魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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第十九話『決戦×覚醒・赤と白、紅蓮と紅』

~駒王学園・深夜~

 

トップ会談が行われていた駒王学園は今、テロ組織『禍の団』の襲撃を受けていた。

 

その中で忍は同族だという中性的で女性みたいな顔立ちの青年『神宮寺 紅牙』と対峙していた。

 

一方で、白龍皇が裏切って禍の団へと鞍替えしていたことが発覚する。

そして、今回のテロの手引きをしていたことも自らの口で明かした。

 

「我が名は白龍皇、ヴァーリ・ルシファー。先代魔王の血を引く者で、父は先代魔王の孫に当たる正真正銘の後継者さ。ま、俺は特にそんな地位に興味はないがね」

 

そう言うヴァーリの姿は既に禁手状態の鎧姿であり、その背からは神器の光翼だけでなく、悪魔の翼が幾重にも出現する。

 

「ヴァーリ…」

 

そんなヴァーリを紅牙が鋭く睨んでいた。

 

「紅牙か。君とも一度ゆっくりと手合せしたいものだ。もちろん、そっちの彼ともね」

 

そう言ってヴァーリの視線は紅牙から忍へと移る。

 

「黙れ! お前は自分のライバルと争っていろ! もしそれで決着が着かないというなら俺が滅ぼす!!」

 

紅牙の言葉を聞き…

 

「ライバル、ね…」

 

ヴァーリは戻ってきていたイッセーへと視線を向ける。

 

「しかし、これはいくらなんでも残酷過ぎる運命だ。俺は魔王の子孫であり、半分人間だった故に白龍皇の力を宿す事が出来た。だが…」

 

そこまで言うと、今度はイッセーを見て語り出す。

 

「ライバルと目される赤龍帝の所有者は一般人から悪魔になったばかりの平凡な学生。これといった才覚も無さそうな…強いて言うならこの短期間で悪魔らしからぬ修行を続けている程度。あまりにも大きな差だ」

 

片や過去・現在・未来において最強の白龍皇。

片や使い手が平凡で悪魔になったばかりの最弱の赤龍帝。

その差は確かに歴然だった。

 

と、ヴァーリが何か思いついたように言葉を紡ぎだす。

 

「そうだ、こうしよう。君が紅牙のような復讐者になるのは…?」

 

「………」

 

それを聞き、紅牙がヴァーリに殺気をぶつける。

 

「そう良い殺気をくれるな。戦いたくなるだろう? それはいつでも出来るからいいが…赤龍帝、兵藤 一誠の両親を俺が殺せば、こんな退屈なライバル関係も少しは面白くなるだろう」

 

紅牙を一瞥してから先程の続きを語り出す。

 

「血も涙もない悪魔らしい言葉だな」

 

吐き捨てるような紅牙の皮肉に…

 

「君も今は同じだろう? 悪魔に対して血も涙もない」

 

ヴァーリはそう返していた。

 

「…………」

 

それを聞いていたイッセーはプルプルと拳を握りしめながら震えていた。

 

「殺すぞ、この野郎が…!!」

 

それはいつものイッセーなら考えられないとても低い声音だった。

 

「イッセー!?」

 

「イッセー君!?」

 

その近くにいたリアスと忍がその声音に驚き、そちらを見ると…

 

「テメェの勝手な都合で俺の両親を殺されてたまるかぁぁぁぁぁ!!!!」

 

『Welsh Dragon Over Booster!!』

 

イッセーの怒りをトリガーにし、アザゼルから貰ったリングの助けもあって再び禁手状態へとなっていた。

 

「ほぉ、これは…見ろ、アルビオン。兵藤 一誠の力が桁違いに跳ね上がったぞ」

 

『神器は強い想いを力の糧にする。そして、純粋な怒りがお前に向けられている。真っ直ぐな者…それがドラゴンの力を引き出せる心理の一つだ』

 

「そういう意味では俺よりも彼の方がドラゴンとの相性が良さそうだ」

 

ヴァーリは内に眠る白き龍『アルビオン』と会話をしながらイッセーを見下ろす。

 

「さっきからごちゃごちゃとわけわかんねぇことを喋ってんじゃねぇよ!!」

 

その瞬間、イッセーが赤き閃光、ヴァーリは白き閃光となって空中でぶつかり合う。

 

「イッセー君!」

 

忍がそれに加勢しようとしたが…

 

「誇りを捨てた貴様の相手は俺だ!!」

 

忍の前に紅牙が立ちはだかる。

 

「誇りってなんの話だ!」

 

「しらばっくれる気か! 悪魔が俺達にしてきたことの数々を!!」

 

「なに!?」

 

紅牙の言葉に忍はファルゼンを振るうことを一瞬躊躇う。

 

「俺達、冥族は冥界に住む種族の一つだ。しかし、過去の戦争の煽りで数が減らされた。戦争が終わって平和に暮らせると思った矢先、悪魔が俺達の領土を侵略し、俺達は辺境へと追いやられたんだ!!」

 

「なっ!?」

 

忍は紅牙の発現に言葉を失った。

 

「それは違う!」

 

「そうよ! あれは旧魔王派が勝手に進めてたことで…」

 

そこにサーゼクスとセラフォルーが口を挟むが…

 

「旧魔王だの、現魔王だのは悪魔の中でのことで、俺達には関係ない! 所詮は同じ悪魔がやったことに違いはないからな! 第一、それを止められなかった貴様らにとやかく言われる筋合いは毛頭ない!!」

 

紅牙はそれを一蹴していた。

 

「…………」

 

「うっ…そ、それを言われちゃうと…」

 

魔王2人は揃って難色を示していた。

 

「だからって…」

 

それを聞いていた忍は…

 

「テロに加担する必要があるのか! 三大勢力が和平を結ぼうと手を伸ばそうとしているのに…冥族と悪魔だって和平の道を選べるんじゃないのか!!?」

 

そう叫ばずにはいられなかった。

 

「紅神君…」

 

サーゼクスは忍の言葉に少しだけ希望を持ったようだ。

 

「黙れ!! 悪魔に感化された存在が一族を語るな!!」

 

しかし、紅牙にとってはあまりにも許せない言葉だったらしく、忍へと手を向け…

 

「押し潰されるがいい!!」

 

翼を捕えた黒い結界を張ろうとする。

 

「そうはいくかよ!!」

 

速度を上げ、黒い結界から抜け出すと紅牙へと向けて駆け出すが…

 

ドゴンッ!!

 

「がっ!!?」

 

その眼の前にイッセーが落ちてきた。

 

「っ!?」

 

それによって忍も急ブレーキを掛けてしまい、イッセーに当たる直前で立ち止まってしまった。

 

「隙だらけだ!!」

 

そこへ紅牙が右手から黒い球体を放つ。

 

「しまっ…!?」

 

「な、なんだ?!」

 

黒い球体は忍とイッセーの元に行くと、その規模を拡大させて2人を包み込むと同時に…

 

ゴォ!!

 

2人を押し潰すようにして強い重力が掛かり出す。

 

「ぐぁ!?」

 

「うわぁっ!?」

 

重力の檻に捕まり、身動きが出来ないようになる。

 

「弱い。弱過ぎる…」

 

イッセーを吹き飛ばした張本人であるヴァーリが黒い結界の上でイッセーを見下ろす。

 

「赤龍帝がこの程度なら、俺が始末してやる! どうせ、赤龍帝の宿主も悪魔なんだからな!!」

 

「それも一興か」

 

そう言いつつもヴァーリはふとあることを思い出していた。

 

「そういえば、コカビエルの時…兵藤 一誠は仲間のために力を出していたかな?」

 

それを思い出した瞬間…

 

「両親より先に仲間を消した方が効果が高いか!」

 

そう言うや否やヴァーリは魔力球を生成すると…

 

「これならどうかな?」

 

それを魔術師と戦っていたゼノヴィアやイリナ達へと放っていた。

 

「ッ!!!」

 

それを見た瞬間…

 

「ふざけんなぁッ!!!」

 

ドラゴンの力が爆発的に上がり…

 

バリンッ!!

 

「なにっ?!」

 

重力の檻を破壊し、ヴァーリの放った魔力球を殴り飛ばしていた。

その様子に紅牙も驚いた様子であった。

 

「ほら、こっちもだ!」

 

そして、今度はリアスへと襲い掛かろうとした時…

 

「テメェ! いい加減にしやがれ、クソ野郎!!」

 

尋常じゃない力と共にヴァーリに飛びついてそれを回避していた。

 

「あれが赤龍帝の底力……"龍気"か…」

 

「イッセー君…」

 

イッセーの姿に心配を覚えているが…

 

「他人の心配をしてる場合か!」

 

そう言って紅牙が忍に紅の焔を放つ。

 

「くっ!?」

 

紅牙の言う通り、忍も目の前にいる敵に集中すべきであった。

 

「そうだ。紅牙、彼にも大事な者がいたはずだ。それを狙ってみてはどうかね? 彼の秘めた力が兵藤 一誠のように引き出されるかもしれんぞ?」

 

イッセーと戦いながらそんなことを言い出すヴァーリ。

 

「そうだな。見たところ冥王としての姿にまだ目覚めていないようだし…貴様の提案というのが気に食わんが、いいだろうさ」

 

そう答えると、再び魔王達の守る障壁へと手を向ける。

 

「一ヵ所に固まってもらえて楽と言えば楽だな。纏めて消し炭になるがいい!!」

 

そう叫ぶと共に紅の焔を右手から放射する。

 

「智鶴!!」

 

それを見た瞬間…

 

ドクンッ!

 

「ッ!!!」

 

周囲に聞こえる程の鼓動が響き渡る。

 

「(熱い…熱い…身を焦がすようなこの衝動は…!!!)」

 

 

 

忍が身の内に秘めた力を解放しようとしていた一方で…

 

「痛ぇ! 痛ぇ痛ぇ!! このぐらいの痛み、光のダメージに比べたら!!!」

 

イッセーは一度はヴァーリの鎧を破壊し、破壊時に転がっていた白龍皇の宝玉を右手の甲の宝玉に移植しようとしていた。

そして、その激痛に耐え、イッセーの想いが神器に影響を及ぼした結果…

 

『Vanishing Dragon Power is taken!!』

 

その音声と共にイッセーの纏う鎧の右腕の篭手だけが白くなっていた。

 

「『白龍皇の篭手(ディバイディング・ギア)』ってとこか?」

 

その現象に白龍皇も動揺を隠せず、ヴァーリも面白いものを見せたイッセーに対して本気を見せると宣言。

 

『Half Dimension』

 

その力は空間を歪ませ、新校舎の大きさを半分にさせていった。

 

その能力について、アザゼルがイッセーに一言…

 

「あの能力は周囲のものを半分にする。つまり、リアス・グレモリーのバストも半分にされちまうぞ?」

 

そう告げていた。

 

「……………………ふ…」

 

それを聞いたイッセーは…

 

「ふざけんなああああぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

あまりの衝撃に怒り爆発と言わんばかりの咆哮を上げていた。

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!!』

 

それに応えるかのように赤龍帝の鎧もパワーを増加させていく。

 

 

 

それと時を同じくして…

 

「うおおおおおおお!!!!」

 

銀狼で再び紅の焔の前に出た忍は…

 

ゴアアアアアアッ!!!

 

それに対抗するように"紅蓮の焔"を左手から放射して紅の焔を押し留めていた。

 

「ッ!!? バカな?! 紅蓮の焔だと?!」

 

忍の放つ焔を見て紅牙は動揺を隠せないでいた。

 

「何が消し炭だ! 俺の目の前でそんなことさせてたまるかよ!!!」

 

次の瞬間…

 

カッ!

バサァ!!

 

銀狼が解けると同時に忍の背中から4対8枚の紅蓮の翼が生え、髪は燃え盛るような焔髪、瞳は焼き尽くすような灼眼へと変貌を遂げていた。

 

「紅蓮、冥王…だと!!?」

 

紅牙は未だ信じられないような視線を忍に向ける。

 

「紅蓮…冥王…?」

 

忍も自身の変化に驚いていた。

 

「ふざけるなッ!!」

 

ゴアアア!!!

 

だが、紅牙もまた焔の柱を作り出すと共に背中から4対8枚の紅の翼を生やし、髪が真紅、瞳がワインレッドへと変化した姿へと変貌していた。

 

「紅蓮冥王ともあろう者が…何故、悪魔側になどついた!!!」

 

紅牙は別のところで怒りを感じていた。

 

「さっきからお前はなにを…!?」

 

「うるさい! 冥王スキル『グラヴィタス・イフリート』!!」

 

忍の言葉を聞きたくないのか、紅牙は自らの特殊能力を解放した。

その瞬間、紅牙を中心にして黒い球体と球体状の紅の焔が幾重にも出現していた。

 

「冥王スキル…?!」

 

周囲に浮かぶ球体群を見渡しながら忍は紅牙を見る。

 

「覚醒したばかりの貴様にわかるはずがない!!」

 

と、その時…

 

ドゴオォォォォンッ!!

 

「がっ!?」

 

ヴァーリが紅牙の近くまで吹き飛んでいた。

 

「ヴァーリ!?」

 

まさかの光景に紅牙も驚いていた。

 

「ふ、ふふふ…面白い。面白いぞ!!」

 

しかし、ヴァーリは不敵な笑みを浮かべると闘志を剥き出しにしていた。

 

「どうだ、この半分マニアが! 部長だけでなくみんなのおっぱいまで半分になんかさえてたまるかよ!!」

 

忍の隣に降りたイッセーは威勢よくヴァーリに指を突き付けながらそう吠えていた。

 

「そんな理由で戦ってたの!?」

 

その言葉に思わず、忍もツッコミを入れてしまった。

 

「そんな理由たぁなんだ! 俺にとっては死活問題なんだよ!!」

 

「え、えぇ~…そこまで言っちゃう?」

 

まさかの残念な発言に忍も少し引いてしまっていた。

 

「紅牙も冥王としての姿を見せていることだし…俺も見せよう『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』を…」

 

『自重しろ、ヴァーリ。我が力に翻弄されるのがお前の本懐か?』

 

アルビオンの制止を無視してヴァーリが詠唱を始めようとした時…

 

バリンッ!!

 

紅牙とヴァーリの前に一人の男が現れた。

 

美猴(びこう)か。何しに来た?」

 

ヴァーリが男…美猴に尋ねると…

 

「北のアース神族と一戦交えるからお前らを迎えに行って来いって言われてな。迎えに来たんだぜぃ?」

 

「もう時間か」

 

「ちっ…」

 

ヴァーリは残念そうに、紅牙は怒りの舌打ちをしていた。

 

「なんだ、お前は!?」

 

「猿?」

 

イッセーと忍が美猴の登場に驚いていると…

 

「そいつは美猴。闘戦勝仏の末裔…簡単に言えば、西遊記で有名なクソ猿、孫悟空だ」

 

アザゼルが説明しながら近づいてきた。

 

「そ、孫悟空!?」

 

「だから猿の匂いなのか…」

 

驚くイッセーを尻目に忍は一人匂いの感じ方に納得していた。

 

その後、美猴の転移術によってヴァーリと紅牙はその場から消えてしまった。

 

去り際にヴァーリはイッセーに『もっと激しく戦おう』と言い残し、紅牙は忍に強い敵意を向けていた。

 

テロに巻き込まれてしまったものの、トップ会談は無事に終わる事が出来た。

その結果、三大勢力は和平を結び、壊れた校舎は三大勢力の共同作業によって修復されていった。

 

ギャスパーの暴走もひと段落して時間の止まっていた人達も元に戻ったものの、時間が止まっていた時にテロがあったと聞き、しばし混乱。

しかし、サーゼクスやミカエルの言葉で何とか理解してもらえたようだ。

 

果たして、これからどうなっていくのか?

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