魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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第百二十九話『明かされるエクセンシェダーデバイスの秘密』

ディストピアチームとシトリーチームのダイス・フィギュアが行われ、ディストピアチームが勝利した日の夜。

忍は味方陣営に所属するエクセンシェダーデバイス保有者を明幸家の居間に呼び出していた。

 

「急に呼び出してすまない…、だが、火急の用件なんだ」

 

呼び出した張本人である忍が、集まってくれた智鶴、領明、シンシア、紅牙、ユウマ、海斗、薫に対して頭を下げていた。

 

「別に構わないが…何故、俺達だけを呼んだ?」

 

「何かあったの?」

 

ノヴァとシトリーチームの試合を見ていなかったのか、紅牙と海斗が訝しげに尋ねる。

今回、このマッチングは忍一人で観戦していたせいもあり、眷属達も詳しく事情は知らない。故に智鶴達も呼ばれた理由をわかっていない。

 

「ちょっとこの録画を見てもらいたくてな。ついでだからアリエス、お前にも見てもらいたい」

 

『ついで、って言い方が引っ掛かるが…ま、今はフリーだから別にいいぜ。何を見せてくれるんだよ?』

 

「これだ」

 

そう言って忍はネクサスから投影ディスプレイを展開し、ノヴァとシトリーチームの戦闘模様を見せた。

そう、ノヴァの言う『13番目のエクセンシェダーデバイス』を披露した辺りからの映像を…。

 

それを見た保有者達の反応は、いまひとつだったが…

 

『おいおいおいおいおい!!! 洒落にならねぇぞ!!』

 

アリエスを筆頭に…

 

『…………嘘……』

 

『そ、そんな…』

 

『実に不愉快なことだ』

 

『………………』

 

『ちょっと意味がわからないんだけど~』

 

『これ、冗談がすぎるんじゃないの?』

 

『……カプリコーンは容認したというのか?』

 

スコルピア、キャンサー、ライブラ、ヴァルゴ、ピスケス、サジタリアス、レオの順にエクセンシェダーデバイス達が激しい反応を見せる。

普段、気楽に振る舞うサジタリアスやピスケスがおふざけなしの反応を見せていることからも紅牙やシンシアも驚いていたが…。

 

「こんな感じで、目の当たりにしたアクエリアスも酷く動揺しててな」

 

困った様子で忍も言う。

 

「どういうこと? 蛇遣い座(アスクレピオーズ)…黄道に位置するという意味では、蛇遣い座も立派なエクセンシェダーデバイス候補と見れるけど…」

 

「そもそもエクセンシェダーデバイスは『12機』のはずなんだろ? 13番目の機種がいるなんて、これまで聞いたことがないぞ…」

 

「秘密裏に造られてて、他のエクセンシェダーデバイスは知らなかった、とか?」

 

海斗、紅牙、ユウマの順に疑問を口にするが、それを真っ向から否定したのは他ならぬエクセンシェダーデバイス達だった。

 

『あり得ません! 私達は12機しか造られていません!! あんな技術は…私達以外に…』

 

『ヴァルゴ!』

 

『!?』

 

何か喋ろうとしたヴァルゴだが、レオによって黙らせられる。

 

『それ以上は口にしても仕方ないのだ。それに最終的に決めたのは我々自身(・・・・)だ』

 

『それは……そう、ですが…』

 

『ヴァルゴちゃん…』

 

レオの言葉にヴァルゴは弱々しい反応を返し、それをキャンサーが心配する。

 

『だが、現にあのノヴァって野郎は、13番目のエクセンシェダーデバイスとやらを従えてやがる。それをどう捉えるよ?』

 

『……技術が残っていたか、或いはカプリコーンを調べて知ったかは知らぬ。だが、現実として新たな同胞が生まれてしまった。それは変えようのない事実だ』

 

アリエスの怒りにレオは冷徹に返す。

 

『ちっ、相変わらず堅ぇ奴だよ、テメェは…』

 

そのレオに真っ向から嫌味を言うアリエス。

 

そんなエクセンシェダーデバイス達のやり取りを見ていた選定者達。

その中で忍が他の選定者達に目配せすると、ユウマ以外の全員が静かに頷いてみせた。

ただ一人、ユウマは首を傾げていたが…。

 

「選定者を代表し、エクセンシェダーデバイスに問う。エクセンシェダーデバイス…その根幹を成すコアドライブとは、なんなんだ?」

 

すると、忍はそのようにエクセンシェダーデバイス達に問うていた。

 

『『『『『!!!』』』』』

 

その問いにアクエリアス、アリエス、ライブラ、レオ、サジタリアスのコアとなっている宝石部が激しく明滅する。

 

『『『『………………』』』』

 

逆にスコルピア、キャンサー、ヴァルゴ、ピスケスのコアとなっている宝石部は輝きが失せて暗くなった、ような気がしないでもない。

 

「今まで触れてこなかったが…こと今回に限ってはもう無視することはできない。13番目の黄道を模したエクセンシェダーデバイスがノヴァの手にある。それが何を意味するのかは、現時点では俺達にもわからん。だが…何故、お前達はロストロギア指定を受けた? そして、ロストロギア指定を受けながらも、その資料が少ない理由もよくわからん。だったら、当事者…意思を持つお前達自身の口から話してもらう」

 

忍はそんな反応を示すエクセンシェダーデバイス達を無視し、言葉を紡いだ。

 

だが、実際は忍の言う通りである。

エクセンシェダーデバイス群はロストロギア指定を受けながらも、その詳細は分からずじまい。

今まででわかっていることと言えば、半永久の魔力機関『コアドライブ』を備えていること、それぞれ固有魔法を組み込まれていること、それぞれが意思を持っていること、その意思に基づき自らを扱うことのできる選定者を選ぶこと…そのくらいだ。

 

ならば、ブラックボックス化しているコアドライブや作成された経緯について、エクセンシェダーデバイス達に聞くことはなんら不思議なことではない。

 

が、この話題は、エクセンシェダーデバイス達にとってタブーに近いのかもしれない。

 

その証拠に、しばしの沈黙の後…

 

『拒否する』

 

それを言い切ったのは、レオだった。

 

『れ、レオ…』

 

そのレオの態度にアクエリアスが声をかける。

 

『アクエリアス。貴様もわかっているだろう?』

 

『えぇ…わかっていますよ。いくらマスターと言えど…我々はこの問いには答えられない、と…』

 

『そうだ』

 

そのレオとアクエリアスのやり取りを聞き…

 

「どうしても、答えられない、と?」

 

忍が手元のアクエリアスと海斗の持つレオを見て問う。

 

『そうだ。仮に教えたとして…貴様らがそれを悪用しないという保証がどこにある?』

 

毅然とした態度で、レオが選定者の問いを突っぱねる。

 

(悪用、ときたか)

 

(これは想像以上に、根が深い問題かもしれないね)

 

それを横で聞いていた紅牙と海斗はそのように分析する。

 

「ど、どうしても、教えてはくれないんですか?」

 

おずおずとした様子で、ユウマが口を開くが…

 

『無論』

 

レオはそれを一蹴した。

そして、他のエクセンシェダーデバイス達も沈黙を貫いている。

 

「ヴァルゴ…?」

 

『申し訳ありません…申し訳ありません…』

 

ユウマが己のエクセンシェダーデバイスを見るも、ヴァルゴは涙ぐんだように謝るばかりでそれ以上の答えは出なかった。

そんなヴァルゴの様子にユウマは、ヴァルゴのコアを優しく撫でるしかできなかった。

 

「サジタリアス。お前も同じ意見か?」

 

『これっばっかりはねぇ~』

 

サジタリアスもまたそう言ったきり口を閉ざす。

 

「ライブラ」

 

『すまないが、我が愛しくも美しい主よ。この件に関しては口を閉じざるを得ないな』

 

「スコルピアちゃん…?」

 

「……ピスケス」

 

『…………ごめんなさい、マスター……』

 

『レオっておっかないからね~』

 

ライブラ、スコルピア、ピスケスもまた口を閉ざすつもりのようだ。

 

「キャンサー」

 

そして、それはキャンサーも…

 

『………………わかりました』

 

同じではなかった。

 

『!!! キャンサー!!! 貴様ぁ!!!!』

 

キャンサーの言葉にレオが待機状態から勝手に起動し、キャンサーを持つ領明に襲い掛かる。

 

「なッ!?」

 

勝手に起動したことに海斗が驚き…

 

「ぁ…!?」

 

咄嗟に領明もキャンサーを庇おうと、ギュッとキャンサーのコアを握り締める。

 

ガキンッ!!

 

「ちぃっ!!!」

 

鞘に収まったままの神威を手に、レオの襲撃を寸でのところで防ぐ忍。

 

『レオ…私達が再び揃い出した意味を考えましょう。それに…私はもう疲れました…』

 

どこか鈍い輝きを見せ、キャンサーは言葉を紡ぐ。

 

『ふざけるな!!! これまでの我々の行いを水泡に帰す気か!!!!』

 

『確かに…ですが、私達を生み出した、あの技術は…もう、あってはならないのです。少なくとも…13番目の、あんな子が生まれてしまった以上、隠し立てしても無意味です。あのノヴァなる者は、きっと躊躇しない。なら、私達が選んだ今代のマスター達に真実を打ち明け…あの者を倒してもらうしか…』

 

『この者達にそれができる保証はない!!!』

 

キャンサーの言葉にレオがそう返すと…

 

『ですが…あのノヴァなる者が新たな同胞を作り続けない保証もありません』

 

『!!!!!』

 

キャンサーもまたそのように返し、レオを激昂させる。

 

『マスター。そして、他のマスターの皆さま…。エクセンシェダーデバイスとは…コアドライブとは…』

 

『黙れ、キャンサー!!!!』

 

「くっ!?」

 

「紅神!?」

 

「よせ、レオ!!」

 

同胞だとしても容赦しないという強い意志の下、レオが攻撃が増し、忍がそれを必死に捌いていると、見兼ねた紅牙と海斗もレオに飛びついてその行動を止めようとする。

 

そして…

 

『元々、私達は…エクセンシェダーデバイスは…人間(・・)だったのです』

 

キャンサーは遂に告白した。

 

「「「「!?」」」」

 

「え…?」

 

「なっ…」

 

「人間、だって…?」

 

「どういうことだ!?」

 

キャンサーの告白に女性陣は驚きで口元を押さえ、ユウマは呆然とし、忍、海斗、紅牙も意味がわからないといった表情だった。

 

『言葉通りです。私達は…正確には、このコアドライブを制御する管制人格は生前の、人間であった頃の人格を再現して設計されております。そして、私達の根幹を成す、このコアドライブとは…』

 

『それ以上言うな、キャンサァァァアアアア!!!!!』

 

『生前の…私達が保有していたEX級の魔力量と質を併せ持った魔法機関…すなわちリンカーコア(・・・・・・)なのです』

 

そのキャンサーの告白に…

 

「「「「「「「「----------」」」」」」」」

 

選定者達が絶句した。

 

『キャンサアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!』

 

そして、絶句した忍、紅牙、海斗の一瞬の隙を突いて三人を振りほどいたレオが領明の持つキャンサーへと、その鋼鉄の爪を振り下ろした。

 

ガキンッ!!!

 

しかし、それは寸でのところで阻まれる。

 

『…………レオ……もう、ダメ…』

 

智鶴の手から勝手に起動したスコルピアが、その尾の大剣でもってレオの爪を止めていたのだ。

 

『スコルピア!!! 貴様まで邪魔立てするか!!!!』

 

『…………マスター達に…知られてしまった…なら、もう…隠す必要、ない…』

 

『なんだと!?』

 

『…………信じようよ…私達が選んだ…マスター達を…ね? お父さん(・・・・)

 

『ッ!!!!』

 

スコルピアのその一言にレオの気勢が大きく削がれたようにその爪の斬撃を鈍らせる。

 

『潮時、だな…』

 

『そのようですね…』

 

アリエスの言葉に続くようにアクエリアスもまた呟く。

 

『やっぱ、レオっておっかないよね~』

 

『だね~』

 

『ふっ…レオは厳格そうに見えるが、根はかなりの激情家故。しかし、愛妻と愛娘には弱かった』

 

『……そう、でしたね…』

 

ピスケス、サジタリアス、ライブラ、ヴァルゴもまたそんなレオの様子を見ながら呟く。

 

『き、貴様ら…!!』

 

『…………お父さん…キャンサーを…お母さん(・・・・)を、許してあげて…』

 

『スコルピア…』

 

といった具合にエクセンシェダーデバイス達は白熱していたのだが…

 

「「「「「「「「----------」」」」」」」」

 

そんなエクセンシェダーデバイス達の発した数々の爆弾発言に選定者達は未だ固まったまんまである。

彼等がフリーズから立ち直るのには少し時間がかかりそうだった。

 

………

……

 

数分後。

 

「………色々と衝撃的過ぎて認識の咀嚼にまだ時間がかかりそうなんだが…」

 

「「うんうん」」

 

なんとか思考が復帰した忍の発言に同じく復帰した紅牙と海斗が頷いてみせる。

ちなみにこの三名以外の選定者達は未だに混乱していて言葉を発せずにおり、自らの意思で勝手に起動したレオとスコルピアも待機状態に戻っていた。

 

「とりあえず…お前らの生前の関係を知りたいんだが…」

 

『コアドライブについては訊かぬのか?』

 

「聞いてどうする? 俺達はノヴァの奴とは違う。コアドライブについて詳しく聞いたところで、それを実際にやろうとは思わねぇよ」

 

そんな忍の質問にレオが逆に尋ねるも、忍はコアドライブについて詳しく聞かないようだった。

 

「そうだね。君達がどういった経緯や過程でその姿になったのか…気にはなるけど…」

 

「悪用、とまで言われたんだ。あの絶魔と同じようなことをするつもりは毛頭ない」

 

「第一、そんなことをする意味が見出せない。それに、お前達の反応を見る限り、かなりの外法と見た。そんなことをしてお前達に見限られ、信頼を裏切るくらいなら、聞かない方がマシだ」

 

海斗、紅牙、忍の順に自らの考えをレオに言う。

 

『………………』

 

『レオ。我等が選びし今代のマスター達は…』

 

『アクエリアス、それ以上の言葉はいらぬ。我等は幸運だった。残る行方知れず達に比べれば、な…』

 

忍達の言葉を受け、しばし黙っていたレオにアクエリアスが声をかけ、レオもまたそのように言葉を発した。

 

『……カプリコーンが心配ですね』

 

ヴァルゴがノヴァの下にいるカプリコーンを案じていた。

 

『奴は選定に失敗したのだろうよ』

 

『私達に設定された選定条件…それが裏目に出てしまったのでしょうね』

 

『………カプリコーン…』

 

レオは冷たく言い放ち、キャンサーは悲しそうに呟き、スコルピアはカプリコーンの名を呟く。

 

『えっと~、今この場にいないのって~』

 

『ジェミニ、カプリコーン、タウラスくらいかな~?』

 

『新顔のアスクレピオーズも含めれば、4機か。ま、内2機に関しては同じ使い手のとこにあるがよ』

 

『つまり、タウラスとジェミニ…あの2人の行方がわからない、と…』

 

サジタリアス、ピスケスがこの場にいないエクセンシェダーデバイスの名を挙げ、アリエスがアスクレピオーズも含めての話をし、ライブラがタウラスとジェミニについて言及する。

 

「それで…改めて尋ねるが…お前達の生前の関係は?」

 

『先程、スコルピアも口にしましたが、レオとキャンサーはご夫婦の間柄です。スコルピアはその娘さんになります』

 

忍の質問にアクエリアスがすらすらと答える。

 

『何故、お前が説明する?』

 

アクエリアスが説明したことにレオが妙に突っかかる。

 

『いいじゃないですか、あなた。アクエリアスは身内も同然でしょう?』

 

『……我は許した覚えはない』

 

もう関係を知られたからか、キャンサーはレオを『あなた』呼びし、そのようなことを言う。

が、レオはキャンサーの言葉にどこかムスッとした様子で答えていた。

 

『あはは…』

 

『………アクエリアスは私の恋人。結婚も約束してた…』

 

苦笑するアクエリアスに代わり、スコルピアが答える。

 

「「えっ!?」」

 

その意外な答えに忍と、固まっていた智鶴が驚く。

 

『ごめんね、スコルピア。約束が果たせなくて…』

 

『………ううん。またこうして出会えたから、いい…』

 

『……ありがとう』

 

妙に雰囲気がいいところで…

 

『えぇい! アクエリアス! 貴様はやはり斬る!!!』

 

今にも再び起動しそうな勢いでレオが怒声をあげる。

 

『あなた!』

 

そこにすぐさまキャンサーがレオをピシャリと叱る。

 

『うぐっ…しかしだな、キャンサー』

 

『しかしではありません! まったく、あなたは私やスコルピアに甘過ぎます!』

 

『ぐぬっ…』

 

まさに夫婦喧嘩…いや、奥さんが一方的に旦那さんを説教しているようにしか見えなかった。

 

『フッ…どちらも仲睦まじいことだ。ちなみに僕はスカウトされた口でね。まぁ、僕ほどの人物となれば、スカウトも当然だとは思うが』

 

ライブラがそんなことを言うと…

 

『え~? 売れない役者だったのに~?』

 

『自意識過剰でほとんどオファーもなかったくせに~?』

 

サジタリアスとピスケスが笑いながらライブラのことをなじる。

 

『えぇい! 余計なことを言うな! この腹黒兄妹が!!』

 

『あはは~。誰が腹黒だよ。この大根役者~』

 

『そうだそうだ~』

 

ライブラの怒りの声にも動じず、サジタリアスとピスケスはなじり続ける。

 

「お前達、兄妹だったのか?」

 

「意外…というほどでもありませんね。どこか似たような感じでしたし」

 

「(コクコク)」

 

サジタリアスとピスケスが兄妹だったことに紅牙が意外そうな声を上げ、薫がサジタリアスとピスケスの雰囲気的にそのような感想を言い、シンシアが頷いていた。

 

『我が愛しくも美しい主よ!? 僕の事は無視かい!?』

 

「あなたの場合は…なんとなくわからなくもないですね」

 

『流石は我が愛しくも美しい主! 僕のことをよくわかってるじゃないか!』

 

「ポジティブな奴だな…」

 

薫の塩対応に対するライブラの反応に忍が静かに呟く。

 

『この流れで過去の関係かよ。この場にいないあいつらが若干羨ましくなってきたぜ…』

 

この微妙にカオスになってきた状況にアリエスが嘆く。

 

『アリエスはエクセンシェダー計画を推し進めていた研究員の一人です。かく言う私も、同じ機関に所属してた医者見習いのようなものですが…』

 

「「「意外だ」」」

 

ヴァルゴが伝えたアリエスの役職に忍、紅牙、海斗が同時に声を発する。

 

『どういう意味だ、ゴラァ!?』

 

『その反応が全てを物語っているんだ、愚か者』

 

アリエスの反応にレオがツッコミを入れる。

 

『けっ。ちなみにレオが俺の上司でもあり、エクセンシェダー計画の中心人物でコア候補の筆頭だったな』

 

『フンッ…』

 

アリエスの言葉にレオは不機嫌そうにするのみだった。

 

「つまり…レオがエクセンシェダー計画とやらを…?」

 

『いや、立案者は別にいる。我は娘の存命のために手を貸したにすぎん。結果はこのザマだが…』

 

海斗が疑問を口にすると、レオがそれを否定し、忌々しそうに呟く。

 

「娘の存命?」

 

それを聞き、忍がスコルピアを見る。

 

『………私、身体が弱かったから…』

 

『正直、結婚しても子供ができるかは怪しかったですから…』

 

「そう、だったの…」

 

少しデリケートな話だったらしく、スコルピアの反応に智鶴が表情を暗くする。

 

「では、残りのタウラス、ジェミニ、カプリコーンとの関係は?」

 

紅牙がその空気を察してか、残り3機との関係について尋ねる。

 

『タウラスは傭兵だった。主な任務は計画関係者の護衛だが、場合によっては遊撃に回ってもらっていた。女ながら好戦的な性格だったがな』

 

『カプリコーンは俺の同僚だったな。俺が外装と武装面のエンジニアだったのに対し、あいつはシステム面と魔法関係のエンジニアだな』

 

『ジェミニは、その…一言で言うと、風来坊でして…私達も詳しい事情まではわからないというか…しかし、黄道のことはジェミニから伝えられたと聞いたことがあります』

 

レオがタウラス、アリエスがカプリコーン、ヴァルゴがジェミニについてそれぞれかなり噛み砕いた説明を行っていた。

その中で気になったのは…

 

「黄道の情報はジェミニから…?」

 

意外なところで黄道の情報がジェミニからもたらされたことが発覚する。

 

『あぁ。立案者がその話を聞き、さらに己の理論を証明するために進められたのが、エクセンシェダー計画だ』

 

「つまり、ジェミニは地球出身?」

 

『可能性は否定できん。だが、それがいつ頃の事かは…我等も知らぬ。というより覚えておらぬ、というのが正しいか』

 

『どのくらい昔かは私達の記録領域にもメモリーがないのです』

 

「ふむ…」

 

黄道が定義された頃を逆算すれば、或いはどの程度昔かはわかるかもだが、確実性のないことからあまり深くは追及されなかった。

 

『しかし、我等がこうして存在している以上…エクセンシェダー計画は達成され、オリジナルである我等は死んだのだろうよ』

 

レオの言葉を聞いた選定者一同は沈黙していたが…

 

「となると…このアスクレピオーズの管制人格となってるオリジナルの人物も…」

 

忍が再び録画映像を投影し、そこに映る13番目のエクセンシェダーデバイスを見る。

 

『おそらくは、もう…』

 

「ノヴァの野郎…いつの間にそんなことを…」

 

ヴァルゴの見解に忍は右拳を握り締める。

 

『今更、詮索しても詮無いことだ。我々が最も危惧すべきは…』

 

「エクセンシェダーデバイスのような存在を増やされること」

 

『うむ。EX級の質と量を誇るリンカーコアは稀少だ。しかし、絶対にいないとも言い切れない。この広大な次元世界を探せば、見つかるだろう。しかし、それには時間が必要だ』

 

『それにいたとしてもリンカーコアの存在自体を知らない、或いは次元世界の認識がない世界もあるので、その中から見つけるのは容易ではありません』

 

「そこが救いか?」

 

『いや、楽観はできん。現にアスクレピオーズは存在しているのだ。次の犠牲者を生まないためにも…』

 

「ノヴァの凶行は何としても止めないとな」

 

忍は改めてノヴァへの警戒度を引き上げ、エクセンシェダーデバイスのような存在をこれ以上増やさないことを誓う。

 

 

 

謎に包まれていたエクセンシェダーデバイスの真実が明らかになった。

しかし、この事実は実際にその話を聞いたこの場の選定者達の間だけに留められることになった。

理由はいくつかあるが、最大の理由はやはりエクセンシェダーデバイス達が元人間だったという事実だろう。

だが、敵側にいるノヴァがそれを知らないはずもない。

いつ投下されるかもわからない事実(爆弾)を知った選定者達。

今の戦場は主にレーティングゲームの国際大会だが、いつ大会外で戦闘が起こるかわかりはしない。

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