第十七話『少将と総督と予兆』
駒王学園でグレモリー眷属がコカビエルと戦った日。
突如、現れた白龍皇によってコカビエルがアザゼルの元へと連行された。
その前には赤龍帝と白龍皇の会話も確認されたらしい。
その数日後、神の不在を知ったゼノヴィアはグレモリー眷属の騎士として悪魔に転生した。
しかし、勢いに任せた部分も多分に含んでいたため、自分の在り方に独り言を重ねるという奇妙な姿を見せていた。
また、同日とその翌日。
フィーネがカ・ディンギルを用いて月を破壊しようとしたが、シンフォギア装者と協力者によって月の破壊を一部に留めた後、月の欠片の落下をシンフォギア装者の活躍と時空管理局内に存在する特務隊の独断行動によって月の欠片が破壊され、被害は最小限に留まった。
後にこの事件は『ルナアタック』と呼ばれることになった。
そして、シンフォギア装者はというと…
………
……
…
~ヴェル・セイバレス『ブリッジ』~
月の破片をほぼ粉砕した後、特務隊のヴェル・セイバレスに収容されていた。
「うわぁ~…なんだか凄い所に来ちゃいましたね。ていうか、宇宙ですよ、宇宙!」
次元航行艦…いや、気分的には宇宙船かも知れない…に初めて乗った響は
「燥ぐなよな。ここがどこかも分からない場所にいんのによ」
「雪音の言う通りだぞ、立花」
クリスの言葉に翼も同意して響を注意していた。
「す、すみません…」
2人に注意されて響も佇まいを直して目の前の艦長席に座る人物を見上げる。
「君達が流星の報告にあった装者と呼ばれる者達か。報告よりも数が多いようだが…」
艦長席にはゼーラが座っており、投影ディスプレイで朝陽からの報告書を閲覧していた。
「我々の話も流星二尉から聞いているだろうが、一応名乗っておこう。俺の名はゼーラ・シュトライクス。時空管理局に所属する騎士で少将だ。管理局の武装隊と呼ばれる部署の中でも特殊任務を行うために俺が直接編成した特務隊を率いている」
簡単にゼーラは自分の部隊の説明していた。
「その特務隊が…何故、我々を助けてくれたのでしょうか?」
それを聞いた後、翼が当然の質問をしていた。
「とある知り合いから俺宛てに連絡が入ってな。上の指示を待たずして動いた。要は俺の独断だ」
そう答えても後悔の念は一切感じられなかった。
「しかし、地球か…」
艦長席から見える地球を眺めて少し考えことをしているようだった。
「シュトライクス少将は地球をご存じなんですか?」
「古い時代の話だ。さて、君達を故郷へと送ろう」
翼の問いに軽く答えると、パネルを操作してある人物を呼び出す。
ウィィン…
「流星二尉。来たわよ」
ブリッジに入ってきたのは朝陽だった。
入った後、朝陽はゼーラに敬礼するとチラリと響達を見た。
「流星。お前には彼女らを地球の日本へと連れてってもらいたい」
「了解」
ゼーラの命令に再び敬礼して答える。
「それと…しばらくの間、セイバレスは月の様子を見るために駐留させておく。何が起こるかわからないからな」
「いいんですか?」
それを聞いて朝陽は思わずそう聞き返していた。
「構わん。どうせ戻ったとしても処罰はそう変わらん」
ゼーラはそれだけ言うと朝陽に目配せをしていた。
「じゃ、行くわよ」
それを受けて朝陽は響達にそう言っていた。
「えっと…今回はありがとうございました!」
「少将のご配慮に感謝します」
「拾ってくれてありがとよ」
それぞれゼーラに感謝の言葉を言うと、朝陽についてブリッジを出た。
「…………」
ブリッジから響達が出ると、別の通信ウインドウを開く。
もちろん、遮音結界を張るのも忘れない。
「アザゼル」
『よぉ、ゼーラ。どうだい首尾は?』
「滞りなく終わった」
『そうかい。ありがとよ』
「礼など不要だ」
『そう言うなって。それよりも面白い話をしてやる』
「面白い話だと?」
『あぁ、お前さんも興味がありそうなことだ。俺ら堕天使と天界の天使、そして冥界の悪魔のトップが会談を開くことになった』
「ほぉ」
『場所は駒王学園。例の狼君や赤龍帝の通う学園だ』
「狼…確か、ネクサスを起動させたという…」
『あぁ。そこで提案なんだが…お前さんも会談に来ないかい?』
「なに?」
アザゼルの言葉にゼーラは意外そうな表情をしていた。
………
……
…
ルナアタックから3週間後。
6月の中旬辺りになるだろうか。
季節は初夏を迎えていた。
そのため、オカ研は生徒会の要請でプール掃除をしていた。
その代価としてオカ研はプールの使用権を得ていた。
イッセーにとってその時間が甘美且つ刺激的な日だったそうだ。
しかし、その翌日のでことである。
イッセーの前に白龍皇『ヴァーリ』が姿を現していた。
彼はアザゼルの付き添いで駒王町までやってきていたのだ。
そして、白龍皇の興味はイッセーだけではなかった。
「紅神 忍。彼は一体何者なんだろうね?」
「どういうことだよ?」
「彼は人外の存在であることは君だって知っているだろう?」
「それは…」
「潜在的なポテンシャルなら彼は君の数倍は上に値するだろう。もちろん、今の力はその片鱗に過ぎないと俺は考えているが…」
「忍が…?」
「あぁ。そして、それは着実に増していっている。何故か…それは俺にはよくわからないが…いずれにしろ、彼とも戦ってみたいと思える程だ」
それだけ言うとヴァーリはその場から立ち去るのだった。
………
……
…
その後、授業参観を経て、リアスのもう一人の眷属…僧侶の封印が解かれていた。
しかし、その僧侶『ギャスパー・ヴラディ』は人間と吸血鬼(日中でも活動可能なデイウォーカー)のハーフで、引き篭もりの女装癖持ちというちょっと…いや、かなり痛い子であった。
そんなギャスパーを更生させるためにイッセーが中心となって尽力するのだが…これがなかなか上手くいかないでいた。
そんなグレモリー眷属とは逆に明幸組に4人の訪問客が訪れていた。
「「「…………」」」
「こういうのを純和風で風情があるっていうのかね」
居間に通された4人の内、3人は押し黙り、残る1人は能天気にもそんなことを言っていた。
「「…………」」
それに対応しているのは忍と智鶴であった。
見知った顔が1人いたので、2人が対応することになったのだ。
すると、そこへ…
「これはこれは…総督殿と白龍皇じゃない。こんな所で何をしてるのかしら?」
様子を見に来たであろうカーネリアがそんなことを言って入ってきた。
「カーネリアか。お前さんこそ、なんだってここに居ついてるんだ?」
「さてね。それよりも白龍皇まで連れてくるなんて…よく本人が承諾したわね」
「本人を目の前にして言うことかよ。それよりもこっちのおっさんはゼーラ。俺の顔馴染みだ」
カーネリアに向かってそう言った後、アザゼルの適当な紹介を受け…
「ゼーラ・シュトライクス。時空管理局の少将で、特務隊の隊長を務めている」
ゼーラが自ら名乗りだした。
そう、明幸組に来訪したのは堕天使総督『アザゼル』、白龍皇・ヴァーリと時空管理局少将兼特務隊隊長・ゼーラ、その直属の部下の朝陽であった。
「管理局…ということはネクサス、ですか?」
忍が恐る恐るといった感じでゼーラに聞く。
「察しが良くて助かる。が、実を言えば…そんなことはどうでもいいのだ」
しかし、ゼーラはそれを否定した。
「ま、ホントならそのネクサスってのは俺が受け取って色々と参考にしたかったんだがな」
ゼーラの言葉に続いてアザゼルがとんでもないことを言い出す。
「え?!」
「あら…」
「なっ!?」
アザゼルの言葉に忍、智鶴、朝陽がゼーラの方を見る。
「事実だ」
ゼーラは慌てることなく静かにそれを肯定していた。
「隊長! デバイスをどこの誰かも分からない奴に横流ししようなんて…! 本部が聞いたら処分だけじゃ済まないわよ!?」
朝陽の言葉も当然だった。
そして、何よりも…
「ノイズに殺されたあいつらになんて言う気ですか!?」
ネクサス輸送時に死んだ局員に会わせる顔がなかったらしい。
「すまないとは思っている。しかし、こちらも情報を得るために必要な代価を支払ったまでのこと」
「まぁ、結局は手元に来なかったからあまり良い意味での死ではなかったがな」
ゼーラもアザゼルも淡泊な回答だった。
「…それが人の死に携わった人のことの言葉ですか?」
その言葉に忍も怒りを抑えられなかったのか、瞳を紅く輝かせ、瞳孔も縦になるという現象が起きる。
「ほぉ、これは…」
アザゼルはその現象に興味を抱き…
「良い覇気だ。しかし…」
カッ!!
ゼーラは忍以上の怒気を含んだ気迫の忍へと返していた。
「っ!!?」
それを受け、忍の瞳も元に戻ってしまい、忍の全身から汗が噴き出す。
「しぃ君?!」
それを見て智鶴が素早く忍の体を抱き寄せる。
「元々俺には遺族に会わせる顔など持ち合わせていない。が、自分の部下が死んだんだ。怒りを持たないはずもない…!」
そうゼーラは言い放っていた。
これでも意外と部下想いなのかもしれない。
「まぁ、落ち着けって…今日来たのは他でもない。アンタらにお願いがあって来たのさ」
「お願い?」
応えられそうもない忍に代わって智鶴がアザゼルの言葉を聞き返す。
「特異災害対策機動部二課…そいつのトップを今度俺達の三勢力会談の場に呼んでほしいんだわ。もちろん、アンタらも出席願うぜ? 聞きたいじゃねぇかよ。コカビエルのアホがやらかした一件と重なるようにして起きた事件の概要をよ」
アザゼルは悪戯っぽい表情でそう答えていた。