魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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第百十八話『奇跡と絶望、黙示録の獣』

イッセーのご両親がクリフォトに拉致られ、オーフィスもまたクリフォトの襲撃を受け、事態が悪い方へと向かう。

その報を聞き、イッセーは静かに…しかして、怒りで我を忘れていた。

それを律したのは親友の1人でもある木場だった。

そうしてイッセーが冷静さを取り戻した直後、ヴァーリと共にいた黒歌とルフェイが合流し、アグレアスの位置を特定したと情報をもたらした。

 

だが、問題は他にもあった。

ブルートピアからの来訪者と蒼き龍の痣を持つ者達の出現だ。

何とも間が悪いとしか言いようがないが、海斗の問題でもあるので、そちらに丸投げして今はアグレアスへの奇襲作戦を優先することをD×Dのメンバーには通達されている。

 

アグレアスへの突入メンバーはグレモリー眷属、シトリー眷属、御使い、鳶雄さん、黒歌、ルフェイ、忍、紅牙が中核となる。

サイラオーグ・バアル眷属とシーグヴァイラ・アガレス眷属は冥界、紅神眷属と神宮寺眷属の残りのメンバーは駒王町でそれぞれ待機し、頃合いを見て合流することになっている。

 

アジュカの協力もあり、アグレアスの都市部へと転移する作戦を立てたD×D。

だが、その転移術は禁呪法の類らしく、転移させる人数にも制限があるとのこと。

第一陣は陽動の意味も込めてシトリー眷属とデュリオを筆頭とした御使い、紅牙。

第二陣は本隊としてグレモリー眷属、イリナ、黒歌、ルフェイ、忍。

鳶雄さんは本隊と一緒に行くと同時に単独行動に移るとのこと。

そこにアグレアスの近くで待機しているというヴァーリチームも参戦する予定だ。

また、アザゼルも単独でアグレアスの動力部へと向かうことになっている。

 

アグレアスの情報がもたらされてから僅か半日で、奇襲作戦は実行に移された。

 

………

……

 

アグレアスでの奇襲作戦が実行されていた頃と同時刻。

 

「ふふふ…随分と焦っていますね、リゼヴィムさん」

 

変異フロンティアの内部で投影されたアグレアスの様子を見ていたノヴァがそのように漏らす。

 

「しかし、龍の逆鱗ですか。リゼヴィムさんの焦燥していた様子を見る限り、流石に馬鹿に出来ませんね。確か、彼に悪夢を見せていたのは…黄金の龍王でしたか」

 

ノヴァは邪悪な笑みを浮かべながらリゼヴィムの様子を思い出していた。

 

「ふふふ…リゼヴィムさん。あなたはどのような絶望を抱いて死ぬのでしょうね?」

 

ノヴァが愉悦的な笑みを零していると…

 

「ノヴァ様」

 

ノヴァに仕える六天王の1人であるロンドが姿を現した。

 

「あぁ、ロンドさん。ちょうどいい所に来てくれました」

 

「ノヴァ様のお呼びに応えたまで。それで私に何かご用命で?」

 

「ふふふ。少しばかり駒王町へ赴いてください。素体集めをお願いしたいのです」

 

そのような命令をロンドに伝えていた。

駒王町にはまだ紅神眷属と神宮寺眷属のメンバーが控えている。

そんな中、わざわざ駒王町を選ぶ必要とは…?

 

「実験用の素体を?」

 

「えぇ、今回は"あの世界の使い魔"を使った実験をと思いましてね」

 

それを聞き、ロンドは"あの世界"というのを察した。

 

「あの世界……"獅子"の眠る世界ですか」

 

「そうです。彼の世界には未だ適合者は現れていません。まぁ、あのような人物では御せるモノでもありませんしね。選定条件も不明ですが…まぁ、獅子なのだからそれ相応の条件であることには違いありません。そこは予測して何とでもしましょう」

 

「なるほど。ならば、狙いは…」

 

ロンドもノヴァの意図を察し、標的を確認する。

 

「カイト・アトランタ・アクエリアス。彼の使い魔達を連れてきてください。あぁ、別に殺しても構いませんよ。肉体さえあれば、心など如何様にも作り替えられますから」

 

「御意」

 

ノヴァの命を受けたロンドはノヴァへと一礼し、その場から去っていく。

 

「ふふふ…最近は量産型龍騎士や"アレら"に時間を費やしていましたが、たまには新鮮な素体も使いませんと、鈍りますからね」

 

邪悪な笑みを浮かべたまま、ノヴァはアグレアスの映った投影映像に目を向けた。

 

………

……

 

一方、アグレアスでの戦闘はかなり派手に行われていた。

 

シトリー眷属、御使い、紅牙からなる先遣隊による陽動でアグレアスの都市部のあちこちから黒煙が上がっていた。

そこに本隊であるグレモリー眷属、イリナ、黒歌、ルフェイ、忍、鳶雄さんもアグレアスへと転移し、それぞれの戦いが始まった。

 

オカ研メンバーはアグレアスの庁舎へと向かい、それをフォローするために陽動部隊と同様に忍が単独で派手に騒ぎを起こす。

鳶雄さんに関しても単独で行動を開始していた。

 

オカ研メンバーはアグレアス庁舎を守るニーズヘッグを筆頭とした量産型邪龍を相手にしていたが、イッセーとリアスの合体技『深紅の滅殺龍姫(クリムゾン・エクスティンクト・ドラグナー)』を披露していた。

この合体技は簡単に言えば、イッセーが出現させた飛龍をリアスの身体に張り付かせて鎧を形成させたものだ。

但し、イッセーは飛竜の能力は使えなくなるが、その分リアスも赤龍帝の力を一部使えるという利点が生まれていた(もちろん、時間制限ありだが…)。

 

そうしてイッセーとリアスがニーズヘッグを圧倒していたが、フェニックスの涙を用いて回復したニーズヘッグの前にクロウ・クルワッハが現れる。

本来のドラゴンの姿となってニーズヘッグを圧倒する最凶の邪龍…クロウ・クルワッハ。

 

その姿を見て、イッセーは僅かながらも心を奪われていた。

彼の理想とするドラゴンの在り方…それをクロウ・クルワッハにも見出したが故だろう。

 

そして、イッセーはアーシアを連れて庁舎へと突入する。

その護衛にはゼノヴィアとイリナが同行していた。

 

アグレアス庁舎を進む中、量産型邪龍の相手をゼノヴィアとイリナに任せ、イッセーとアーシアは先へと進む。

 

だが、そこでディハウザー・ベリアルによる冥界全土に向けての放送が流れていた。

レーティングゲームの闇。

それはアジュカがD×Dへと伝えた情報そのものだ。

その過程で、王者ディハウザー・ベリアルは従姉妹であるクレーリアのことも少し触れていた。

全ては愛していた家族を古い悪魔によって消されてしまったことへの復讐…。

 

放送が終わる頃にはイッセーとアーシアも最上階の展望台へと辿り着いていた。

そこで待っていたのは王者ディハウザー・ベリアルと、リゼヴィム・リヴァン・ルシファー。

さらにそこにヴァーリもやってきた。

そして、そこにはイッセーのご両親が観客と称されて連れてこられていた。

 

イッセーは王者と、ヴァーリはリゼヴィムと対峙し、それぞれの戦いが始まる。

 

しかし、戦いはイッセーとヴァーリの劣勢。

その中でリゼヴィムは王者に指示を出し、イッセーに赤い液体を飲ませた。

その結果、イッセーの頭部はドラゴンのものとなり、リゼヴィムはその事実と共にイッセーが一度は死に、今の彼はその座を奪ったバケモノなのだと、彼のご両親に告げた。

 

リゼヴィムの告発にイッセーは絶望し、ご両親を助けた後に消えることを決意しながらご両親に謝罪した。

 

が…

 

「お前…イッセーだよな? そうなんだろ?」

 

彼の…兵藤一誠のご両親は、結果的にバケモノの姿になってしまった息子を…受け入れていた。

それは彼が生まれ、生きてきた17年間…普通の、一般家庭で、異形とも関わりのない極々平凡な家族の絆が見せた奇跡。

それに呼応するかのようにイッセー達家族を温かな光が包み込む。

 

そこでイッセーは自分が望まれて生まれたことを知る。

本当なら兄弟姉妹がいたかもしれないという事実も知ったが、それでも望まれて生まれてきたのだと…イッセーは両親から愛情を注がれて育ってきたのだと…知った。

 

光が収まり、現実世界へと意識を戻したイッセーは…リゼヴィムへと何度も突貫する。

家族の声援を受け、倒れても倒れても何度も何度も立ち上がり、遂には王者の戦意を挫く。

 

そんな中、リゼヴィムがご両親とアーシアを狙うが、アーシアが遂に禁手を発現させ、黄金の龍王の加護を得た聖女の守りが、その攻撃を無力化する。

 

そして…更なる奇跡が起きる。

 

「我に宿りし紅蓮の赤龍よ、覇から醒めよ」

 

『我が宿りし真紅の天龍よ、王と成り啼け』

 

「濡羽色の無限の神よ」

 

赫赫(かっかく)たる夢幻の神よ』

 

「『際涯を超越する我等が禁を見届けよ』」

 

「『汝、燦爛の如く我等が燚にて紊れ舞え』」

 

「『《Dragon ∞ Drive!!!》』」

 

龍神化。

オーフィスの力を得たイッセーの新たな力の発現だ。

 

この力によってイッセーはリゼヴィムの神器無効化を無限という質量で突破し、追い詰めることに成功する。

多大なダメージを負ったリゼヴィムは逃亡したが、それをヴァーリが追い掛ける。

その際、ヴァーリはイッセーに賛辞を送っていた。

 

残った王者は、イッセーから天界で邂逅したクレーリア・ベリアルの魂について聞くと、己の負けを認めて投降するのだった。

しかし、龍神化の代償で、イッセーは…。

 

………

……

 

少しだけ時は戻り、アグレアスに本隊が突入した頃、駒王町では…。

 

「………………」

 

海斗が1人、出歩いていた。

 

「(ちょっと考えればわかることなのに…俺は、なんてバカなんだろう…)」

 

海斗は半日前に出会った4人の痣を持つ少女達…その内の1人である唯のことを考えていた。

 

「(昔の記憶は朧気だ。母さんとこっちに来る前の記憶は曖昧だ。その曖昧の中に、唯さんと過ごした記憶があるのか?)」

 

だが、それでも…

 

「(だけど…シルトと過ごした時間を否定することも出来ない…いや、したくないのか…)」

 

雲隠れしてから共に過ごし、心を通わせてきたシルトのことを想うと、胸が苦しくなった。

 

「(わかってる。本来、使い魔との恋愛はご法度だ。なら、唯さんを選ぶのは自然なことだ。けど…それはシルトの想いを否定することになる。しかし、唯さんの想いはどうなる…?)」

 

海斗は答えの出ない問答を心の中で繰り返していた。

 

「(俺は…どちらを選べばいいんだ…?)」

 

ハーレムを目指すイッセーや大切な人を守るという名目で女性を囲う忍を短い期間ながら間近で見てきた海斗だが、こと恋愛に関しては真摯でいたいと感じていた。即ち、1人の女性を愛すること。王の身分でありながら父も1人の女性を愛していた。それの影響も少なからずあるのだろうか…?

そのせいか、今代は海斗以外に王位継承権を持つ子供はいない。それはそれで問題だろう。王子が死ねば、次の王位は誰が継ぐのか?

一応、ネオアトランティス王国では蒼き龍の痣の頭部が出現した者、とはなるが…それも不確定要素が大き過ぎる。

どこの馬とも知れぬ者が王位を継げば、それは国の破滅に繋がる可能性が高いからだ。

 

そういう事情を加味したとしても、痣が出現した海斗はいずれは王となる身。ならば、王としての務めを果たさなくてはならない。

その務めとは、世継ぎを残すこと。ネオアトランティス王国は話に聞く限り王制が敷かれている。ならば、次世代…子供を作ることがもっとも大事となろう。

正妻に側室…そういうものも本来なら考えなくてはならない。

しかし、海斗は思い悩んでいた。

1人の女性を愛するべきだ、という考えに囚われた故の苦悩だろう。

 

「………………」

 

白い息を吐きながら、海斗は空を見上げる。

時間は深夜。

夜空の星を見つめ、海斗は自らの答えを出そうと考えていた。

 

「こんなざまじゃ、王位なんてとても継げないな…」

 

自嘲するように言葉を紡ぐと、帰路へと着こうとする。

 

すると…

 

「カイト・アトランタ・アクエリアス」

 

海斗の向かおうとした先から人影が向かってきており、その人影は海斗の名を口にしていた。

 

「誰だ…?!」

 

ブルートピアからの追手かと身構える海斗だが…

 

「貴様に名乗る必要はない」

 

その人影はそう言い放つ。

 

「(追手か? いや、なら何故こんなにも堂々と? 俺の名前を知ってた理由…目的はなんだ?)」

 

海斗が色々と疑問を浮かべていると…

 

「魔剣創造」

 

人影はそう呟き、両手に夫婦剣を握る。

 

「っ!?」

 

「任務を遂行する」

 

海斗が息を呑む中、人影…ロンドはノヴァからの命を実行するために行動を開始する。

 

「海斗ッ!!」

 

と、そこに様子を見に来ただろうアルカがロンドに仕掛ける。

 

「(探す手間が省けたか)」

 

ロンドはそんなことを考えながら右手の魔剣の刀身でアルカの拳を受け流し、そのまま海斗の方へと誘導する。

 

「(ッ!? こいつ…!)」

 

ロンドの顔を見てアルカの表情が険しくなる。

 

「(もう1体は…)」

 

シルトの姿を気配で探るロンドだが…

 

「ッ!!」

 

そこにさらに別の人物が仕掛ける。

 

「?」

 

その気配に疑問を抱きながらもロンドは左手の魔剣でその攻撃を逸らす。

 

ギィンッ!!

 

まるで金属と硬い何かがぶつかり合ったような音と火花を散らし、ロンドは右目をそちらに向ける。

 

「何者だ?」

 

そこにはハイネの姿があり、右手で手刀を突き出した形でロンドの魔剣と斬り結んでいた。

 

「ハイネ! 下がりなさい!」

 

「ハッ!」

 

さらに声が上がると同時にハイネもその場から後退し、そこに間髪入れずクナイのような物体が投げつけられる。

 

「………………」

 

ロンドは投擲された物体を一瞥すると、流れるような体の動きだけでその全てを回避してみせた。

 

「避けられた!?」

 

「只者ではなさそうですね…」

 

驚きの声と冷静な声を漏らすのは奈緒と唯の灰原姉妹だった。

 

「海斗さん、大丈夫ですか!?」

 

その後ろにはシルトの姿もあった。

 

「(対象2体を捕捉)」

 

海斗を守るアルカと、灰原姉妹の後ろに控えるシルトを見つけ…

 

「禁手化」

 

ロンドは躊躇なく禁手を発動する。

ノヴァから殺してもいいと言われている以上、任務を迅速に達成するために必要だと判断しての行動だろう。

ロンドの力強い言葉を受け、周囲の空間に無数の夫婦剣が一斉に地面に突き刺さるように形成されていく。

 

「「「「「ッ!!?」」」」」

 

海斗、アルカ、唯、ハイネ、奈緒がその現象に驚くのを感じながらも、ロンドは特に感情を表に出すこともなく最初に両手で持っていた夫婦剣を海斗目掛けて投擲する。

 

「させっかよ!」

 

それを当然の如くアルカが魔力を纏わせた拳で迎撃する。

 

「………………」

 

さらにロンドは近くにある夫婦剣を手に取ると、連続して唯、奈緒、ハイネへと投擲する。

 

「っ…」

 

「こなくそ!」

 

「ッ!」

 

それぞれが夫婦剣を迎撃する中…

 

「まず、1体…」

 

ロンドがそう呟くと…

 

グサッ!!

 

「………………ぇ…??」

 

投擲されたのか、それとも別の手段によるものか、唯達の後ろに控えていたシルトの背中から大量の夫婦剣が飛来し、その体を貫いていた。

 

「「シルト!!?」」

 

その光景に海斗とアルカが声を上げる中…

 

「わ、たし…な、ん…?」

 

自分に起こったことがいまひとつわかっていないシルトが焦点の合わない瞳で自らの腹部から突き出た夫婦剣の刀身を見る。

 

「--------」

 

シルトが自らに起きたことを理解し、声にならない声を上げると…

 

「お前ぇぇええ!!」

 

「テメェぇええ!!」

 

激昂した海斗が魔力砲撃をチャージし、アルカもまた憤怒の表情でロンドに向かう。

 

「………………」

 

その2人の様子を冷めた表情で見るロンドは機械的な言葉を紡ぐ。

 

「2体目」

 

その手には、いつの間にか柄頭にベルトの付いた特殊なレイピアが保持されていた。

 

ヒュッ!!

 

ロンドはレイピアをアルカに向けて投擲した。

 

「そんな攻げ……」

 

ザシュッ!!

 

アルカの言葉が最後まで紡がれることはなく、さらに回避しようとしたアルカの額にはロンドが投げたはずのレイピアが深々と貫いていた。

 

「アルカぁああ!!!」

 

シルトに続き、アルカまでも目の前で傷つけ…否、殺された海斗は怒りのままに魔力砲撃をロンドへと叩き込む。

 

「………………」

 

しかし、そんな怒りの感情任せな砲撃がロンドに通用する訳もなく、大量の夫婦剣による盾で防がれる。

 

「あああああああああ!!!」

 

それでも魔力砲撃に気や霊力、妖力を上乗せして威力を高めようとする。

 

「………………」

 

ロンドは冷静にベルトを引き戻しながらアルカの遺体を手繰り寄せると、盾にしてた夫婦剣が吹き飛ぶのを見てアルカの遺体を盾に使った。

 

「はぁ……はぁ……ッ!?!」

 

全力の魔力砲撃を撃ち尽くした海斗は、ロンドが盾にしたアルカの遺体を目にして心が砕けそうになった。

 

「お、俺、は……はっ、はっ…!?」

 

「カイト様!」

 

海斗の元に唯が駆け寄り、ハイネと奈緒が再びロンドに仕掛けようとしたが…

 

「任務遂行を確認。これより撤退する」

 

気による身体強化で、その場を飛び退いてシルトの近くに着地すると、アルカの遺体と死に体のシルトをまるで物のように担ぎ上げる。

 

「ッ!? ま、待て!!」

 

それを見て唯に支えられながら海斗がロンドに手を伸ばすが…

 

「………………」

 

ロンドは反応せず、その場に出現した次元の裂け目に飛び込み、その姿を消していた。

 

「あ、るか……しる、と……」

 

伸ばした手は虚空を彷徨い…

 

「あ、ああ…あ……」

 

海斗は自らの無力さを呪い…

 

「うわあああああああああああ!!!!」

 

絶望の絶叫を上げていた。

 

これがアグレアス奇襲戦の裏で駒王町で起きた出来事。

海斗は…大切な人達を同時に失ったのだった。

 

………

……

 

アグレアスの裏でそんなことが起きてるなど誰も思わず、事態は動いていく。

 

単独でアグレアスの動力室へと向かっていたアザゼルがオーフィスの分身体である『リリス』と接触していた。

そこにイッセーとの戦闘でボロボロになったリゼヴィムが現れる。

その様子にアザゼルはどこか予想通りといった具合の反応を見せる。

 

そこに更なる来訪者が現れる。

翼を生やした三つ首の巨大な黒いドラゴン『アジ・ダハーカ』と、褐色の青年のような人間体の姿を取っている『アポプス』だ。

2体の邪龍はリゼヴィムに見切りをつけ、彼の隠し持っていた聖杯を奪取し独自に動くと言い出したのだ。

しかも異世界との闘争に興味を持っていたらしいことも発覚する。

 

そして、2体の邪龍はその場から消えていく。

それと入れ替わるようにヴァーリも動力室前にやってくる。

 

ヴァーリに事の顛末をかいつまんで説明され、上の戦闘風景を何となく察したアザゼルだった。

そして、極覇龍となってリゼヴィムに神器を介さない魔力の刃を向けるヴァーリ。

だが、リゼヴィムを真に屠りたいと願う者がいたため、ヴァーリはその刃を収めた。

 

その者とは…黄金の龍王『ファーブニル』。

夢の中まで執拗にリゼヴィムを追い詰め、今の状況…つまり、雑なイージーミスを連発させた影の功労者。

そして、夢の中で何度も体験した絶望を、遂に現実で受けることになる。

ファーブニルの顎によってリゼヴィムは…この世から退場する。

 

しかし、リゼヴィムの悪意は死んでもなお残り続けた。

動力室に赴いたアザゼルとヴァーリはそこで、復元が進められていた『666(トライヘキサ)』と、大量に量産されていた赤龍帝の鎧を目の当たりにすることとなる。

しかも悪いことに死んだリゼヴィムの魂をエネルギー源としてトライヘキサを強制的に復活させるというものだった。

それだけならまだ…いや、事態は最悪の方向に向かい出していたが、そこにアポプスとアジ・ダハーカが音声のみを飛ばしてトライヘキサと偽赤龍帝軍団をいただき、その上で邪龍のみの世界を築くという野望と宣言を残していた。

 

龍種、ドラゴン。

それは最強の種族の一角。

純粋な力を求め、戦いを好み、己が最強であることを信じ、己の好きなように生きる。

 

そのドラゴン達による戦役が、今幕を上げる。

 

………

……

 

「ふふふ…最後の最期に悪意を振り撒きますか。まぁ、遺言もこの程度のものしか用意できないとは…残念ですよ、リゼヴィムさん」

 

アグレアスでの出来事をモニターしていたノヴァは嘲笑していた。

 

「ですが、次は邪龍の皆さんが次元大戦を引き継いでくれるのなら問題ありません。それにリゼヴィムさんの最期の絶望も糧に出来ました。これで我等が神の復活も近付きました」

 

絶魔の神の像の数か所が僅かに罅割れたような状態なのを確認したノヴァは両手を広げて高らかに宣言した。

 

「さぁ、絶望と混沌の時代の開幕です」

 

これからの時代…。

それはノヴァの言うように絶望と混沌が支配する時代になるのだろうか…?

それとも…。

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