魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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第三十話『それぞれの想いのために』

リアスとディオドラの対戦まで残り三日という時に事態は動いた。

 

『海鳴スカイタワー』

2、3年前に完成した巨大な電波塔であり、海鳴市の新たな名所となっている。

タワーの地上フロアには水族館やレストランなどの施設があり、上部には3階構造になっている第一展望台、最上部に第二展望台があるという構造をしている。

また、その裏では特異災害対策機動部二課が活動時に使用している映像や交信といった電波情報を統括制御する役割を持っている。

ルナアタック時にはカ・ディンギルの有力候補ではあったものの、それは二課本部の地下エレベーターシャフトであったから今でも機能している。

 

そこに響は親友の未来と共に出掛けていた。

戦いを続けることが死に繋がるという事実を、少しでもガングニールの侵食を抑制するために未来との穏やかな時間を過ごしていた。

 

同時刻、第一展望台の1階フロアにてマリアとナスターシャ教授が冥極政府のエージェントと極秘裏の会談を設けたものの、米国政府は最初から話し合うつもりなどなく、異端技術のデータを回収した後はマリアとナスターシャ教授を亡き者にしようとした。

だが、これはウェル博士の操るノイズによって阻止。

しかし、ノイズは止まらず、スカイタワーにいた人物を襲い始める。

 

第二展望台へと移動していた響は戦おうとするも、未来に止められてガングニール無しで出来る範囲での人助けをするのだった。

だが、そんな時…第二展望台の一部が崩れ落ち、響も崩れた場所から落ちそうになった。

それを未来が手を伸ばして助けようとしたが、重さに耐えられずにいた。

そして、響が自ら未来の手を放すと、落下しながらガングニールを身に纏い、地上へと着地して未来を助けようと第二展望台を見上げた瞬間…。

爆発が起きて未来の安否は不明となってしまった。

そこへノイズ出現の報を聞いた翼とクリスが駆けつけ、事態の収拾に当たった。

 

その一方で、マリアはナスターシャ教授を連れながら米国兵士と交戦していた。

逃げる民間人まで撃つ米国兵士の行いに憤りを感じたマリアはその手を血で汚してしまう。

逃げる途中、マリアは第二展望台に残っていた未来を助け、その身柄をフィーネで拘束していた。

 

………

……

 

リアスとディオドラのゲーム前日のこと。

海鳴スカイタワーでの一件から一日経った頃、未来に渡された通信機が発見されて未来の生存が確認された。

それを知った響は必ず未来を助けると意気込み、体を動かすことになったのだった。

 

「で、なんで俺まで?」

 

「たまにはいいじゃねぇかよ」

 

その翌日の早朝から海沿いの道路を走る横一列に並んだ6人の人影があった。

 

向かって海側からコーチ役の弦十郎、響、クリス、翼…ゲーム前日ということで最終調整にやってきていたイッセーと、何故かクリスに無理やり引っ張られてきた忍であった。

 

「ていうか、クリス…」

 

「な、なんだよ…?」

 

「君、戦闘能力は高いはずなのに、運動神経は悪いの?」

 

グサッと刺さるようなことを忍は平然と言う。

 

「う、うるせぇよ! 戦いとこんな運動は全然別物だし!」

 

「いやいやいやいや…動く点では一緒なんだから…」

 

そんな反論も忍は軽く言い返す。

 

「お前ら人外と一緒にすんな!」

 

人外…忍は狼と雪女のハーフ(シャドウに変な血を混入された)、イッセーは転生悪魔で赤龍帝、弦十郎は人間だけど規格外の身体能力の持ち主、響は聖遺物との融合体、翼は…………防人…?

 

「私も立花も司令もれっきとした人間だぞ。雪音の鍛え方が足りないんだ」

 

「そうだよ! これからはクリスちゃんも一緒に鍛えようよ!」

 

「お断りだ!」

 

翼と響の申し出に断固と拒否しつつもしっかりと走ってる辺り義理堅いというか真面目というか…。

 

「なんだかな…」

 

走りながらそんなことを呟く忍。

 

「(それにしても結構な揺れだよな…特にクリスちゃんなんて…)」

 

その隣でイッセーはまた密かに視線を女性陣の胸へと向けていた。

 

バコッ!

 

「あだっ!? なにすんだ!?」

 

そこへ忍がファルゼンの峰打ちでイッセーの頭部を殴っていた。

 

「いや、なんかふしだらなこと考えてそうな顔だったからさ…つい」

 

「つい、じゃねぇだろ!? しかも危ねぇし!!?」

 

イッセーの言い分ももっともである。

 

「大丈夫、峰打ちだし。第一、平然と走ってるでしょ?」

 

しかし、忍も誰かに感化されてきたのか、そんなことを言う。

 

「この野郎!」

 

「この間の続きでもする気?」

 

バチバチと火花を散らす忍とイッセーを見て…

 

「若いってのは良いもんだ。特に切磋琢磨できる友人がいるってのはな!」

 

弦十郎がそう言っていた。

 

 

 

そこからアクション映画でよくある鍛え方から普通のトレーニングを交えつつさらに走り込みを行う。

 

具体的な例としては以下の通りである。

 

 

その1、縄跳び。

 

「一誠さん、しばらく見ないうちに鍛えてました?」

 

「まぁ…夏休みの大半を山でドラゴンに追い回されたからね…」

 

遠い眼をしながら縄跳びをするイッセーに…

 

「ドラゴン! それって本物だったんですか!?」

 

興味津々な様子の響だった。

 

「アレは普通に死ねるって…」

 

「カッコよかったですか!?」

 

「そうだな。あの雄大な姿は感動を覚えたよ……死にそうになったけど…」

 

イッセーはタンニーンとの修行を思い出しながら響に話すイッセーだった。

 

「響くんも一誠くんもまだ余裕がありそうだな」

 

「それに比べて…」

 

弦十郎の言葉に翼はクリスと忍の方を見る。

 

「クリス。せめてテンポ良く跳ばないと足が引っ掛かるよ?」

 

「う、るせぇな! こっちはこれでも必死なんだよ!」

 

縄跳びしながら忍はクリスが転ばないように注意を払っていた。

 

 

その2、体勢維持。

 

「これは…結構キツイな」

 

全員、空気椅子をした状態をキープしつつ両腕を前に向かって思いっきり突き出し、人差し指を立てた姿勢を保っていた。

しかも頭、両腕、両太ももには水の入ったお猪口(ちょこ)を置いている。

 

「うぉぉぉ…動かない分、筋肉に来る…!!」

 

プルプルと体が震えている忍、イッセー、響でああったが、なんとか姿勢を保っていた。

 

「…………」

 

ただ、翼に関しては微動だにしなかった。

 

「スゲェ…微動だにしてねぇ…!?」

 

「彼女、歌手だよね?」

 

「その前に防人です」

 

忍とイッセーの言葉に翼はそう答えた。

てか、それが答えでいいのか?

 

「もっと腰に力を入れんか!」

 

竹刀片手に弦十郎は姿勢を保つのも厳しいクリスの指導をしていた。

 

「む、無理…こんなの出来るとか…マジ、あり得ねぇから!」

 

クリスの弱音に…

 

「じゃあ、俺らは何なのさ?」

 

忍はそんなツッコミを入れていた。

 

 

その3、腹筋(?)と、剣戟。

 

「いつの時代の腹筋だよ…?」

 

そうぼやくのは1人見学していたクリスだった。

 

鉄棒に足の甲を付けた状態でぶら下がり、下に置かれた水の入った桶からお猪口で水を汲み、背中側に設置された桶へと腹筋を使って入れるという一連の動作を行う。

これを行ったのは響とイッセーだった。

 

「しかも柔軟性も必要だから男には結構辛い…!!」

 

そう言いながらもイッセーは頑張って腹筋を行っていた。

 

その傍らで忍は翼と木刀で剣戟を打ち合っていた。

 

「「はぁ!!」」

 

カッ!カッ!ダンッ!

 

「なかなかの太刀筋だな、紅神」

 

「それはどうも」

 

「それでもまだ雑な部分がある。これから修正するべきだ」

 

「はい。気をつけます」

 

互いに刀を使う者同士、良い稽古相手になっているようだ。

 

 

その4、パンチング。

 

一体どこの精肉店の冷凍庫を借りたのか、まだ精肉前というか、解体前の吊るされた肉塊を殴っていた。

手を痛めないように手を包帯でグルグル巻きにしてだけど…。

 

「シュッ、シュシュッ!」

 

冷気に強い忍は難なくこれを熟していた。

 

「はっ!」

 

「ふっ…!」

 

「とりゃ!」

 

響、翼、イッセーも問題なく肉塊を殴っていたのだが…

 

「ぜぇ…ぜぇ…」

 

何ともへっぴり腰な拳を肉塊に叩き付けるのが約一名いた。

 

「ほら、クリス。もっと脇を締めて…拳を叩き付けるんじゃなくて、腰で打つように…」

 

見兼ねた忍がクリスの後ろで軽く指導を行うが…

 

「あたしは遠距離専門なんだよ!」

 

「だが、懐に潜られたらどうするつもりだ? そういうのも想定しないとダメだぞ、クリスくん!」

 

クリスの文句に弦十郎がそう言う。

 

「この脳筋共がぁぁぁ~~~!!」

 

冷凍庫内だから良く響くことこの上なかった。

 

 

その5、生卵一気飲み(これ、修行か?)

 

ビールジョッキに生卵数個を割って入れて全員で飲むこととなった。

 

「うっ…」

 

口を付けた段階でもう吐きそうになり、ジョッキを落とすクリス。

 

「よっと」

 

それを素早い動きで回収する忍だった。

 

「生卵の一気飲みなんて初めてです」

 

そう言いつつも回収したジョッキをクリスに手渡す。

 

「タンパク質の補給っと…」

 

「ファイト、一発!」

 

「…ゴクッ」

 

そう言ったり無言だったりでイッセー、響、翼は飲み干していた。

 

「ほら、クリスも頑張って……最悪、無理にでも飲ませてやるから」

 

「だったら普通に飲んだ方がマシだ!」

 

忍の言葉にクリスも一気に飲み干す、が…

 

「~~~っ!!?」

 

顔を青くしていた。

 

 

まぁ、こんなことがありつつ全員がゴールの神社へと到着していた。

 

「ぜぇ…はぁ…ぜぇ…はぁ…」

 

到着後、クリスはもうヘトヘトになっていた。

 

「うむ、良い汗を掻いた」

 

翼は達成感のある言葉を呟いているが…全然汗を掻いた様子がない。

 

「明日のゲームは絶対に勝つ! ディオドラの野郎をブッ飛ばして二度とアーシアに近寄らせるもんか!!」

 

「私は未来を助け出すぞぉぉ!!」

 

イッセーと響はそれぞれ胸の内を夕陽に向かって叫んでいた。

 

「忍くんは格闘技はやらないのか?」

 

一方で弦十郎は忍と話していた。

 

「格闘技、ですか?」

 

「あぁ。君は筋が良いし、何より飲み込みも早い。響くんや一誠くんとはまた違った良さを感じる。実にもったいないと思ってな」

 

そう言われて忍は少し考え込む。

 

「難しく考える必要はない。若いうちから様々なことを経験するのも一つの方法だ。それがいつか必ず君の糧となり、助けになるだろうしな」

 

「わかりました。考えておきます…」

 

「いつでも来て構わん。響くんや一誠くんと共にみっちりとしごいてやるからな」

 

「(格闘技…まぁ、手札が増えることは嬉しいが、果たして間に合うのか…?)」

 

忍は薄々と邪狼との再戦の日が近いことを予感していた。

 

そして、ディオドラとのゲームの日…更なる混沌が起きることとなる…。

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