魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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第三十二話『神殿と箱舟の決戦』

地球と冥界で起きた二つの事件。

 

冥界側では禍の団・旧魔王派と冥王派を相手にグレモリー眷属、アザゼルやサーゼクスなどの各勢力のトップ陣、それに加えてグレモリー眷属と合流しようと動いている紅神眷属の智鶴、カーネリア、暗七、シア、吹雪が戦っていた。

 

地球側では同じく禍の団・冥王派とF.I.S.によって『フロンティア』と呼ばれる箱舟が日本近海の海底から浮上し、それに対処するべく特異災害対策機動部二課が対処していた。

そこには合流した忍、フェイト、朝陽の姿もあり、こちらはどちらかと言えば、フロンティアに潜伏している邪狼を追うつもりである。

 

それぞれに課せられた決戦の幕が開かれる。

 

………

……

 

~地球・フロンティアの陸上~

 

「正に箱舟か」

 

フロンティア浮上に伴い、仮設本部も巻き込まれてフロンティアの一部と浮上してしまい、共に空へと上昇していた。

そんな中、翼が単身で出撃することとなり、ハッチからバイクで発進するところであった。

 

「では、先に行くぞ」

 

「はい。クリスのことは頼みます」

 

「あぁ、任されよう」

 

そう言って翼がバイクで出撃するのを見送った後…

 

「俺もバイクの免許でも取得しようかな」

 

忍は独り言を呟くようにそう漏らしていた。

 

「忍君がバイクか…」

 

フェイトは忍が跨るバイクの後ろに自分が座るのを想像する。

 

「ほぇ~…」

 

「なに考えたんだか…」

 

朝陽がドンとフェイトに肩をぶつけて意識を現実に戻す。

 

「しっかし、シンフォギアってのが少ないのがネックね。これじゃあ、ノイズと接触しても倒せないじゃない」

 

トントンとセイバーの峰の部分で自分の肩を叩きながら朝陽が愚痴を零す。

 

『その心配なら無用だ』

 

近くの端末に弦十郎からの通信が来る。

 

「どういうことです?」

 

『捕虜だったシンフォギア装者を一名、響くんの提案で出撃することになった。今、響くんが案内している』

 

そんな通信を聞いていると…

 

ブゥンッ!

 

忍達を横切るようにしてシュルシャガナを纏った調と、その背に"便乗して乗っている響"が駆けていき、ハッチから出撃してしまった。

 

「「「……………」」」

 

それを見送るようにして置いてけぼりにされた忍達は呆然としていた。

 

『? どうした?』

 

「確か…響ちゃんって、胸のガングニールが取り除かれてましたよね?」

 

出撃前に聞いたことを弦十郎に確認する。

 

『あぁ。だからそっちに着いたらさっさと戻るよう言って………はぁ!?』

 

すると、状況がブリッジ側でもわかったのか、弦十郎が驚きの声を上げていた。

 

「響ちゃん、あの子と一緒に行っちゃいましたよ?」

 

事実を再確認させるように忍は事後報告を行っていた。

 

『なんで止めなかった!?』

 

「いや、止める暇もなかったもんで…」

 

一応の言い訳を言った後…

 

『くっそ、子供ばかりに良い格好させるか! 俺と緒川もすぐに出る!』

 

弦十郎も出撃するらしい。

 

「じゃあ、俺達は俺達の戦いに行きますんで…ご武運を」

 

『そっちもな。あと、この件には君達も少なからず巻き込まれたんだ。こっちで手配できるようなものは手配してやる』

 

それを聞いた忍は…

 

「あ、じゃあ、この件が片付いたら普通自動二輪免許の取得を手伝ってくれます?」

 

ここぞとばかりに要求を口にした。

 

『無事に帰ったらな!』

 

それを最後に通信は途切れた。

 

「言ってみるもんだな…」

 

「え、アンタ、本気だったの?」

 

忍の要求に朝陽が目を丸くしていた。

 

「あぁ、わりと本気だぞ?」

 

「なんで疑問形なのよ!」

 

「ま、まぁまぁ…とにかく私達も行きましょう」

 

「だな」

 

邪狼との決着を着けるため、忍達もハッチから飛び出した。

 

………

……

 

~冥界・バトルフィールド内の神殿~

 

一方、冥界側ではイッセー達はディオドラの余興と称するゲームを進めていた。

ディオドラの眷属が門番的な役割を果たし、それをリアス達は手持ちの眷属だけで倒していくというシンプル且つ時間稼ぎの意味合いが強い内容であった。

 

先鋒は相手が戦車2と兵士8に対してグレモリー眷属はイッセー、ゼノヴィア、小猫、ギャスパー。

戦車2名はゼノヴィアの正拳コンビネーションによる一撃必殺で撃破。

兵士8名は全員が女王に昇格していたが、イッセーとギャスパーの連携によって動きを封じた後、小猫が確実に仕留めていた。

 

次鋒は相手が僧侶2と女王に対してグレモリー眷属はリアスと朱乃のみ。

この対戦の際、小猫の助言にてイッセーが朱乃にデートをすると約束し、それによって力が跳ね上がった朱乃とイッセーに焼きもちを妬いたリアスの口喧嘩に発展。

相手の女王が口を挟むと同時に瞬殺してしまった。

女ってのは怖い生き物だ…。

 

中堅は相手が騎士2…のはずだったが、しぶとく生き残っていたフリードが禍の団の人体実験の被験体となっており、人間を止めていたことが判明。

先にいたであろう騎士2名を捕食しており、ディオドラの趣味と本性を狂ったように笑いながら語った。

そんなフリードと相対したのは木場。

結果は木場の圧勝。

 

そして…残ったディオドラと、囚われたアーシアを神殿の最深部にて発見した。

アーシアの目元は赤く腫れていて、ディオドラから事の顛末を聞いたから泣いていたのだろうと察した。

その後も、ディオドラの鬼畜同然の言動に…

 

「ディオドラぁぁぁぁ!!!!」

 

イッセーの怒りも頂点に達していた。

 

『Welsh Dragon Balance Breaker!!』

 

怒りに燃えるイッセーは禁手状態となってディオドラと一対一の勝負を仕掛けていた。

結論から言えば、赤龍帝の鎧を着たイッセーが無限の龍神『オーフィス』から与えられた『蛇』によって強化されたディオドラを圧倒していた。

 

ソーナ会長とのゲームでは特殊なルールと制限が設けられていたから力を引き出せないでいたが、今は違う。

実戦であり、イッセーを縛るモノは何もないのだから…その力を惜しみなく発揮出来る。

そこに弦十郎から学んだ中国拳法も加味すると、凄まじい攻撃力をディオドラへと叩きつけていた。

 

ディオドラの張る魔力障壁を易々と砕き、パワー全開とばかりに鉄拳を打ち付ける。

その結果、ディオドラの心は…龍、ドラゴンに恐怖を刻まれてしまった者の末路を辿り、戦意を完全に喪失させていた。

 

その後、アーシアを何とか助け出したイッセー達だったが、そこへ今回の首謀者の1人…旧ベルゼブブの血を引く悪魔『シャルバ・ベルゼブブ』が現れ、アーシアを光の柱の中へと消し去ってしまった。

シャルバはアーシアに続き、ディオドラも亡き者としてからリアスへとその標的を移していた。

だが、イッセーは未だアーシアの死を受け入れられず、現実逃避をしていた。

そこへ無慈悲な言葉を投げつけるシャルバ…。

 

そして、それら一連の出来事がトリガーとなり…

 

『我、目覚めるは…』

 

『覇の理を神より奪いし二天龍なり…』

 

『無限を嗤い、夢幻を憂う…』

 

『我、赤き龍の覇王と成りて…』

 

『汝を紅蓮の煉獄に沈めよう……』

 

イッセーの他にも赤龍帝の鎧に備わった宝玉から様々な声が発せられ、そのような呪文を詠唱し始めていた。

 

『Juggernaut Drive!!!!』

 

そして、禁手とは異なる音声を響かせ、血のように真っ赤に染まったオーラを全身から迸らせていた。

赤龍帝の鎧は鋭利で生物的なフォルムと化し、小型ドラゴンのような姿となってシャルバを圧倒していた。

 

そのあまりにも凄まじい破壊力にリアス達は退避を余儀なくされていた。

 

「うおおぉぉぉぉぉん…」

 

戦闘が終了してもイッセーは『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』から解除されず、悲しみに満ちた雄叫びを上げながらも刻一刻と命を削っていた。

その頃になって智鶴達も合流したのだが…

 

「なによ、あれ!?」

 

「暴走?」

 

吹雪と暗七が最初に口を開いてイッセーの姿に驚く。

 

「これが…覇龍」

 

自分の体を抱き寄せるようにして身震いしたカーネリアは何故か恍惚とした表情を見せていた。

 

「あなた、どういう神経をしてるのかしら?」

 

それを見ていたリアスがカーネリアに食って掛かる。

 

「ふふっ、私…ああいう破壊衝動の塊がたまらなく好きなのよ…」

 

「はぁ?!」

 

思わぬ解答に聞いた本人も驚く。

 

「でも…アレはわりと好きな破壊衝動になるんだけど…どうにも雑念が多くてそこまで好きにはなれないわ。やっぱり、破壊衝動は純粋なものでないと、ねぇ?」

 

誰に言うでもなくカーネリアは独り言のように呟くが、その視線は智鶴へと投げつけられていた。

 

「……どういう意味ですか?」

 

「ふふっ、わかってるくせに…」

 

「っ!」

 

智鶴はすぐに忍の事だと思い至り、カーネリアに向けて殺気を飛ばす。

 

「あらあら…怖い怖い…」

 

そんな殺気などどこ吹く風のようにサラッと受け流す。

 

「そ、それよりも…一体何が起きたんですか?」

 

シアが状況を把握しようとリアスに声を掛けると…

 

「それは…」

 

何とも悲しそうな、それでいて悔しそうな表情を浮かべていた。

 

すると、そこへ何の因果かヴァーリが現れ、次元の狭間の調査をしている時にアーシアを拾っていた。

奇跡的に助かったアーシアだが、それをイッセーに伝える術がない。

そこへさらにイリナがやってきて、とある映像と歌を携えてきた。

内容に関しては割愛するが、なかなかに酷かったと言っておこう。

ただ、作詞(アザゼル)、作曲(サーゼクス)、振り付け(セラフォルー)は冥界の重鎮であることは言っておく。

しかし、それが結果的にイッセーの意識を取り戻す切っ掛けとなり、ヴァーリが力を半減させたところで、リアスの乳首を押させることで覇龍を解除させることに成功したのだった…。

 

流石は乳龍帝、おっぱいドラゴンと称されたイッセーである、と言っておくべきだろうか?

 

そこで彼らは物凄い存在と遭遇した。

幼女の姿をした『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』、オーフィス。

さらに『D×D(ドラゴン・オブ・ドラゴン)』と呼ばれし『真なる赤龍神帝(アポカリプス・ドラゴン)』、グレートレッドが姿を現し、バトルフィールド内を横断していた。

そこでヴァーリは自らの夢、グレートレッドと戦い、自らが『真なる白龍神皇』となることをイッセーに語っていた。

 

だが、不思議なことに冥王派の動向は不明となっていた。

確かに紅牙の姿を智鶴達は見ており、冥王派もまた動いていたはずなのだが…ヴァーリやオーフィスが消えるのと同時に撤退したと考えられている。

 

一体彼らは何のためにバトルフィールドにいたのか…?

 

………

……

 

~地球・フロンティア~

 

冥界での事件が終わりを迎えていた頃。

フロンティアでも事態は大きく動いていた。

 

翼はクリスと衝突していたが、その真意を察した翼との連携によってウェル博士の隙を突き、ソロモンの杖の奪還に成功していた。

 

ウェル博士のやり方を否定する調と自分のいた証を残したいという切歌の戦いは、切歌が自分が次のフィーネの器だと思っていたことから擦れ違っていたのだが、それは勘違いで本当は調が次の器だったということが発覚し、自分に嫌気の差した切歌が自滅しようとしたところ、調がそれを助ける形で深手を負ってしまった。

しかし、フィーネの魂がイガリマの攻撃を一手に引き受けてくれたことから助かっていた。

 

そして、地球全土に向けての放送でマリアは自らガングニールを纏って歌を歌い、月で機能停止しているバラルの呪詛を再起動しようと試みるが、ウェル博士の邪魔でナスターシャ教授を遺跡の一角もろとも宇宙空間へと打ち上げられてしまった。

それに逆上したマリアがウェル博士を殺そうとしたが、調と共に出撃していた響によって阻止。

過去、奏にも言われた『生きることを諦めない』という言葉をマリアにも伝え、聖詠によってマリアのガングニールのコントロールを掌握して自らのギアとすること再び響は戦う力を手にした。

 

フロンティアと同化したネフィリムの心臓を止めるべく、響は翼とクリスと合流を果たす。

その一方で…

 

「僕は…僕は英雄になるんだ!」

 

フロンティアの動力部へと辿り着いたウェル博士は異形の腕となっている左腕でフロンティアを操作し、響達の前へフロンティアの一部をネフィリムと化して立ち塞がらせていた。

 

「英雄、ねぇ…そんなになりてぇもんかね?」

 

心臓部の警護を仰せつかっていた邪狼がクリスタルの上で寝転がりながらそんなことをウェル博士に聞く。

 

「当たり前じゃないですか! 人類を導く英雄に僕はなりたいんですよ!!」

 

そう強く言うウェル博士は邪狼とは別の意味で破綻しているのだろう。

 

「あっそ。俺には興味のねぇ話だが…いいのかい? なんかえらいことになってんぞ?」

 

そう言って響達の映る映像を指差していた。

 

「はぁ!?」

 

そこにはエクスドライブ状態となり、ネフィリムを打ち倒す響達の姿があった。

 

「そ、そんなバカな?!」

 

ウェル博士が膝から崩れ落ちるのを見届けると…

 

「(さてと…そろそろ仕事かね?)」

 

邪狼は起き上がって近づいてくる二つの気配に気づく。

 

「ウェル博士!」

 

そこへ弦十郎と緒川がやって来た。

 

「くっ…!!」

 

それを見て左腕を石で出来たコンソールに触れようとしたが…

 

バキュンッ!!

 

≪影縫い≫

 

緒川が拳銃の弾丸でウェル博士の影を撃ち抜き、その動きを止めた。

 

「なっ!?」

 

何とか動かそうとするもビクともしなかった。

 

「あなたの好きにはさせません!」

 

ウェル博士の動きが止まった瞬間…

 

「ありがとよ!!」

 

そう言って邪狼がネフィリムの心臓を動力炉から引き剥がし、頭上へと掲げる。

 

「「っ!?」」

 

「邪狼、なにをしてるんだ!!?」

 

邪狼の思わぬ行動に弦十郎と緒川は当然の事、ウェル博士も驚いていた。

 

「なぁに、テメェとは別口のクライアント様からこのフロンティアを奪い去ってほしいって頼まれててなぁ。邪魔だからこの心臓ってのはこうしてやんよ!!」

 

何処から取り出したのか、大量のビー玉状の結晶をネフィリムの心臓へと与えた後…

 

「そら! お嬢ちゃん達はこいつと遊んでな!!!」

 

転移魔法によって心臓を響達よりもさらに上、成層圏近くへと転移させていた。

転移されたネフィリムの心臓は真っ赤に輝くエネルギー体へと変質していった。

 

「そこの英雄(笑)さんは煮るなり焼くなり好きにしな!! ハッハッハッハッハッ!!!」

 

高らかに笑う邪狼を尻目にフロンティアはエネルギーの核を失ったことで徐々にだが重力によって落下し始めていた。

 

「くっ…なんてことを!」

 

「このままフロンティアが落下したら…」

 

「月の落下よりは多少マシだが…天災レベルの被害が出るぞ!」

 

そう言って弦十郎が邪狼へと突貫しようと足に力を込める。

 

「それがどうした? 殺戮パーティーとしゃれ込もうや!!!」

 

狂気と殺意に満ちた目を向けて迎え撃とうとした時…

 

「邪狼!!」

 

迷路みたいな遺跡の中をやっとのことで抜け出した忍達が動力炉へ到着した。

 

「遅かったじゃねぇか! 狼牙の倅!!」

 

それを見て邪狼は標的を瞬時に忍へと変えた。

 

「やっと着いたと思ったら、一体どうなってんのよ!」

 

「何故、司令さん達の方が早く?」

 

邪狼の視線が忍へと向いたところでフェイトと朝陽がウェル博士を拘束している緒川の元へ行く。

 

「僕達はウェル博士を追ってここまで来ましたから…それよりもそっちは…」

 

「迷路のように入り組んでて到着が遅れました。すみません…」

 

「(なんだか、翼さんと話してる気分ですね…)」

 

そんな思いに駆られていると…

 

「ともかく、あいつは俺達が! 風鳴さん達は脱出を!」

 

「だが、フロンティアは落下中。響くん達もネフィリムとやらと戦っている。気をつけろよ」

 

「わかってます。だから早く…!」

 

そう言って忍は邪狼へと仕掛けようと飛び出す。

 

「イーグル、タイガー、ドラゴン!!」

 

それを見た瞬間、起動形態のまま待機させていた三機のデバイスで忍を不意打ちする。

 

「くっ…!!?」

 

それを銀狼のスピードで何とか回避すると…

 

「これがここでの最終局面だ! だから、見せてやるよ! 俺の、いや、こいつらのとっておきをよ!!」

 

そう叫んだ後…

 

「コード! 『三獣合体』!!」

 

キーワードを口にすると…

 

『コード認証』

 

『これよりドライバー形態よりアーマー形態へと移行する』

 

『合体シークエンス、開始』

 

イーグル、タイガー、ドラゴンの三機がバラバラに分解すると、それぞれの胴体部がイーグルは胸部と背部、タイガーは右半身、ドラゴンは左半身といった具合に邪狼の全身へと鎧状になって装着されていき、その鎧の上に多数の装備や武装を備えた存在となる。

 

「『トリニティ・ブラッド』ッ!!」

 

背中の機械翼を広げながら高らかに宣言する。

 

「なっ!?」

 

『あれは…まるで我が同胞達が持つチェンジングドライバーシステムじゃないですか!』

 

その光景に忍とアクエリアスが驚いていた。

 

「だからなんだってのよ!」

 

「邪狼。数々の次元犯罪への関与や裏で無用な戦争継続をしてきた容疑であなたを拘束します!」

 

そう言って朝陽とフェイトが各々デバイスを構えて邪狼へと肉薄する。

 

「待て、2人共! まだ、あのデバイスについての情報が少な過ぎ…」

 

そんな2人を追うようにして止めようとするが、数秒遅かった。

 

ジャキンッ!

 

そのたった数秒で、邪狼は左腕のシールド装備『ブラッドシールド』から二又の刀身が特徴的な剣『ブラッドブレード』を引き抜くと、それを即座に左手に持ち替えてから右腕に装着されて鉤爪状の装備『サーベルバグナウ』を展開していた。

 

「ハッ! 遅いんだよ!!」

 

そして、その僅かな時間で左手に持つブラッドブレードで朝陽のセイバー、右腕のサーベルバグナウでフェイトのハーケンフォームとなっているバルディッシュを簡単に受け止めていた。

 

「まず二匹!」

 

そう言って邪狼が次の動きをしようとした時…

 

「させるかぁ!!」

 

忍が邪狼へと突撃しながら…

 

ドガンッ!!

 

邪狼を盾代わりにしてフロンティアの岩盤をぶち抜いてゆく。

 

「忍君!?」

 

「待ちなさいよ!!」

 

その後を追うようにしてフェイトと朝陽も忍が開けた穴から外へと出る。

 

「こっちも引き上げだ!」

 

「はい!」

 

弦十郎と緒川もウェル博士を連れてその場から退避していた。

 

 

 

 

誰もいなくなった動力炉に黒と蒼の混ざった様な転移陣が展開され…

 

「ふふふ…」

 

その中から1人の黒いローブで全身を隠すように纏った人物が不敵な笑い方をしながら現れる。

 

「ご苦労様です。邪狼さん」

 

そう言ってローブの袖部分から黒い焔を内包したソフトボール大くらいの蒼い宝玉を取り出す。

 

「さぁ、我が手中に入りなさい。フロンティア」

 

ネフィリムの心臓があった個所に蒼い宝玉を押し込むようにして嵌め込む。

 

「侵食しなさい」

 

その言葉をトリガーにして黒い焔が動力炉へと流れ込み、動力炉に蒼と黒の光が満ちていく。

 

「ふふふ…まずは第一段階成功。次は…」

 

黒ローブは動力炉が正常に稼働するのを確認した後、ブリッジへと向かっていた。

 

果たして、この人物の目的とは…?

 

………

……

 

~地球・高高度上空~

 

ドガンッ!!

 

フロンティアの岩盤を抜けたところで…

 

「いい気になるなよ、小僧!!」

 

ドガッ!!

 

邪狼は体当たりする忍の体を蹴り上げる。

その際、膝から足首にある刃状の装備『ブラッドキックブレイド』が魔力を帯びており、その攻撃力を増していた。

 

「ぐっ?!」

 

蹴り上げられた忍はすぐさま体勢を立て直すと、邪狼と対峙する。

 

「忍君……!?」

 

「っ!? なによ、この異様な魔力反応は!?」

 

忍を追って出てきたフェイトと朝陽は上から感じる異様な魔力を察知していた。

 

『ギュオオオオオオオッ!!』

 

上空を見れば、赤いエネルギー体と化したネフィリムが吠えていた。

 

「アレが…ネフィリム!?」

 

「あんなの、どう対処すんのよ!?」

 

2人の当然の反応の中…

 

「バビロニア! フルオープンだ!!」

 

膨大な魔力の塊と化したネフィリムと対峙していた装者達の1人、クリスがソロモンの杖をエクスドライブの出力で機能拡張してノイズ達が存在する異次元空間『バビロニアの宝物庫』への扉を開いていた。

 

「おいおい、せっかくの花火をそんなとこにしまう気か? んな退屈なことさせっかよ!」

 

『ブラッド・ハウリング』

 

それを瞬時に理解した邪狼がクリスに向けて胸の鷲『イーグルデバスター』から砲撃を放っていた。

 

ギィィィンッ!!

 

「お前の相手は俺達だ!!」

 

クリスを守るべく魔力シールドを展開して邪狼の砲撃を防ぐ忍。

 

「邪魔すんなや!!」

 

すると今度は両肩に装備していたサーベルタイガーとドラゴンの頭部『タイガーヘッダー』と『ドラゴンヘッダー』が分離してそれぞれ邪魔をしようと動き出す。

 

「なんでもありか!?」

 

忍が砲撃の防御に専念していると…

 

「させません!」

 

「邪魔すんな!」

 

フェイトがドラゴンヘッダー、朝陽がタイガーヘッダーの頭部をそれぞれのデバイスで受け止めていた。

 

そうこうしてる間に響達はネフィリムと共にバビロニアの宝物庫へと消えてしまっていた。

また、宇宙空間に施設の一角ごと打ち上げられたナスターシャ教授の行動により、月の遺跡とバラルの呪詛は再起動。

月は公転軌道へと戻り、落下は回避されたのだった。

 

それと時を同じくして残ったフロンティアでも異変が起きていた。

フロンティアの大地は黒く染まり、不自然なほど蒼く染まった草木が生えていき、遺跡の各所には黒き焔が灯っている。

そんな異常な事態であった。

 

異変に際して二課の仮設本部はミサイルを周辺の岩盤に打ち込み、崩れた個所から落下。

船体とブリッジを切り離してパラシュートでの脱出に成功していた。

 

 

 

「なんだ?! あれがフロンティアなのか!?」

 

「ハッハッハッ! どうやら俺の仕事も一段落ってとこか!」

 

「どういう意味だ!」

 

忍は砲撃の軌道を無理矢理変えると、邪狼へと向かって飛び出す。

 

「俺には冥王派以外にもクライアントがいるってことだよ!!」

 

そう言って左手に持ったブラッドブレードで忍のファルゼンと斬り結ぶ。

 

「そのクライアントってのは誰の事だ!!?」

 

「傭兵にも守秘義務があんだよ!」

 

そう叫ぶと同時にふくらはぎに装備された加速ユニット『ブラッドブースター』で加速させたブラッドキックブレイドを再び忍に見舞う。

 

「くっ!?」

 

アクエリアスの防御力があるとはいえ、ダメージは鎧越しに伝わるほどの威力を持っていた。

 

「おらおら、隙だらけだぜ!!」

 

「っ!?」

 

忍が怯んだところへすかさずサーベルバグナウによる一撃が迫っていた。

それを防ぐべく忍が魔力バリアを展開しながら後退しようとするのだが…

 

「甘ぇんだよ!!」

 

邪狼の繰り出すサーベルバグナウは忍の魔力バリアを易々と引き裂き…

 

「っ!!?」

 

それを見て顔を左へと少し移動させたが、僅かに邪狼の方が早く…

 

ズシャッ!!

 

嫌な音と共に…

 

「がああぁぁぁぁ!?!?」

 

忍の絶叫が木霊する。

 

「忍君!?」

 

「紅神!?」

 

その絶叫を聞き、フェイトと朝陽は忍の方を見る。

 

「がっ…ぐぁ…」

 

見れば、忍は左手で右目の部分を強く押さえ付けていた。

そして、その手の下からは顔を伝って大量の血が流れているのが見える。

 

「その右目、貰ったぜ?」

 

そう言うと、邪狼はサーベルバグナウに付着した忍の血を舐め取る。

 

「ペッ…やっぱ同族の血は美味いもんじゃねぇな…」

 

が、すぐさまそれを吐き出すと悪態を吐く。

 

「っ!!」

 

それを聞いたフェイトはバリアジャケットをソニックフォームへと変化させると、ドラゴンヘッダーを無視して一気に邪狼に詰め寄ると、ハーケンフォームのバルディッシュを振るう。

 

だが…

 

ガキンッ!!

 

「わかりやすいんだよ!」

 

それすらも見越したような動きで邪狼はフェイトの攻撃をブラッドブレードで防ぐ。

 

「くっ!?」

 

『ディフェンサープラス』

 

当然、攻撃が来ると思ってバルディッシュも魔力バリアを展開するが…

 

「無駄なんだよ!!」

 

ガッ!!

バリンッ!!

 

邪狼の蹴りはフェイトの防御を完全に砕きながらフェイトの脇腹を蹴り抜く。

 

「かはっ!?」

 

バリアジャケットの装甲が薄いことが災いして受けるダメージも大きくなる。

 

「テメェの肉でも食ってやるか?」

 

そう言って蹴り飛ばしたフェイトを見ながら邪狼の瞳孔が縦となって鋭くなる。

 

「執務官! どいつもこいつも…!!」

 

タイガーヘッダーを足場に利用して朝陽も邪狼へ向かって飛び出す。

 

「今度はテメェの番だ!」

 

ブラッドブレードをブラッドシールドへと収納すると、両肩上部の砲台『デュアルバスター』から魔力弾を連射して朝陽を牽制する。

 

「このくらいでぇ!!」

 

カシュッ!

 

『バイパーフォーム』

 

魔力弾を連結刃で迎撃、弾きながら肉薄する。

 

「(この距離なら…あたしの方が早い!!)」

 

連結刃から再び剣へと戻すと、邪狼の首を狙う。

 

しかし…

 

ガギンッ!

 

朝陽の剣は右腕のサーベルバグナウによって防がれており…

 

「ちょいさぁ!!」

 

「っ!!」

 

ズサァ!!

 

左手を覆うように装備された武装『ブラッドクロー』から魔力爪が形成されると、朝陽のバリアジャケットを引き裂く。

しかし、天性の勘からすぐさま飛び退いたため、大事には至らなかったものの…バリアジャケットの前の部分(特に胸からへその辺りまで)を引き裂かれてしまい、左腕で胸を隠すような態勢になってしまった。

 

「結構良いもん持ってんじゃねぇか」

 

「ふざけんな!」

 

邪狼の言葉に激怒した朝陽がセイバーをバイパーフォームにして邪狼に攻撃を仕掛ける。

 

「はっ! そんな腑抜けた攻撃、当たるかよ!!」

 

しかし、邪狼はそれを簡単に回避していた。

 

「女子供の肉は柔らかくて美味いんだよな」

 

そう言う邪狼の眼は完全に血に飢えた野獣のそれであった。

 

「っ!?」

 

朝陽は薄ら寒いモノを感じてしまい、後退(あとずさ)ってしまう。

 

「逃げるなら逃げな。狼は獲物を追い詰めるのが大好きだからな!!」

 

そんなことを言って嘲笑する邪狼。

 

「騎士が…」

 

それを聞いて…

 

「騎士が逃げるわけないでしょ!!」

 

朝陽の中の騎士としてのプライドが後退るのを止める。

 

「気の強い女は嫌いじゃないぜ? だが、それも俺の前じゃ意味ねぇけどなッ!!!」

 

そう言うと朝陽の命を奪うべく、邪狼がブラッドブレードを引き抜きながら加速する。

 

『朝陽ちゃん!?』

 

「くっ…!!?」

 

反射的に朝陽が眼を背けた時…

 

ギィィンッ!!!

 

何かが邪狼の斬撃を阻むような金属音が響く。

 

「ぇ…?」

 

朝陽が驚いたように視線を戻すと、そこには…

 

「ぐぅぅぅっ!!」

 

邪狼のブラッドブレードと鍔迫り合いを演じるため、ファルゼンを両手で握り締めた忍の姿があった。

その顔…正確には右目を一筋の傷痕があり、そこから未だに血が頬を伝って流れている。

 

「あ、アンタ…どうして…?」

 

朝陽が驚いていると…

 

「俺は…目の前で救える命があるなら、それを全力で守ると誓ってるんだ…だから、俺はお前も守り抜く…!!」

 

忍は朝陽の疑問に答えるようにしながら自分でも改めてその誓いを思い出して自らを奮い立たせていた。

 

「はっ! 御大層な理想だが、右目の使えねぇテメェに一体何が出来んだよ!!!」

 

そう言って邪狼は忍の見えない右目側からのブラッドクローでの攻撃を仕掛ける。

 

「(焦るな…落ち着け…匂いを頼り、理力の型を応用すれば…)」

 

血が抜けて幾分か頭がクリアになったのか、そんな思考を巡らせながら…

 

スゥッ……ガッ!

 

「なにっ?!」

 

忍は鍔迫り合いから力を抜き、柄の部分を軽く右側に向けると、柄頭で邪狼の手首に当ててその軌道を逸らしていた。

その動きに流石の邪狼も驚いていた。

 

「(よし!)」

 

さらに素早く回転した力を利用し、肘打ちを邪狼の剥き出しになっている顎に喰らわせる。

 

「がっ!!?」

 

流石の邪狼も今の一撃で怯んで後退する。

その際、口から血を流しているのが見えた。

 

「クソが! 調子に乗んなやぁ!!」

 

ドンッ!!

 

邪狼が闇黒色の霊力を纏うと一気にその力が膨れ上がり…

 

「これが俺の奥の手だ!!」

 

そう言うと、邪狼の頭から忍と同じく狼の耳が生えていた。

だが、その毛並みは黒かったに違いないようだが、幾多の戦場で浴びた血によってどす黒く染まったものとなっている。

 

「何年振りだろうな…俺、本来の力を解放したのはよッ!!」

 

そう叫ぶと共に邪狼の霊力を左手に収束させていく。

 

「ファルゼン! モード・斬艦刀!!」

 

バックル部からメモリー型端末『ヴェルメモリー』を引き抜き、ファルゼンの柄に装填すると超巨大剣へと変形させる。

 

「そんなでけぇ剣で何が出来るってんだよッ!!」

 

そう言うと、収束した霊力を砲撃状にして放出する。

 

ドガァァッ!!

 

忍は斬艦刀を盾代わりにして霊力を防ぐ。

 

「フェイト! 朝陽を連れて離脱しろ!」

 

その間に忍はダメージから回復したばかりのフェイトに指示を出す。

 

「は、はい!?」

 

フェイトがソニックフォームのまま朝陽の側までやってくる。

 

「アンタはどうすんのよ!?」

 

「俺は…残ってあいつの相手をする」

 

未だ邪狼の砲撃を防御しながら忍はそう答える。

 

「そんな! 忍君1人じゃ…」

 

「無謀もいいとこじゃないの!」

 

それを聞いたフェイトと朝陽は反対するも…

 

「俺がやらないとならない理由がある。だから、頼むから退いててくれ」

 

そう言って振り向いた忍の右目は閉じられているが、そこからは未だ血の流れが続いている状態であった。

しかし、その表情は2人を心配しないように少し穏やかなものであった。

 

「そんな目で何が出来るってのよ!」

 

「そうだよ! 邪狼は1人で太刀打ち出来るような犯罪者じゃ…!」

 

しかし、2人の言葉は厳しいものだった。

 

「そんなの百も承知だ。だが、俺がやらないとならないんだ…!」

 

そう言うと、忍は防御したまま前進し始める。

 

「忍君!?」

 

「紅神!!」

 

2人の言葉を無視して忍は邪狼へと突貫する。

 

「上等だ、ゴラァ!!」

 

忍が近寄ってきた瞬間…

 

ガギュッ!!

 

「がっ!?」

 

忍の両腕にタイガーヘッダーとドラゴンヘッダーが噛み付いていた。

 

『接近に気付けなかった? いや、そんなはずが…』

 

アクエリアスが困惑の声を上げる。

 

「ドラゴンの方にはジャミング機能があんだよ!!」

 

ガンッ!!

 

そう言って邪狼が怯んだ忍が持つファルゼンを左足で蹴り上げると…

 

「オラァ!!」

 

そのままの勢いを利用して踵落としを繰り出そうとする。

 

「ちぃっ!!」

 

ちょうど死角気味になる位置に邪狼の足が上がったため、すぐに後退する。

 

「反応はなかなか良いみたいだが…!!」

 

踵落としの威力を殺さず、前転宙返りでの回転を加えた上で、さらに踵落としを繰り出す。

 

メリッ!!

 

「ぐぁっ!!?」

 

忍の右肩に直撃すると共に嫌な音が響く。

 

「これで右腕も使い物にならねぇぞ!!」

 

邪狼が忍から即座に離れようとすると、力の入らない右手からファルゼンが落ちそうになる。

 

「こなくそっ!!」

 

ファルゼンを足で弾くと左手に持ち直して横一閃。

 

ザシュッ!!

 

その一閃は退き際の邪狼の剥き出しになっている右側の二の腕を切り裂いた。

 

「はっ! そうこなくちゃな!!」

 

それを受けても邪狼は顔色変えず…むしろ嬉々として戦いを楽しんでいた。

 

「戦闘狂め…!」

 

「テメェにもその戦闘狂と同じ血が流れてんだよ!!」

 

忍の言葉に邪狼はそう言い放つ。

 

「俺はお前とは違う!!」

 

「そいつはどうだかな!!」

 

そう言って二の腕から流れてきた自分の血を舐めながら邪狼はブラッドブレードを構え直す。

 

「元を辿ればテメェは俺の甥に当たるんだよ! そんな奴が戦いを楽しまねぇはずがねぇだろうが!!」

 

「テメェ…ッ!!」

 

邪狼の言葉に忍が逆上した時だった…。

 

ドクンッ!!

 

忍の方から鼓動が脈動する音がその場に響き渡る。

 

「ガァ…ッ!!?!?」

 

その鼓動と共に忍が苦しみ始めると…

 

ボコボコ…!!

 

忍の背中が何かを生み出さんが如く隆起し始める。

 

「ぐぁ…がっ……!!!!!!」

 

そして、次の瞬間…

 

カッ!!

 

銀髪がさらに鮮やかな光沢を帯びると共に、瞳の色が血のように鮮やかな真紅へと澄み始めると瞳孔が鋭く縦へと変化していき…

 

ゴオオオオオッ!!!

 

大量の妖力が忍を中心にして放出される。

 

「ウオオオオオオオオオオッ!!!!!」

 

忍が絶叫を上げると、狼の耳と尻尾が消失すると共に隆起していた物体がバサリと開いた。

 

それは色深き紅…深紅に染まりし、1対2枚の巨大な蝙蝠の羽…。

その八重歯は鋭く尖り、キラリと光る。

 

その姿はまるで…

 

「ドラキュラ伯爵?」

 

「吸血鬼…?」

 

突然湧き出した忍の妖力の波動をディフェンサープラスで防ぎながらフェイトと朝陽がそれぞれ呟く。

 

「なんだぁ? まだ、そんな隠し玉があったのか?」

 

心地良さ気に忍の妖力を受け止めながら邪狼は不敵な笑みを浮かべる。

 

「まだまだ楽しめそうだ……」

 

ズシャッ!!

 

邪狼が言い終わる前に斬艦刀となっているファルゼンを力任せに振るい、邪狼の右肩を容易に切断した。

 

ブシャアアアアッ!!!

 

切断された右肩から勢いよく血飛沫が噴き出す。

 

「ぐがあああああ…ッ!!?」

 

それは初めて耳にする邪狼の苦痛に満ちた絶叫であった。

 

「小僧! テメェェェッ!!」

 

怒りと狂気に満ちた殺気を忍に向けながら、斬り落とされた右腕をタイガーヘッダーによって回収すると…

 

「霊接脈ッ!!」

 

闇黒色の霊力を繊維状にして切断された右腕を右肩に接続した。

 

「ちっ…完全に斬られてやがる。馴染むまで右腕はまともに動かせねぇな…」

 

そう言いながらもしっかりと手をグッパーグッパーとして右腕の感触を確認していた。

 

「なんて奴よ!?」

 

「自分の腕を…自力で…?!」

 

邪狼の行動に眼を白黒させる朝陽とフェイト。

 

「霊接脈を使うなんて…久々だぜ! よくもやってくれたなぁッ!!」

 

そう叫ぶと邪狼は忍へと一気に詰め寄り…

 

「次はその左腕を貰うぜ!!」

 

斬艦刀の間合いを把握した上での超至近距離からブラッドブレードでの斬撃を見舞おうとしていた。

 

だが…

 

グギュゴキュ…!!

 

妙な怪音の後…

 

ガシッ!!

 

なんと、忍は動かないはずの右手でブラッドブレードの斬撃を素手で受け止めていた。

 

「ッ!? テメェ、まさか…俺の使った霊接脈を…!!」

 

忍の右腕に流れる妖力を察知し、邪狼はさっき見せた霊接脈の応用だと瞬時に理解した。

 

「------ッ!!!!」

 

声にならない声を上げ、忍はファルゼンを上に放り投げると左拳に妖力を纏わせていた。

 

「(こりゃ、ヤベェ…)」

 

そして、それを見た邪狼はブラッドブレードから手を離すと、後退して距離を稼ごうとしたのだが…

 

「ッ!!!!」

 

ブンッ!!

 

尋常でない反応速度でブラッドブレードを邪狼に向けて投擲すると…

 

ガキッ!!

ザシュッ!!

 

「がぁっ?!」

 

皮肉にもブラッドブレードに胸を貫かれ…

 

ブゥンッ…!

 

後方に現れたベルカの魔法陣に(はりつけ)状態にされる。

 

「こ、こんなとこで俺がぁ…!!」

 

ブラッドブレードを引き抜こうにも刀身に付着していた忍の血がベルカの魔法陣全体に広がり、邪狼の四肢を拘束していった。

 

「------」

 

それを見届けると…

 

ガシッ!

ツーッ…

 

放り投げてから落下してきたファルゼンを右手でキャッチし、その刀身の刃で左手に傷をつけながら妖力と霊力を混ぜ込んだ自らの血を馴染ませる。

不思議なことに刀身から手を離した途端、左手の傷は瞬時に塞がってしまった。

 

「ウオオオオオオッ!!!」

 

そして、獣の雄叫びのような咆哮を上げながらファルゼンを肩に担いで邪狼へと一直線に向かうと…

 

ボアアアアッ!!

 

閃ッ!!!

 

ファルゼンを引き抜くようにして袈裟斬りを邪狼に放つ。

その刀身には自然と紅蓮の焔も加味されていた。

 

ズシャアアアァァァァッ!!!

 

「こ、この俺が…ば、バカなぁぁぁ!!?!?!?」

 

邪狼の絶叫と共に体が袈裟型に切断されて上下に分かれて紅蓮の焔で炎上しながら落下していく。

 

「ぐ…ぁ…」

 

それと同時に忍の意識も刈り取られる様にして落下していく。

また、2人の落下する先にはフロンティアがあった。

 

「忍君ッ!!」

 

それを助けようとフェイトが動き出そうとした時だった…。

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!

 

変貌したフロンティアを中心にして大気が震動し始めていた。

 

「これは…まさか、大規模な次元転移!?」

 

朝陽がそれに気づくと、フェイトの腕を掴む。

 

「放して! 忍君を助けないと!」

 

「バカ! このままじゃ、アンタまで転移に巻き込まれんでしょうが!」

 

「でも…!」

 

朝陽に抗議しようとしたフェイトだが…

 

「…邪狼はあいつが命懸けで倒したのよ。あたし達は上にそれを報告すんの。それが局員…特に執務官であるアンタの仕事でしょ?」

 

「そ、それは…!」

 

朝陽の正論に何も言い返せないでいた。

 

そう言い合ってる間にもフロンティアの次元転移は進んでいき…

 

ギュインッ!!!

 

物凄い音を立てて、フロンティアはその場から消え去り…

 

「バルディッシュ…忍君は…?」

 

『……魔力反応…確認できず…』

 

フェイトの確認にバルディッシュも少し躊躇ったようだが、非情な報告をする。

 

忍と邪狼もまたの次元転移に巻き込まれて消息を絶ってしまったのだった…。

 

「うっ…くっ…」

 

その報告にフェイトは静かに涙を流して泣いていた。

 

「……………」

 

そんなフェイトの様子を見ながら朝陽も苦虫を潰したような苦々しい表情をしていた。

 

こうしてフロンティアを巡る戦いは一応の終止符を打った。

 

バビロニアの宝物庫でネフィリムと戦っていたシンフォギア装者達も無事、地球に帰還した。

だが、忍の消息が絶ったことを聞き、クリスがフェイトに辛く当たってしまった。

それを翼や朝陽が止めに入ったものの、この事実は変えようのないモノであった。

 

そして、一日経ってグレモリー眷属や智鶴達、冥界に赴いていたメンバーたちも忍の消息不明を聞き、個人差はあれど悲しみに包まれてしまった。

 

特に酷かったのは智鶴であり、彼女はまるで心が壊れたかのように無気力と化してしまっていた。

 

果たして、紅神眷属はこれからどうなるのか?

そして、行方不明となった忍と邪狼は…?




結構な長さになってしまいましたが、一先ずはシンフォギア系はこれで一区切りですかね?
ハイDに関しては次のイベントにロキ戦が待っていますが、それはオリジナル章を跨いでからになるでしょう。

そして、前述したように次回からは再びオリジナル章です。
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