魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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第百二十四話『イッセー、上級悪魔に昇格す』

イッセーの上級悪魔昇格の儀式、当日。

 

場所は魔王領にある式場。

イッセー達はVIP待遇で会場入りした反面、招待状を貰った面々は別で会場入りしていた。

 

「いやはや…イッセー君もこの1年で随分と存在が大きくなったもんだ」

 

会場の厳重な警備や冥界のメディアを見て忍が嘆息する。

 

「お前も似たようなものだろう」

 

それを聞いて隣にいた紅牙が肩を竦める。

 

「俺としては馴染みのない儀式だね」

 

「こればかりは現状、まだ悪魔特有というしかないからな」

 

そんな海斗の呟きにまたも紅牙が答える。

この中で冥界の事情に一番詳しいのは紅牙なので必然的に答える側になっていたのだ。

ちなみに3人の服装はスーツ姿である。

 

 

 

そして、程なくして儀式が始まる。

入城してきたリアスとイッセーを入城の演奏と来賓の拍手が迎える。

その中にはオカ研メンバーやシトリー眷属、サイラオーグ達、忍、海斗、紅牙、そしてヴァーリといった面々もいた。

 

そうして祭壇に上がるイッセーを魔王アジュカが出迎える。

 

「待っていた。君はこれより、立派な上級悪魔になる」

 

儀式は滞りなく進行していき…

 

「……以上、リアス・グレモリー眷属たる汝、兵藤 一誠を上級悪魔とする」

 

アジュカから承認証が片膝を突いたイッセーに渡される。

 

「謹んでお受け致します」

 

イッセーはそう答え、承認証を受け取り、それを広げたまま来賓の方々へと掲げて見せる。

すると、拍手とフラッシュが次々とイッセーを祝福する。

承認証を係の者に一旦預けた後、主であるリアスから王冠を被せてもらう儀式へと移行し、そこでも拍手喝采となる。

そして、最後に黒光りする大きな碑石が現れ、イッセーを王として登録する儀式が始まり、終わりを告げる。

その後、イッセーは未使用の悪魔の駒一式をアジュカから受け取り、晴れて上級悪魔の王として昇格したのだった。

 

………

……

 

全ての行程を終え、控室へと戻るイッセーとリアス。

その後、会場も解散となったのか、家族や仲間達が続々と集まってきた。

 

そんな中…

 

「兵藤 一誠! ここにいたか!」

 

ライザー・フェニックスが控室にやってきた。

 

「ライザーさん! 来てくれてたんですね!」

 

「ふん! 呼ばれた以上は見に来てやるのが俺としての流儀だ! それに今回は付き添いでもあってな」

 

イッセーの言葉に照れくさそうに告げるライザーは、次に入ってくる人の付き添いらしい。

 

「ごきげんよう、兵藤 一誠さん。上級悪魔になられたようで、改めておめでとうございます」

 

それはフェニックス夫人…つまるところ、ライザーやレイヴェルの母親だ。

 

「こ、これはレイヴェルのお母さん! お久し振りです! それと、ありがとうございます!」

 

「お、お母さま!? 来られていたんですの!?」

 

これにはイッセーもレイヴェルも驚いた様子だった。

 

「さて、兵藤 一誠さん。以前した約束を覚えていらっしゃるかしら?」

 

フェニックス夫人の言葉に、事情を知らない面子、とド忘れしたっぽいイッセーも首を傾げていると…

 

「トレードですわ。私の娘にして、眷属でもあるレイヴェルについてです。あなたが上級悪魔になった暁には、是非トレードをお願いしたはずです」

 

上級悪魔となって早速、眷属のトレードの話だった。

 

「なら、ちょうどいいわ。こちらともトレードしましょう。アーシアとゼノヴィアをね?」

 

それに便乗し、リアスもイッセーと眷属をトレードするつもりらしい。

 

そうして三者の間で行われるトレード。

イッセーの未使用の悪魔の駒…僧侶枠2つをアーシアとレイヴェル、騎士枠の1つをゼノヴィアという具合にトレードする。

 

その様子を見て…

 

「俺達ではまだ無理なシステムだよな」

 

「そうだな。俺達の眷属の駒はそれに対応してない側面もあるが、何より悪魔の駒とは別規格のはずだからな」

 

「だな。ま、俺はトレードする気なんざ無いが…」

 

「今はまだ将来的な話だろう」

 

忍と紅牙がこんな会話をしていた。

 

そして、トレードを無事終えた後、フェニックス夫人はイッセーにレイヴェルについて一言忠告を与えていた。

 

「それで、兵藤 一誠。念願の上級悪魔になったが、目標に変わりはないんだろうな?」

 

ライザーがイッセーに尋ねる。

 

「そりゃもちろん! 酒池肉林! おっぱいいっぱい夢いっぱい! 目指せ、ハーレム王!」

 

と嬉々としていった後…

 

「ってのが、スタートだったんですけどね。今はそれにプラスして、身内、仲間、家族で平和に過ごせたらいいなと。そうしていきたい、そうでありたいです」

 

とても穏やかな面持ちで言った後…

 

「あ、それともう一つありました」

 

ハッとしたように人差し指を立てると…

 

「俺の大切なモノを傷つける者は、何人であろうと、例え神だろうと…絶対に倒す」

 

絶対の誓いを込めて、皆に宣誓でもするかのように呟いていた。

 

「ハッ! 言うようになったもんだぜ。これなら、レイヴェルを任せられそうだぜ。なら、来るんだろう?」

 

ライザーの言葉にイッセーが首を傾げると…

 

「国際大会だ。フェニックス家からは俺と、長兄のチームが出る。例え、俺の優勝が難しいとしても、出ることに意義があると判断した。神クラスと公式に戦えるなど、こんなことでもない限りできない経験だからな」

 

嘆息しながらもライザーはそうイッセーに言ってきた。

 

「俺はお前が『王』として出てくると信じている。いや、望んでいる! そこで戦えることができたら……。俺を燃えさせてくれ、赤龍帝! 待っているからな!!」

 

そして、ライザーはイッセーの頭をわしゃわしゃと撫でながらそう言っていた。

その後、ライザーとフェニックス夫人は挨拶とトレードが済むと控室を後にする。

 

 

 

残ってたメンバーもこの後に開かれるパーティーの会場へと向かう途中のこと。

 

『ッ!』

 

イッセーを始めとした数名が警戒レベルを上げて少しだけ身構えた。

その直後、青光りする黒髪を持つ中学生くらいの少年がイッセー達の前にやってきた。

 

「へぇ。初めて見るけど、噂通りの面と、そうでない面が見えるね。とは言え、賛辞は贈らないと。上級悪魔昇格おめでとう。赤龍帝」

 

そう言って拍手を送る少年。

 

「(この匂いは…神格…! それもこんな濃密な神性は…)」

 

忍が少年から神格を感じ取っていると、少年の後ろからアジュカと、民族衣装…サリーというのを身に纏った長身の見知らぬ男性がやってきた。

また、その長身の男性からも神性を感じられ、まるで品定めでもするかのようにイッセーと、周囲の者を見る。

 

「アジュカ様」

 

リアスがアジュカの名を呼ぶと…

 

「皆、警戒を解いてくれ。このお方が君達に会いたいとおっしゃられるものだから、突然で驚いたかもしれないが、お連れした」

 

そう一言、アジュカが断ってから少年を紹介する。

 

「シヴァ様だ」

 

『ッ!?』

 

アジュカの紹介にその場にいた者(イッセーのご両親を除く)が息を呑んで驚く。

 

「はじめまして、D×Dの…駒王学園サイド、と呼ぶべきかな? 僕はインドの三柱神の一柱、シヴァだ。今後は長い付き合いになるだろうから、改めてよろしく」

 

そう言ってシヴァが手を差し出したので…

 

「あ、ありがとうございます……」

 

イッセーがこれに応じて恐る恐る握手を交わす。

 

「上級悪魔昇格の件、私からも祝辞を述べよう」

 

「あ、あなたは…え~と…」

 

長身の男性とも初対面のため、イッセーが言いあぐねていると…

 

「彼は阿修羅神族の若き王子だよ」

 

「『マハーバリ』という。お初にお目にかかる」

 

シヴァの紹介を受け、男性…マハーバリが挨拶し、イッセーと握手を交わす。

 

「特に赤龍帝の兵藤 一誠。貴殿には会いたいと思っていた。邪龍戦役での活躍は耳にしている。私も貴殿と共に『666』と打ち合いたかったぞ」

 

「そ、それはどうも…」

 

マハーバリの言葉に恐縮しながらも笑顔で対応するイッセーを見て…

 

「性欲に正直と聞いてたけど、あまりそんな風には見えないね。ハーレム王が夢だっけ?」

 

シヴァがそのように指摘していた。

 

「は、はい。そうですけど…」

 

「では、今君は一番何が欲しい? 女かい? それとも富?」

 

「えっと…どっちも……ということじゃないですよね?」

 

「あぁ、もっと根底の部分だ。一番欲しているもの……個ではなく、全とした場合だよ?」

 

そんなシヴァとの問答にイッセーは…

 

「それなら…平穏、でしょうか。争いもなく、普通に暮らしたいです。そのために全力で戦ってます」

 

スッと、そんな言葉が口から出ていた。

 

「ふむ。そうか……そういうことか…」

 

それを聞き、シヴァなりの考察を聞かせる。

曰く、第二の肉親たるグレートレッドとオーフィスが平穏を求めるという性質が、肉体と力を通してイッセーにも影響を及ぼしているのだという。

イッセー側からの影響も少なからずあるだろうが、それはイッセー自身にも当てはまるという話だ。

世界が平穏にならなければ、子作りもろくに出来ないと…イッセーの根底の部分が引っ掛かりを覚えているのだという。

平和を勝ち取らないと限り、その業とも言える枷は外れない。

それも神クラスのドラゴン2体分なのだから、元人間程度では簡単には外せない、おまけ付きだ。

 

「………………」

 

それを聞いて思い悩むイッセーを見て…

 

「僕をも超えるドラゴン2体の力を得ている冗談のような存在が、何よりも平和を望み、ハーレム王を目指す、か。ふふ、気に入った」

 

シヴァはそう呟き、話の相手をアジュカに切り替えて言う。

 

「アジュカ、アザゼルが僕に出した条件を覚えているかい?」

 

「……欲しいものがあれば、何でも用意するという件、ですか?」

 

「そう。それだ」

 

アジュカの言葉に頷きつつ、シヴァは改めてイッセーを見据えると…

 

「赤龍帝」

 

「え? あ、はい」

 

「僕の陣営に来ないかい?」

 

『ッ!!?』

 

シヴァの突然の言葉に周囲も驚きで固まる。

 

「あ、誤解なきように。リアス・グレモリーの元を去れと言っているんじゃない。もしも、こちら側の神話体系を中心にした争い事が勃発したら、僕の陣営に来ないか? という話だよ。君の仲間込みでもいい。君の仲間なら将来有望だろうしね」

 

「シヴァ様!? しかし、それは!」

 

アジュカの言葉を手で遮り、シヴァはこう伝える。

 

「帝釈天…インドラは既に『次』を見据え、自陣を太らせている。そこには曹操や初代孫悟空達もいる。こちらにも面白い駒の1つや2つは用意しておかないとね。それに彼ならこの大会に乗じてくる可能性も高い。自分でチームを率いるかもしれないしね。なら、オファーは早めの方がいい」

 

「シヴァ様…」

 

「それと、君にも興味があるよ。次元辺境伯」

 

シヴァの矛先が、今度は忍にも向く。

 

「確か、君の一族の起源は異星…異世界の星の神の眷属だったね?」

 

「えぇ、まぁ…そう聞いてます」

 

どこから仕入れたのか知らないが、シヴァは忍の一族の起源について話す。

 

「君の中から覚えのない神格の波動を感じる。君自身、気付いているのではないのかな?」

 

「神格の存在自体は、割と前から…でも、それを表に出す方法までは流石に…」

 

「その神格がいずれどう覚醒するのか…興味深くはあるが、もしこの世界の害になるなら…」

 

「…………………」

 

妙な緊張感がその場を支配する。

 

「まぁ、そうならないことを祈るよ。僕だって若い芽を摘みたくはないしね?」

 

「……はい」

 

忍に忠告したシヴァは再びイッセーを見て言う。

 

「『燚誠の赤龍帝』。覚えておくといい。君と『明星の白龍皇』の元には今後、友好的だろうと、敵対心を抱いていようと、神クラスの存在が多く訪れることになるはずだ。必然的に付き合いも、戦いも…神クラスが基準になることになるだろう。それだけのことを、君達はしてきたのさ。特に君は女人と平和を愛するドラゴンかもしれない。それで奇跡を何度も起こしてきた。けど、僕は君にもう一つの真実を見出した」

 

そして…

 

「君は、強者(つわもの)が好きなのだろう? 味方であれ、敵であれ、信念を持った戦士(おとこ)の戦いが何よりも大好物のはずだ。見るのも、打ち合うのも…両方ともね。この激動の1年で君が女への興味と同等に得たのは、そんな強い戦士(おとこ)とやり合うことだと…僕は見ているよ」

 

そんな指摘をしていた。

 

「僕が主催する国際大会。名は邪龍戦役の英雄の1人…堕天使の長の名から拝借して、『アザゼル(カップ)』とするつもりだ。そこには、君の大好きな戦士(おとこ)達がたくさん現れる。そこにいる、君の仲間である彼等も…そんな大会に、君は指をくわえて見てるだけでいいのかい?」

 

続けて、シヴァはレーティングゲーム国際大会のことも言及していた。

 

「当然、私も出る」

 

マハーバリも国際大会に参加するようだ。

 

「君も一言ないのかい? 帝釈天の刺客君」

 

すると、シヴァが扉の方に視線を向ける。

そこから現れたのは…曹操だった。

 

「申し訳ありません、シヴァ様。隠れるつもりはなかったのですが、お話し中だったもので」

 

「ふふ、君も赤龍帝に会いに来たのだろう?」

 

「えぇ」

 

シヴァの問いに答え、曹操がイッセーを見る。

 

「まさか、シヴァ様に気に入られるとは…君は、会う度に大きくなる」

 

「お前まで来てるなんてな」

 

イッセーは苦笑していたが、曹操はちょうどいいとばかりに宣言していく。

 

「俺も当然、大会に出る。天帝の許しもいただいた。自分の力がどこまで行くのか…俺の用意したチームと共に挑むつもりだ。そこで、君達に再戦できるのなら、それ以上のことはない。上級悪魔の兵藤 一誠…君のチームを真正面から叩き潰したいものだよ。俺はいつだって…君やヴァーリに焦がれているのだから」

 

そう宣言した曹操はその場を去り、シヴァとマハーバリもまた用事が済んだとばかりに去っていく。

この邂逅でイッセーは…心の導火線に火を点けられて、強い想いを募らせていた。

 

 

 

その後のパーティーも終わり、それぞれが帰路に着く中…

 

「3人共、俺の話を聞いてくれ」

 

イッセーは自らの眷属になったアーシア、ゼノヴィア、レイヴェルに己の想いを吐露していた。

その内容が何なのかは…いずれ、すぐにわかることだ。

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