魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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第二十一話『龍と修行と決意』

地球の時間で7月29日からグレモリー眷属の修行が開始された。

それぞれが己の技術向上を目指し、様々な修行が課せられてから数日が経とうとしていた。

 

その中の一つ、イッセーに課せられた修行とは…

 

「ぎゃああああ!!?」

 

『もっと素早く動かんか!』

 

リアルドラゴンとの実戦形式での修行であった。

 

このドラゴンの名は『魔龍聖(ブレイズ・ミーティア・ドラゴン)』の『タンニーン』。

六大龍王と称されているドラゴン達の元一角である最上級悪魔である。

タンニーンが悪魔に転生した後、六大龍王は五大龍王へとその名を変えている。

 

それはともかくとして、そのタンニーンによってイッセーはドラゴンの力『龍気』の使い方を一から教わることになったのだが…

 

「ぜぇ…はぁ…ぜぇ…はぁ…」

 

修行開始からたった数日だけでイッセーがわかったこと。

 

逃げ足や火種の魔力が上達したが、根本的に攻撃が通用しない。

追い掛け回されるより夜の筋トレの方がまだマシに思えること。

 

以上である。

 

イッセーはこの修行を耐えられるのか?

いや、生き残ることが出来るのか?

 

………

……

 

イッセーがタンニーンによって鍛えられている頃…

グレモリー領内のグレモリー邸では…

 

「ふむ…どうしたもんか…」

 

忍が1人でずっと悩んでいた。

それは先日アジュカ・ベルゼブブから受け取った眷属の駒のことである。

残っているのは王以外の駒が計15個である。

 

「俺の魔力色を認識してる感じか? それにしても虹色に輝く、か…何を意味してるんだか…」

 

女王の駒を指先で器用に回しながらそれを眺める。

 

「魔王直々に渡したものだから安全性や信用性はあるんだろうけど…」

 

正直なところ、忍は既に女王を誰に渡すかは決めていた。

しかし、忍はそれに躊躇していた。

理由は単純にこれから先にあるだろう戦いに巻き込んでしまう可能性が高いからだ。

しかも忍は高確率でその戦いは起きると踏んでいる。

それに巻き込んでしまっていいのだろうか…という、そういう想いがあった。

 

と、そこへ…

 

「しぃ~君♪」

 

ソファに座る忍の後ろから智鶴が抱き着いてくる。

 

「ち、ちぃ姉…」

 

鍵を閉めていたはずだが、と思いながら忍は用意されてた部屋を扉を見る。

見た先にはそこには円型のディメンション・ゲイトが消えかけているところだった。

 

『これも主の御心のままに』

 

そんなことを待機状態で言うスコルピア。

 

「アザゼル先生から聞いたよ。魔王様から直々に何か貰ったんだよね?」

 

しかもアザゼルから眷属の駒の事を聞いている模様だ。

 

「(あ、あの人は…)」

 

人が悩んでいるというのに、余計なことを…という感情をなんとか抑え付けると…

 

「ちぃ姉…いや、智鶴。これを渡すってことは…」

 

思い切って智鶴に打ち明けようとするが…

 

「一生、しぃ君と一緒にいられるんでしょ?」

 

なんともポジティブな意見を言うのであった。

 

「そ、それはそうかもだが…何が起こるかわからない以上、渡す訳には…」

 

そう言って指先で回していた女王の駒を握り締める。

しかし、智鶴は首に回していた手を忍が女王の駒を握った手に重ねる。

 

「しぃ君が心配してくれてるのはわかるよ。だって…いつもは私がしぃ君を心配してた立場だもん」

 

「それは…」

 

忍は地球で過ごした記憶を辿る。

確かにいつも守られてばかりで、心配を掛けてばかりだったと思う。

 

「でもね。しぃ君が…戦うって決意して…私、本当は怖かったの。しぃ君がそのまま何処かへ行っちゃうんじゃないかって……だから私も力が欲しくて、暗七ちゃんの誘いを受けたの。しぃ君と離れたくないから…」

 

「智鶴…」

 

それを聞き、忍は顔を振り向けて智鶴の顔を窺う。

 

「もう、置いてかないでね? 私だって…しぃ君の隣にずっと寄り添っていたいから…」

 

忍は女王の駒を握る手を緩め、自然と智鶴の手と重ね合うように合わせると…

 

「智鶴…」

 

「しぃ君…」

 

それが当たり前のようにと、2人の唇は重ね合っていた。

 

トクンッ…

 

そして、重ね合った手から智鶴の中へと女王の駒が静かな鼓動と共に溶け込んでいくのであった。

 

 

 

ちなみに…

 

「ボソッ(めっちゃ入りにきぃ!)」

 

「ボソッ(確かに…)」

 

「ボソッ(これが世に言うバカップルってやつかしら? 私、初めて見たわ)」

 

忍の部屋…の扉の前では同じく明幸組枠としてやってきていたクリス、暗七、カーネリアが扉の隙間から2人の様子を盗み見ていたりする。

 

「ボソッ(しかし、なんであなた達は入らないの? ていうか、なんでヒソヒソ話?)」

 

基本、破壊衝動にしか興味のないカーネリアは部屋に堂々と入ろうとする。

 

「ボソッ(バッカ!? この状態で入るとかKY過ぎだろ!?)」

 

「ボソッ(流石に、ねぇ?)」

 

カーネリアを羽交い絞めにするクリスと、同じく足を拘束する暗七だった。

 

「なにをそんなに慌ててるのかしら?」

 

クリスから顔が見えないことを良いことに薄ら笑いを浮かべて必死になるクリスを面白がっていた。

 

「(確信犯か…余計に質が悪い…)」

 

それを下から見ていた暗七は内心で毒づいていた。

 

 

 

しかし…

 

「(君らは一体なにをしてんだよ…)」

 

智鶴とのキスを続けながら忍は部屋の外から微かに流れてくる匂いを敏感に察知して頭を抱えるのを我慢していた。

 

………

……

 

そんな一幕がありつつもグレモリー眷属の皆が修行を続いてる中…イッセーがグレモリー夫人に呼び出されて何故かダンスレッスンをしていた。

そして、その一時帰還の前にアザゼルから小猫のオーバーワークについての話、グレモリー夫人から小猫の過去を聞いていた。

その後、イッセーは…

 

「もっと強くならないとな。そのためには修行あるのみ、か…」

 

気合を入れ直していた。

 

「頑張ってるみたいだね」

 

そこへ少年モードの忍がイッセーの部屋を訪問していた。

 

「そういうお前の方はどうなんだよ?」

 

「ん~…まぁ、女王の駒はちぃ姉に…」

 

それを言った瞬間…

 

「それは予想出来た」

 

予想通りだと言われてしまっていた。

やはり、周知の事実だったようだ。

 

「最後まで言えない!?」

 

「ったりめぇだ。お前が明幸先輩以外を選んだ日にはきっと血の雨が…」

 

安易に想像出来てしまうバッドエンドな未来を考えてイッセーは小さく身震いする。

 

「そんな怖いこと………ないとは言い切れないかな…」

 

忍も想像してしまったのか苦笑してしまっていた。

 

そうして2人が他愛のない話を続けていると…

 

キィィン…

 

2人を取り囲むようにして黒と蒼の混ざったような色をした転移用の魔法陣が展開される。

 

「っ?!」

 

「な、なんだ?!」

 

グレモリーの敷地内でこんなことに遭うとは予想も出来なかったため、助けを呼ぶ暇もなく2人の姿はグレモリー領から消えてしまう。

 

………

……

 

グレモリー領から遠く離れた冥界の辺境地にて…

 

「ふふふ…」

 

その男は水晶玉に映っていた先程の転移現象を観察していた。

 

「伝説の赤龍帝…それに古き狼の末裔……果たして、我々の脅威になりますかね?」

 

そう言う男の後ろには黒いローブを深く被った6人の人影が存在していた。

 

果たして、彼らの正体とは…?

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