魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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第二十八話『剣と魔法と召喚獣』

リディアン音楽院の学祭当日。

休日ということもあってか、駒王学園の生徒達も私服姿でリディアン音楽院の敷地内に入っていた。

 

その中には当然ながら忍やイッセー達の姿もあった。

しかし…

 

「はぁ…」

 

せっかくの学祭だというのに忍は1人で黄昏ていた。

 

理由は先日の邪狼との一戦である。

何も出来ず、ただ一方的に打ちのめされてしまった。

しかも後一歩のところで殺されていたかもしれなかった。

その事実が忍の心に重くのしかかっていた。

 

そこへ…

 

「ったく、辛気臭いんだよ」

 

クリスがやってきて、そんなことを言い出す。

 

「クリス…」

 

「お前がそんなんじゃ、こっちまで気が滅入るんだよ」

 

そう言うとクリスは忍の隣へと移動する。

 

「まぁ、その、なんだ……正直、あたしもなんて言やいいかわかんねぇけどよ。あれだ…いつまでもクヨクヨしたって仕方ねぇというか…あたしもこの間は見てるしか出来なかったし…」

 

クリスは忍を励まそうとしているらしいが、上手く言葉に出来ないらしい。

 

「だから…いつまでも気ぃ落とすなっての。お前はあたしらの王なんだろ?」

 

そのなんとも言えぬその言葉に…

 

「……ぷっ…あはは…」

 

忍は思わず笑い出してしまった。

 

「なっ!? なんでそこで笑うんだよ! 人がせっかく励まそうとしてやってるのに…!!」

 

そんな忍の反応にクリスも怒り出す。

 

「ご、ごめんごめん。だって、励ますのにはあまりにも程遠いものだったから、つい…」

 

謝りながらもさっきの内容を思い出して苦笑してしまっていた。

 

「お、お前なぁ!!」

 

今にも殴りそうな様子で手を振り上げるクリスだが…

 

「けど…ありがと。少しだけ楽になったよ」

 

そう言って微笑んでみせた。

 

「…っ…そ、そうかよ…///」

 

クリスが手を引っ込めるのを見てから…

 

「ところで…そちらの人達はクリスに何か用なのかな?」

 

忍はクリスの後ろを指しながらそう聞く。

 

「え? ぁ…」

 

忍の言葉に何かを思い出したように逃げ出そうとするクリスだったが時既に遅し、クラスメイトの3人に捕まってしまった。

 

こうしてクリスは講堂で行われている勝ち抜きステージで歌うことになってしまった。

結果は新チャンピオンとして君臨するほどの歌唱力を披露してみせた。

 

だが、その会場にはフィーネに所属する装者の調と切歌も来ており、飛び入りの挑戦者としてクリスの前に立ちはだかった。

しかし、採点結果を待たずして2人は講堂を後にする。

 

その途中のこと…

 

「まったくもう…イッセー、少しは落ち着きなさい」

 

「「マリア?」」

 

何故だかマリアの声を聞いたような気がして調と切歌は立ち止まってしまう。

そして、きょろきょろと声の主を探していると、前方から一組のカップル(?)が通り過ぎようとしていた。

 

「いやぁ、だって女子高なんて初めてで…なんだかこう、そわそわするというか…」

 

「はぁ…困った子ね」

 

そこには私服姿のイッセーとリアスの姿があった。

 

「マリアじゃないデス」

 

「でも、声がそっくり…」

 

2人揃ってリアスの声をマリアと勘違いしていると…

 

「? 何かしら?」

 

当のリアスに視線を気づかれてしまった。

 

「あ、いえ、なんでもないデス」

 

「失礼しました…」

 

そう言ってイッセーとリアスに道を譲ろうとすると…

 

「あ、一誠さん! その子達ちょっと止めて!」

 

響とクリスが走ってきた。

 

「え? 響ちゃん?」

 

調と切歌を横切ろうとした瞬間だったので反応に困った。

 

「知り合いだったデス!?」

 

「不覚…」

 

まさか知り合いとは思わなかったらしく、調と切歌はイッセーとリアスを警戒するが、時既に遅し。

いつの間にか先回りしていた翼も含めて5人に挟まれてしまった。

 

「この子達がどうかしたのか?」

 

イッセー達は二学期に入ってからライブ会場のことを聞いているため、まだ調や切歌とは接点が無いからわからないでいた。

 

「話は後でする。今は…」

 

「ここで事を構える気はないデス」

 

「お互い、失うモノが大きいからね」

 

翼の言葉を遮って調と切歌が口を挟む。

 

「くっ…」

 

「ちっ…」

 

「うっ…」

 

その言葉にシンフォギア装者達もそれぞれ反応を示していた。

 

その後、調と切歌は響達に決闘の約束をしてからリディアンから走り去っていた。

それと同時に響達に弦十郎からノイズ発生の連絡が入り、調査の依頼が来るのだった。

 

「あなた達も大変ね」

 

その様子にリアスも他人事のように思えず、そう言っていた。

 

「それが防人の務めだ」

 

「一誠さん達は学祭を楽しんでてください」

 

「忍に会ったら適当に伝えといてくれ」

 

それだけ言うと、装者3名は現場へと急行するのだった。

 

 

 

一方、その頃…

 

「クリスちゃん、楽しそうだったね」

 

「そうだな」

 

忍は智鶴と共に学院内を散策していた。

 

「(しかし…なんで、あそこに彼女らが…?)」

 

当然、クリスが歌っているところを見ており、飛び入り参加した調と切歌の存在も認知していたが、クリス達が追うのを確認していたため、自分は不要だと思って追い掛けないでいた。

 

「どうかしたの?」

 

眉間に皺を寄せている忍の顔を覗き込む。

 

「…あ、いや…少しクリス達のことが気になってね」

 

「…………」

 

忍の答えに顔をじーっと見つめると…

 

「な、なに…?」

 

「もう、しぃ君。ちゃんと話してよ」

 

どうも何か隠してると思ったらしく智鶴は忍にそう言っていた。

 

「あ~…か、帰ったら話すから…ね?」

 

今は学祭を楽しもう、というジェスチャーをしてみせる。

 

「約束だからね?」

 

「わかったよ………ん?」

 

智鶴の言葉に頷く忍だったが、不意に何かの匂いを感じた。

 

「今度はどうしたの?」

 

"また隠し事?"というような視線を忍に向ける。

 

「いや、妙な匂いが…」

 

首を振って否定しながら周囲の匂いを探っていると…

 

『きゅぅ』

 

何かの鳴き声が聞こえてきた。

 

「ふむ…?」

 

首を傾げながら今度は周囲を見回してみると

 

ガサガサ…

 

近くの茂みで何かが動いた。

 

「あら?」

 

智鶴がそこへ近づいてみると、そこには…

 

「ぬいぐるみ?」

 

「いや、生きた匂いがするから本物の龍だろ。しかもまだ幼いな…」

 

西洋竜の子供がデフォルメされたような外見の白い幼龍がいた。

 

『きゅぅ!?』

 

2人に気づかれたことに気づき、幼龍は慌てて逃げようとしたが…

 

「あ、ダメよ。そっちは危ないから…」

 

智鶴に簡単に捕まってしまった。

 

『きゅ、きゅう!?』

 

ジタバタと幼いながらに暴れる。

 

「暴れないの。大丈夫だから…」

 

幼くても龍であるため、暴れる力は人間の子供以上なはずだが…智鶴はそれを上手く受け流しながら幼龍の背中を優しく撫でていた。

 

『きゅ、きゅう…』

 

しばらくそれを続けていると、だんだんと大人しくなっていき、暴れなくなった。

 

「ね? 恐くないから…」

 

子供をあやすようにして幼龍を落ち着けていた。

 

「それにしても…なんだって龍がこんな所に?」

 

幼龍の頭を撫でながら当然の忍は疑問を口にする。

 

『きゅ、きゅ!』

 

何かを訴えているようだが、如何せん"きゅ"ではわからなかった。

 

「ん~…困ったわね…」

 

そうして幼龍を抱えたまま学院内を散策することになった。

ちなみに擦れ違う人々から不思議そうな目を向けられていた。

 

すると…

 

「ふぁ、ファースト…ど、何処ぉ…?」

 

なんだか今にも消え入りそうな若干涙ぐんでるモノも混じったような…そんな声が聞こえてくる。

 

『きゅ! きゅう!』

 

その声に反応してか、幼龍も声を出す。

 

「っ! ファースト?!」

 

それを聞きつけて1人の少女が忍と智鶴の前までやってきた。

少女とは言え、大きな水色のリボンで紺色の髪をポニーテールに結っていて少し幼さの残った顔立ちをしているものの、智鶴に匹敵する体型の持ち主だが…。

 

「はぁ…はぁ…」

 

幼龍を探し回っていたのか、少し息切れしていた。

 

「大丈夫? 少し座りましょうか」

 

そんな様子の彼女に智鶴は近くにベンチを見つけてそこに座るように提案した。

 

「は、はぃ…」

 

それを見てか、忍は出店へと何か飲み物を買いに向かった。

 

「この子はあなたの?」

 

幼龍を少女に手渡しながら智鶴は尋ねる。

 

「は、はぃ……あの、こ、この子は…ですね…」

 

「落ち着いて。今、しぃ君が何か買ってきてくれてるから…」

 

息切れしてる少女に落ち着くよう言いながら智鶴は背中を撫でてあげる。

 

「お待たせ」

 

そこに忍が飲み物を持って戻ってきた。

 

「これを飲んで少し落ち着きな」

 

そう言って少女に飲み物を手渡した瞬間…

 

「……魔力の匂い?」

 

微かに感じた魔力の匂いに思わず口が滑ってしまった。

それでも音量はかなり低かったので、雑音に紛れて周囲には聞こえていなかったが…

 

『きゅっ!?』

 

「っ…!?」

 

それでも至近距離にいた智鶴や少女には聞こえたらしく、忍の一言に少女と幼龍はびくりとわかりやすい反応を示していた。

 

「しぃ君?」

 

「すまない…」

 

少女に謝りながら忍は智鶴の隣に座る。

 

「あなたのお名前は? 私は明幸 智鶴。こっちはしぃ君」

 

智鶴が少女に自己紹介したのを見て…

 

「紅神 忍だ。さっきは悪かったね」

 

再度謝りながら忍も自己紹介をする。

 

「あ、あの…わ、私、は…む、叢雲(むらくも)…め、萌莉(めいり)…。こ、この子は…ふぁ、ファースト、です…」

 

『きゅ!』

 

物凄く恥ずかしそうに自己紹介する少女…萌莉もまた自己紹介をしていた。

 

「萌莉ちゃんに、ファーストちゃんね」

 

そう言うと、智鶴はよしよしとファーストの頭を撫でる。

 

「ここの生徒…だったら、制服着てるよな。この近場だと…」

 

そう言って忍は近場の高等学校を思い浮かべる。

 

「わ、私…く、駒王学園、に通って、ます」

 

「あら、だったら私達と同じね」

 

「だな。学年は…智鶴と同じ3年か?」

 

体型からそう判断するが…

 

「じゅ、17歳、の…に、2年…です…」

 

忍の同級生でした。

 

「あ、俺と同級生なのな」

 

「え、えっと…」

 

そんなゆっくりとした会話の後…

 

「あ、あの…な、なんで…魔力、のこと…?」

 

萌莉は何故忍が魔力を知っており、智鶴もそれを平然と受け入れてるのか不思議だったようだ。

 

「ん~…俺や智鶴もちょっとそっち方面で色々と巻き込まれたからな。魔力や魔法とか…悪魔や天使とか…まぁ、色々とな」

 

忍はそう言って苦笑してみせた。

 

「萌莉ちゃんはどうして魔力の事を…?」

 

智鶴に問われて…

 

「わ、私…家が、代々…剣術やってて…魔法、とか…組み込んだ…特殊な流派で…わ、私…後継者って、ことになってて…」

 

萌莉はそう答えた。

そして、それを聞き…

 

「そうなのか…もし良かったら教えてもらいたいもんだ」

 

冗談混じりに忍はそう申し出ていた。

しかし、萌莉を見る忍の眼は真剣そのものであった。

 

「どう、して…?」

 

その眼を見て萌莉は首を傾げて尋ねる。

 

「……俺は強くなりたいんだ。目の前の大切な人達を守れるように…」

 

そう言って忍は智鶴の手を握った。

……心なしか、忍の手は少し震えていた。

 

「しぃ君…この間の大怪我のこと…?」

 

邪狼との戦闘で負った重傷の事は智鶴にも当然知られている。

 

「………あぁ…危うく殺されかけた…」

 

その言葉に智鶴と萌莉はギョッとした。

 

「手も足も出なかったんだ…自分の弱さを痛感させられたよ…」

 

「そんな…しぃ君…」

 

忍の握ってきた手にもう片方の手を重ねる。

 

「きっと…奴はまた来る。だから力を蓄えたい…戦うためじゃない。俺は守るために…力を使いたいから…」

 

それは忍の本心からくる言葉であった。

戦いを回避出来るなら、そういう方法も模索したい。

甘い考え方だとしても、忍はそれを貫くために力をつけなくてはならなかった。

 

『きゅ…』

 

思いつめた表情の忍を見てファーストが忍の近くまで寄ると、そのまま頭をぐりぐりと押し付けた。

 

「ありがとな。まぁ、無理なら無理でいいんだ。他の方法で強くなるから…」

 

ファーストの頭を撫でた後、萌莉にそう言う。

 

しかし…

 

「無理…じゃ、ありま、せん…。誰か、を…守る…ため、なら…」

 

萌莉はそう言っていた。

 

「いいのか…?」

 

「と、特に…誰にも、教えちゃ、いけない…って、言われて、ません…から…」

 

そう言いつつも萌莉は祖父から教えられた"あること"を思い出していた。

 

「なら、よろしく頼む…」

 

「は、はぃ…」

 

こうして萌莉の教えで、彼女の流派『叢雲流魔剣術』を教わることになった忍であった。

 

 

 

余談だが…

 

学祭が終わった日の夜。

シンフォギア装者達による決闘が行われるはずだった。

しかし、決闘の場に選ばれたのは特別指定封鎖区域とされていたカ・ディンギル跡地だった。

そこで響達を待ち受けていたのはソロモンの杖を持つウェル博士だった。

ノイズによる攻撃を受けながら響達はそれに応戦。

その中で、ウェル博士は月が落下するという情報を響達に打ち明けた。

そして、その直後にフィーネが所有する完全聖遺物の一つ『ネフィリム』を送り出し、クリスと翼をノイズによって拘束した。

残った響はネフィリム相手に善戦するも、ウェルの言葉と調に言われた偽善者という言葉を思い出し、拳を鈍らせた。

そのせいで、響は左腕を食い千切られ…ネフィリムの糧とされてしまい、覚醒を促してしまった。

それと同時に響もまた暴走状態を引き起こしてしまった。

暴走した響はネフィリムを圧倒し、その心臓部を抜き取ると、そのままネフィリムの外殻を吹き飛ばしてしまった。

それを見たウェル博士は恐怖のあまり逃亡した。

暴走状態の響をクリスと翼がなんとか押さえていると、ギアが解除されて響は気絶した。

その際、ネフィリムに食い千切られたはずの左腕は再生していた。

 

そして、響は医療室へと運ばれ、深刻な問題を抱えていることが発覚する。

それは胸にあるガングニールの欠片が響の体組織と徐々に融合・変質させていき、響がギアを発動する度に響の体を侵食していくことである。

その結果、最悪の場合は死を迎えるのだという。

その事実は装者の中では翼にのみ明かされ、響を戦場から引き離そうと厳しい言葉を投げつけていた。

 

………

……

 

後日。

 

忍は自らの眷属と吹雪、萌莉を連れて兵藤家へとやってきていた。

また、萌莉が心配らしく彼女のペット(?)らしき小動物5匹も一緒についてきていた。

その中にはもちろんファーストの姿もあった。

他は亀、蛇、小鳥、子猫である。

 

「なんだって俺の家に来るかな?」

 

「仕方ないだろ? こっちは居候の身で、中庭で魔法なんて使えないんだし…」

 

「それはわかった。でも、なんか色々と増えてないか?」

 

そう言ってイッセーは萌莉とファースト達を指差していた。

 

「特におっぱいの大きさの比率も高いし!」

 

「気にするのはそこかい!?」

 

ベシッとイッセーにツッコミを入れた後…

 

「彼女は叢雲 萌莉。俺達と同級生で、俺に剣術を教えてくれる人だ」

 

智鶴の背中に隠れている萌莉をそう紹介していた。

 

「剣術? それなら木場にでも教えてもらえばいいのに…」

 

イッセーの疑問ももっともだが…

 

「木場君の剣術は剣をベースにしてるけど、俺は刀がベースなんだよ。そこの違いから多分異なるだろうし…」

 

忍はそう答えていた。

 

「そういえば、そうだったな。あいつも剣士としての心構えとかを師匠に倣ったとか言ってたし…」

 

それで納得した後…

 

「なら後で俺と模擬戦してくれよ。禁手状態でお前とどこまで戦えるか試してみたいし」

 

「それは願ってもないことだけど…いいのか?」

 

「もちろん。忍は神器ないけど、デバイスとかいうの持ってんだし…お互いに良い経験になると思うんだよ」

 

「…わかった。その勝負、受けて立つよ」

 

イッセーの申し出を快く受け取っていた。

 

そして、一行はイッセーの案内で地下1階へと降りていき…

 

「「「広っ!!?」」」

 

忍、クリス、吹雪が当然のように驚いていた。

 

「広々として良いわね」

 

「そうね」

 

「無駄にデカいだけでしょ」

 

逆に智鶴、カーネリア、暗七は冷静(?)な反応を示していた。

 

「まぁ、トレーニングするにはちょうどいいけどな」

 

もう慣れたのかイッセーもそんなことを言っている。

というか、イッセーは見学するようだ。

 

「う、うぅ…ひ、人が…いっぱい…」

 

未だ智鶴の背中に隠れる萌莉はなんだか涙目だった。

 

 

 

そうこうしていると、何故かゼノヴィアやイリナと言った兵藤家の居候剣士陣も合流しての見学会と化しつつあった。

そんな中、縮こまった萌莉と"悪いことをしたかな"と考える忍は互いに木刀を手にして対峙していた。

 

「ふむ…あんなオドオドしていてもやはり剣士か。隙があまり見当たらない」

 

「逆にあんな娘が剣士だって普段なら思わないわね」

 

ゼノヴィアとイリナは萌莉を見てそう評する。

 

「む、叢雲、流は…その、ぜ、全部で…よ、四つの、型…が、あります…」

 

「四つか。それって多いのか? 少ないのか?」

 

萌莉の言葉を聞き、忍は剣士陣に聞いてみた。

 

「型というのかわからないが、少ない方なんじゃないか?」

 

「そうかしら? 技を区別するための型なら多い方じゃない?」

 

ゼノヴィアは少ない、イリナは多いと答える。

人によって型の見解は異なるようだ。

 

「まぁ、いいか。で、どういうのなんだ?」

 

気を取り直して萌莉に尋ねた。

 

「ま、まずは…ぼ、防御の、型…」

 

そう言うと萌莉は翠色の魔力を木刀へと流し、それをフィールドタイプの魔法のようにして木刀の刀身を包み込む。

 

「こ、こうやって…ぼ、防御、魔法を…と、刀身や、鞘に…て、展開、します…」

 

「なるほど…(感じとしてはミッドやベルカの魔法体系に似てる…もしくはベースになってるのか?)」

 

萌莉の使う魔法にそのような感覚を感じながら忍は萌莉の真似をするようにして木刀の刀身に白銀色の魔力を流すと、フィールド状にした防御魔法を展開する。

 

「そ、そう…そ、そんな、感じ、です…」

 

「これが防御の型か。なら…こういうのもそうなるのか?」

 

萌莉の言葉を受けながら、忍は軽く木刀を振るって魔力を自分の手前まで飛ばすと、今度はバリアタイプの防御魔法を展開してみせる。

 

「ふぇぇ?!?!」

 

それを見て萌莉が妙な悲鳴を上げた。

 

「ど、どうした!?」

 

その声に忍も驚く。

 

「ふぇ? ぁ、いえ…あの…い、今の、も…ぼ、防御の、型…に、なります…」

 

困ったように縮こまりながらさっきのも防御の型であると答える。

 

「そうか。これなら色々と応用が利きそうだな」

 

忍は確かな手応えを感じていた。

 

「(こ、この人…もしかして…)つ、次は…ま、魔刀の、型…です…」

 

忍にあるモノを感じた萌莉だが、そのまま続けることにした。

 

「魔刀の型?」

 

聞き慣れない単語にその場にいた全員が首を傾げる。

 

「か、簡単に…い、言えば…け、剣と、魔法を…い、一緒にあ、扱うもの…です…」

 

そう言うと、萌莉は周囲に魔力弾を形成し、木刀を振るうタイミングに合わせて魔力弾を一緒に飛ばしたり、斬撃と魔力弾を時間差で飛ばしたりしてみせた。

 

「ふむふむ…」

 

忍も真似るようにして周囲に魔力弾を形成し、木刀を振るって魔力弾を同時や時間差で発射する動作を繰り返す。

 

「(や、やっぱり、この人が…?)」

 

そんな姿を見て萌莉は徐々にその思い浮かべている疑惑を確信へと変えつつあった。

 

「紅神は筋が良いというか…覚えるのが異常に早くないか?」

 

「うんうん。確かに」

 

「そういや、忍って何事もそつなく熟すよな。なんか、コツでもあるのか?」

 

見学してた兵藤家の3人がそう言ってきた。

 

「コツって言われても困るんだけど…なんだか自然と体が反応するというか…覚えたものが鮮明というか…なんて言ったらいいのかわからないよ」

 

本人もそれが自分の能力であることにまだ気づいていないようである。

 

「紅神のは天性のものかもしれないな」

 

「なのかな? 特に困るような事じゃないからいいけど…」

 

ゼノヴィアの言葉にそう答えつつ魔力弾を消し去って萌莉に向き直る。

 

「次は?」

 

「ふぇ?! え、えっと…あ、あとは…ほ、砲撃の、型…って、言って…し、刺突、か…じょ、上段からの、斬撃…に、合わせて…ほ、砲撃の、魔法を…放つ、んです…」

 

忍に声を掛けられ、驚きつつもそう答えていた。

 

「砲撃か…流石にこの空間じゃ出来ないわな。感じだけ聞くなら…」

 

そう言って忍は木刀を上段に構えると…

 

「こんな感じか?」

 

砲撃の代わりに魔力の波動を斬撃と共に前方へと撃ち出す。

 

「っ!?(き、聞いただけで…)」

 

たった今、言っただけで再現しようとした忍の順応力と吸収力にかなり驚いていた。

 

「これで三つだから…あと一つか。しかし、具体的な技名とかはないんだな?」

 

不思議に思い、萌莉に尋ねてみる。

 

「え、えっと…う、家に…だ、代々から…つ、伝わる、家訓に…『き、基礎さえ…しっかり、していれば…は、派生技など…し、自然に、身に、付く』…って言うのがあって…そ、それが、この…む、叢雲流を、表す言葉、でも…ある、の…」

 

萌莉はそう答える。

 

「なるほど。使い手次第で色んな形になる流派なのか。だから特定の技がなくて型だけなのか…それはそれで納得出来るような気がする」

 

納得したように何度か頷くと…

 

「で、最後の型ってのはどんなのなんだ?」

 

いよいよ、最後の型を教えてもらおうとする。

 

しかし…

 

「さ、最後の、型は…り、理力の、型…って言って…わ、私達、叢雲の、人間じゃない…と、使えない、って…お祖父ちゃんが、言ってた…」

 

萌莉はそう伝えていた。

 

「そうなのか?」

 

「う、うん……で、でも…こ、こうも、言ってた…」

 

その言葉に落胆する忍だったが…

 

「し、始祖様が…こんな言葉、を…残してる、の……『よ、世の中…ぜ、絶対、なんて…こ、言葉は、ない。い、いずれ、例外が…た、誕生する、から…た、楽しみに…している、ように』…って…」

 

「例外者?」

 

「う、うん…わ、私は…し、忍、さん…だと、思う、の…」

 

「俺が?」

 

今度は疑問に思う忍だった。

 

「し、忍さん…なら、きっと…だ、大丈夫…な、気がする…」

 

そう言う萌莉の眼は真剣だった。

 

「その、理力の型ってのはどんなもんなんだ?」

 

「り、理力の、型は…け、剣術じゃ、なくて…つ、使い手の、能力で…う、内にある…魔力を、使って…す、数秒先、の…相手の、う、動きを…予知したり…て、テレキネシスみたいな…ち、力を…は、発揮する、の…」

 

そう言うと、萌莉は木刀を床に置いてから一歩下がると…

 

「んっ…」

 

床に置いた木刀に向けて手を突き出す。

すると…

 

ブォンッ…

 

木刀が独りでに宙へと浮かび上がる。

 

「「「おぉ」」」

 

「わぁ、凄い凄い」

 

その様子に見学者の一部がパチパチと小さな拍手を送る。

 

「魔法の次は超能力かよ…」

 

「忍の近くだと驚きが尽きないわね」

 

クリスと暗七が皮肉っぽいことを言う。

 

「内にある魔力の応用か。それは考えたことがなかったな…いや、それよりも普通に出来るものなのか?」

 

体内魔力を持つ転生悪魔のイッセーやゼノヴィア、忍と同じくリンカーコアによる大気魔力を保有する暗七やシア、吹雪に問いかけてみた。

 

「俺はそっち方面に疎いから何とも言えんけど…そういう魔力もあるんじゃないか?」

 

「私も同意見だ。特に悪魔は家柄ごとに魔力の資質が異なるだろうし、転生悪魔の私達も得手不得手はあるからね」

 

イッセーの言葉にゼノヴィアもそう付け加えて答える。

 

「少なくとも私達の魔力じゃ魔法を介さないと厳しい気がするわ」

 

「確かに…どうあっても魔力の流れは見えるはずですし、そもそも魔法と超能力は異なる分野のはずです」

 

「小難しい話はさサッパリだけど…あたしも難しいと思うわよ」

 

暗七とシア、吹雪は揃って難色を示した。

 

「となると…萌莉の家、叢雲家は雪白と同じで特殊な血筋を持ってた可能性があるな」

 

「それには同意見です。多次元世界は広いですから…どのような技術、能力があっても不思議ではないかと」

 

忍の言葉にこの中では唯一とも言える多次元世界での知識があるシアが賛成する。

 

「ともかくやってみないことには話にならんか…」

 

忍も木刀を置いて一歩後ろに下がると…

 

「はぁ…(出来るだけ魔力の出力を抑えながら体内に留め、その力を物体を動かすエネルギー体へと変換する…)」

 

木刀に向けて突き出した手に魔力を集中し、それを肉体の表面でなく内側に溜め込んで力だけを抽出し、魔力の波動を木刀へと与える。

 

「上がれ!」

 

気合一喝とばかりにそう叫ぶと…

 

ヒュッ!!

バコンッ!!

 

木刀が勢いよく飛び上がると、回転しながら天井に激突する。

 

「「「「「……………」」」」」

 

その出来事に全員が口を半開きにして驚く。

そして、静寂の後…

 

「す、凄い、凄い…!!」

 

いち早く静寂を切り裂いたのは萌莉だった。

 

「れ、例外者…ううん、し、忍さんなら…で、出来ると思ってた…!」

 

少しばかり興奮気味に忍に駆け寄ると、抱き着いていた。

興奮のせいか先程よりも言葉がしっかりしてるように感じる。

 

『きゅ!』

 

ファーストもペチペチと小さな手で拍手していた。

 

しかし、それを皮切りにして…

 

「おまっ、なにしてんだ!?」

 

「驚きのあまり興奮でもしたの?」

 

「さっさと離れろ!」

 

クリス、暗七、吹雪が忍と萌莉を引き離しにかかっていた。

 

「っ?! はわわぁぁぁ…////」

 

自分が何をしているのか気づいたのか、ボンッという音が鳴りそうなくらい顔を真っ赤にして慌てて忍から離れた。

 

「(萌莉、か…"あの人達"と一緒に眷属候補が増えたかな…)」

 

しかし、忍は別の事を考えていた。

 

「(あとは交渉次第か…大丈夫かな?)」

 

そう思いながら眷属の駒の残りと交渉相手の特性を照らし合わせていた。

 

「おい、聞いてんのかよ!?」

 

「ちょっと聞いてんの!?」

 

しかし、そんな事を考えていたため、クリスや吹雪の文句を聞きそびれてしまい、さらに文句を言われることになるのだった。

 

自身の考える"守るための戦い"への新たな手札が増えた喜びを胸に忍は"彼女達"との交渉を考えるのだった。

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