魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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2.渇望修行のティアーズ
第八話『涙とすれ違いと絶唱』


四月も終わりに近づき、ゴールデンウィークが間近に迫ってきた…。

それは少数派の堕天使とのいざこざがあってから二週間くらい経った頃の出来事だった。

 

朝の明幸組の屋敷の居間では朝食の時間であったのだが…

 

「ふふ…」

 

「むぅ…」

 

「わ、わぅ…」

 

微笑むカーネリアとむくれた智鶴が睨み合っており、それを見て忍が困っている。

そんな光景だった。

 

何故、このようなことになっているのか…。

事の発端は二週間前の堕天使との戦いの直後まで遡る。

 

………

……

 

深夜。

 

「久しぶりね、坊や」

 

カーネリアは6枚羽を生やした状態で、明幸組の屋敷の塀に腰を掛けて忍を見ていた。

 

「あなたは…」

 

カーネリアの気配(というか匂い)を感じて目を覚ました忍が縁側でカーネリアを見て警戒していた。

 

「そう警戒しないでちょうだい。別に取って食おうって訳じゃないんだから」

 

そうカーネリアは言うが、一度は刃を交えた関係上、警戒はそう簡単には解けなかった。

当然と言えば、当然なのだが…

 

「……じゃあ、何の用ですか?」

 

深夜で月が出ているということもあってか、忍の瞳は若干赤みがかった紫色に変色していて、瞳孔も縦に変化しており、その眼を細めてカーネリアを見ていた。

雰囲気も昼間に比べたら少し落ち着いたようにも見える。

 

「そうね。強いて言うなら…あなたに興味があるから…じゃ、ダメかしら?」

 

「僕に…?」

 

「えぇ…今はあの時みたいなギラギラしたものは感じないけど…その奥底に潜む野性的な衝動が、ね」

 

「何を…」

 

忍にはカーネリアが見ている自分の中の衝動が理解できないでいた。

 

「ふふ…」

 

フサァ…

 

塀から降りるように飛ぶと、縁側の忍に近付き…

 

「私もここに住んでもいいかしら?」

 

「……………は?」

 

一瞬、カーネリアに何を言われたのかわからなかった。

 

「あなたの側にいれば、いつか私の求めるモノが出てくるかもしれないから…見逃したくないのよ。だから、私もここで住まわせてちょうだい」

 

そう言いつつも忍の首に腕を回して抱き締めるような態勢になる。

 

「いや、それは…」

 

忍もまた居候の身。

こんなことを勝手に決められるはずもない。

 

すると、そこへ…

 

「あなた、ここでしぃ君と何をしてるんですか?」

 

わなわなと怒りで体を震わせている智鶴がカーネリアの首筋にドス(要は小刀)を押し当てる。

 

「ち、ちぃ姉…!?」

 

「別に…ただこの坊やとお話をしてただけよ」

 

智鶴の怒気に触れてもどこ吹く風のように受け流す。

 

「それに…堕天使が悪魔の領分を侵すつもりですか?」

 

「へぇ、悪魔との関係も知ってるみたいね。ならちょうどいいわ。私、悪魔とのいざこざなんてどうでもいいのよ。私は純粋にこの坊やに興味があるだけ。別に坊やは悪魔側って訳でもないんでしょ?」

 

「そ、それは…」

 

カーネリアの言葉に智鶴も言葉を詰まらせる。

 

「ならいいじゃない。あなたが悪魔の知り合いだとしても坊やには関係ないものね」

 

「しぃ君にも悪魔の知り合いくらいいます!」

 

いや、確かにイッセーがいるけども…論点がズレてないか?

 

「そうだとしても坊やが悪魔に義理立てするようなことではないわ」

 

「それは…」

 

確かに忍は三大勢力には属していない存在。

どうするかは忍が決めることでもある。

 

「この坊やの事が大切なのね。でも、この坊やの闇を見てもあなたはそれを受け止められるかしらね?」

 

「どういう意味ですか…?」

 

「いずれわかるわ」

 

そう言いながらドスの切っ先を指で押し返し、忍から離れる。

 

「そうだ。部屋を一つ貸してくれないかしら? 当分、ここに住み込みたいと思ってるの」

 

そして、いけしゃあしゃあとそんなことまで言い出す。

 

「………いいでしょう」

 

しかし、智鶴はそれを承諾してしまった。

 

「ちぃ姉!?」

 

「但し、しぃ君とは反対側の私の隣の部屋です。しぃ君に何かあったら…」

 

「それで十分よ。これでお互いに秘密が出来たわね」

 

カーネリアの言う秘密とは…恐らくは忍の中に眠る闇のこと。

そして、智鶴はカーネリアを悪魔側から意図的に匿うことである。

 

「リアスちゃん、ごめんさない…でも、こればかりは譲れないの…」

 

友人への謝罪を小さく呟き、忍の方を見る。

 

こうしてカーネリアは明幸組の第二の居候として屋敷に留まることになった。

 

………

……

 

場面は冒頭へ戻る。

 

「しぃ君には学校あるの!」

 

「一日サボるくらい許容しなさいよ。私はここ二週間箱詰め状態なのよ?」

 

智鶴は学園があると譲らず、カーネリアもまた暇を持て余してるため外でたまには羽を伸ばしたいと言い、それに忍を付き合わせたいらしい。

要は忍の取り合いである。

 

「坊ちゃんも大変ですな~」

「お嬢はあの姉ちゃんが来てから情緒不安定なのが気になりあすが…」

「うんうん」

 

その様子を眺めながら三人組が呑気に食事をしている。

 

「(はぁ…僕の生活、どうなるんだろう…?)」

 

そんな平和そうに見える光景の一方で…また、新たな事件(?)が発生しようとしていた。

 

………

……

 

その日の放課後のことだった。

 

オカルト研究部にて一つの騒動が起きていた。

それはリアスの婚約の事である。

ちょっとした御家事情からグレモリー家とフェニックス家との縁談が前々から持ち上がっていた。

しかし、古い悪魔同士の婚礼に反対気味のリアスは結婚を拒否。

生涯の伴侶は自ら見つけると言うが、それを許されないのも仕方ない。

そして、グレモリー卿ことリアスの父親は娘が拒否した時のために非公式のレーティング・ゲーム…つまるところ身内同士での決着の準備を進めることになった。

リアスをそれを承諾し、自らの運命を切り開くことを選んだ。

しかし、その際…イッセーが相手側の兵士の1人に一撃で倒されてしまい、醜態を曝すことになってしまった。

イッセーを鍛え上げるため、リアスに与えられた時間は十日。

ゲームはゴールデンウィークを挟んで十日後。

 

こうしてリアスの許嫁『ライザー・フェニックス』とのレーティング・ゲームが決まったのである。

 

ライザー達が帰った後のこと…。

 

「部長、すみません…無様な姿を曝しちゃって…」

 

イッセーはリアスに頭を下げていた。

 

「仕方ないわ。あなたはまだ悪魔になって一月にも満たないのよ」

 

「でも…」

 

「イッセー。強くなりたい?」

 

「はい! あの野郎をブッ飛ばすぐらいには…!」

 

「それでこそ私の眷属よ。ゴールデンウィークまで待てないから明日から修行を始めるわよ」

 

そんな会話をしていると…

 

「そういえば、あの風鳴 弦十郎という男…かなりの手練れだったわね。人間に頼るのもおかしな話だけど、少し当たってみましょうか」

 

思い出したようにリアスが弦十郎のことを話題に出す。

 

「あのオッサンですか? 確かにめっちゃガタイが良かったですもんね」

 

イッセーも彼の姿を思い出しながら頷く。

 

「ですが、よろしいので?」

 

しかし、朱乃は難色を示す。

 

「いいのよ。相手は成熟した悪魔。しかもレーティング・ゲームの公式戦経験者。こちらに切れるカードがあるなら使ったって構わないでしょ? それに魔力に関してはこちらも一緒に同行するのだから平気でしょ」

 

「ですが、一応の確認は取っておきましょう。あとで難癖を付けられても困りますし」

 

「そうね。朱乃の言う通りかもね。グレイフィアに頼んで許可を貰い、その上で勝ちましょう」

 

リアスの言葉に眷属達が頷く。

そして、弦十郎への剣は意外にもすんなりと通ったそうだ。

ライザー曰く『面白くなればどんな修行でもしてこい。まぁ、勝つのは俺だがな』とだけ伝言で伝えてきた。

 

………

……

 

~同刻・海鳴市地下鉄ホーム~

 

ここでは現在、ノイズが発生しており、それを響が未だに慣れない戦闘を行っていた。

 

ガラガッシャァァァンッ!!

 

その中で瓦礫に埋もれてしまった。

 

「見たかった…」

 

響は瓦礫の中で呟く…。

 

「未来と一緒に流れ星、見たかった!!」

 

ドガァァンッ!!

 

そう叫ぶと共に瓦礫を吹き飛ばすと、怒りのままに獣のような戦いを繰り広げた。

 

「お前達が…小さくても大切な約束を踏みにじるなら…私は…!!」

 

ノイズをあらかた掃討すると、一匹のブドウみたいな外見のノイズが地下から地上へと逃げ出す。

 

「ま、待て!」

 

それを追いかけようとすると…

 

「流れ星?」

 

夜空に一筋の青白い光が落ちるのが見えた。

 

≪蒼ノ一閃≫

 

その光は翼であり、最後のノイズを蒼い斬撃によって駆逐する。

 

「~♪」

 

歌いながら地上に降りる翼を見て…

 

「私にも守りたいものがあるんです。だから…」

 

響はそう伝えていた。

 

しかし…

 

「だぁかぁらぁ…どうしたってんだよ!」

 

そこに白銀の鎧を纏った少女が月下の元に現れる。

 

「ネフシュタンの…鎧…!!」

 

それを見た翼は目の色を変えていた。

そして、思い出していた、二年前に起きた忘れようもない悲劇と別れを…。

 

互いに剣とクリスタルの連なったような鞭を構える両者。

 

「や、やめてください、翼さん! 相手は人間です!」

 

そこに翼に抱き着くようにして止めようとする響だが…

 

「「戦場で何をバカなことを!!」」

 

両者が言うことが同じだったのか、見事にハモってしまっていた。

 

「「………」」

 

そのことに一瞬だが、両者は顔を見合わせるが…

 

ギンッ!!

 

「うわぁ!?」

 

刀と鞭がぶつかり、その余波で響を吹き飛ばす。

 

そこからは激しい戦闘となった。

そして、少女の持つ弓っぽい形状の杖から光が放たれると、そこからノイズが出現する。

 

「ノイズが…操れらてる!?」

 

その光景に驚く響であったが、出現した4体のノイズが吐き出した粘液で絡め捕られてしまう。

 

その間も翼と少女の戦いは激化していき…

 

「~♪」

 

最終的に翼はシンフォギアシステムの切り札『絶唱』を歌うことで、周囲一帯のノイズを殲滅し、ネフシュタンの鎧を纏った少女の撃退に成功した。

しかし、その反動は翼に瀕死の重傷を負わせ、緊急搬送されるほどであった。

 

一方で響は翼の覚悟を見て自分の未熟さと、奏での代わりになるという軽率な行いを反省して涙を流していた。

そして、新たな決意と共に自分を奮い立たせるのであった。

 

………

……

 

~翌日・風鳴屋敷~

 

明幸組の武家屋敷のような和風な屋敷の門の前で…

 

「「たのも~!!………………え?」」

 

2人の男女が同じようなことを言って、同じようなことを言う人に驚いていた。

 

「あれ、響ちゃん?」

 

「一誠さん、どうしてここに?」

 

「いや、そっちこそ…」

 

そう、それはイッセーと響だった。

 

但し…

 

「あの2人は何をしてるのかしら?」

 

「様式美というやつですわ」

 

「一歩間違えれば道場破りだけどね」

 

「……(コクコク)」

 

「あ、あの人は確か…」

 

イッセー側にはオカ研のメンバーもいるわけだが…

 

「来たか。って、どうして響くんまでいるんだ?」

 

そこに家主である弦十郎が現れる。

 

「私、強くなりたくて…弦十郎さんなら色んな武術を知ってると思って」

 

それを聞き…

 

「…俺のやり方は厳しいぞ? それについてこれるか?」

 

「はい!」

 

「やってやるぜ!」

 

意気揚々と返事をするイッセーと響だったが…

 

「ところでお前ら…アクション映画は嗜むか?」

 

いきなりそんなことを尋ねられてしまった。

 

「「はい?」」

 

その問いにイッセーも響もきょとんとしてしまう。

 

そして、響とイッセーの修行が始まるのだった。

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