魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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第十五話『聖と魔とバベルの塔』

クリスが明幸組に匿われてから数日後。

事態が大きく動き出した。

 

大型の飛行ノイズが駒王町と海鳴市の上空に2体ずつ現れたのだ。

大型ノイズは小型ノイズをばら撒きながら街の上空を旋回している。

 

「ちょっとこれは…まずいかな」

 

「このままだとこっちにも来そうよね」

 

縁側から街の様子を見ていた忍と暗七が難色を示していた。

 

「そうねぇ」

 

カーネリアも屋根の縁に座って面白そうに街を見ていた。

 

「あたしは行くからな」

 

そこへクリスが意を決したように中庭に出る。

 

「さっきからこいつもうるせぇし…」

 

先日、弦十郎が訪ねてきた時に手渡していた通信機がさっきからピーピーとうるさかった。

 

「そういうことなら…俺達も行くぞ」

 

少年から青年へとなった忍がクリスに同行すると言い出す。

 

「はいはい。私も拾われたようなもんだし…食べた分くらいは働くわよ」

 

「私もなのかしら?」

 

忍の言葉に暗七は渋々といった感じで了解し、カーネリアも首を傾げていた。

 

「お前らな…」

 

クリスが呆れたように3人を見ると…

 

「組の人達は地下に非難しました。私達も…」

 

智鶴が迎えに来てしまった。

 

「………行くの?」

 

そして、4人の雰囲気を見て一言、それだけを尋ねた。

 

「あぁ…力があるなら守らないと、幸いシンフォギアシステムの近くなら俺達の攻撃も届くからね。流石に物理接触は出来ないが…」

 

忍は苦笑しながらそう言ってみせた。

 

「なら、私も行きます。しぃ君が私を守りたいように…私もしぃ君を守りたいから…」

 

そう言って智鶴はスコルピアのチェーンブレスレットを取り出す。

 

「ちぃ姉…」

 

「ホントにアンタも物好きね」

 

しかし、智鶴はスコルピアを持つ以外、普通の人間であるため危険性がかなり高い。

特に多くのノイズを相手にするとなると、誰かが守らなければなくなるのだ。

忍もそれを心配して説得を試みたが、智鶴は断固として行くと譲らなかった。

 

時間も限られていたので、結局は智鶴も行くことになった。

クリスはシンフォギアシステムによる身体強化と、忍はネクサスを起動させてから銀狼になっての地上移動、智鶴と暗七はスコルピアの長距離移動形態『ジェットフォーム』に乗り、カーネリアは翼を広げての空中移動で駒王町へと向かっていた。

幸運なことに住民は避難していたため、それらを見られることはなかった。

 

「行くぞ!」

 

「お前が仕切んな!」

 

戦闘エリアに入ると、忍が先行してそれをクリスがクロスボウで援護する。

 

「ありがとう、スコルピア」

 

『いえ、主の想うままに…チェンジ、アーマード』

 

スコルピアは短くそう答えるとジェットフォームから智鶴の身に鎧状となって装着する『アーマードフォーム』へとなる。

そのため、自然と落下するのだが…

 

ボァァ…

 

スカートユニットから魔力粒子を噴射してゆっくりと降下していく。

 

『次元刀、射出します』

 

後頭部に装着されたテイルユニットが外れると、そこから日本刀が現れた。

 

「しぃ君!」

 

右手に持った大剣『スティンガーブレード』を忍へと投げ飛ばすと、そのまま次元刀を手にした。

 

「っ!」

 

スティンガーブレードを受け取った忍はそれを振るってノイズの突撃を捌いていく。

 

「少しは安全に降ろしてほしいわ」

 

文句を言いつつ暗七は背中から蝙蝠のような黒い翼を広げ、それをパラシュート代わりにして無事に降下していた。

 

「こんな玩具相手に面倒ね」

 

空に浮かぶカーネリアは大型ノイズに対して光の槍を放っていたが、決定打には程遠かった。

その代わり、大型ノイズから放出されるノイズの数は減っていた。

 

すると…

 

「雷よ!」

 

ピシャアアアア!!

 

張れていた空が曇ると、そこから大きな雷が大型ノイズに直撃する。

 

「あら? これって…」

 

その攻撃方法に見覚えがあったのか、カーネリアが首を傾げていると…

 

「消し飛びなさい!!」

 

「ふむ…」

 

背後から聞こえた声にカーネリアは急降下する。

すると、カーネリアの漂っていた場所を通過するように赤黒い魔力の波動が大型ノイズに直撃して跡形もなく消え去る。

 

「今のは!?」

 

その光景に驚いた忍が声を上げると…

 

「きっと…リアスちゃん達だわ」

 

近くで一緒に次元刀の蛇腹機構を用いた中距離戦闘で戦っていた智鶴がそう言う。

 

「そういえば、ここはグレモリー先輩の縄張りだっけ?」

 

「えぇ……なんて言おうかしら?」

 

智鶴が上手い言い訳を考えていると…

 

「これは…一体どういうことかしら?」

 

そう言いながらリアスが2人の所に降りてきた。

 

「何故、堕天使と共闘しているのかしら? それに智鶴…あなたが纏っているのはなに…?」

 

「それは…その…」

 

忍が言い訳に困っていると…

 

「リアスちゃん、今は町を守ることを優先しましょう。幸い、クリスちゃんがいるからノイズを攻撃できるし…」

 

「…………」

 

しばし考えた後…

 

「必ず、教えてちょうだい。じゃないと友として許さないから」

 

「えぇ、わかってるわ。ごめんなさい…」

 

「謝るくらいならちゃんと説明して…」

 

そう言うと、リアスは悪魔の翼で再び空へと飛んだ。

 

その後、リアスや朱乃、カーネリアといった空中戦力によって駒王町側のノイズは撃退に成功した。

駒王町での戦闘が終わると、クリスは智鶴から足として一時的に借りたジェットフォームのスコルピアに乗り、そのまま海鳴市への援軍として急行していた。

そして、残った智鶴はカーネリアと暗七の事情を話していた。

しかし、忍はノイズの行動に少しだけ違和感を覚え、クリスを追って海鳴市へと向かっていた(もちろん、智鶴にはちゃんと言った後で、であるが…)。

 

 

 

「そう、そんなことがあったの…」

 

話し終えた智鶴の言葉にリアスは一言…

 

「一言、相談してほしかったわ」

 

それだけ言っていた。

 

「ごめんなさい、リアスちゃん。朱乃ちゃんも…」

 

「…………」

 

朱乃は朱乃でかなり複雑そうな顔をしていた。

 

「ふふっ…それよりもお客みたいよ?」

 

カーネリアがそう言うと…

 

「カーネリア。貴様、一体何をしている?」

 

空からそんな声が聞こえてきた。

 

「それはこっちの勝手でしょ? "コカビエル"」

 

その言葉にリアスと朱乃が空を見た。

 

「ふんっ、相変わらず生意気な。それよりも初めましてだな、グレモリーの娘」

 

そこには背中から黒い翼を10枚も広げた男がいた。

 

「あなたがコカビエル…一体何の用かしら?」

 

「聞いても無駄よ。どうせ、戦争したがりの気狂いだもの」

 

リアスの問いにカーネリアが口を挟む。

 

「それは貴様も同じだろう…破壊衝動の塊が」

 

「あら、私のはもっと純粋なものよ?」

 

「破壊衝動に純粋も何もあるものか」

 

「戦狂いの戦争狂に言われたくないわ」

 

買い言葉に売り言葉が続いたが、コカビエルは改めてリアスの方を見ると…

 

「そこの裏切り者の言う通り、俺は戦争を始める。手始めにこの街からだ! 戦争の火種というのは小さくも上質なものだからな! お前達が大切にしている学び舎とやらで待っているぞ!」

 

そう言うと、コカビエルは駒王学園の方へと飛び去って行った。

 

「待ちなさい!」

 

コカビエルを追ってリアスと朱乃も飛び去っていく。

 

「私達も行きましょうか」

 

「あの蠍も戻ってきたことだし…いいんじゃない?」

 

「あんまり関わりたくないけどね…」

 

スコルピアが戻ると同時にスコルピアに乗る智鶴と暗七。

カーネリアもそれを追っていた。

 

………

……

 

一方、その頃…。

 

海鳴市では響と翼の他にも戦う人影があった。

 

「プラズマ・スマッシャー!」

 

雷の砲撃でノイズを一掃するフェイトであった。

 

避難勧告は出ていたが、人々を守るためにバルディッシュと共に戦火の中へと飛び込んだのである。

 

「誰だか知りませんが、ありがとうございます」

 

「気にしないで。それよりも早くノイズを」

 

「はい!(なんだか、翼さんと話してるみたい)」

 

フェイトと話した響はそんなことを考えていた。

 

そこへクリスと忍も合流した。

 

「フェイトさん!」

 

「忍君!? どうしてここに…?」

 

到着と同時に背中合わせで忍とフェイトが周囲のノイズへと砲撃を放つ。

 

「ちょっと気になることがありまして…フェイトさんこそ、大丈夫なんですか?」

 

「大丈夫。みんな避難してるから…よっぽどの事が無い限りは見られないから…」

 

「フェイトさんがそう言うならいいですけど…」

 

「とにかく、今はこの場を切り抜けよう!」

 

「了解!」

 

結果的にノイズの殲滅には成功したものの、戦いはまだ終わってはいなかった。

 

響達が迎撃してる間にリディアン女学院でもノイズの襲撃が起きていた。

それを聞き、響達は急いで現場に向かった。

 

リディアン女学院の地下、特異災害対策機動の本部では櫻井女史ことフィーネがその正体を現してネフシュタンの鎧を纏い、ソロモンの杖を携えてデュランダルを強奪し、カ・ディンギルを起動させようと動いていた。

 

響達が到着する頃には…赤い月が照らす夜となっていた。

 

………

……

 

~同刻・駒王学園~

 

そこにはフリードを追ってきたイッセー達もいて、シトリー眷属が学園を結界で覆っていた。

コカビエルを追ってきたリアスと朱乃も合流すると、グレモリー眷属のみで突入することとなった。

 

そこでは怪しげな儀式も展開されており、そこにはコカビエルとフリード以外にもバルパー・ガリレイという、木場の過去に受けた聖剣計画の統括者もいた。

バルパーは奪い取ったエクスカリバー3本に加え、アジトに来ていたイリナからも奪ったエクスカリバーを含めた4本を一つにした上で、駒王町も崩壊させる術式を完成させていた。

その時間稼ぎにコカビエルがケルベロスを召喚していた。

 

そこへディメンションゲイトによって結界内に入り込んだ智鶴とカーネリアと暗七も参戦する。

 

「ほぉ、面白い。たかが人間が悪魔の張った結界に入り込んでくるとは…」

 

それを見てコカビエルがほくそ笑む。

 

「明幸先輩!? それとお前は…!!」

 

カーネリアの存在にリアスと朱乃以外のグレモリー眷属が警戒する。

 

「みんな、落ち着きなさい。不本意だけど…彼女は敵じゃないわ」

 

「あらあら…随分な言われ様ね。ま、仕方ないけどね。あら?」

 

そこでカーネリアはアーシアを見つけた。

 

「あらあらあらあら…アーシアちゃんってば、悪魔になっちゃったの?」

 

「か、カーネリア様…」

 

「様付けは不要よ。ま、死なないようにね」

 

そう言ってカーネリアは光の槍を背中からグレモリー眷属を襲おうとしていたケルベロスに向かって思いっきり投擲していた。

 

「ギャウゥゥゥ!!?」

 

それは見事に左側の頭に命中すると僅かに後ずさる。

 

「これで貸し一つね」

 

笑いながらカーネリアはそう言ってみせた。

 

「ケルベロス、ねぇ…ただの犬じゃない」

 

カーネリアが一撃を加えた直後に一気に駆け出していた暗七が両手を怪物の手に変化させるとケルベロスに向かって跳躍する。

 

「シャドークロウ!」

 

右頭の首を擦れ違いざまに引き裂くと、ケルベロスの体を蹴って距離を取った。

 

「リアスちゃん!」

 

「えぇ! イッセー! 朱乃に譲渡を!」

 

「はい、部長!」

 

『Transfer!!』

 

イッセーが力を溜めていた力を朱乃に譲渡していた。

 

ピシャアアアアアア!!!

 

残った本体を倍加された朱乃の雷が襲い、ケルベロスを跡形もなく塵に還していた。

 

残ったのはコカビエルとバルパー、フリードだったが、エクスカリバーが1本になったことで、術式が発動してしまい、崩壊まで残り20分となってしまった。

 

そして、フリードは4本の力を束ねられたエクスカリバーで戦いを挑んできたが、そこに木場とゼノヴィアが現れてフリードと交戦を開始した。

 

その中で木場はバルパーから聖剣計画の真実を聞き、膝から崩れ落ちる。

 

聖剣計画とは聖剣を扱うための過去の被験者達(つまりは木場と同じ境遇の者達)から適正因子を高い者から摘出して結晶化することで因子の無い者でも適合者として高めること。

 

その最後の一つをバルパーが木場に投げ捨てるようにして渡すと、それを木場は手に取り涙を流していた。

 

すると、その時…奇跡は起きた。

 

結晶から木場の仲間の魂が溢れだし、彼に聖剣を受け入れる勇気を与え、彼らの想いが一つになった時…木場は至った。

 

禁手、『双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)』。

 

本来なら相反するはずの聖と魔…両方の特性を持った剣の創造。

それが木場の発言した禁手であった。

 

その力を持って木場はフリードとエクスカリバーを圧倒していった。

そして、ゼノヴィアもデュランダル(聖遺物ではないオリジナル)を用いて木場と共にエクスカリバーの破壊を成し遂げた。

エクスカリバーを破壊しても、核となっていた部分を回収できれば剣を折っても構わないらしい。

 

その様子を見ていたバルパーはあることに気づいたが、それを口にする前にコカビエルに殺されてしまった。

 

残るはコカビエルのみ。

 

………

……

 

リディアン女学院と駒王学園。

奇しくも二つの学園で最後の戦いが始まろうとしていた。

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