剣術の型を修得した後、イッセーとの約束通り模擬戦をすることになった。
萌莉と入れ替わるようにして忍とイッセーが対峙する。
そして、禁手までのカウントダウンが始まる。
イッセーには時間制限があるので、禁手状態となってから活動限界時間ギリギリまでの模擬戦となる。
「この時間をどう切り抜けるかが肝なんだよな」
「だから風鳴さんのところに通うことにしたの?」
そんな会話しながら忍とイッセーは軽い組み手をしていた。
忍はともかく、イッセーは体を温める意味での軽い組手である。
「まぁな。あの人、かなり強いし…結構ハードなんだけどな」
「それに加えて自主練もしてるんでしょ? イッセー君って意外と努力家だよね」
「意外ってなんだよ!」
そう言うと強めの正拳突きを放つ。
それを忍はすかさず右腕で正拳の軌道を逸らす。
「アザゼル先生やドライグにも言われてるけど、俺ってそんなに色々な存在を引き付けてんのかな?」
「少なくとも俺もその存在の一つだろうな。そして、それに伴うとばっちりも受けてる気がする」
「そいつは悪かったな!」
そう言って再び正拳を放つイッセーと、それを忍はバックステップとバク転で後ろに回避する。
そして、その時が来た。
「さぁ、こっからが本番だ!」
『Welsh Dragon Balance Breaker!!』
その音声と共にイッセーの体を赤い鎧が包み込む。
「(これが二天龍と称されし片割れ…赤き龍の帝王の鎧…間近で見るのは初めてだが…物凄いプレッシャーだ…)」
その姿に忍は背中に冷や汗を掻いた。
『きゅ…』
ファーストも同じ龍であるはずだが、その姿に震えている様子だった。
「流石に出力は抑えて戦うぞ? 加減間違えて家を壊しても嫌だしよ」
「その方が助かる。というか、結界でこの空間自体を補強しないと耐えられないんじゃないか?」
忍の懸念に…
「その必要はないわ。ある程度までなら耐えられるもの」
「あら、リアスちゃん」
リアスがやってきてそんなことを言い出す。
「イッセーの禁手の波動が地上まできたから見に来たら…なかなか面白そうなことをしてるじゃない」
そう言ってリアスも見学組の中へと入る。
「あら? 随分と可愛らしい見学者さん達ね?」
萌莉と、その召喚獣5匹を見る。
「ぁ、ぁぅ…」
見知った人である智鶴の背中に隠れてしまうが、如何せん隠れ切れてない。
「リアス部長、彼女はなかなか面白い剣士だよ。性格上の問題はあるが、きっと良い騎士になる」
ゼノヴィアがリアスにそんなことを言う。
「あら、そうなの?」
不思議そうな顔をしてオドオドしてる萌莉を見る。
「グレモリー先輩。悪いけど、その子は俺の騎士候補だ。と言ってももう騎士の駒は使い切ってましたっけ?」
そこでイッセーと相対している忍がまたとんでもないことを言い出す。
「はぁ?! お前、本気かよ!?」
「この子を仲間に…?」
「あらあら…この間の眷属引き入れで何かに目覚めちゃった?」
「私は良いと思いますが…」
「しぃ君ったら、もう…」
忍の言葉にクリスは驚き、暗七は渋い顔をし、カーネリアは可笑しそうな笑みを浮かべ、シアは賛成し、智鶴は困ったような顔をしていた。
「?」
「………」
当の萌莉は首を傾げ、現在保留中の吹雪はなんだか面白くなさそうな表情をしている。
「忍の眷属集めか……てか、そろそろ始めようぜ」
「あぁ、悪い悪い」
待ちくたびれそうな声を出すイッセーに謝りながらネクサスとファルゼンを起動させる。
「いざ、推して参る!」
そう言うと、忍は手始めにブリザード・ファングを左手から放って牽制する。
「いきなりかよ!」
背部のブースターを噴かして一直線に忍へと特攻を仕掛ける。
しかもブリザード・ファングが当たっても着弾箇所が凍結しただけでほぼ無傷である。
「マジか!?(ここまでとは…!!)」
「伊達に毎日トレーニングしてる訳じゃないからな!」
そう言うとイッセーは左ストレートを忍に放つ。
「ちっ!?」
ガキンッ!!
今さっき習ったばかりの叢雲流魔剣術・防御の型を使い、ファルゼンの刀身に魔力を纏わせてフィールド状に練り上げるとイッセーの拳を受け止める。
しかし…
「(お、重い!!?)」
忍の予想以上にイッセーのパワーが増しており、力負けしそうになっていた。
「ちぃっ!」
力勝負では分が悪いと判断し、ファルゼンに込めてた力を抜いて軌道を逸らすことに集中する。
「そうはさせっかよ!」
忍の意図に気づいたイッセーが踏み込んだ足に力を込めて左ストレートから薙ぐような動作に切り替えて忍を追撃する。
「くっ?!」
再度ファルゼンに力を込めるとそのまま押し留めようとするが、やはりパワーの差なのかジリジリと競り負け始めている。
「こんだけ距離を詰めたら流石に何も出来ないだろ?」
刀と篭手による特殊な鍔迫り合いをしながらイッセーが不敵に笑った。
「(堅牢な鎧に守られ、さらにパワーも増大…普通ならこれで詰むんだろうが…)」
忍の眼はまだ諦めてはいなかった。
「力で負けるならスピードで勝つ!」
そう言うと同時に忍は銀狼へと姿を変えてファルゼンを一旦手放して距離を稼いだ。
ギンッ!!
ファルゼンはイッセーの薙ぎによって弾かれてしまう。
「来い!」
早速覚えた理力の型によって弾かれたファルゼンを手元へと呼び戻す。
「おまっ!? それってズルくね!?」
「イッセー君のパワーに比べたらまだまだズルくない!」
そんな言い合いをしながら忍は高速移動を開始する。
「(木場よりはまだ遅く感じるが…それでも速ぇ!)」
木場とも訓練しているため、速度に目が慣れているイッセーだが、それでも忍の速度もそれなりに速いのか少し追い切れていない。
「狼影斬ッ!」
ギンッ!
擦れ違い様に刀の刃で斬りつけるが、堅牢な赤き鎧に傷をつけることは出来なかった。
「(やはり硬い! 弱点を突くにしても…俺には聖なるオーラも龍殺しもない。正直、キツイか…)」
忍も総合的に能力は向上してきているが、未だ決定打に欠けていた。
それから約30分の間、忍もイッセーも互いに力を出し尽くすことなく模擬戦を終えていた。
しかし、スピードでは忍、パワーではイッセーにそれぞれ軍配が上がっていて、それぞれの改善点も見えた有意義な時間となったのだった。
ちなみに萌莉にも眷属の話を切り出したものの答えを出すのに少し時間がいると答えられてしまった。
しかし、一方でウェル博士が街中でノイズを出現させていた。
それに偶然にも遭遇した響とその友達だったが、響によりノイズは撃破。
ウェル博士の身柄を確保しようとするも、調と切歌の介入によって阻まれた。
翼やクリスもノイズ出現の知らせを聞き、急行したが時既に遅し。
調と切歌に連れられてウェル博士は去り、響はオーバードライブ状態に陥っていた。
その後、なんとかギアを解除した響は気絶して緊急搬送。
その場に居合わせていた未来やクリスにも響が危険な状態であることを知らされたのだった。
………
……
…
後日、リアスとディオドラのゲームが四日後に迫っていた日のこと。
リアス達は冥界に出向いていた。
何やら冥界のテレビに出演するとかどうとか…。
その一方で、忍は眷属候補と考えていた人物と接触していた。
「お久し振りです。フェイトさん」
「う、うん。久し振りだね。もう三ヶ月くらいになるのかな?」
海鳴臨海公園で待ち合わせしていた。
ルナアタックでの共闘以来、実に三ヶ月近く経っての再会である。
「なんだか…忍君、雰囲気が変わった?」
「そうですか?」
「前よりも…なんだか、その…空気がキリッとしてるような…」
「どんな表現ですか…まぁ、確かに色々なことがありましたから…」
近くのベンチに座りながら他愛のない会話をする。
その様はまるで遠距離恋愛してたカップルが久々に会ったような…?
それは言い過ぎか…。
「色々なことって?」
「フェイトさんは知ってますか? 俺達が共に戦ったルナアタックと同時期に起きた聖剣騒動のこと」
「シュトライクス准将からご丁寧に報告書を読ませてもらえたよ。機密事項の部類に入るはずなんだけど…私はルナアタックの方に介入したから特別に、ね」
「なら、三大勢力…悪魔、天使、堕天使の三つ巴が和平を結んだことも…?」
「ある程度なら…でも、未だに信じられないかな。悪魔や天使がいて、それが手と手を結んでるなんて…普通なら敵対しててもおかしくないような組み合わせだし…」
「確かに、そうですね。ですが、事実です。和平の様子は俺も近くで見ていましたし」
苦笑しながらも真剣みを帯びた声でそう言う。
「ただ、それを快く思わない連中…
「禍の団…」
「あいつらにはいくつか派閥があるみたいで…今のところわかってるのは、悪魔に敵意を向けている旧魔王派と冥王派なんですよ」
「旧魔王派と冥王派?」
フェイトがゼーラより見せてもらった報告書にはそこまでの詳細は書かれていなかったのか、それとも意図してみせられなかったのかは不明だが、フェイトは首を傾げていた。
「旧魔王派というのは何百年も前に起こった三大勢力での戦争で、その命を絶った先代の四大魔王を信仰している悪魔の一派で、現政権に対して未だに強い反発を抱いているらしいんです。それがテロ組織に加担していて…」
そんなフェイトに忍は自分の知る限りの知識で簡潔に説明していた。
「えっと、つまり…悪魔同士での揉め事があって、その遺恨は残りつつ片方がテロ活動をしてるってこと」
「そうなりますね」
「悪魔の世界も人の世界とあまり変わらないんだね」
「確かに…」
フェイトの言葉に忍も苦笑してしまった。
「それで、冥王派っていうのは?」
「旧魔王派によって弾圧を受け、領地を追われてしまった種族の過激派なんです」
そう答える忍の表情はどこか悲しそうであった。
「忍君?」
「……冥王とは、冥界に住む種族である冥族がその力を解放した姿を指す、らしいです。そして…俺にもその血が流れているんだそうです」
「え…?」
忍の言葉にフェイトは何と言っていいのかわからなくなった。
「この三ヶ月の間で…俺の出生がわかりました。俺は…狼と雪女との間に生まれた子だったんです。普通、雪女の子は女の子というのが原則だったらしいんですが…俺はこの通り男です。そして、俺を生んでくれた母の家系には少なからず、冥王としての血も混じっているようで、その遺伝は今でも健在らしくってリンカーコアが発現したのも遺伝らしいんです。ただ…ちょっと前にマッドサイエンティストに変な血液を投与されたみたいで…自分でもよくわからないんですよ…何を入れられたのか…」
そこまで話すと…
ぎゅっ…
フェイトは忍の頭を抱き…
「もういいから…無理して話さなくてもいいから…」
そう言って頭を撫でていた。
「いえ…これはフェイトさんにも伝えておきたかったので…それにこのことは智鶴も承知してます。だから大丈夫ですよ」
そう言ってみるものの…
「大丈夫なら…どうして泣いてるの?」
フェイトは忍の頬を触って涙を拭いていた。
「…正直、辛かったんですかね。いくら出生を知ったからってまだ両親は見つかってませんし…何より、俺は一度、殺されかけたんですから…」
泣いてる認識はなかったが、フェイトに指摘されて多少驚きつつも淡々とそう呟いていた。
「殺されかけたって…?!」
言ってハッとなって周囲を見回すが、幸いにも誰もいなかったのでホッと胸をなでおろした。
「誰かいたらこんな話はしませんよ」
フェイトの反応を見て忍はそう言う。
「それで…誰にやられそうになったの?」
「………邪狼。あいつはそう名乗ってました」
それを聞き…
「邪狼!?」
フェイトは驚いたような声を上げてしまった。
「フェイトさん? あいつを知ってるんですか?」
「知ってるも何も…管理局で指名手配中の特A級の要注意人物だよ!」
フェイトは邪狼についての資料を思い出す。
「彼は様々な次元の戦や紛争に介入している戦争屋の傭兵で、無意味な虐殺行為を繰り返してるの。それで、管理局も何回か討伐隊を派遣したんだけど…結果は誰も帰ってこなくて…」
「そんな奴が…テロ組織に…」
フェイトからの情報を聞き、忍は身に迫る危機を改めて思い知る。
「やっぱり…強くならないとな」
そう決意に満ちた言葉を発すると…
「フェイトさん、実は先日冥界に行きまして…魔王の1人が俺に眷属の駒なるモノを渡してくれまして…」
「眷属の駒?」
「えぇ…」
そこで忍は眷属の駒のことと、そのベースになっている悪魔の駒のことを説明した。
「少数精鋭のチーム。悪魔の世界も凄いんだね」
「はい。それで…フェイトさん…」
涙を親指で拭い去ると忍はフェイトから少し離れて真剣な表情を見せ…
「あなたも…俺の眷属になってほしいんです」
そう言って僧侶の駒を差し出す。
「えぇ?! わ、私…そんな、眷属だなんて…まだよくわかってないし…それに私よりも優秀な人なんて…」
フェイトはあまりのことに驚いた様子でそんなことを言い出すが…
「フェイトさんじゃないとダメなんです」
「うっ…////」
あまりの口調の強さにフェイトも赤面してしまう。
「これは俺の勝手な想いなんですが…俺はあなたも守りたいんです。だから身近に置いておきたい…。こんなの本当は間違ってると思いますが…それでもあなたには俺の側にいてほしい。ただ…」
「…ただ? な、なに?////」
「俺には既に智鶴以外の眷属もいます。しかも全員が女性なんです。その人達のことも全力で守りたいと考えてます」
「……ぇ……えぇ…っ!?」
流石にそれを聞いてフェイトも顔をひきつらせた。
「最低ですよね。この話は拒否してくれてもいいんです。でも、さっき言った守りたいという気持ちは本心からくるものなんです。短期間ですが、フェイトさんには助けてもらったり、魔法を教わったりして…それだけでも大切な繋がりだと俺は思ってますから…」
それを見て忍もそう言わざるを得ず、最後に真摯な気持ちだけは伝えていた。
「………」
それを聞き、フェイトはというと…
「…そんな言い方、ズルいよ。忍君…」
「すみません…」
「謝るくらいなら…最初から言わないで…」
そう言いつつフェイトは僧侶の駒を受け取る。
「でも…うん。忍君の真っ直ぐな気持ちは伝わってきたから…私で良ければ力になるよ」
トクンッ…
その言葉と共に僧侶の駒がフェイトの中へと溶け込んでいった。
「ありがとうございます、フェイトさん」
それを聞いて…
「むっ…さん付けと敬語禁止」
ちょっとむくれた表情になるとそう告げていた。
「え…?」
「そのくらいいいでしょ?」
一瞬、何を言われたか理解できなかったが…
「……わかったよ、フェイト」
フェイトの意思を汲み取ってそう呼んでいた。
こうして時空管理局の執務官『フェイト・T・ハラオウン』を眷属に引き入れることに成功した忍であった。
………
……
…
フェイトを他の眷属達と引き合わせるため、2人は明幸家の屋敷へと足を運んでいた。
「ここが俺の居候先。一般的に極道って言われてるけど…まぁ、気にしないで…」
「ご、極道…?」
地球への滞在もそれなりに長いため、その単語は知っていたが…いざ実物を見るとなると色々と異なる…であろう、多分…。
「ただいま」
「「「お帰りなさい、坊ちゃん!!」」」
最近、このパターンが多いな…と思いつつ忍も慣れとは恐ろしいと実感していた。
「また、客人だけど…皆は来ちゃダメだからね?」
「「「へい、わかりあした!!」」」
最近、忍も堅気ではないにしろ、魔法世界やら冥界やらの関係に巻き込ませないため、組員にはそれなりに話しをつけていた。
もちろん、智鶴も同行してでの話なので、問題はない…はずである。
「すみません。驚きましたよね?」
居間へと続く縁側を歩きながら忍はフェイトにそう言っていた。
「う、うん…正直…」
当のフェイトはさっきの組員達の勢いに押され気味だった。
「お帰りなさい、しぃ君」
「ただいま、智鶴」
居間で待っていた智鶴が忍の帰りに気づく。
「お邪魔します…」
忍の後ろからフェイトも顔を出して一言挨拶をする。
「しぃ君。そちらの方が…?」
「あぁ、もう1人の僧侶。フェイトだよ」
「フェイト・T・ハラオウンです」
「明幸 智鶴です。しぃ君がここで駒の話をするならフェイトちゃんも何かしらあるのよね?」
互いに自己紹介をした後、智鶴は早速そんなことを聞いていた。
「えっと…私は、言ってもいいのかな?」
一応、忍に確認を取る。
「大丈夫。智鶴を含めてもこの家で俺達の事情を知ってるのは少数だから…まぁ、冥界とか各神話体系とかではどういう扱いになってるか少し心配な面もあるけど…この家では大丈夫。それに訳ありな人が多いから…」
「そうなんだ」
それを聞いて少し安心したのか…
「私は時空管理局の魔導師で執務官を務めています。デバイスはこのバルディッシュです」
そう言って待機状態のバルディッシュを見せる。
「デバイス。スコルピアちゃんやアクエリアス君と一緒なんだね」
そう言って智鶴は待機状態のスコルピアを取り出した。
「俺も、この夏休みにな」
忍もまた待機状態のアクエリアスをフェイトに見せた。
「エクセンシェダーデバイスが2機も…!?」
ロストロギアに指定されているデバイス群の内、2機も近場に揃っていれば管理局員なら誰でも驚くことだろう。
「エクセンシェダーは黄道12星座がモチーフになっている。それが今、2機も現れたとなると……何かの前兆なのかもな」
忍はそんなことを呟いていた。
「前兆?」
「何の?」
「いや、あくまでも予想であって断言は出来ないぞ?」
そんなことを言いつつ他の眷属(居候′s)との顔合わせをした後のこと。
「お、お邪魔、します…」
組員の方達にビクビクしながら萌莉がやって来た。
「いらっしゃい、萌莉ちゃん」
「ぁ、は、はい…」
居間に集まった忍眷属+吹雪、萌莉と召喚獣5体。
「答えは…出してくれたのか?」
早速、忍は萌莉にそう尋ねていた。
「わ、私…や、やっぱり…あ、争い事は…」
顔を伏せながら萌莉はそう答えた。
『きゅ…』
萌莉の膝に陣取っているファーストが心配な声を上げている。
「そうだな。結果的に君を戦いに巻き込むかもしれない…」
萌莉の言葉に忍もそう答える。
「でも、俺には君の力が必要なんだ。自分勝手なのは重々承知しているが、君の守りたいものを俺にも守らせてほしい」
そう言って忍は騎士の駒をテーブルの上に置くと、萌莉の方へと差し出していた。
「わ、私の…守りたい、もの…」
その視線はファースト達に向けられる。
「剣を持つことを恐れないでほしい。剣は持つ者の心によってその真価を如何様にも発揮できる。俺はそう感じているんだ。だから、萌莉も自信を持っていいんだ。守りたいもののために剣を握る。俺はそうするつもりだ」
真剣な眼差しで忍は己の内にある本心と共に萌莉に説いていた。
「で、でも…わ、私…あ、足手まといに…」
周りの人達を見て自分を過小評価していた。
「大丈夫、私はそんな風に思ったりしないから」
まずそう言ったのは智鶴だった。
「そうね。王の見込んだ人だもの。きっとそれなりに動けるわよ」
「あたしらがフォローすりゃいいんだろ? もうあいつで慣れっこだからな」
「ま、何とかなるわよ」
「自信を持ってください」
それに続くようにしてカーネリア、クリス、暗七、シアも萌莉に声を掛ける。
「えっと…初めましてだからなんて言っていいのかわからないけど…私も入ったばかりでよくわからないことだらけだから…よかったら一緒に頑張ろう?」
眷属になったばかりのフェイトもそう言っていた。
「…………」
唯一、吹雪だけは仏頂面のままだった。
「み、皆さん…」
顔を上げて智鶴達を見回す。
「1人で抱え込むことはないんだ。誰かに助けを求めたってそれは間違ったことじゃない。だから、俺達と共に歩こう」
そう言う忍だが…
「とか言う割には1人で何とかしようとする奴がいるけどな」
「うっ…」
クリスに皮肉を言われてしまい、言葉が続かなかった。
その光景に数人は笑っていた。
「……………」
萌莉の答えは…
スッ…
「こ、こんな…わ、私で…良ければ…な、仲間に、して…くださ、ぃ…」
騎士の駒を取り、そう答えていた。
「よろしくな、萌莉」
「は、はぃ…!」
トクンッ…
こうして萌莉も騎士として忍の眷属になったのだが…
「……………」
スッと吹雪が忍に向かって手を差し出していた。
「吹雪?」
「この中でたった1人、眷属でないのも面白くないのよ。だからあたしにも駒を寄越しなさいよ」
プイッと顔を背けながら吹雪はそう言う。
「いいのか?」
一応、そう尋ねる忍だが…
「はっ、何を今更…ここで生活してからアンタは信用できるって判断に落ち着いただけよ。それに人を守るばかりでアンタ自身を守る奴が少ないじゃない。だから、あたしがそれになってやろうっての。ありがたく思いなさいよね」
吹雪はそう言い返していた。
「………わかった。でも、あまり無理はさせないからな?」
少し考えてから忍は兵士の駒を吹雪へと渡しながらそう言っていた。
「平気よ。これでも雪女の里を守ってきたんだから…それに比べたらアンタを守ることなんて楽勝よ」
トクンッ…
そう言うと同時に兵士の駒が吹雪の中へと溶け込んでいた。
こうして、新たに僧侶、騎士、兵士が増えた紅神眷属。
着々と力を増していく忍だが、邪狼に届くのだろうか?
そして、残りの駒はどうなるのだろうか?
ちなみに…
「しぃ君は私が守るの!」
「はぁ!? 何言ってんだよ!?」
吹雪の発言に智鶴が反発してしばしの言い争いが続いたのだとか…。
大丈夫なのかな…?