魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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第十二話『黄道の軌跡と赤き意志』

時間は少し遡り、忍が智鶴に連れ去られた直後こと。

 

「ユーノ! 今、大丈夫!?」

 

フェイトは自身の住むマンションに戻るや否や部屋から管理局の施設の一つ『無限書庫』に勤めている友人に通信を送っていた。

 

『フェイト? そんなに血相変えてどうかしたの?』

 

通信画面の向こうに眼鏡をかけた青年が現れて不思議そうな表情で尋ねていた。

 

「今すぐ調べてほしいことがあるの!」

 

『また急だね。まぁ、ちょうど手も空いてたし、別にいいけど』

 

それを聞くと…

 

「検索ワードは"白銀の鎧"、"魔力放出"、"デバイス"でお願い」

 

予め答えを用意していたワードを伝える。

 

『随分と限定した条件だね。検索してみるよ』

 

そう答えると青年…ユーノは魔法陣を展開して検索魔法を展開してみせた。

 

『"デバイス"から検索して…"魔力放出"と"白銀の鎧"に絞ると…』

 

しばらくすると一冊の資料がユーノの手元に引き出される。

 

『あったよ。それに該当するのは…っ?!』

 

資料を読むユーノの顔が凍りつく。

 

「どうかしたの?」

 

それを画面越しに見ていたフェイトがユーノに尋ねる。

 

『フェイト。つかぬ事を聞くけど…また厄介な案件に手を出したのかい?』

 

「……それって、どういう意味かな?」

 

色々と心当たりがあるのか、フェイトは一拍空けてから聞き返した。

 

『それに該当するのは…ロストロギア指定されたデバイス群…通称"エクセンシェダーデバイス"なんだ』

 

「エクセンシェダーデバイス?」

 

聞き慣れない単語にフェイトも首を傾げた。

 

『あまり公式な資料は残ってないから不明な点は多いけど…今フェイトが言ってた特徴を一番持ってるとしたらそれらが該当するんだよ』

 

「詳しく教えて」

 

そこでユーノから聞かされた事実は三つ。

 

デバイス自体に半永久的な魔法機関は搭載されていること。

 

地球でいうところの黄道十二星座を模していてその数は12機、存在していること。

 

各星座にはそれぞれ強大な特殊魔法がシステムとして組み込まれていること。

 

『正直、管理局内でも噂レベルの指定だと思われてるらしいけど…実在しているとなれば話は別かもね』

 

最後にユーノはそう言っていた。

 

「もし…あれが本当にそんなデバイスなら…」

 

『危険だろうね』

 

その見解は一致していた。

 

「ありがとう、ユーノ」

 

『一応、なのは達にも連絡しておくからフェイトも気をつけてね』

 

「うん」

 

それを最後に通信を切っていた。

 

その数時間後、近くの山にあった廃病院で火事が起こるとのニュースが報じられた。

 

その後、忍との連絡もついて一安心したものの、成長した彼の姿を見て唖然としたのだが…。

 

それはまた別の話であった。

 

………

……

 

~???~

 

「ここは…?」

 

イッセーは赤い炎に包まれた空間の中にいた。

 

『ここはお前の精神世界…それとも夢の中とでも言えばいいのか?』

 

野太い声がその場に響く。

 

「精神世界? ならお前は一体誰なんだ?!」

 

イッセーはその声の発生源を捜す。

 

『俺はお前の左腕にいるモノだ』

 

「左腕!? ならお前が…!」

 

それを聞くと、イッセーの左腕に篭手が出現し、そこから赤い龍が出現する。

 

『我は赤き龍の帝王(ウェルシュ・ドラゴン)、ドライグ』

 

「赤き龍の帝王…ドライグ…」

 

その雄大な姿を見上げるイッセー。

 

『せっかく修行したのにこのざまとは…"白い奴"に笑われるかもな』

 

「うるせぇな! てか、白い奴ってなんだよ!?」

 

『そのうちわかるさ。それよりも龍を宿した者が敗北したまま、おめおめと引き下がるつもりか?』

 

その言葉に…

 

「ふざけんな! あんな野郎に部長を渡してたまるかよ…!」

 

イッセーはそう怒鳴っていた。

 

『ならば、もっと力をつけることだな。それにもしもの時は俺もお前に力を分け与えてやるよ。まぁ、力を得るには犠牲を払うが…それだけの価値を与えてやるさ』

 

その言葉を最後にイッセーの意識は現実世界で覚醒しつつあった。

 

………

……

 

そして、イッセーは二日間による眠りから目覚めた。

目覚めた直後に会ったのはグレモリー家のメイド『グレイフィア・ルキフグス』であった。

グレイフィアはイッセーが目覚めると、イッセーの表情から彼がまだ諦めてないことを悟り、魔王サーゼクス・ルシファーからの伝言を告げ、会場へ直行出来る魔法陣の描かれた紙を渡された。

『妹を助けたいなら、会場まで殴り込んできなさい』と…。

それを受け、最初は困惑していたイッセーだが、すぐに行くことを決意した。

イッセーが目覚めて泣いていたアーシアにそのことを話した。

その後、イッセーは…篭手に宿る龍との取引を交わした。

 

そして、イッセーは冥界で開かれているパーティー会場へと転移した。

転移後、イッセーは文字通りの殴り込みを果たし、仲間の助けと魔王サーゼクス・ルシファーの提案によってライザーとの一騎討ちをすることとなった。

 

一騎討ちはレーティング・ゲームで使われるような特殊な空間で行われることとなった。

 

対峙するイッセーとライザー。

 

「あれだけ痛めつけられたというのに懲りない小僧だ。恥の上塗りにここまで来るとはな」

 

「うっせぇよ。あの時はあの時、今は今だ! 今度こそ俺はお前をブッ飛ばす!」

 

そう言うとイッセーは構えを取る。

 

「それだけで俺を倒せると思うなよ!」

 

火の翼を広げると、ライザーは空へと飛び上がる。

 

「部長! 15秒でケリを着けてみせます!」

 

「はははっ!! なら俺はそれよりも早くお前の口を封じてやる!」

 

そう言ってライザーはイッセーに向けて炎の弾を撃ち出す。

 

「はぁ!!」

 

火の弾を篭手によって弾かせ…

 

「慌てんなよ、こっからが正念場だ! 輝きやがれ、赤龍帝の篭手! オーバーブーストッ!!」

 

『Welsh Dragon Over Booster!!』

 

篭手の宝玉から赤い閃光が放たれ、イッセーの全身に赤い龍を模した鎧が纏われていった。

左腕篭手の手の甲部にあった宝玉も右手の甲、両腕、両肩、両膝、胴体中央にも出現していた。

 

「その姿は?!」

 

禁手(バランスブレイカー)、『赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)』だ!」

 

「禁手?! 忌々しい外法をこの短期間で修得したというのか!?」

 

ライザーはイッセーの姿に驚いていた。

 

≪ⅩⅤ≫

 

「時もないから速攻で行くぜ!!」

 

背中のロケットブースターを噴かし、イッセーもまた空へと飛ぶ。

 

「うおおおっ!!」

 

魔力の塊を作り出すと、それをライザーに向かって撃ち出す。

 

「なっ?!」

 

ライザーは驚きつつもそれを避ける。

 

≪ⅩⅣ≫

 

「ここだぁ!!」

 

その隙を突いて一気に近づき、左拳による正拳をライザーの腹部へと叩き込む。

 

「ぐぉっ!?」

 

その打撃にライザーは怯むもののすぐに傷は再生していった。

 

「ふっ…この程度の傷、どうということは……がはっ?!」

 

しかし、すぐに吐血していた。

 

≪ⅩⅢ≫

 

「き、貴様…何をした!?」

 

突然起きた出来事にライザー自身も困惑していた。

 

「もしかして…こいつのことか?」

 

そう言ってイッセーが見せたのは…

 

「十字架だと!?」

 

イッセーは左拳を解くとそこから悪魔の天敵である十字架を見せていた。

 

≪ⅩⅡ≫

 

「あぁ、うちの僧侶は元シスターだったからな。机の奥にしまってたのを借りてきたのさ」

 

「バカな! 十字架は悪魔にとっては天敵そのもの! いかにドラゴンの鎧を着ていようと……ッ!!?」

 

そこでライザーはあることに気づき、イッセーの左腕を凝視した。

 

「ま、まさか…貴様、腕に宿るドラゴンに…自分の腕を…!!」

 

「ドラゴンの腕なら悪魔の弱点は関係ないからな!!」

 

ライザーの読み通り、イッセーは自らの腕を犠牲にこの力を手にしていたのだ。

 

≪ⅩⅠ≫

 

「正気の沙汰とは思えん! その腕はもう二度と戻らないんだぞ!?」

 

ライザーがイッセーの行動に正気を疑っていると…

 

「それがどうしたッ!!!」

 

そんなことを関係ないとばかりにイッセーも吠えた。

 

「俺の腕が戻らない事よりも…部長が戻らないことに比べたら安い取引だ!!」

 

そう叫ぶと十字架を握り直してライザーへと向かう。

 

≪Ⅹ≫

 

「それほどの覚悟だというのか!!?」

 

「そんなの当たり前だろうが!!」

 

ゴスッ!!

 

今度はクロスカウンター気味に互いの拳が入る。

 

「ぐぁ!?」

 

ライザーの炎を纏った拳を受け、鎧の仮面部が砕かれる。

 

≪Ⅸ≫

 

「ぐぅぅ!!?」

 

いくらライザーにダメージを与えていてもイッセーには決定打に欠けていた。

 

「俺は火の鳥と鳳凰! 不死鳥と称されしフェニックス家の男だ! この程度で倒れるか!!」

 

そう叫ぶとライザーは炎の翼を広げると、その炎を纏ってイッセーに突撃を仕掛ける。

 

「そんな炎の熱で俺を焼けると思うなよ!!」

 

イッセーもまた気とは異なる赤いオーラを纏ってライザーの突撃を迎え撃つ。

 

≪Ⅷ≫

 

チュドォォォンッ!!!

 

炎と赤いオーラの塊同士がぶつかり、衝撃の余波がフィールドの空気へと伝わる。

 

「ぐあぁぁっ!?」

 

炎によって鎧の胴体部も砕け散る。

 

「ぐぅぅっ!?」

 

赤いオーラと十字架の攻撃で怯んではいるものの、やはり再生してしまう。

 

≪Ⅶ≫

 

「例え、それほどの代償を払ったとしても…勝者は俺なんだよ!!」

 

ライザーは再生しながらそう言い放ち、イッセーの胸倉を持ち上げる。

 

「なら、これでどうだ!!」

 

胴体から露出した制服の中から左手を突っ込み、ある物を取り出す。

 

「ふんっ…今度は聖水か? しかし、それっぽっちの量で!!」

 

それは小瓶に入った聖水だった。

 

≪Ⅵ≫

 

「それはどうかな?」

 

「なに?」

 

油断しているライザーに不敵な笑みをこぼすイッセーは…

 

赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)!」

 

『Transfer!』

 

倍加した力を聖水に付加し、それをライザーへと振り掛けた。

 

≪Ⅴ≫

 

「しまっ…!?」

 

ジュワアアアア!!!

 

「ぐああぁぁぁぁ!!?」

 

強化された聖水がライザーの顔へと直撃し、ライザーの体力と精神を消耗させていく。

 

「アーシアが言ってたんだ。聖水と十字架が悪魔は苦手だってな。そいつを同時に高めれば悪魔には相当なダメージになるよな!」

 

「この…クソガキがぁぁぁぁ!!」

 

≪Ⅳ≫

 

怒りのままライザーが炎の弾をイッセーに投げ付けるが、イッセーはそれを跳んで避ける。

 

「木場が言っていたんだ。視野を広げて相手を見ろってな!」

 

そして、残った聖水を左手の十字架に振り掛け…

 

『Transfer!』

 

倍加の力を付加し、魔力も拳に集め始める。

 

「朱乃さんが言ってた。魔力は体全体を覆うオーラから流れるように集める。意識を集中させて魔力のは波動を感じればいいってな!」

 

≪Ⅲ≫

 

そして、残り時間も迫ってきた。

 

「小猫ちゃんが言ってた。打撃は中心点を狙って的確に抉り込むように打つってな!!」

 

最後にありったけの力を左拳に乗せる。

 

「そして、師匠も言ってた。稲妻を喰らい、雷を握り潰すように打つべしってな!!」

 

それを見たライザーは…

 

「ま、待て! わかっているのか?! この婚約は悪魔の未来のために必要で大事なことなんだぞ!? お前のような悪魔になりたての下級の小僧がどうこう出来る問題じゃないんだぞ!?」

 

≪Ⅱ≫

 

最後に自らの不利を悟ったライザーはそう捲し立てるが…

 

「難しいことはわかんねぇよ。それでも…お前に負けて気絶しても…俺は薄らと覚えてたことがある」

 

そう言ってイッセーが駆け出し…

 

「部長が泣いてたんだよ!!」

 

ライザーに近づくと…

 

「俺がテメェを殴るには…それだけで十分な理由なんだよぉぉッ!!!」

 

≪Ⅰ≫

 

ライザーの腹部目掛けてアッパーカットの要領で渾身の一撃を食らわす。

 

「がぁ!?!?」

 

その一撃にライザーは血を吐きだしながら腹部を押さえながら後退りし…

 

「こ、こんなことで…お、俺が…」

 

膝をつき、地面に伏するライザー。

 

「部長…俺、勝ちました…!」

 

≪Count up≫

 

イッセーは左腕を天高く掲げてみせた。

それと同時に音声も響き渡り、イッセーの体を纏う鎧も消え、龍の腕と化して篭手を纏った左腕だけが残った。

 

こうしてグレモリー家とフェニックス家の縁談は破談となった。

イッセーはグレイフィアから渡されていた紙の裏の召喚魔法陣によってグリフォンを呼び出すと、リアスを連れて会場から後にしたという。

 

その最中のこと…。

 

「バカね。こんなことをして…」

 

グリフォンに乗るリアスはドラゴンの腕と化したイッセーの左腕を触る。

 

「お得だったんですよ、こうして部長を取り戻せましたから」

 

そう言ってイッセーは笑ってみせるが…

 

「今回は破談に出来たかもしれないけど…でも、また縁談が来るかもしれないのよ?」

 

その言葉に…

 

「次は右腕…それでも足りなかったら眼でもくれてやりますよ。それに…俺だってもっと強くなります。なんせ…」

 

イッセーはリアスの眼を見て…

 

「俺はリアス・グレモリーの…最強の兵士(ポーン)になりますから」

 

そうハッキリと答えていた。

 

「…っ」

 

それを聞いたリアスは…

 

チュッ…

 

「っ!!?」

 

イッセーの唇に自分の唇を重ねていた。

ちなみにこれがリアスのファーストキスだという。

そして、リアスは兵藤家に居候するとまで言い出す始末。

 

余談だが、両家にはそれぞれ既に純潔の孫までいたため、両当主は自らの欲の深さを反省していたという。

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