魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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第九話『修行と氷結と覚悟』

イッセーと響が弦十郎の元で修行する一方で…

 

「確か、この辺りのはずだけど…」

 

忍は1人、海鳴市にある人物を訪ねるためやってきていた。

そして、待ち合わせの場所として海鳴臨海公園で待機していた。

 

「忍く~ん」

 

そこへ見知った顔が小走りにやってくる。

 

「あ、フェイトさん」

 

それは時空管理局の執務官ことフェイトである。

 

「すみません。突然お呼び立てしてしまい…」

 

「それは構わないけど…急にどうかしたの? 何かあったのかな?」

 

フェイトの言葉に頷きつつ、周りに誰もいないのを確認してから…

 

「実は…」

 

先日経験したノイズとの接触、そこに居合わせた1人の騎士と呼ばれる同い年くらいの少女、そしてその少女から渡されたデバイスの事をフェイトに話していた。

 

「そんなことが…」

 

「はい…」

 

2人は近くのベンチに座っていた。

 

「でも、どうして地球にデバイスの輸送が…? ここにデバイスを扱えるような人材はほとんどいないのに…」

 

フェイトはその輸送自体を不審に思っていた。

 

「わかりません。これがそのデバイスなんですけど…」

 

そう言ってヴェルネクサスの数点をフェイトに見せる。

 

「変わった形だね」

 

「騎士さんの話だと、新型の試作機だそうです」

 

「なるほど…(少し調べてみようかな…)」

 

フェイトは内心で新型機について調べることを考える。

 

「それで、フェイトさん」

 

「なにかな?」

 

「僕に…魔法を教えてくれませんか?」

 

「私が…忍君に?」

 

「はい。どうしても覚えたいんです」

 

忍は決意に満ちた眼でフェイトに魔法の指南を願い出ていた。

 

………

……

 

修行一日目。

 

修行のはずなのだが、何故か弦十郎と共にアクション映画を鑑賞していた。

しかもその映画のコスプレまでしている。

 

「形から入るんですね…」

 

イッセーが少し困惑気味に映画に映っているシーンの俳優と同じポーズを取る。

 

「もちろんだ。こういうのは肌で感じないとならないからな」

 

弦十郎もまた似たような格好をしている。

 

「映画を肌で感じるって言ってもな…」

 

「ほわ~」

 

そんなイッセーとは逆に響は形から入っていた。

 

そして、一通りのアクション映画鑑賞が終わると…

 

「では、行くぞ!」

 

やっと修行らしく走り込みから始まった。

しかし、一日の半分近くを丸々映画鑑賞に費やしていたため、走り込みを始める頃には夜になっていた。

コースは風鳴宅から駒王町、海鳴市を延々と回るという長いものだった。

だが、それくらい走り込まなければ体力がつかないという弦十郎とリアスの共通認識だった。

但し、イッセーには男ということで手足に5kgずつ合計20kgの重しを着けての走り込みとなった。

 

「ぜー、ぜー…」

 

「ほら、イッセー。頑張りなさい」

 

イッセーにはリアスが自転車で追い掛け…

 

「響君もしっかりな」

 

「は、はい!」

 

響には弦十郎が竹刀を装備して自転車で追い掛けていた。

 

 

 

その頃…

 

「それじゃあ、始めようか」

 

「はい。お願いします」

 

神社では忍とフェイトが魔法の訓練をしようとしていた。

 

「私達の使う魔法系統は二種類あって、私や魔導師が使うミッドチルダ式、騎士が使うベルカ式があるんだけど…最近ではミッド式でベルカ式を再現した近代ベルカ式っていうのもあるんだ。それで、忍君はどの魔法が扱いやすそうかな?」

 

そう言って三つの魔法陣が映るサンプル映像を見せると…

 

「あの、フェイトさん…魔法陣って…これの事ですか?」

 

忍は古代ベルカ式の魔法陣を展開してみせた。

しかも色は忍の魔力色である白銀色である。

 

「ベルカ式?! しかも古代の!? な、何で忍君が古代ベルカ式の魔法陣が出せるの!?」

 

その光景にフェイトは酷く驚いた様子で尋ねていた。

 

「えっと…騎士さんの使ってた魔法陣を思い出したら…自然と浮かびまして…」

 

「(そ、そんな簡単に魔法陣は展開できないはずだけど…)」

 

魔法体系を完全に確立していない忍が使えるとは思えないフェイトだったが、現にこうして忍は魔法陣を展開しているので何とも言えなかった。

 

「えっと…じゃあ、ベルカの特徴だけど…ベルカは対人戦闘に特化してて射撃や砲撃とかの魔法はあまり得意じゃないんだ。私の知り合いに古代ベルカの使い手がいるからある程度教えられると思うけど…」

 

そう言いながらフェイトは掌に魔力を球体状にして現すと…

 

バチバチ…

 

「あと、こんな風に魔力を魔法にするプロセスを省いて直接的なエネルギーに変換できることを魔力変換資質って言うの。私の場合は電気。他には炎熱に凍結ってあるんだけど…炎熱と電気は比較的多いんだけど、凍結は結構レアな変換資質なの」

 

魔力を電気へと変換しながらそう説明していた。

 

「そうなんですか…」

 

忍もフェイトを真似て魔力を球体状にして現すと…

 

「変換、変換…」

 

そう呟きながら何かへ変化が無いか見る。

 

「忍君はまだ魔力の扱いに慣れてないから…そう簡単には…」

 

フェイトがそう言ってみたが…

 

シュゥゥ…

 

忍の魔力球から白い気体が地面に向かって落ちていた。

 

「これって…?」

 

「う、嘘…。これって凍結?」

 

忍が魔力変換資質『凍結』を保有していることが判明したのだった。

 

………

……

 

修行二日目~九日目。

 

走り込みから始まった修行は各種筋トレ、シャドー、スパーリング、アクション映画内でも行われていたモノまで幅広く行われた。

特にイッセーはそれら全てを重しありという条件付きで食らいついていた。

これにより、響とイッセーは体内の気を扱えるようになっていき、気の内包量も増えていった。

しかし、イッセーには他にも朱乃から魔力指導、木場から剣の指導、小猫から打撃指導もあり、響の倍以上の地獄を見ていたりする。

しかも魔力に関してはイッセーは弱く、そちらの才能は皆無とまで言われてしまっていた。

ただ、イッセーには少ない魔力でも秘策があるらしい。

 

 

 

一方、忍はというと…

 

「凄い…」

 

フェイトにそう言わしめるほどに忍の学習能力は凄まじかった。

魔力変換資質『凍結』を用いた近接格闘能力はフェイトにも引けを取らないものに昇華しつつあった。

また、ベルカ式では不得手のはずの近距離から中距離用の射撃魔法も自力で開拓するなどその才能を徐々に開花させていった。

 

これは忍やフェイトも知らないことだが、忍の稀少技能『超学習能力』に由来するものである。

 

稀少技能『超学習能力』。

これはあらゆる経験を一度でも視認・体験・理解することで瞬時に自らの技術に取り込めてしまう常時発動型の稀少技能である。

これは魔法に限らず、日常生活や勉学、スポーツなど幅広い分野にも通用しており、成績が良いのもこれの恩恵があってこそとも言える。

さらに修得した技能は自らの手で新たな技能として昇華させる能力にも秀でており、技能を修得すればするほどにその技量は際限なく上がり続ける。

但し、体験や視認しても理解が出来ないとその技術は取り込めない。

 

その超学習能力によって忍もまた恐ろしいぐらいの速度で成長していた。

 

………

……

 

そして、迎えた修行の最終日。

 

「十日間の修行、ありがとううございました!」

 

イッセーは弦十郎に向かって思いっきり頭を下げていた。

 

「いや、俺も男の弟子を持てて楽しかった。何より一誠君はなかなかガッツがあるしな」

 

弦十郎も弦十郎でこの十日間は楽しかったようだ。

ちなみに響は学院に行っていて、この場にはいない。

オカ研メンバーは学園の裏を支配してるので多少の融通は利いたりするのだ。

それを響は羨ましがっていたが…。

 

「詳しい事情は知らないが、これだけのことをするんだ。きっと大きな戦いがあるんだろう」

 

イッセーやオカ研メンバーの表情を見て弦十郎はそんな推測を立てていた。

 

「最後に一つ、一誠君には伝えておこう」

 

「なにをですか?」

 

弦十郎はおもむろにイッセーの肩に手を置くと…

 

「覚悟を持て」

 

「覚悟…?」

 

「そうだ。男なら何時如何なる時も絶対に諦めない覚悟を持って戦に挑むものだ」

 

その言葉にイッセーは…

 

「はい! 俺、絶対にあの野郎をブッ飛ばして、部長を勝たせてみせます!」

 

そう答えていた。

 

「その意気だ!」

 

それを聞いて弦十郎もバシバシとイッセーの肩を叩いていた。

 

「何かあったらいつでも訪ねてこい。また、鍛えてやるからな」

 

「はい! 師匠!」

 

イッセーがそう答えると、リアスが前に出て…

 

「お世話になったわね。十日間イッセーを鍛えてくれてありがとう」

 

「気にするな。若者が教えを乞うなら、それに応えるのが大人の仕事だ」

 

こうして、修行の日々は終わった。

いよいよ、明日はライザーとの決戦である。

 

………

……

 

~明幸組~

 

その夜。

 

スッ…

 

忍の部屋に人影が入っていた。

 

「すぅ…すぅ…」

 

布団で眠る忍の側にその人影はゆっくりと近づく。

 

「しぃ君…」

 

それは音舞姿の智鶴であった。

最近、フェイトの所に魔法の修得をしに行って遅く帰ってくる忍を気にかけていた。

 

「(しぃ君は…私が守らないといけないのに…どうしてしぃ君は…)」

 

忍の最近の行動を見ていて智鶴は不安を募らせいていく一方であった。

 

「しぃ君……私は…」

 

忍の寝顔を見る智鶴の瞳は…どこか空虚で狂気に満ちていた…。

 

「しぃ君は…誰にも渡さないからね…」

 

………

……

 

~某所~

 

キランッ…

 

白銀の蠍の像に嵌めこまれた宝石が煌めく。

 

「? 蠍座が反応を示したか?」

 

「誰かは知らないけど、近くに適合者がいるみたいね」

 

「そのようだ。No.7。連れてきてくれるか?」

 

「はいはい。わかりました。ドクター」

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