グレモリー眷属VSシトリー眷属のレーティング・ゲーム当日。
バトルフィールドの舞台は駒王学園近隣にあるデパートである。
グレモリー眷属の本陣は二階東側、シトリー眷属の本陣は一階西側となっていた。
典型的な屋内戦である。
さらに特別ルールとして『バトルフィールドであるデパートを破壊し尽くさないこと』というものがあり、パワータイプの眷属が多いグレモリー眷属には最悪な状況のフィールドとも言える。
どちらも魔王の妹ということもあってか、その注目度はかなり高く三大勢力以外からのVIPも観戦者としてやってきている。
その中には…
「どうして俺まで呼ばれたんでしょうか?」
忍と智鶴、シアの姿があった。
そして、忍は隣に座るアザゼルへと疑問を投げつけていた。
「いずれはお前もゲームに参加する予定の身だ。見といて損はないだろう?」
「まぁ、それはそうかもしれませんが…よりにもよってイッセー君や匙君の試合ですか」
グレモリー、シトリーの男性悪魔(イッセー、匙、木場、ギャスパー)とはそれなりに交流のある忍はなんとも言えぬ表情だった。
「いつかお前もあの2人と対戦するかもだからな。それに若手悪魔達も見てるから今更気にする必要もないだろ」
忍の表情を見ながらアザゼルはそう言ってみせた。
「それはそうですが……それにしても凄い熱狂ですね」
忍は周りへと視線を向ける。
「魔王達の妹であり親友同士の戦いだ。そりゃ注目もされて当然のゲームだ。冥界中にも放送される」
「知名度は圧倒的に高いからな。それよりもお前さんの方はどうなんだ?」
ニヤニヤとした笑みを浮かべながらアザゼルは忍に問うた。
「どう、とは?」
予想はしてるが、一応その問いの意図を聞き出す。
「眷属集めだよ。どのくらい集まったんだ?」
やっぱりそれですか、と言いたげな表情を見せてから…
「今、隣にいる智鶴に女王、その隣のシアに僧侶を渡しました。それとカーネリアさんに戦車、暗七とクリスには兵士を1駒ずつ渡して成立しましたよ」
そう答えていた。
「ほほぉ、今のところ面白い編成になってやがるな。意外なのはカーネリアだが…」
意外な人物の名前にアザゼルも興味を示していた。
「本人曰く『一緒にいる方が退屈しなさそう』だそうです。それによくわからないことも言ってましたし…」
「あいつらしいね。あいつは意外と力押しするタイプだからな。つまりはパワータイプのプレイヤーだ。戦車ってのは良い選択だろうよ」
やけにカーネリアの事に詳しいアザゼルに…
「……アザゼル先生はカーネリアさんとはどういう関係だったので?」
忍は思い切った質問をぶつけていた。
「なんだ、気になるのか?」
「まぁ、人並みには…」
忍の答えを聞くと…
「そうだな。あいつは昔の部下さ。それ以上でもそれ以下の関係でもなかった。意外と身持ちも堅かったしな」
アザゼルはそう答えていた。
「(つまり、手を出そうとしてたんですね…)」
それを聞いて忍は呆れたような眼でアザゼルを見る。
「あれだけの女だ。落としたいと思うのは当然だろ?」
「でも、その話の流れだと失敗してますよね?」
そこに智鶴が口を挟んでいた。
「痛いとこを突くな。まぁ、その通りなんだが…」
「なんで失敗したんです?」
忍は興味本位で聞いてみる。
「あいつの性格さ。昔ほど恐ろしくはないが…あれの本質は今でも変わってねぇ」
「破壊衝動の塊…でしたか?」
それを聞き、智鶴が依然コカビエルが言っていた言葉を思い出していた。
「あぁ。あれの本質は純粋な破壊衝動さ。いつ暴発してもおかしくない。だから俺は味方の被害を考えてあいつを遠ざけた。それが巡りに巡ってお前さんの所に行くとはな」
「俺に破壊衝動なんて…」
忍はそう言うが…
「わからんぞ? お前もイッセーとよく似て弱点が多いからな。それがトリガーになってプッツンしたことが無いと言い切れるか?」
アザゼルにそう言われてしまった。
「それは…」
思い当たる節は確かにあった。
シャドウを衝動的に焼き殺した時なんて正にそんな状態だった気がする。
「破壊衝動なんて誰でも多かれ少なかれ持ってるもんだ。それが人より多いか少ないか…それだけで犯罪者になる奴だっているだろうしな。っと、そうこうしてる間に始まるぞ?」
時間を忘れて話し込んでいたため、ゲームが始まろうとしていた。
「イッセー君、匙君…」
そして、グレモリー眷属VSシトリー眷属のゲームが始まった。
………
……
…
グレモリー眷属は王のリアス、女王の朱乃、騎士の木場とゼノヴィア、戦車の小猫、僧侶のアーシアとギャスパー、兵士のイッセーの8人。
シトリー眷属は王のソーナ会長、女王の真羅 椿姫、戦車の由良 翼紗、騎士の巡 巴柄、僧侶の花戒 桃と草下 憐耶、兵士の匙と仁村 留流子の8人。
人数的には互角だが、状況的にはグレモリー眷属が不利だろう。
しかもこのゲームの制限時間は三時間の
序盤ではギャスパーが相手側の策略によって早々にリタイヤ。
イッセーと小猫のペアは匙・仁村の兵士コンビと接触。
木場とゼノヴィアのペアも真羅副会長、由良、巡と接触。
「早々にぶつかりましたね。イッセー君と匙君が…」
その様子を見て忍はイッセーと匙の映る画面を注視する。
コツン…
「そこばっかじゃなくて他のも見ろ。お前は仮にも王だろ?」
忍の頭を小突いてアザゼルが呆れたように言う。
「そうは言いますけど…」
画面の中でイッセーと匙は打撃戦を繰り広げていた。
そして、イッセーの左腕には既に赤龍帝の篭手が出現し、何やらカウントを始めていた。
「ありゃ、禁手になるまでの時間だ。あいつの場合、まだ2分は掛かるらしいからな。しかも倍加も譲渡も出来ない訳だが…」
「そうなると…時間を狙われやすいですね。こういう時に風鳴さんに習ってた中国拳法っぽい格闘術が役に立ちますね」
「肉体的にもこの1か月あまりでだいぶ成長したし、定期的に通わせた方がいいかもな」
そうこう話をしてる内に、イッセーは赤龍帝の鎧を纏い、匙と一対一で真っ向から殴り合っていた。
しかし、イッセーの腕には消えないラインが一本…纏わりついていた。
「(あのライン…一体どんな意図が…?)」
一方で、木場とゼノヴィアは苦戦していた。
しかし、デュランダルの聖なるオーラを纏い、全方位に聖魔剣を出現させた合体攻撃によって由良と巡を撃破したものの真羅副会長は取り逃がしてしまった。
そして、真羅副会長のカウンター攻撃を受け、ゼノヴィアもまたリタイヤしてしまった。
「アザゼル先生の入れ知恵ですか?」
「まぁな。色々ともったいない気がしたから、俺が特別メニューを組んでやったのさ」
アザゼルは面白そうに言ってみせた。
「聖剣アスカロン。本来ある龍殺しに赤龍帝の力を宿した特別仕様。さらにデュランダルを封印したままでオーラのみを抽出して他の聖剣に宿す…よく考えますよね」
「それを一発で理解するお前も凄いがな」
「これでも物覚えが良いので…」
そう言ってイッセーと匙の殴り合いを映す画面に眼を向ける。
「さて、狼で冥王な忍君はこの勝負をどう見る?」
わざとそう言いながらアザゼルが忍に尋ねる。
「おそらく…イッセー君は大局的に見て負けます」
「ほぉ、その根拠は?」
「あの匙君が何処かにつなげているであろうライン…あれだけ消えてないってことは何かしらの意味があるはずです。それほどまでの強い意志でなければ禁手化の際に消えてますから…きっと、イッセー君は匙君に試合に勝って勝負で負ける、そんな状態になるような気がします」
冷静な口調で忍はそう答えていた。
「随分と冷静だな。お前のダチ達だろう?」
「先生はそのダチ達のゲームを決めた1人でしょう?」
そんなアザゼルの言葉に皮肉で返す。
「ま、そりゃ確かにな……だが、的を射てると思うぜ? 俺も何かまでは知らないが…問題はイッセーが負けた際の他のメンツのメンタルだ」
「でしょうね。イッセー君を目の前で撃破されることでグレモリー先輩達のメンタルがどうなるか…」
「プラスに転じるか、マイナスに転じるか…」
そんな会話の横では…
「シアちゃん、わかる?」
「ある程度は…でも、正直まだよくわかりません…」
「私も…今度チェスでも買ってみようかしら?」
忍の付き添いである智鶴とシアがそんな話をしていた。
イッセーと匙の殴り合いはイッセーの勝ちに終わった。
そして、終盤戦となって中央に王同士が邂逅するという場面を作った。
それぞれ残っているのはグレモリー側が6人、シトリー側が4人と数ではグレモリー眷属が優位に立っていた。
しかし…事態は思わぬ方向へと傾いていた。
匙がイッセーに繋げていたラインからは血を少しずつ吸い出しており、致死量ギリギリまで吸い出して医療ルーム送りにすることだった。
その目的を果たすために匙は何度もイッセーに挑んで時間を稼ぎ、それが実を結んだ形となる。
「失血でのリタイヤ。考えましたね…」
「あぁ…しかも神器を使ってのだ。相当な修行を課したに違いない。そして、その目論見通りになった。問題は…」
「ここからですね」
アザゼルと忍が言葉を交わしてる時にイッセーが動いた。
彼は新技『
これは本人曰く『胸の内を…否、おっぱいの声を聞きたかったから』だそうで…。
これを見ていたVIPルームでは…
「「………………」」
忍とアザゼルが固まっており、他のVIPの方々もかなり心情がよろしくなかったとか…。
「な、なんて卑猥な…」
「リアスちゃん…なんだか可哀想…」
智鶴とシアも自分の胸を守るようにして腕を組みながら引いていた。
「イッセー君…」
「う~ん…あいつの頭は悪すぎるな…」
やっと声を出した忍とアザゼルでさえこの有様なのだ。
結局、最悪な退場の仕方をしたイッセーであった。
去り際にイッセーはソーナ会長の作戦を…読んで(もしくは聞いて?)仲間に知らせてからバトルフィールドを去っていた。
しかし、後日…これが意外な波紋を呼ぶことになるのだが…それはまた後日語ろう。
また、イッセーを回復させようとしたアーシアは花戒によって共倒れという形で退場してしまった。
「お前の読みは当たったな」
「あの後に言われてもあまり嬉しくありませんが…」
「まぁ、そう言うなって」
2人して話していると…
「サーゼクスよ」
「はい」
1人の老人がサーゼクスを呼びつけていた。
「あの人は?」
「北欧の主神、オーディンのジジイだ」
「あれが北欧神話に出てくる最高神…」
「結構なエロジジイだけどな」
「え?」
アザゼルの言葉に目を丸くする忍だった。
その後、ゲームは王同士の直接対決にまでもつれ込み、グレモリー眷属が勝利した。
しかし、そのゲームでの評価は厳しく、赤龍帝を失ったこととギャスパーを早々に撃破されたことで、リアスの評価をゲーム前よりも下げてしまっていた結果となった。
そして、ゲーム内で赤龍帝を撃破にまで追い込んだ匙には勲章が贈られていた。
………
……
…
「どうだった? ゲームを見ての感想は?」
VIPルームから出てイッセーの元へと向かう忍、智鶴、シアの隣を歩いていたテロ対策の会談に参加するアザゼルが忍に尋ねていた。
「そうですね。面白そうでした。是非、参加したいものです」
「そいつは良かった。というか、お前は既にその権利を得てんだがな」
「そうでしたね。けど、その前にもう少し自分を鍛えて眷属も増やしたいところではあります」
忍は自分に足りないモノを確認しつつ、駒を揃えることを考えていた。
それから後ろに振り返ってシアを見ると…
「シア、冥王スキルについていろいろと教えてくれよ」
そう伝えていた。
「はい、私で良ければ協力します」
その様子を見てか…
「私は…魔法を使えるようにならないなのとかしら?」
智鶴もそんなことを言い出す。
「お前んとこも屋敷を改装したらどうだ?」
面白半分にアザゼルがそんなことを言い出した。
「アレは俺じゃなく智鶴の家ですから…それに組員の事もありますし…」
最近忘れがちだが、智鶴は極道の娘である。
「お前さんが婿入りすりゃ万事解決だろ?」
「極道を継げと?」
忍の言葉に…
「しぃ君、嫌なの?」
智鶴が悲しそうな顔を見せる。
「いや、別にそういう訳じゃないけど…」
それを見て慌てて否定する忍。
「なら籍は……しぃ君の誕生日にでも…///」
「き、気が早くないかな?」
「私からしたら遅いくらいだよ!」
「そ、そうなんだ…」
完全に智鶴の迫力に押されている。
そんなこんなで夏休みも終わろうとしていた。
次は一体、何が起こるのか…。