魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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第百十六話『クーデター派との喧嘩・後編~力こそ真実~』

エヴァルド・クリスタルディ率いるクーデター派チームとの戦闘は無事に幕を閉じた。

しかし、まだヴァスコ・ストラーダ率いるクーデター派チームとの戦闘も続いてたが、それでもデュリオの『虹色の希望』によって戦士達は無力化されていた。

残るは未だ戦意が衰えない老兵…ヴァスコ・ストラーダのみ。

この戦闘の行方は如何に…?

 

 

 

こちら側では駒王学園の校庭(レプリカ)が戦場となっていた。

 

そんな中、戦場に広がってきた虹色のシャボン玉を見つめ、リアスが呟く。

 

「このシャボン玉は…こちらの陣営のものかしら?」

 

それに答えたのは…

 

「えぇ、そうです」

 

こちら側にやってきた木場だった。

 

「このシャボン玉はジョーカーが作ったもので、相手の大切なモノを思い返させて戦意を鈍らせるものだそうです」

 

同じく木場に同行していたイリナが報告してくれる。

 

「エヴァルド・クリスタルディは戦意喪失。今はジョーカーが話し相手になってますよ」

 

さらに忍も状況を簡潔に説明する。

 

「そう。なら、残るは…」

 

それを聞き、リアスはストラーダ猊下を見る。

そのストラーダ猊下も祭服を脱ぎ去り、齢80代という顔に不釣り合いな瑞々しい鋼の肉体をさらし、デュランダル・レプリカを持ってD×Dの前に立つ。

 

「では、教義の時間といこうか。悪魔の子ら、そして異種の子らよ。存分に学んでいきなさい」

 

そう言い放つと、ストラーダ猊下から濃密な重圧が解き放たれる。

 

『---ッ!!?』

 

そのプレッシャーにD×D側の全員が息を呑んだ。

 

「……デュランダルのレプリカ。力は本物の五分の一だと聞くが…猊下が持つ以上、その限りではないだろう」

 

「確かに。さっきのエクスカリバーのレプリカだって本来は本物の五分の一しかないはずだ。それをあそこまで使いこなした人間以上、って考えた方がいいのかね…?」

 

ゼノヴィアの言葉に先程まで戦っていたクリスタルディ猊下の技巧を思い出し、忍がストラーダ猊下を見る。

 

と、最初に木場とイリナが仕掛けようと飛び出す。

 

「ッ!?」

 

が、木場の聖魔剣をストラーダ猊下は素手で掴んでいた。

 

「良い剣筋だ。的確であり、何よりも人間相手にも躊躇いもない。しかし」

 

パキンッ!!

 

聖魔剣が乾いた音を立てながら、その刀身を"素手で"折られる。

 

「素直過ぎる。まだまだ鍛錬が足りない」

 

そう言うと、裏拳を木場に放つ。木場も折れた聖魔剣で防御を試みるが、元々防御力が薄く、裏拳の威力が絶大ということもあってかなり遠くまで吹き飛ばされてしまう。

そこにイリナも仕掛けるが、指で真剣白刃取りを行われた上に遠方に投げ飛ばされてしまう。

 

「なら、魔法で!」

 

ロスヴァイセが魔法のフルバースト攻撃を仕掛ける。

だが、ストラーダ猊下はそれすら避けることもせず、指先一つでロスヴァイセの放った魔法を高速で触れると、その触れた魔法が何故か威力を失っていくように四散していく。

 

「なっ!? 魔法…術式自体を崩したというのですか!?」

 

「魔法とは、計算だ。となると、方程式を崩す理をぶつければ相殺、或いは壊すことも可能なのだよ。特に若い術者は式が洗練されておらず、形だけの場合が多い。僅かな綻びを見つければ、物の数ではないぞ。作りさえわかれば、力で押し通せるのだ」

 

『-----』

 

ストラーダ猊下の言葉にその場の全員が絶句する。

 

《それなら、僕が…!》

 

「加勢するぜ!」

 

闇の獣と化したギャスパーと秀一郎が飛び出す。

それに応えるストラーダ猊下の右拳を一度引く。それに合わせて右腕の筋肉が異常なほど肥大する。

 

「ふんッッ!!」

 

気合一閃と共に右の正拳が繰り出される。その予備動作を見てたギャスパーと秀一郎もそれを寸でのところで避ける。が、2人が避けた先の建物が拳圧の衝撃によって崩壊してく。

 

「嘘でしょ!? 拳の余波だけで、サイラオーグ並みだというの!?」

 

「猊下のパンチは『聖拳』と呼ばれるものだ。パンチにすら聖なる力が宿っている。気を付けてくれ、当たれば悪魔は大ダメージだ!」

 

リアスの驚きにゼノヴィアが解説と警告をする。

 

「だが…!」

 

《懐に入れば…!》

 

ストラーダ猊下の左右から仕掛けるギャスパーと秀一郎。

だが、ストラーダ猊下がデュランダル・レプリカを構えると濃密な聖なるオーラが刀身を包み込み、その刀身と体捌きのみで左右から迫る2人の乱打撃を軽い感じで受け流していた。

 

「《ッ!!?》」

 

信じられないといった表情のギャスパーと秀一郎だが、乱打撃は続いている。

それでもギャスパーがデュランダル・レプリカを抑えようとするが、その膨大な聖なるオーラを目の当たりにして一旦退いてしまう。

それに合わせるように秀一郎もまた一時的に後退する。

 

《なんだ、この聖剣の力強さは!?》

 

「決定打が打てなかった…いや、そもそも決定打なんて与えられんのか…?」

 

ギャスパーと秀一郎がそれぞれ退いたのを見て…

 

『なら、今度は俺が!』

 

匙が邪炎を滾らせ、複数のラインを伸ばしてストラーダ猊下に仕掛ける。

それを受け、ストラーダ猊下がデュランダル・レプリカを軽く薙ぐ。たったそれだけの動作にも関わらず、D×D側の全員が体勢を低くしていた。その直後、全員の頭上に何かが通り過ぎていく。

見れば、模造の建物に横一文字の斬撃による痕跡が残っていたが、その波動が鋭過ぎたためなのか、建物は崩壊もしておらず、余波で窓ガラスにも異常がない、という現象を引き起こしていた。

 

『クソッ!』

 

匙のラインも真っ二つになるが、それでも邪炎を放ち続ける。

しかし、その邪炎もデュランダル・レプリカや聖拳の余波でその全てが打ち払われる。

 

『なら…!』

 

結界技で封じ込めようとした匙であるが、ストラーダ猊下はその場で一回転する勢いを利用してデュランダル・レプリカを振るい、その結界技をも斬り裂いていた。

 

『なんなんだ、このジジイッ!?』

 

あまりの状況に匙も思わず叫んでいた。

 

「貴殿らはあまりに神より賜った力……神器に頼り過ぎている。まぁ、一部例外もあるようだが…」

 

そう言うとストラーダ猊下はチラリと忍を見る。

 

「私の力に理屈なんてものはない。愚直なまでの鍛錬と無数の戦闘経験が私の血となり肉となっただけだ。一心不乱なまでの神への信仰と、己の肉体への敬愛を忘れなければ、パワーは魂にすら宿るのだ。悪魔と異種の子らよ。貴殿らの魂にパワーは宿っているのか?」

 

そう問われたD×Dのメンバーはそれぞれ思うところがあったようだ。

 

「爺さん。俺も、本気を出させてもらうぜ…!」

 

「魂、か。この受け継いだ魂に恥じないように…!」

 

「意味が分からん。が、要は力で捩じ伏せれば問題なかろう?」

 

イッセー、忍、紅牙が前に出て、それぞれ『真紅の赫龍帝』、『武鬼』、『紅冥王』の姿と化して横並びになる。

 

「一番手は貰うぜ!!」

 

龍翼を広げたイッセーが真っ直ぐにストラーダ猊下へと向かい、その右腕を龍剛の戦車形態へと変化させて渾身の一撃を放っていた。

 

「……ッ!!!」

 

その一撃をストラーダ猊下はデュランダル・レプリカを用いて真っ向から受け止め、イッセー渾身の一撃を完全に呑み込んでいた。

両者はそれぞれ一旦退くと同時にストラーダ猊下の左右から忍と紅牙が仕掛ける。

 

「ふッ!!」

 

忍は皇鬼双腕の右腕側に妖力を一極集中させた渾身の一撃を…。

 

「はぁッ!!」

 

紅牙は紅の炎を右腕に纏わせた一極集中させた渾身の一撃を…。

 

どちらも本気の一撃である。しかし、ストラーダ猊下はデュランダル・レプリカの刀身で忍の拳を受け止め、紅牙の拳は素手で受け止めていた。

 

「「ッ!!」」

 

イッセー同様、紅牙の拳の威力が完全に呑み込まれる中、忍の拳はというと…

 

「良い拳だ。が、借りものの力では私には届かないぞ、異種の戦士よ」

 

「ぐっ…!」

 

ストラーダ猊下がそれだけ言うと、忍は悔しそうに紅牙と共に一旦離れる。

それに合わせ、戻ってきた木場とイリナが再びストラーダ猊下に仕掛け、そこに朱乃と小猫も参加する。

しかし、それをも歯牙に掛けないストラーダ猊下の"(パワー)"。

 

そんな中、遂にゼノヴィアも参戦する。

 

「いいぞ! そうだ! それでいい! 何も考えてはいけない! いいか、戦士ゼノヴィアよ! 例え、エクスカリバーと同化していようと、デュランダルの本質は、純粋なパワーだ!! だからこそ、貴殿は選ばれた!! パワーを否定するな! 否定してはいけないッッ!!!」

 

本物とレプリカのデュランダルが鍔迫り合いをする中、まるで教え諭すような言葉をストラーダ猊下は叫んでいた。

 

「だが…パワーの表現は一つではない。この剣の姿は…貴殿が本当に求めたものなのか?」

 

「ッ!!」

 

ストラーダ猊下の言葉にゼノヴィアは何かしら思うところがあったらしく、一旦退いていた。

 

「なら、これならどう?」

 

そこにリアスの必殺技『消滅の魔星』が放たれる。

いくら常軌を逸していようと、この攻撃が当たれば…。

 

だが…

 

「これはこれは……老体にはちと厳しい代物だ。しかし…」

 

ストラーダ猊下はデュランダル・レプリカを天高く掲げると、尋常じゃない聖なるオーラをその刀身に収束していく。

 

カッ!!!

 

そして、それを徐々に迫ってきた魔星に対して振り下ろすと、凄まじい光量が周囲を包み込んで全員の視界を遮っていた。

そして、再び目を開けた時、彼等が見たのは…

 

「ッ!!?」

 

真っ二つに斬られた魔星の姿だった。

 

「……こういう時、笑うしかないのかしらね…?」

 

引き攣った笑みを浮かべるリアスに対し、流石に肩で息をしていたストラーダ猊下が告げる。

 

「ふぅ……いいかね? デュランダルは、『全て』を斬れるのだよ。例え、それがバアルの滅びだろうと…例外は、ない」

 

レプリカでこれをやってのけたストラーダ猊下に、現所有者のゼノヴィアは何を思うのか?

 

「さて…それでは次は私の番、ということでよろしいでしょうか?」

 

そう申し出てきたのは、アーサーだ。ずっと静観していたが、遂に動くようだった。

 

「ほぉ……まさか、この歳になって見ることが叶うとは…」

 

アーサーの持つ聖王剣『コールブランド』を見ながら感嘆の声を上げるストラーダ猊下。

 

「あなたの持つ剣が本物ではなくて残念ですが…そのパワーだけでもこの身に受けたいと思いましてね」

 

対するアーサーもまた不敵に返していた。

 

そこからのストラーダ猊下とアーサーの戦闘は壮絶の一言だった。

力の体現者にして最強の人間であるストラーダ猊下。

最強の聖剣である聖王剣・コールブランドの使い手に選ばれし技巧派の剣士アーサー・ペンドラゴン。

2人の戦闘は一線を画し、高速剣技の中でお互い狂喜の笑みを浮かべていた。

 

だが、その戦闘も数分しか経たずに終わりを告げる。

何故なら…

 

「……素晴らしい。が、ここでやめましょう。これ以上は、私がショックで立ち直れなくなる」

 

「……すまないな、若い剣士よ」

 

アーサーから戦いをやめ、老戦士は苦笑しながらもそれを了承し、謝罪していた。

 

「あと、30年……いや、20年早く出会っていれば、最高の戦いが出来たでしょう。これ以上は……悲しくなるのでね」

 

アーサーが戦いから退いた際、そのようなことを漏らしていた。

 

そして、その戦いに触発されたかのようにゼノヴィアが前に出る。

今度はエクス・デュランダルではなく、右手にデュランダル、左手に七つが統合された真のエクスカリバーを持って…。

 

「そうだ! それでいいッ! デュランダルの元使い手である私からしたら、エクス・デュランダルは疑問の塊でしかない! デュランダルもエクスカリバーもそれぞれで既に完成されている。何故、組み合わせる必要があった? それは貴殿がデュランダルに翻弄され、『補助』などという愚行をエクスカリバーに課したからに他ならない。貴殿は…一刀でも二刀でも戦える戦闘の申し子だ! 否定するな! パワーを信じてこそ、力は本物になるッ!!」

 

まるで今のゼノヴィアの姿に歓喜するかのようにストラーダ猊下は言葉を紡ぐ。

対するゼノヴィアの方も二刀流となった聖剣から聖なるオーラが溢れ出していた。

 

「ようやく、再会出来たな。デュランダルよ。そう、そのデュランダルこそが本当の姿だ! さぁ、戦士ゼノヴィアよ。何も考えず、ただただ来るがいい。デュランダルの真実は破壊の中にしかないのだ!」

 

「……はい!」

 

2人のパワーを体現する剣士は、ゆっくりとしていながらも力強い歩幅で距離を詰めていく。

 

そして…

 

「おおおおおおおおおおおおおおッ!!!」

 

「はあああああああああああああッ!!!」

 

2人の剣戟はバトルフィールドの空間をその破壊の余波だけで壊さんばかりの波動を放っていた。

が、ゼノヴィアの持つ二刀の聖剣にデュランダル・レプリカとストラーダ猊下の体力が先に参る結果となり、これで決着かというところでレグレンツィ猊下が間に入る。

 

彼の訴えは…尊く、そして純粋であった。だからこそ、ストラーダ猊下も再び剣を取ったのだという。

レグレンツィ猊下の両親は悪魔に殺され、他の戦士も悪魔や吸血鬼、異種によって人生を変えられた者が多い。だからこそ、蜂起に参加した。

イッセー達が感じる平和の中にも、苦痛や憤りを感じる者がいる。

その訴えを…したかったのだ。

 

それでも、と…仲間を、大切な人達との平穏な暮らしを守るために戦ったのだと…木場やゼノヴィア、イリナが声を上げる。

その声にストラーダ猊下も満足そうな笑みを浮かべていた。

 

だが、一度振り上げた拳の落としどころは必要だと、自らの首とクリスタルディ猊下の首を差し出すと言い出すストラーダ猊下。

しかし、それは誰も求めていないし、どのように落とし込むかで悩んでいた。

 

そんな時だ。

 

「私がころころしてあげるわよ~ん♪」

 

魔女ヴァルブルガ…クリフォトの乱入だ。

さらに邪龍軍団を召喚し、この場を蹂躙しようと企んでいた。

 

しかし、その企みはロスヴァイセによって阻止される。

彼女がトライヘキサの封印術式を研究する過程で、アーシアが手懐けた量産型邪龍を解析し、今回のバトルフィールドにその機能を停止させる術式を組み込んでいたようだった。

このようなイベントに乱入するのはクリフォトの常套手段。それを逆手に取った形となる。

 

状況が不利になった途端、ヴァルブルガは逃げの一手を取るが、それも阻止される。

その阻止した者の名は、『刃狗』こと幾瀬 鳶雄。

彼はヴァルブルガが予め仕込んでいた数万単位のランダム脱出経路を"全て断った"のだ。

しかもヴァルブルガ出現からの僅かな時間で、だ。

 

退路を断たれたヴァルブルガは自らの神滅具の亜種禁手『|最終審判者による覇焰の裁き《インシネレート・アンティフォナ・カルヴァリオ》』を発現させた。

この禁手の特徴は聖十字架に磔にした対象によってその姿や特性を変化させるというものらしい。

ヴァルブルガが磔にした対象は、八岐大蛇の魂の半分。

 

それに立ち向かうのはイッセーとゼノヴィア。

イッセーは宝玉から出した小型飛竜を飛ばし、ゼノヴィアは2本の聖剣の聖なるオーラを聖剣の相乗効果で高めていく。

その邪魔をしてくる紫炎の八岐大蛇だが、それを仲間達が防ぎ守ってくれる。

 

そして、ゼノヴィアの新技『クロス・クライシス』によって禁手である八岐大蛇を倒し、イッセーもまたヴァルブルガにクリムゾンブラスターを見舞って撃破していた。

 

 

 

戦後。

全てが終わったバトルフィールド内で、クーデター派の戦士達は各々の武器を下げ、投降の意を示していた。

先導していた3人の枢機卿も素直に投降することとなる。

 

そんな中、撃破したヴァルブルガの傍に紫炎の種火が落ちていて、それを鳶雄さんが専用のランタンで以って回収していた。

彼曰く『この神滅具はね。通常起こる次代所有者への継承とは別に己の意思で主を渡り歩くこともあるんだよ。今回はあの魔女の神器だったけど、ある時は違う使い手の神器だったこともあるんだよ。話では、この神器自体に何者かの意思が宿っていて、次々に主を変えることが出来る特性を有しているそうだ。だから、こうやって回収しておかないと、また主を求めて彷徨うだろうからね』とのことだった。

 

ただ、ストラーダ猊下は連行される前に置き土産を残していた。

 

一つはアーシアが教会に居た頃に治癒を行った人達からの感謝の手紙。

 

一つは本物の聖杯の欠片。

 

そして…

 

「……イザイヤ?」

 

「っ!? ま、まさか……そ、そんな…っ! トスカ、なのかい…?」

 

木場の教会時代…つまり、聖剣計画時代の生き残りである12、3歳程度で時が止まったままになっていた同志の1人…『トスカ』という少女を保護し、木場達に預けることだった。

彼女は強固な結界型の神器持ちで仮死状態でもその力が解けることはなく、同盟時の堕天使側からの技術提供でようやく解放されたそうだ。

ただ、仮死状態で成長が止まったままだったので、木場とは少し歳が離れた感じになっていたが…。

 

多大なモノを残して連行されていくストラーダ猊下にイッセーが声を掛ける。

 

「待ってくれよ! アンタは…最初からアーシアへの手紙も、木場の同志も、聖杯の欠片も、前部用意してから戦いに臨んでいたのか?」

 

その問いにストラーダ猊下は笑みを浮かべ、右の拳を天高く掲げるのみだった。

その背中は、あまりにも…大き過ぎたのだ。

 

「(皇鬼さん…)」

 

ストラーダ猊下の背を見た忍は、太古の時代で出会った師の姿を思い出していた。

 

………

……

 

クーデター派との戦いから数日後。

駒王学園の生徒会選挙の日がやってきていた。

全校生徒が集められた体育館では生徒会立候補者達によるスピーチが行われていた。

次々とスピーチが続く中、最後にスピーチしたのは、ゼノヴィアだった。

彼女は、スピーチの内容を急遽変更し、自らが感じた駒王学園での学園生活のこと…授業、休憩時間での些細な会話、部活など、それらのかけがえない時間で自分の感じたことを一生懸命に訴えていた。

その締めくくりにとびっきりの笑顔を添えて…。

 

そのスピーチを聞き、全校生徒が湧き上がった。

また、そのスピーチと笑顔を密かに見に来ていたシスター・グリゼルダも涙していた。

小さい頃から見知ったはずのゼノヴィアのスピーチに泣かされたことを嬉しく思うと同時に立派になったのだと、『妹』のことを想っていた。

 

ただ、そのゼノヴィア本人が体育館の外にやってきて、妙なことを『姉』であるシスター・グリゼルダに相談したことでお怒りを受けてしまってしまっていたが…。

 

 

 

後日、駒王学園・新生徒会役員は以下のように決まった。

 

新生徒会長、ゼノヴィア・クァルタ。

新副会長、匙 元士郎。

新書記、巡 巴柄、加茂 忠美、百鬼 黄龍。

新会計、草下 憐耶、仁村 留流子、ミラーカ・ヴォルデンベルグ。

 

………

……

 

ゼノヴィアの生徒会長当選パーティーが兵藤家で行われた日の夜。

アザゼルからの呼び出しでオカ研のメンバーが彼の研究ラボに呼び出されていた。

要件はヴァレリー・ツェペシュのことだ。

先日の戦後処理の時にストラーダ猊下から渡された本物の聖杯の欠片によってヴァレリー・ツェペシュが目覚めたのだ。

 

ただ、それは亜種である神器側の聖杯をクリフォトから奪還出来なかった時の『保険』という意味合いもあった。

奴等が聖杯を盾にする可能性もあるからだ。

 

そんな中、ソーナからリアスに連絡が入る。

ライザー・フェニックスとレイヴェルについてだ…。

 

 

 

時を同じくして…

 

「………………」

 

とある海辺の町の浜辺に騎士甲冑を身に纏った少女が佇んでおり、彼女は蒼く輝く月を見上げていた。

 

「姉さん。"あの人"の居場所がわかったよ」

 

そこに同じ騎士甲冑を身に纏った少女と似た風貌の少女が現れて報告する。

 

「そう…どこに?」

 

「地球ってところの駒王町って場所みたい。隣接した世界ってのが幸いだったね」

 

「なら、私が行ってくるわ」

 

「騎士団長自らが動かなくても、私が…」

 

少女は姉と呼んだ少女にそのように言うが…。

 

「いえ…私自らが赴きたいんです。だって…あの人は、私の…」

 

そう言って憂いの表情を見せる少女。

 

「姉さん…」

 

そんな少女を妹の少女が心配そうに見つめる。

 

「……カイト…どうして…」

 

少女は確かに『カイト』と呟いていた。

 

 

 

この少女達は何者なのか?

妹は姉のことを騎士団長とも言っていたが…。

 

新たな運命の歯車。

それが回り出す時、新たな王が誕生するための戦いが始まる。

その代償は…きっと…。

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