よ」

 

「ここからが私達の本番だもんね」

 

互いに背中合わせになると視線を早紀と紗奈に向ける。

 

「疾風!」

 

「迅雷!」

 

その掛け声と共に翔霧と藍香が揃って駆け出す。

 

「同時かよ! 紗奈、風使いは任せた!」

 

「そっちも雷使いをお願いね!」

 

苦手な相手を頼みながら左右からバラバラに仕掛ける。

 

「『風壁(ふうへき)』!」

 

すると、翔霧が風の壁を両側に作って早紀と紗奈の攻撃を受け止めると…

 

「『雷鳴閃(らいめいせん)』!!」

 

その翔霧の肩を足場にして跳び上がると、紗奈の方に向かって上段から斬りかかる。

 

「え゛っ!?」

 

「紗奈!!」

 

早紀が風の壁を押し切ろうとするが…

 

「『風衝波(ふうしょうは)』!」

 

それを翔霧が風の壁ごと早紀を吹き飛ばした。

 

「うわぁっ!?」

 

「さ…!?」

 

紗奈が早紀を呼ぼうとするもその前に藍香の斬撃が襲い掛かってきて…

 

ピシャアァァ!!

 

「ぴきゃあああ!?!?」

 

峰打ちとは言え、雷撃をまともに喰らったので紗奈が地面に大の字になってダウンする。

 

「くっそぉ! よくも紗奈を!」

 

吹き飛ばされた早紀が体勢を立て直すと、大量に展開したチャクラムを藍香に向かって一斉に飛ばしてきた。

 

「すぅ…」

 

その藍香の背を守るように翔霧が陣取ると、深呼吸を一つしてから両手の中に風の塊を圧縮していき…

 

「『風翔砲(ふうしょうほう)』!!」

 

向かってくるチャクラム達に向かって一気に解放して風の砲撃を放っていた。

チャクラムの軌道が風の砲撃で逸らされて散る中、砲撃は真っすぐ早紀へと向かい…

 

「えっ、ちょっ、嘘!!?」

 

チュドォォンッ!!

 

「あああああ!?!?」

 

ものの見事に着弾すると、早紀の悲鳴が上がってきた。

 

「切り札を使うまでもなかったか」

 

「藍香、どうする?」

 

「ま、私達の技量は示せたでしょ。あとは待ってればいいと思うわ」

 

「それもそうだね」

 

早紀と紗奈を降した藍香と翔霧はそのままでは暇ということで、秀一郎の戦いを見に行くことにしたのだった。

 

………

……

 

~沙羅対シャマル・リイン~

 

「確か…こっちに来たはず…」

 

模擬戦開始早々、シャマルとリインのペアが森の中へと後退したため、沙羅は紅牙の命もあって捜索していた。

 

「(相手はサポートに特化した人だったはず。まぁ、私も人のことは言えないけど…)」

 

内心で自分の立ち位置を思い出して微妙な表情を浮かべる。

早紀と紗奈という、いつも行動を共にする友達であり、仲間を後ろでサポートし過ぎて自らが前に出るということをあまりしないようになった自分を客観的に見たのだろう。

 

「(元々、そんな前に出る性分でもないしなぁ…)」

 

などとネガティブな方面に思考が寄っていた。

 

「(とにかく、今は紅牙様の命令通りにあの人達を牽制しないと…)」

 

が、すぐに頭を振って思考を模擬戦に集中させて周囲の様子を窺う。

 

「(近くには…いない…?)」

 

そう思って森の開けた場所に出る。

 

と、次の瞬間…

 

「捕捉!」

 

「っ!?」

 

その声と共に魔力で出来た穴が沙羅の胸元に開き、そこからぬっと腕が伸びて沙羅のリンカーコアが摘出される。

 

「これ、って…!?」

 

思わぬ奇襲に沙羅が動揺していると…

 

「すみません。でも、確実な手を打たせてもらいます」

 

そう言って姿を現したシャマルがクラールヴィントで作った魔力の穴に手を差し込んで沙羅のリンカーコアを手中に収める。

 

「この手は使いたくなかったんですが、能力をフルに使えと言ったのはそちらなので…」

 

どこか罪悪感を覚えたような表情でシャマルが沙羅に告げる。

 

「(確かに、紅牙様は言ってた…)」

 

つまり、これも立派な戦術ということになる。

 

「この状態なら、私も他に手が出せませんが…シグナムやヴィータちゃん、ザフィーラなら上手く動いてくれるはずです」

 

「くっ…」

 

身動きが取れない沙羅も苦悶の表情を浮かべる。

 

「少しの間ですが…付き合ってもらいますね?」

 

「(ごめんなさい…紅牙様、早紀、紗奈…)」

 

シャマルの言葉に沙羅は心の中で紅牙達に謝るのだった。

 

こうして沙羅はそのまま模擬戦が終わるまでシャマルにリンカーコアを握られたまま拘束されてしまうのだった。

 

しかし、1つだけ懸念があった。

シャマルと一緒に後退したはずのリインはいずこへ…?

 

………

……

 

~ユウマ(・デヒューラ・ユーナ)対ザフィーラ~

 

紅牙から後方支援を命じられていたユウマだが、その前にはザフィーラが立ち塞がっていた。

 

「お、大型犬?」

 

『………………』

 

ユウマの失礼かもしれない発言にザフィーラは特に何も言わなかった。

 

『ユウ。模擬戦って言っても油断しないようにしなさいよ』

 

『はい。相手の能力などは未知数ですので、慎重に』

 

『ユウマ。気を付けてね』

 

デヒューラ、ヴァルゴ、ユーナの順にユウマに声を掛けていた。

 

「う、うん…」

 

そう答えながらユウマは物質創造で出現させたハンドガンの銃口をザフィーラに向ける。

 

『(ふむ。どこかぎこちないが、妙に様になっている。しかし…)』

 

若干だが、銃口が震えていることに気付き、ザフィーラもユウマが戦いには不向きな性格だということを察していた。

 

『(ならば、早々に行動不能にしてしまうのがいいだろう)』

 

そう結論付けたザフィーラが体勢を低くする。

 

「っ…」

 

そのザフィーラの動きを察し、ユウマにも緊張が走る。

 

「すぅ……ふぅ……(パンドラでの動きを思い出せ…これはゲームじゃないけど、あそこで培った経験を活かせれば…)」

 

一度だけ深呼吸したユウマはパンドラでの日々を思い出す。ゲームという仮想世界での出来事だが、ユウマにとっては唯一の戦いの経験値。

 

「(遮蔽物のない地形。なら…)」

 

バンッ!

 

ハンドガンを一発だけザフィーラの足元に発砲すると、すぐさま横に移動を開始する。

 

『む?』

 

ユウマの一手を怪訝に思いながらもザフィーラは慌てず…

 

『鋼の軛!』

 

ユウマの進行方向を塞ぐべく魔法による障壁を展開する。

 

「っ!」

 

それを横目に確認すると…

 

タンッ!

 

障壁を蹴って空へと跳び上がる。

 

『させん!』

 

ザフィーラはさらに障壁を地面から発生させると、それでユウマを囲うようにして包囲しようとする。

 

「っ…」

 

バババンッ!!

 

ハンドガンを連射させ、ザフィーラの展開した障壁の先へと魔力弾をぶつけて少しだけ速度を減衰させる。

 

「(足場をイメージして…)」

 

その隙にユウマはイメージを膨らませて足場を空中に創造し、そこからさらに跳び上がって障壁が囲われる前に空へと至る。

 

「はぁ…はぁ…」

 

空中の足場で息を少し整えながら、ユウマはザフィーラに銃口を向けて発砲する。

 

『っ!』

 

それを飛び退くことで回避したザフィーラは空に陣取るユウマを見上げる。

 

『ふむ…(意外と動けるのか?)』

 

「(体力…持つ、かな?)」

 

思わぬ動きをしてみせたユウマにザフィーラは少し感心したような感想を抱くが、当のユウマは体力面を気にしていた。

 

こうして、ユウマはザフィーラ相手に思わぬ粘りを見せるのだった。

ただ、ユウマはまだまだ一般人に近い体力しか持っていない。それを今後、どう克服するのか…。

 

………

……

 

~秀一郎対ヴィータ~

 

「ブレイズ・ブロー!!」

 

「テートリヒ・シュラーク!!」

 

篭手に纏った炎の拳と、ハンマーヘッドが激しく衝突する。

 

「「カートリッジ、ロード!!」」

 

バシュッ!!×2

 

ほぼ同時のタイミングで声を発した秀一郎とヴィータの篭手とハンマーから空薬莢が排出される。

それと同時に互いの魔力も高まっていき、秀一郎の拳の炎も猛り、ヴィータのグラーフアイゼンもまた魔力を纏っていた。

 

「バーニング・ブロウラー!!」

 

「ぶち抜け!!」

 

ギギギ…ッ!!!

 

一見、互いに力が拮抗しているように見えるが…

 

「ちっ…!」

 

先にヴィータが舌打ちするのが聞こえる。

 

「悪ぃが、こっちは既に駒を貰ってる身なんでな! このまま押し通るッ!!」

 

既に戦車の駒を有していてその攻撃力と防御力が上がっている秀一郎がそのままヴィータを押し切ろうとした時だった。

 

「こうなったら…!」

 

すると、ヴィータは"わざと"グラーフアイゼンを持つ力を抜いて秀一郎の拳の威力をそのまま受けることにしていた。

 

「?」

 

その意図が一瞬わからず、秀一郎もそのままヴィータを吹き飛ばしてしまうが、次の瞬間…

 

「アイゼン!!」

 

『了解』

 

バシュッ!

 

秀一郎に吹き飛ばされながら横に回転するかのような動きからグラーフアイゼンがカートリッジを炸裂させ、その形態をラケーテンフォルムへと変更する。

 

「ッ!? まさか!」

 

その行動に秀一郎も意図が読めたらしく、すぐさま両腕をクロスさせて防御用にカートリッジも消費しながら身構えた。

 

「ラケーテンハンマぁぁあああああ!!!!」

 

秀一郎によって吹き飛ばされて回転した遠心力も加え、さらにハンマーヘッドの片方から出現した噴射機からのブーストによる更なる遠心力によって一気に秀一郎の元へと戻ったヴィータは渾身の一撃を秀一郎に叩き込んでいた。

 

「ぐぅううう!!!?」

 

その一撃に戦車の防御力を得た秀一郎も苦悶の表情を見せる。

 

「吹っ飛べぇえええ!!!」

 

ガコンッ!!

 

ヴィータの雄叫びと共に今度は秀一郎が両足が地面を滑りながら吹き飛ばされる。

 

「どうだ、こんにゃろう!」

 

やられたらやり返すの精神だろうか?

そんな微妙にドヤ顔を見せるヴィータに対し…

 

「っ~~…マジかよ。今の状態で、戦車の防御力を吹き飛ばすのかよ…」

 

秀一郎は両腕が痺れるのを感じつつも、両腕に妖力を流して無理矢理回復させる。

 

すると…

 

「シュウが吹き飛ぶなんて珍しいものが見れたわ」

 

「だ、大丈夫? 秀一郎?」

 

早紀と紗奈を降した藍香と翔霧がやってきていた。

 

「お前等!? やっぱ、あの2人じゃ荷が重かったか…」

 

人選ミスったかな、と思いつつも、メンツ的に仕方ねぇしな、という気持ちもあったので深くは考えなかった。

 

「ん? そっちの姉ちゃん達はもう勝ったのか?」

 

ヴィータが藍香と翔霧に尋ねると…

 

「えぇ、相性が良かったみたいでね」

 

「準備運動くらいにはなったかな?」

 

事実ではあるが、翔霧の方は何気に酷い言い草だった。

 

「私達はシュウの戦いでも見学してるわ」

 

「あれからどんだけ強くなったか。ちゃんと見せてよね♪」

 

そんなことを言って本当に観戦し始める藍香と翔霧。

 

「お前等な~」

 

物凄くやりにくそうな表情で秀一郎はシュティーゲルに消費した分のカートリッジを装填する。

それはヴィータも同じで秀一郎達が会話してる合間に消費したカートリッジを装填していた。

 

「しゃあねぇ、仕切り直しだ」

 

秀一郎の言葉にヴィータも軽く頷くと…

 

「今度こそ、突破してやるからな!」

 

「ハッ! 言ってろ。俺だってそう易々と抜かせるつもりはねぇよ!」

 

そう言い合って再度構える秀一郎とヴィータ。

 

「相変わらず熱い奴…」

 

「それをあんまり自覚してないけどね~」

 

などと外野の2人は呆れたような眼で秀一郎を見ていた。

 

………

……

 

~紅牙対シグナム~

 

そして、紅牙とシグナムの戦いはというと…

 

ガキンッ!!

 

剣形態に移行したサジット・ファルコンとレヴァンティンが交差していた。

 

「どうやら、剣の腕はまだまだのようだな」

 

鍔迫り合いになった際、シグナムが紅牙に放った言葉だ。

 

「………………」

 

紅牙もそれは自覚していたので、敢えて何も言わなかった。

 

「しかし、剣の腕が未熟だとしても容赦はせん!」

 

そう言い放つと同時に紅牙を一度押し込んでから一旦下がって距離を稼ぐと…

 

ガシュッ!

 

『シュランゲフォルム』

 

カートリッジを消費し、剣形態から連結刃形態へと移行させたレヴァンティンを振るい、紅牙へと攻撃を仕掛ける。

 

「ちっ…!」

 

紅牙も素早く後退しながら剣形態のサジット・ファルコンでレヴァンティンの刃を弾いていく。

 

「飛竜…」

 

それを見ると、シグナムは一旦レヴァンティンを鞘へと収納し、カートリッジを消費させて魔力を圧縮する。

 

「ッ…!」

 

それを見た紅牙もサジット・ファルコンを弓形態へと移行させて左手に持ち直すと、尾を引っ張って魔力を収束させて矢を形成する。

 

「一閃ッ!!」

 

しかし、シグナムの方が動作的に速かったらしく、魔力を乗せた連結刃による強力な一撃を繰り出していた。

 

「(間に合うか!?)」

 

紅牙は内心で焦りつつもサジット・ファルコンから一条の砲撃を撃ち放った。

 

轟ッ!!

 

魔力の乗った連結刃とサジットブラスターが紅牙寄りで衝突すると、凄まじい衝撃波を生んで周囲に拡散していった。

 

「ぐっ…!?」

 

紅牙寄りということもあって衝撃波が鎧越しに伝わり、紅牙も表情が少し険しくなる。

 

「リイン!」

 

「はいです!」

 

と、そんな紅牙の隙を突いていつの間にかシグナムの傍に控えていたっぽいリインが出てきた。

 

「ユニゾンだと…!?」

 

シャマルと共に退いたのを確認していたが、どうやら一度退いてから戻ってきた、というところなのだろうか。

 

「ユニゾン・イン!」

 

シグナムとリインがユニゾンを果たし、その力を底上げする。

 

「ならば、こちらも相応の力を出すか…」

 

そう呟くと、紅牙もまた冥王の力を解放する。

 

「冥王スキル『グラヴィタス・イフリート』」

 

自らの冥王スキルを発動させ、重力を固めて作った球状の魔力球を周囲一帯に配置した。

 

「………………」

 

紅牙の行動に警戒を強めてレヴァンティンを両手で持ち直して構えるシグナム。

 

「ここからは物量戦で行かせてもらう!」

 

自身の周囲に紅の炎を球状にした魔力弾を形成すると、サジット・ファルコンも構える。

 

「(砲撃に、おそらくは誘導弾…それに周辺に配置された妙な魔力球…1人で捌くには少々不利か…)」

 

シグナムは冷静に状況を見極め、レヴァンティンを握る手を少し強める。

 

「リイン。すまないが、魔力を私の身体強化に割り振ってくれ」

 

『攻撃や防御に回さなくていいんですか?』

 

「物量戦で来ると言った以上、本当に物量で押されたらこちらが詰む。ならば、テスタロッサのように回避に専念し、一撃を与える隙を見極める」

 

『了解です!』

 

ユニゾン中のリインとのやり取りを終えると、シグナムは一気に紅牙の懐に入り込もうと加速する。

 

「(やはり、クロスレンジで仕掛けるつもりか)」

 

紅牙もまたそれを察し、シグナムの動きを制限すべく重力球を操り、周囲の物体を吸引する。

 

「っ!」

 

『し、姿勢制御します!』

 

それをリインが魔力で以って姿勢制御する。

 

「この場は既に俺のフィールドだ!」

 

そう言ってサジット・ファルコンからサジットブラスター(通常砲撃)を放つ。

 

「っ!」

 

それを魔力で強化した身体能力で回避するが…

 

「超重力!」

 

砲撃が重力球によって歪曲し、横合いからシグナムに襲い掛かる。

 

「くっ…!」

 

その横合いから来た砲撃を鞘で受け流そうとする。

 

「行け!」

 

しかし、それを素直に紅牙が許すはずもなく、展開してた紅の炎で出来た誘導弾を飛ばして邪魔をしようとする。

 

『フリジットダガー!』

 

シグナムの周囲に青白い短剣型の魔力刃が展開され、紅牙の誘導弾を迎撃する。

 

ジュワッ!!

 

炎熱と凍結の属性攻撃がぶつかり合い、水蒸気が上がる。

 

「ユニゾンとは、このような芸当も出来たのか…(だが、確か…)」

 

その迎撃の様子を見ながらも紅牙は一つ疑問に思ったこともあったようだ。

 

「(まぁいい。ユニゾンのことに関してはユウマも交えて話す必要があるしな)」

 

チラッとはやての方を見た紅牙は頭を戦闘に集中させる。

 

こうしてリインとユニゾンしたシグナムと、冥王とエクセンシェダーデバイスを用いる紅牙との戦闘はお互いに決定打を打たない膠着状態と化していたのだった。

 

………

……

 

模擬戦後。

 

「「「ず~ん…」」」

 

自分で沈んでいるという効果音を呟くぐらいに凹んでいた冥王三人娘。

早紀と紗奈は藍香と翔霧のペアに完敗し、沙羅もシャマルに動きを封じられて良いとこなしだったのが精神的にも辛かったのだろうか。

 

「やれやれ…こりゃ相当に凹んでんな」

 

ヴィータとの模擬戦で結局決着は着かなかったが、概ね力を示せた秀一郎は冥王三人娘を見て肩を竦めていた。

 

「はぁ~…」

 

ユウマはユウマで結局体力が尽きてザフィーラに捕えられたが、善戦した方だろう。今はユニゾンも解いてデヒューラに膝枕されている。

 

「まぁ、私は特に何もしてなかったから…別にこれくらいなら…」

 

などと言ってデヒューラは照れ隠しをしていたが…。

 

そして、紅牙は…

 

「些か不安材料もあるかもしれないが、これが今の俺の眷属の力だ」

 

模擬戦で相手になったヴォルケンリッター、及び藍香と翔霧に現状の眷属の力を説明していた。

 

「まぁ、八神や装者2人の力を見せてはいないが…前者はともかく、後者は力を使うにしても時限式かつ不安定だから許してほしい」

 

「…なんか、不本意な説明なんですけど…」

 

「異議を申し立てるデース!」

 

紅牙の説明に調と切歌が文句を言う。

 

「早くレシピの入手と、それを精製出来る人材を見つけないとな…(ウェルの奴、一体何処に収容されてんだ?)」

 

レシピさえあればアザゼル辺りに人材を紹介してもらうという選択肢もあるが…流石に畑違いが過ぎるかと、すぐさま意識を交渉に戻す。

 

「あと、明日…俺達は仲間と共に教会のクーデター派と一戦交えることになっている。これはあいつらなりのD×Dに対する挑戦であり、おそらくクリフォトもどこかしらで介入してくる可能性が高い」

 

眷属候補のヴォルケンリッターも、飛び入り参加の藍香と翔霧も黙って紅牙の話を聞く。

 

「少なくとも、俺はこの戦いに参戦するつもりだ。死者が出ない実戦形式の戦い、とは聞こえがいいが…おそらく裏ではそれなりの大捕物もあるだろう。教会のナンバー2から4…特に3と4がその辺を考えていないとも思えん。そして、クリフォトがこの戦闘に乗じて仕掛けてきて死者が出るかもしれん。推測の域を出ないかもしれんが…クリフォトのことだ。確実に疲弊した頃合いに仕掛けてくると俺は思っている」

 

「何故、そう言い切れる?」

 

そんな紅牙の意見に対し、シグナムが問う。

 

「元居た組織の後釜だ。そのくらいはしてくるだろう。それに…あのリゼヴィムという男…一度だけ直接見たことがあるが…かなり頭のネジが飛んでいた。聖杯を持つ者としては危険極まりない。それが俺の所感だ」

 

リゼヴィムの言動やヴァーリを挑発していたところを思い出したのか、険しい表情で紅牙も呟く。

 

「その戦いには、シュウ…秀一郎も連れてくつもりなの?」

 

黙って聞いてた藍香が紅牙に尋ねる。

 

「少なくとも眷属の何人かは連れていくつもりだ。秀一郎はその筆頭だな」

 

「そう…」

 

藍香が少し悩む様子を見せていた。

 

「俺が眷属に求めるものは、俺への抑止力だ。王である俺を力づくにでも止められるような、そんな眷属を作る」

 

「おいおい、そりゃ初耳だぞ?」

 

まだ体力的に元気で紅牙の話を聞いてた秀一郎も今の言葉には驚いたようだ。

 

「だからこそ、眷属内でもいくつかの派閥を作るようにしてきたつもりだ。八神、秀一郎、冥王、装者…それをより盤石のものとするためにそれぞれの派閥に組み込む人材が必要だった」

 

それが紅牙なりに考えた眷属の集め方なのだろう。

 

「別に俺のために動けとは言わない。が、力を貸してほしい。これからの戦いを生き抜くために…」

 

そんな紅牙の言葉を聞き…

 

「……いいだろう。主を守るのが騎士の務め。だが、私達ヴォルケンリッターの主はただ1人。それだけは忘れないでおいてもらおう」

 

ヴォルケンリッター側は代表としてシグナムが答える。

 

「十分だ。で、駒を受け取るのは?」

 

「私とヴィータ、そしてシャマルの3人だ」

 

「わかった」

 

それを聞いて紅牙は騎士の駒をシグナムとヴィータに、僧侶の駒をシャマルにそれぞれ渡す。

 

「そっちの2人はどうする?」

 

紅牙は未だ何かを考え込んでいる藍香と、妙にソワソワしてる翔霧の方を見る。

 

「藍香、どうする?」

 

「………………」

 

翔霧の言葉に返答もせずに藍香は考え込む。

 

「今の俺に権限などないが、何か必要なら上に掛け合ってもいい」

 

その紅牙の言葉に…

 

「なら、一つ条件があるわ」

 

藍香が食いつく。

 

「なんだ?」

 

「私と翔霧をシュウの近くに置いてほしいの」

 

「はぁ!?」

 

藍香の申し出に秀一郎が声を上げる。

 

「アンタの言う眷属内での派閥を作るのなら、私と翔霧も何処かの派閥に入った方がいいんでしょ? なら、私達はシュウの派閥に入るわ」

 

「ちょっ、待てお前…なに勝手に話を進めて…」

 

「翔霧も、それでいいわよね?」

 

秀一郎を無視して藍香は相棒の翔霧にも確認を取る。

 

「え? う、うん。秀一郎とまた一緒にいられるなら…私は別にいいけど…」

 

翔霧も承諾するのを確認すると…

 

「なら決まりね。とりあえず、明日の戦闘にも参加するわ。引っ越しはその後にでも…」

 

「わかった。グレモリーに話を通しておこう」

 

紅牙は頷きながら兵士の駒を藍香と翔霧に渡す。

 

「なんでこんなことに…」

 

2人の眷属加入に秀一郎は頭を抱えるが、元々連れてきたのは秀一郎自身なので自業自得とも言える。

 

トクンッ…×5

 

「これで残るは戦車と兵士が一つずつ、か…」

 

渡した駒がそれぞれの人物の体内に入ったのを確認してから紅牙は一言漏らす。

 

 

 

こうして神宮寺眷属も新たなメンバーが加入することになり、戦力を補強するのだった。

 

そして、翌日の夜には教会のクーデター派との決戦が控えていた。

そこでは何が起こるのか…。

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