第二十六話『強襲とライブとテロ』
グレモリー眷属VSシトリー眷属のゲームが終わって二日が経った頃、忍達明幸組一行は一足早く冥界から地球へと帰還していた。
その理由はルナアタック時に回収されていたソロモンの杖を岩国の米軍基地へと移送するに当たり、クリスの力が必要となったからである。
そこにはルナアタック時に協力していた忍にも声が掛けられていた。
また、その日は翼と米国チャートで急激に昇りつめた新進気鋭の歌姫『マリア・カデンツァヴナ・イヴ』との合同ライブが行われようとしていた。
よってソロモンの杖の護衛には翼を欠いた響、クリス、忍の3名の戦闘要員が配置されていた。
そして、新たに設けられた特異災害対策機動部二課の仮設本部から距離が離れた頃に、ノイズが出現して移動中の装甲列車を強襲していた。
「雨か…匂いでの探知はあんまり期待しないでほしいかも…」
装甲列車の連結部を移動しながら忍がそうぼやいていた。
「お前の鼻も頼りだってのに、日が悪過ぎだろ」
以前にも増して忍への当たりが強いクリスを見て…
「クリスちゃんと忍さんって夏休みの間に何かありました?」
流石の響も何かを感じていた。
「べ、別になんでもねぇよ」
「とにかく杖は大丈夫なんですよね?」
クリスの反応はわかりやすかったため、忍は話を逸らそうと前方を歩く白衣の男…『ウェル博士』へを質問を投げかけていた。
「はい。何とか問題ありません」
大きめのアタッシュケースを抱えながらウェル博士はそう答えていた。
これは回収されたソロモンの杖を解析し、ノイズへの新たな対抗策への可能性を模索する必要性があったからである。
「そいつは…ソロモンの杖は簡単に扱うべき物じゃねぇんだ」
クリスにはソロモンの杖を起動させてしまった責任を感じていたため、そう言っていた。
「ま、あたしがとやかく言えた義理でもねぇけどな…」
自嘲気味に言うクリスの手を響が取ると…
「大丈夫だよ」
そう一言、告げていた。
「あんま一人で抱え込むなよ」
ついでに忍も後ろからクリスの頭を軽く撫でてそう呟いていた。
「お、お前ら、ホントにバカ…///」
気恥ずかしいのか少し顔を赤く染めていた。
ズガンッ!!
そこにノイズ達が装甲列車の装甲を半ば貫通させてくる。
「んじゃま、行きますか」
ピ、ピ、ピ
『Standing by』
「ネクサス、起動」
『Complete』
「アクエリアス、お前も来い」
忍はバリアジャケットを展開した上からさらに白銀の鎧を纏う。
「~♪」
聖詠を歌い、響とクリスもまたシンフォギアを纏う。
ちなみにルナアタック後、彼女らのシンフォギアはフォニックゲインの上昇によって強化されていた。
その証拠に細部が少し異なっており、響のガングニールにはマフラーの様なパーツが追加されていた。
バゴンッ!!×3
そして、鋼鉄製であるはずの天井を突き破って3人は雨が降る屋根へと出ていた。
「雨と硝煙で鼻が利かなくても俺にはまだ水瓶座の加護がある!」
そう言うや否や、忍は足元に水へと変換した魔力を両腕の水瓶から微量だけ流すと、そのまま雨の水を吸収して肥大化した水を操ってノイズ達へと水飛礫を放っていた。
「あたしらも負けてられっかよ!」
「うん!」
クリスの銃撃によって広範囲のノイズを殲滅し、そのクリスを響がガードすることで2人も確実にノイズを倒していった。
その中で、一際大きく高速移動する中型ノイズが現れ、一時は苦戦を強いられるもののトンネル内での響の奇策によって危機を脱した。
「響ちゃんも度胸があるよね」
「単なるバカじゃないのは確かだけどよ…」
「そう言って…ホントは信頼してるんだろ? 素直じゃないな」
「バッ! ちげぇし! そんなんじゃねぇよ!!///」
「照れない照れない」
「照れてねぇ!!///」
「はいはい(天候も晴れてきたし、少しは嗅覚も回復するか?)」
そんな会話を繰り広げながらも忍は匂いをチェックしていた。
しかし、それでも雨の匂いや、それに加えて米軍基地に漂う硝煙やオイルなどの匂いによって忍の鼻はまともに機能しなかった。
そのせいか、忍はあることに気づかないでいた。
さらに米国基地にノイズが出現してウェル博士を含めた何人かが行方不明となり、ソロモンの杖も紛失してしまった…。
………
……
…
一方で、ライブ会場は熱狂に包まれていた。
世界的なアーティストとなっている翼とマリアが一緒に歌うということもあって会場内のボルテージは最高潮を迎えていた。
しかもこれは世界中に放送されている。
しかし、2人が歌い終えてそれぞれの言葉を発した後…
「そして、もう一つ…」
マリアが言葉を発すると…
『------』
その瞬間にノイズがライブ会場へと現れていた。
「我々は、ノイズを操る力を以ってしてこの星の全ての国家に要求する!」
マリアは世界に対して宣戦布告を行っていた。
「なっ?! 世界を敵に回しての口上。これではまるで宣戦布告ではないか!」
同じステージに立つ翼を始めとして放送を見ていた者達の多くは驚いていた。
「驚くのはまだ早いわ」
マリアは剣型マイクを空へと投げ飛ばすと…
「~♪」
"聖詠"を歌い出す。
そして、その身に纏うは…
≪GUNGNIR≫
響が纏うモノとは明らかに異なる黒きガングニールであった。
「私は…否、私達は武装組織『フィーネ』。終わりの名を持つ者だ!」
………
……
…
その放送をヘリの中にて見ていた響やクリス、忍の反応はと言えば…
「黒い…ガングニール…?!」
「マフラーじゃなくてマントか。如何にも悪役みたいな出で立ちだな…」
「んなこと言ってる場合か!」
驚く響の横で忍が少しだけ重たい空気を変えようとしたが、クリスに怒鳴られてしまう。
「しかし、解せない。何故、フィーネの名を語るのか…」
忍が一人ごちるように呟くと…
『それは俺も同感だ』
それを聞いていたかのように弦十郎からの通信が入る。
「風鳴さん…」
『翼は今の状態では動けん。急いでくれ』
弦十郎も事態の収拾を急かすように言うが、そう簡単にヘリの速度は上がらない。
今でも全力で向かってる最中だし…。
「なら、俺が先行しましょうか?」
と、そこで忍が口を挟む。
『お前は装者じゃないんだぞ? しかも今行ったんじゃ確実に全世界に顔が映る。それでも行く気か?』
「方法がない訳でもないんですよ」
『なに?』
「まぁ、見ててくださいな」
そう告げると、忍は飛行中のヘリから飛び降り…
「お、おい!?」
「忍さん!?」
魔法陣を足場にしながら銀狼へと姿を変える。
「銀狼のもう一つの姿…今、見せる!」
そう言うと、跳躍中の忍の体を白銀の光が包んでいく。
「え?! アレって…?」
「嘘だろ。あたしも聞いてねぇぞ?」
目を丸くする響達。
白銀の光から出てきた忍の姿とは…
………
……
…
一方の会場ではマリアが世界に対して国土の割譲を要求していたのが…
「会場のオーディエス諸君を解放する。ノイズに手出しはさせない。速やかにお引き取り願おうか!」
人質にしていた会場の観客を解放すると宣言していた。
そして、ステージに立つマリアと翼、裏からに回っていた緒川以外の癇癪が会場の外へと出ていっても未だ放送は続いていた。
「これで被害者は出ないわ。そんな状況でも私と戦えないというなら…それはあなた自身の保身のため…それだけの覚悟も無いということね!」
そう言って翼へと剣型マイクを突き付けるマリア。
「っ…!」
それを聞き、翼はカメラの死角へと移動を試みるが、ヒールが邪魔をしてマリアに蹴り上げられてしまい、そこへノイズが群がってきてしまう。
「(これまでか…)」
翼がアーティストを諦めようと聖詠を口にしようとした時…
『ウオオオオン!』
狼の遠吠えが会場とその周辺へと響き渡る。
「なにっ!?」
「なんだ?!」
その遠吠えにマリアも翼も驚いていた。
そして、次の瞬間…
ヒュッ!!
風を切る音と共に翼は一匹の銀色の毛並みが特徴的な狼に助けられていた。
そして、それと同時に中継も切断されていた。
『間一髪、間に合った』
翼を背中へと乗せたまま狼はステージ上へと着地する。
しかも喋っている。
「その声は…紅神か!?」
その声に聞き覚えのあった翼はその声の主が誰なのかすぐに理解した。
『えぇ、響ちゃんやクリスよりも先行してきました。それと…流石はマネージャーですね。聖詠を口にする前に中継を切断するなんて…』
「緒川さんが…」
そんなやり取りを続けていると…
「ちっ、勝手な真似を…しかも邪魔まで入るなんて…」
何やらマリアがご立腹のようだった。
『とにかく、シンフォギアを…このままじゃ俺は炭化しちゃいますから…』
「あぁ、ならば聞かせてやろう。防人の歌を…!」
翼をステージへと降ろすと忍はマリアへと向かった。
「たかが犬ころ風情が私の邪魔をするな!」
『犬じゃなくて狼だ!』
マリアはマントを操り、忍へと攻撃を仕掛けるも忍は軽くそれをあしらっていた。
「~♪」
その間にも翼もまたシンフォギアを纏っていた。
これで忍も魔法によってノイズの殲滅が可能になった。
「代われ、紅神!」
『了解!』
翼と忍が入れ替わるようにしてマリアとノイズの相手を交代する。
その際、再び忍の体を白銀の光が包むと…
『Complete』
ネクサスを起動させた忍が光から現れると同時に…
「ファルゼン!」
ファルゼンを起動させ、魔法と剣術を組み合わせてノイズを屠っていく。
その後、マリアと翼の戦闘中に新たな装者が2人現れ、翼を一旦は追い込むものの忍から遅れて救援に来た響とクリスの加勢によって戦況は膠着状態となる。
響はマリア達に話し合いを求めたが相手にされず、むしろ偽善者と言われてしまい、過去の出来事が蘇ってしまった。
そして、分裂増殖型のノイズが出現するとマリアがアームドギアを展開し、それを攻撃してフィーネ側の装者3名は撤退。
残った響達は分裂増殖型を倒すために絶唱を歌い、3人分の絶唱を束ねる響特有の大技『S2CA』を発揮して、これを撃破した。
この事態に地球はどうなっていくのか…。
しかし、地球だけでなく次元世界でもまた色んな影響が出始めていた…。