魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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第百二十話『邪龍戦役、終幕』

海斗達がブルートピアへと赴いたのと同時刻。

 

人間界に『666』の出現の報が届いたのだ。

しかも『666』は頭の分だけ分裂が出来るようだったので、ギリシャ、インド、ケルト、エジプトの各神話勢力の領域、人間界の日本近海とヨーロッパ方面のとある高山地方、そして次元の狭間に現れたらしい。

邪龍軍の首魁…アジ・ダハーカとアポプスはそれぞれアジ・ダハーカはヨーロッパ方面、アポプスは日本方面にいるとのことだ。

どちらかが聖杯を所持しているだろうと予測し、アザゼルは『刃狗』チームに調査を要請していた。

 

 

 

この重要局面で、入院中だったイッセーはというと…

 

「………………」

 

病室で静かに駒王学園の制服に着替えていた。

つまり、日本に現れた『666』との戦いに行くことを決めたのだ。

仲間や医師から絶対安静を言い渡されていたが、故郷がピンチの時に自分だけ寝てる訳にもいかないと、イッセーは戦うことを選んだのだ。

 

そして、着替え終えたイッセーは病室から出ると、ヴァーリと出くわす。

その時、イッセーとご両親、ヴァーリとでのちょっとした一幕があり、ヴァーリは楽しそうに笑ったとか…。

 

イッセーとヴァーリ。

現赤龍帝と現白龍皇。

 

この2人の参戦なくして、この戦いの終局は迎えられないだろう。

 

「死ぬなよ、兵藤一誠」

 

「お前こそな、ヴァーリ」

 

生涯のライバルでありながら戦友みたいな2人は、自然と互いの拳をコツンと合わせていた。

 

「来たな、ご両人」

 

病院のあるフロアでアザゼルを見つけたイッセーとヴァーリ。

アザゼルの背にはオカ研、ヴァーリチーム、刃狗チーム、忍、紅牙と勢揃いしていた。

人数の関係から紅神・神宮寺眷属は病院の外で待機しているらしいが…。

 

アザゼルから作戦概要が説明される。

未だ揃わぬヴァレリーの聖杯…それを停止させることが第一目標。

そのために今回は特例としてヴァレリーにも参戦してもらうこととなった。

その準備も抜かりはなかったが、作戦は一発勝負である。

 

そして、この場に集まっているチームの配分は日本方面にはオカ研と紅神眷属が、ヨーロッパ方面にはヴァーリチーム、刃狗チーム、神宮寺眷属がそれぞれ向かうことになっている。

 

そして、現地で合流する予定の勢力もいる。

日本方面ではシトリー眷属、アガレス眷属、御使い、さらに日本を拠点にしている上級悪魔や日本の古くから存在する異能集団『五大宗家』や妖怪連合、特異災害対策機動部二課といった勢力もいる。

ヨーロッパ方面では魔法使い、吸血鬼、教会の戦士、ヨーロッパを拠点に持つ上級悪魔勢や元龍王タンニーンが組織の垣根を超えて集うとのことだった。

 

また、次元の狭間に出た『666』の1体には時空管理局の艦隊も向かったとの情報もあり、特務隊もそこに含まれていた。

流石の管理局も次元の狭間に出たバケモノを放置することを良しとはしなかったか?

色々と憶測もあるが、とにかく各地での戦いが始まる。

 

………

……

 

・ヨーロッパ方面

 

とある山岳地帯にて開戦した邪龍軍と連合軍との戦い。

 

「オラオラ! 吹き飛べや!! エレキトリック・ハマーッ!!!」

 

偽赤龍帝と量産型邪龍を両手足に纏った雷で纏めて薙ぎ払うように吹き飛ばすのは、神宮寺眷属の戦車こと秀一郎だった。

 

「ちょっと、シュウ! 飛ばし過ぎよ!」

 

「そうだよ。もうちょっとペース考えないと!」

 

秀一郎のお目付け役っぽい藍香と翔霧は2人して苦言を呈していた。

 

「うっせぇ! こういうのは勢いも大事だろうが! それに俺ら以外であの偽物の相手も苦しいだろうしな!!」

 

秀一郎は秀一郎で偽赤龍帝の脅威をしっかりと認識しているようだった。

 

「あ~もう! 仕方ないわね。翔霧!」

 

「あいさ!」

 

秀一郎の両脇から出るようにして前に出た藍香と翔霧はそれぞれ刀と拳を構え…

 

「疾風!」

 

「迅雷!」

 

2人の間合いに入ってきた偽赤龍帝と量産型邪龍を瞬く間に屠っていく。

具体的には翔霧が偽赤龍帝を風の拳で殴り、その隙を突こうとした量産型邪龍を藍香が雷の刀で斬り伏せ、さらにその隙を突こうとした量産型邪龍を翔霧がサマーソルトキックを決め、翔霧が体勢を立て直すまでの間に藍香が刀を横一閃に薙ぎ…といった感じで互いの隙を突こうとする敵を次々と捌いていったのだ。

正に阿吽の呼吸と呼ぶに相応しい光景だった。

 

「相変わらず良いコンビだな。お前ら!」

 

その光景に秀一郎は笑いながらもグレンデル型の量産型邪龍と力比べをしていた。

 

「あの頃と一緒にしないでちょうだい!」

 

「そうそう。秀一郎がいない間も、私達だって成長してるんだから!」

 

「ははは。そいつはは悪かった、なッ!!!」

 

そんな会話をしながらも藍香と翔霧が同時に跳んだタイミングでグレンデル型の量産型邪龍を団体様へと投げつける秀一郎だった。

 

「吹き飛べ!!」

 

「散りなさい!!」

 

「消し飛びな!!」

 

秀一郎の炎、藍香の雷、翔霧の風…三位一体の魔法攻撃が団体様に衝突し、大爆発を巻き起こす。

 

「ふん…そっちも少しは進歩してるのね?」

 

「まぁ、お互いデバイスは当時のままだけどね」

 

「ハッ! だからどうした?」

 

秀一郎の傍に着地した藍香と翔霧と共にそんなことを言い合いながらも周囲を警戒する。

 

「デバイスも所詮は道具だ。要は使い方次第ってな」

 

「アンタがそれを言う?」

 

「あはは、秀一郎らしいね?」

 

まだまだ偽赤龍帝と量産型邪龍が迫る中…

 

「まだまだ、戦いはこっからだぜ? お前ら、ついてこれるか?」

 

「「……上等!!」」

 

秀一郎の声に、藍香と翔霧は揃ってどこか嬉しそうに声を上げて答える。

 

 

 

秀一郎達がそんな戦いを繰り広げている中…

 

「やべぇ…なんで同じ3人組なのに、こっちはこんな苦戦してんだ!?」

 

「知らないよ~!」

 

「はぁ…はぁ…相手も、悪いかと…」

 

冥王三人娘はラードゥン型の量産型邪龍と当たっており、なかなかその守りを突破できずに苦戦を強いられていた。

というか、早紀も沙羅も紗奈も突破力に欠けているので、苦戦してるのも頷ける。

 

と、そこに…

 

「こんのぉ!! ぶち抜けぇぇええ!!」

 

神宮寺眷属の一員としてヨーロッパ方面の戦いに参戦していたヴィータがグラーフアイゼンをラケーテンフォルムにして三人娘の相手をしているラードゥン型の量産型邪龍の結界を力技で粉砕する。

 

「紫電、一閃!!」

 

同じ理由で参戦していたシグナムがその隙を突いてレヴァンティンで一撃を加えていた。

 

「「「………………」」」

 

自分達が苦労してたというのに、たった2人の連携でラードゥン型の量産型邪龍を倒され、どこか遠い目をしてしまう冥王三人娘。

 

「ったく、おめぇらなぁ…」

 

アイゼンを自らの肩に担いでヴィータが呆れたように三人娘を見る。

 

「うぐ…」

 

「うっ…」

 

「あぅ…」

 

あからさまに凹む三人娘。

一応、これでも他の量産型邪龍を相手取るくらいの力量はあるのだが…。

 

「落ち込んでいる暇はないぞ。次が来る」

 

「じゃ、オレはさっきの硬いのの殻を破っかな」

 

「だが、ペースも考えろ。カートリッジも無限ではないのだからな」

 

「わぁってるよ」

 

そう言い合いながらシグナムとヴィータがその場から次の戦場へと飛んで向かう。

 

「と、とにかく! ボクらだっていつまでも残念な存在じゃないってアピールしないと!」

 

「そうは言うけどさ…」

 

「他の方達に比べると私達は…」

 

自分で残念と自覚してる辺り、それも自信の無さを助長しているのではないだろうか?

 

 

 

そんな感じで押され気味な冥王三人娘の戦いぶりを後方から見ていた紅牙はというと…

 

「何をしているんだ、あいつらは…」

 

顔を手で覆いながら頭が痛そうにしていた。

 

「ま、まぁまぁ、紅牙君」

 

その傍にははやてが控えていて紅牙を宥めていた。

 

「ユウマ達の方はどうだ?」

 

「そっちはシャマルにはリィンとザフィーラがついてて、ユウマ君には調ちゃんと切歌ちゃんが護衛についてそれぞれ治癒に回ってるよ」

 

「そうか…」

 

はやての報告を聞き、紅牙は静かに独白する。

 

「正直、ユウマを連れてくるのは最後まで迷った。こんな大規模戦闘、死傷者の数も多くなるだろう。負傷者だって重傷者がきっと多い。あいつの持っている治癒能力はあくまでも対象の自然治癒を高めるもの。焼け石に水だろうが…無いよりはきっとマシだ。しかし…」

 

「ユウマ君に悪いと思っとる?」

 

「……あぁ」

 

そんな紅牙の空いている手をはやてはそっと握ると…

 

「優しいね、紅牙君は」

 

「………………」

 

「大丈夫やよ。ユウマ君だって、覚悟してきてくれたんやから…信じよう?」

 

そう微笑みかけていた。

 

「……そうだな」

 

それに答えるように呟いた後、紅牙はサジタリアスを身に纏い…

 

「そろそろ俺も向かう。この場での眷属の指揮は頼む」

 

「うん。任せておいて」

 

はやてにこの場を任せ、ある場所へと向かうことにした。

 

 

 

その場所とは…

 

「………………」

 

ヴァーリが静かに、それでいて自らの龍気と魔力を体内で練っていた。

それはこの戦場に決着を着けるべき者がいるという証だ。

 

と、その時、戦場にいた『666』を見覚えのない結界術式が包み込み、その動きを封じる。

 

そして、彼の元に、数名の人物が集まっていた。

 

「ヴァーリ、行くといい」

 

「決着を着けたい奴がいるんだろう?」

 

鳶雄さんと紅牙がヴァーリの元にやってくると、そんなことを言っていた。

 

「こいつらをこれ以上、暴れさせたくないと思っているんじゃないのか? 破壊が続けば、ヨーロッパ諸国の都市部だけじゃなく…いずれ、のどかな田舎町(・・・)にまで被害が及ぶ」

 

「?」

 

鳶雄さんの言い回しに紅牙が首を傾げるが、ヴァーリにはそれだけで伝わった。

鳶雄さんはヴァーリの…ある事情を知っているのだと…。

 

「だが…」

 

その感情に、ヴァーリ自身、戸惑いを感じているものの、決して不快なものではなく…むしろ…。

 

「そうなのです。ここは私やトビー、ヴァーくんのお友達に任せるのです」

 

そう言ってやってきたのは、ヴァーリの姉役であり、神滅具『永遠の氷姫(アブソリュート・ディマイズ)』の保持者の魔女『ラヴィニア・レーニ』だ。

 

「カッカッカッ、そういうこった!」

 

「リーダーらしいところ、見せてくださいな」

 

「私、ヴァーリについてきてよかったと思ってるわよ?」

 

「私、今世の二天龍はどちらも好きですよ!」

 

さらにはヴァーリチームの面々もやってきてリーダーに向けて激励を送る。

 

「何を躊躇う必要がある? お前は、お前の道を行け!」

 

サジタリアスを纏った紅牙も砲撃を撃ってヴァーリの道を切り開く。

 

「二天龍として、ルシファーとして、その生き方を選んだお前の、一つの答えをこの世界に見せつけてみるんだ」

 

鳶雄さんも優しい笑みを浮かべながらヴァーリにエールを送ると…

 

「さぁ、刃。俺達も行こうか」

 

その瞬間、飛雄さんを中心に闇の世界が広がる。

 

《人と理を斬るなら幾千まで啼こう》

 

《化生と凶兆斬るなら幾万まで謳おう》

 

《遠き深淵に届く名は、極夜と白夜を騙る擬いの神なり》

 

《汝、我らが漆黒の魔刃で滅せよ》

 

《儚きものなり、超常の創造主(かみ)よ》

 

言葉を紡いだ鳶雄さんは、闇の衣を纏った人型の獣と化し、その周囲には暗黒を吐く大型の『狗』達が群れを成していた。

これが、『黒刃の狗神』の禁手『|夜天光の乱刃狗神《ナイト・セレスティアル・スラッシュ・ドッグズ》』…否、鳶雄さんがその禁手を研磨し続けて至った神器の深淵面(アビス・サイド)

 

『|深淵なりし冥漠の獣魔、英傑であれ常夜刃の狗神《ペルフェクトゥス・テネブラエ・リュカオン・エト・フォルティス・デンス・ライラプス》』。

 

闇の獣に斬れぬモノなし。

唯一の例外は、『666』だけだった。

しかし、それでも十分過ぎる戦果を挙げる。

 

「これが…幾瀬鳶雄の…」

 

初めて見る彼の禁手に紅牙も慄いていると…

 

「さぁ、行くのです。ヴァーくん。ここはもうすぐ氷と刃の世界になってしまうのですよ?」

 

ラヴィニアの言葉を聞き、ヴァーリは飛翔した。

ヴァーリが飛翔していった直後、山脈地帯を氷が覆い、そこから歪な刃が生えていくのだった。

 

そして、ヴァーリが目指すは、この戦場での一番の脅威…アジ・ダハーカ。

 

………

……

 

山岳地帯で邂逅せし、ヴァーリとアジ・ダハーカ。

 

そのアジ・ダハーカが語る。

 

今現在起きている各神話世界で広がる破壊の光景。

その光景は、アジ・ダハーカからすれば、『ま、こんなもんだよな』と…。

そして、アジ・ダハーカが思いを馳せる異世界の存在。

 

E×E(エヴィー・エトゥルデ)』。

機械生命体と精霊とが争っている世界。

精霊を司る善神レセトラスと、機械生命体を司る悪神メルヴァゾアが世界を二分して争っているという。

 

その情報を如何にして手にしたのかはわからないが、手始めにそこからコンタクトを取ろうとしているような口振りだった。

 

だが、それらを語るアジ・ダハーカに、ヴァーリはどこか好意的な感情を抱きつつも、危険だと判断していた。

 

そうして両者が、互いに戦いのオーラを滲み出したところで、両者の戦いが始まる。

 

しかし、通常の禁手状態ではアジ・ダハーカの幾万を超える魔法を捌き切れず、白銀の極覇龍に強化して対抗する。

が、それでも極覇龍の力はヴァーリも慣れておらず、体力と魔力をだいぶ消耗してしまっていた。

 

それらの攻防を神器から見ていたアルビオンのよれば、アジ・ダハーカもまた天龍クラスの強さを獲得しているらしい。

 

さらにアジ・ダハーカは煽るようにアルビオンの昔の名…『グウィバー』を出して挑発する。

『グウィバー』…ウェールズの言葉で『毒蛇』を意味する。

白く美しい身体に似合わぬ、毒の力を白龍皇は持っているのだ。

 

さらに、そこでアジ・ダハーカはヴァーリの眼に守るべき何かを見出し、それを確かめるべくアジ・ダハーカはある魔法を発動させた。

 

それは、ヴァーリの深層心理の中で求めた世界を再現する、幻惑の魔法。

この魔法で幾多もの強者を堕とした魔法。

 

その中で、ヴァーリは欲した世界…。

それは、極々一般的な普通の家庭。

イッセーが持ち、ヴァーリが持たなかったモノだ。

その中で、彼は母と名も知らない弟と妹と共に食事をし、遊び、弟妹と共に寝て過ごした。

 

だが、それはヴァーリに新たな覚悟を決めさせるものだった。

あの家族を、守りたい…。

そう誓い、ヴァーリは夢の幻想の中から目覚め、現実へと帰還する。

 

そして、それはヴァーリに新たな力を発現させる。

 

「我に宿りし無垢なる白龍よ、覇の理を降せ」

 

『我が宿りし白銀の明星よ、黎明の王位に至れ』

 

「濡羽色の無限の神よ」

 

『玄玄たる悪魔の父よ』

 

「『窮極を超克する我らが誡を受け入れよ』」

 

「『『汝、玲瓏のごとく我らが燿にて跪拝せよッッ!!』』」

 

顕現せしは、新たなる明けの明星。

ヴァーリの中に眠っていた悪魔の父の血と白龍皇アルビオン・グウィバーとしての力…それら全てが顕現した形態。

すなわち『魔王化』。

背には12枚ものルシファーの翼を広げ、白銀だった鎧も白銀と黒が基調となり、形も覇龍を思わせるような有機的でありながらも流麗なフォルムと化していた。

 

その新たなる姿でヴァーリは天龍クラスとなっているアジ・ダハーカとの死闘を繰り広げる。

ヴァーリの見せるルシファーとしての燿と、アジ・ダハーカの無尽蔵とも言える魔法力のぶつかり合いは、山頂付近の景観をことごとく破壊し続けていた。

 

途中、量産型邪龍と偽赤龍帝がヴァーリとアジ・ダハーカの戦いを邪魔しようとやってきたが、ヴァーリの…否、アルビオン・グウィバーの毒こと『減少』によって量産型邪龍は苦しみ、落下していく。

ちなみに偽赤龍帝の鎧はアジ・ダハーカの怒りに触れたとしてアジ・ダハーカが消し去っていた。

 

そして、ヴァーリとアジ・ダハーカの戦いは終幕を迎える。

三つ首の内、左右の首を吹き飛ばされたアジ・ダハーカは魔法での応戦をやめ、生身での特攻にシフトした。

それを回避しようとしたヴァーリだが、思いの外魔王化のスタミナ消費が激しく回避に失敗する。

しかし、それでもヴァーリは誓ったのだ。

守ると…。

鎧の胸と腹の部分から何らかの発射口が姿を現し、そこに膨大なまでの魔力が収束していく。

アジ・ダハーカを逃がすまいと、捕まえていたヴァーリは…白銀と漆黒の入り混じった絶大の砲撃をアジ・ダハーカへと撃ち込み、勝利を掴み取ったのだった。

 

最期にいずれまた会おうと言い残し、アジ・ダハーカは消え去る。

 

こうしてヨーロッパ方面での戦いは、量産型邪龍と偽赤龍帝の鎧を掃討する戦闘に移行する。

だが、それも日本方面でのギャスパーとヴァレリーの活躍もあって増殖が止まっていた。

しかし、それでも『666』が活動を再開するまでの話。

『666』の活動が再開した時、どうすべきか…?

 

………

……

 

一方の日本方面。

 

幸いにして無人島の多い日本近海に現れた『666』に対し、連合は量産型邪龍と偽赤龍帝の鎧を相手にしていた。

通常の量産型邪龍はともかく、グレンデル型やラードゥン型、偽赤龍帝の鎧はやはりそれなりの強者でないと相手が難しく、主にD×Dに連なる者が相手をしていた。

 

「………………」

 

海面をフィギュアスケートのように滑りながらシンシアが流れるような動きで量産型邪龍を一撃で屠っていく。

それも大掛かりな技ではなく、小さくとも鋭い一撃で的確に急所を突いて絶命させているのだ。

 

「クレッセイション」

 

そんなシンシアを援護するように甲殻刀の一振りで特大の魔力斬撃を放ち、空中の偽赤龍帝の鎧を屠るのは領明だ。

 

「行って、フライヤー!」

 

さらには智鶴がスコルピアの兵装の一つ、フライヤーで量産型邪龍と偽赤龍帝の鎧を牽制する。

 

エクセンシェダーデバイスの所持者3名による連携でそれなりの数を倒していく。

 

 

 

他にも…

 

「「「~♪」」」

 

歌を歌いながら量産型邪龍と偽赤龍帝の鎧を倒す装者3名の姿もあった。

 

「防人として、この国難は見過ごせない!」

 

「張り切ってんな、先輩!」

 

「イッセーさんみたいな鎧でも中が空洞なら…!」

 

響は偽赤龍帝の鎧を殴り飛ばし、翼は量産型邪龍を斬り伏せ、クリスは両名の援護射撃を担っていた。

 

 

 

また、この戦線を単騎で走る者もいる。

 

「ブリザード・ロード!!」

 

ネクサス、アクエリアスを身に纏い、アステリアに跨った忍が海面を凍らせて道を作るとそこを疾走する。

 

「ヴァリアブル・バスター!!」

 

アステリアに走行を任せ、忍自身は氷結能力とダブル・フューラーによる跳弾砲撃を敢行し、様々な角度から多勢を援護、または量産型邪龍を屠っていく。

 

 

 

しかし、それらの掃討戦も聖杯が敵の手にある限り、無限に続くためにジリ貧と言えた。

 

だが、日本方面にも数多の助っ人がやってきた。

かつての敵だった者達やライバル達だ。

 

そうして『666』の動きを封じることに成功し、各戦線の『666』もまた活動を停止させる。

 

 

 

そして、ギャスパーとヴァレリーが聖杯の制御に成功し、量産型邪龍と偽赤龍帝の鎧が打ち止めとなった中…

 

イッセーは単身、無人島に降り立ったアポプスへと向かい、戦いを繰り広げていた。

しかし、真紅の鎧までしか使わないイッセーが劣勢になっている時、病院で母親から預かっていたお守りの中身が、イッセーに覚悟を決めさせた。

最後の龍神化でもってイッセーはアポプスと張り合い、勝利をもぎ取っていた。

 

しかし、事態は少しだけ別の変化を起こす。

『666』からコアのようなモノが吐き出され、イッセーの元へと飛来したのだ。

さらにはサーゼクスもイッセーの元へとやってきて、コアを2人で相手することになる。

 

龍神化したイッセーと、真の姿…滅びの魔力が人型を成したモノ…を見せるサーゼクス。

真紅と深紅の義兄弟の共闘だ。

 

だが、その2人をもってしても『666』のコアを圧倒できないでいた。

何故ならば、コアは肉片の一つでも残っていると、凄まじい再生能力で復活を果たしてしまうからだ。

しかし、そんな中、神器内のドライグからイッセーにある技がイメージとして送られる。

 

燚焱(いつえき)炎火(えんか)』。

赤龍帝ア・ドライグ・ゴッホの絶技だ。

全てのものを燃やし尽くす究極の炎。一度、喰らえば消すことは不可能らしい(唯一効かなかったのが、アルビオンであり、グレートレッドや現役時代のオーフィスにも効かないだろうとのことらしいが…)。

但し、我慢強い奴や再生能力がずば抜けて高い相手は炎に包まれながらも向かってくるようだ。

そして、目の前のコアは後者であり、燃えながらも向かってきていた。

 

しかしながらイッセーもタイムリミットが迫っていた。

いや、既にイッセーは力尽きようと、倒れてしまっていた。

それを見てサーゼクスはコアに特殊な束縛術を放って拘束し、同時に小型魔法陣を展開して自らの眷属を集めた。

しかし、サーゼクスは女王であり妻であるグレイフィアに対し、息子のミリキャスには母親が必要だと言い残し、アザゼルから教えてもらった催眠術式を使い、深い眠りにつかせていた。

そのグレイフィアは倒れたイッセーの隣に寝かせられ、サーゼクスはイッセーに事の次第を伝えた。

 

それは、『666』の本体とコアを『隔離結界領域』という特殊なフィールドに閉じ込め、その中で各勢力のトップ陣…サーゼクスを始めとしたセラフォルー・レヴィアタン、ファルビウム・アスモデウス、ミカエル、アザゼル、ゼウス、オーディンといった神・魔王クラスとその眷属などが共に入り込み、いつ終わるともわからない戦いに身を投じるというものだった。

 

イッセーはそれを聞き、何も言葉が紡げなかった。

言いたいことは多かったのに、身体がそれを許さなかったのだ。

 

そうして各戦線でその作戦が実行され、隔離結界領域に活動の兆しの見えた『666』と、各勢力のトップ陣が向かった。

 

 

 

後に『邪龍戦役』と呼ばれる一連の騒動は、こうして幕を閉じたのだった。

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