魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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8.同盟旅行のリベリオン
第三十九話『変わりゆくモノ』


ロキ戦より数日が経ったある日のこと…。

 

突然の通信に学園の屋上に移動した忍がネクサスを介して対応していた。

 

「紅牙が…?」

 

悪魔側で拘束されていた紅牙が目覚めたという情報が忍の元へとやってくる。

 

『えぇ、意識もハッキリとしていますし、何より少し心が安定してるようにも見えます』

 

ちなみに連絡してきた相手はグレイフィアである。

 

「(これも霊力のおかげか?)」

 

ロキ戦の折、紅牙に対して行った霊力を介した攻撃を思い出す。

 

『如何いたしますか? サーゼクス様はあなたと共に彼の面会に赴きたいと言っていますが…』

 

そう言うグレイフィアの表情はこの面会に対してあまり好ましくない印象を抱いている様子だった。

 

「(次元辺境伯としての責…だよな)」

 

就任した以上、紅牙との和解も必要と考えている忍は…

 

「わかりました。こちらからも我が僧侶、フレイシアスを連れて行きます。彼女は彼の妹です。きっと兄妹でしか話せないこともあるでしょうし…」

 

快く引き受けていた。

シアも連れて行くことを条件にしてだが…。

 

『わかりました。サーゼクス様にも了解の折と妹さんのご同伴のことは伝えておきます。つきましては学園が終わったらすぐにこちらに来てほしいとのことですが…』

 

「了解です。学園が終わったらすぐに向かいます」

 

それを最後に通信は切れた。

 

「……辺境伯も楽じゃないな…」

 

そうボヤくと屋上から空を見上げた。

 

………

……

 

その放課後。

忍はシアを伴って冥界へとやって来た。

場所は冥界首都の近くにあるとある総合病院の特別医療施設だった。

 

「お待ちしておりました。紅神辺境伯」

 

そこにはグレイフィアが待っていた。

 

「お待たせして申し訳ありません」

 

「いえ、急な呼び出しに対応していただきありがとうございます」

 

「…………」

 

そんな忍とグレイフィアのやり取りを見ながら少しそわそわした様子のシアだった。

 

「それで、紅牙は?」

 

「こちらです」

 

グレイフィアの案内で特別医療施設の一画へと足を運ぶ。

 

「やぁ、忍君」

 

そして、ある一室の前にサーゼクスの姿があった。

 

「わざわざ来てもらってすまないね」

 

「いえ、俺もあいつには話があったので…」

 

サーゼクスとの合流を果たした後、軽い挨拶をしてから忍達は紅牙のいる病室へと入ることになった。

当然のことだが、忍やグレイフィアはサーゼクスの護衛という意味合いも持っている。

 

コンコン…。

 

「失礼する」

 

ノックをしてから紅牙の病室に入る。

最初に忍、その次にシアとグレイフィア、ッ最後にサーゼクスの順番で紅牙の病室に入る。

 

「おっ、これまたVIPな来客だな…」

 

紅牙が横になっているベッドの隣には秀一郎がおり、来客に驚いていた。

 

「紅神…それに魔王か」

 

ベッドから上体を起こしながら紅牙が静かに呟く。

その眼には以前感じた憎悪に満ちたモノは見えなかった。

むしろ、静かな…それでいて力強い光を感じる。

これが本来の紅牙の姿なのかもしれない。

 

「兄さん…!」

 

そんな紅牙の姿を見てシアが紅牙の側に歩み寄る。

 

「シア…」

 

久々に間近で見る妹に対して紅牙は…

 

「すまなかったな…色々と心配をかけたようで」

 

そう言ってシアの頭を撫でていた。

 

「っ…兄さん…!」

 

そんな兄の行動にシアはポロポロと大粒の涙を流す。

 

「相変わらずシアは泣き虫だな…」

 

「な、泣き虫じゃありません…!」

 

そんな兄妹のやり取りをしていると…

 

「兄妹の再会に水を差すようで悪いが…そろそろいいか?」

 

代表して忍が声を掛ける。

 

「あぁ、すまん…」

 

「っ!? す、すみません…!」

 

紅牙は素気なく、シアは慌てたように謝る。

 

「いや、せっかくの兄妹の再会だ。もう少し話をさせてあげたいが…私にも時間制限があるからね」

 

そう言ってサーゼクスは苦笑する。

同じ妹を持つ兄として紅牙には少し親近感が湧いたのだろうか?

 

「魔王…俺に何の用だ?」

 

「君ら冥族に対して行ってきた数々の非礼を詫びたいんだ。いくら旧魔王が行ってきた事とは言え、それを止められなかった我々にも非がある。そして、それは悪魔がやったことと同義でもあるから…どうしても謝罪がしたいのだよ」

 

「……………」

 

それを聞いた紅牙の反応は…

 

「やはり悪魔は身勝手だな。今更、詫びを入れられても俺達が味わってきた屈辱や憎悪はそう簡単に消えない」

 

冷たくハッキリとした言葉を発していた。

 

「だが…」

 

しかし…

 

「魔王自ら謝るとは、つくづく甘い魔王なんだな…それをこれからの行動で見せてもらいたいんもんだ…」

 

次の言葉には皮肉が込められていた。

 

「和解と言うからにはそれ相応の対価や身の安全が保証されるんだろうな?」

 

そして、紅牙はサーゼクスにそんな確認を取っていた。

 

「紅牙…」

 

「兄さん…!」

 

「もちろんだ。可能な限り援助したいと思っているし、土地の開拓にも協力しよう」

 

紅牙の言葉に忍とシアは喜びの表情を見せ、サーゼクスもそう約束していた。

 

「それならいい。俺の…俺達の戦いは終わったんだな…」

 

サーゼクスの言葉を聞き、紅牙は静かにそう呟いていた。

 

「やれやれ、これで契約も終わりか。次の雇い先でも探さねぇとな…」

 

話を横で聞いていた秀一郎が頭を掻きながらボヤく。

 

「悪ぃな、秀一郎」

 

「気にすんな。これが転機だと思ったんだがな…」

 

紅牙の謝罪に秀一郎は軽くあしらった後…

 

「ま、なんとかならぁね」

 

そう言い残して病室を出ようとする。

 

「待ちたまえ」

 

そこへサーゼクスが声を掛ける。

 

「魔王様がしがない傭兵に何か用ですかい?」

 

サーゼクスに背を向けたまま、ドアの前に秀一郎が立ち止まる。

 

「雇い先がないならこちらに雇われないかい?」

 

サーゼクスは秀一郎を勧誘し始めた。

 

「冥族の次は悪魔が雇い主か……カッカッカッ、俺ってつくづく冥界に縁があるみてぇだな…」

 

何が可笑しいのか少し笑った後…

 

「言っとくが、俺は人間と鬼のハーフだぜ? それでもいいのかい?」

 

それだけ確認していた。

 

「別に構わないよ。今は1人でも優秀な人材が欲しいからね」

 

「優秀かどうかはそっちの判断に任せるが…俺は自分を優秀だなんて思ったことはないぜ? あと、詳しい話は後日な」

 

そう言って秀一郎は病室から出て行った。

 

「話が逸れてしまって申し訳ないが…もう時間がきてしまったようだ。冥族との和解は忍君に任せているので、詳しい方策は忍君と話してくれ」

 

そして、それを最後にサーゼクスはグレイフィアを伴って退室してしまった。

 

「結局、俺に丸投げか…」

 

「魔王も人が悪いと見た。いや、悪魔だから仕方ねぇのか…」

 

「はぁ…やれやれだ」

 

肩を竦めてみせる忍に紅牙も苦笑する。

 

「とりあえず、紅牙。冥族の集落に案内してほしい。それと俺と一緒に説得に協力してくれ」

 

「俺に発言権があるとは思えんが…わかった。案内しよう」

 

「あぁ、助かる」

 

紅牙の答えに忍は手を差し伸べる。

 

「…………」

 

紅牙はしばし自分の手を見詰めていると…

 

「握手くらい、いいだろ?」

 

「……だが、俺の手は…」

 

「俺も似たようなもんだ。既に汚れてる…」

 

「………そうか…」

 

簡単な言葉を交わすと共に忍と紅牙は握手していた。

 

「変なもんだ…前までは殺し合いをしてたんだからな…」

 

「一方的な敵意だったけどな…」

 

「ふんっ…」

 

それを言われて紅牙は少し不機嫌そうに顔を背けた。

 

「そういえば…あいつらは、どうなった?」

 

「あいつら?」

 

不意に紅牙はそんなことを言い出し、忍とシアは首を傾げる。

 

「マリア・カデンツァヴナ・イヴ、月読 調、暁 切歌」

 

「ッ! フィーネの…」

 

紅牙の呟いた名前に忍は驚く。

 

「あぁ、一時は協力関係を持っていたからな。今になって少し気になったんだ」

 

そう言って紅牙は窓の外を見る。

 

「彼女達は…確か、ウェル博士と共に特別観察下に置かれてるはずだ」

 

忍もマリア達が保護下に置かれた時には行方不明となっていたため詳しい事情はわからなかったが、事件後の話はクリス経由で小耳に挟んでいた。

 

「そうか…」

 

それを聞いて紅牙も短い返事をする。

 

「……………」

 

「……………」

 

互いに会話が続かなくなってきたところで面会時間も終了となってしまった。

 

「じゃあ、次は退院した時に会おう」

 

「わかった。その時は冥族のとの和平を結ぶ時だ」

 

そう互いに言った後、忍とシアは病室を後にする。

 

その帰り道の途中…

 

「よかったのか? あまり話さなかったようだが…?」

 

シアが紅牙とあまり話してないのを忍が尋ねていた。

 

「はい。これからも話せる機会はありますから…」

 

忍の問いにシアは控えめな笑みを浮かべながらそう答える。

 

「そうか」

 

忍もそれに微笑んでみせた後、軽く溜め息を吐いていた。

 

「それにしても、次は冥族との話し合いか。シア、冥族の村や住民についてわかる範囲でいいから教えてくれないか?」

 

「はい。私でよろしければご協力します」

 

帰り道でシアの話を聞くことにしていた。

 

 

 

一方…

 

「…………」

 

紅牙は忍とシアが出ていった後、神妙な面持ちをしていた。

 

「(あの時…確かに俺は憎悪に憑りつかれていた。それは今になって自覚出来るくらいだ。そんな濃密な憎悪を…あいつは霊力だけで消し去ったというのか?)」

 

紅牙はロキ戦で負った傷を撫でながら自分に起きたことを不思議に感じていた。

 

「(確かに、霊力には浄化の力も少なからずある。だが、それは素質によって大きく異なる。現に俺はそれほど浄化の力が強くはない。シアは俺よりも高いだろうが…)」

 

霊力も秘めている身としてそれは肌で感じていた。

 

「(だが、あいつは…高密度の霊力の一太刀で俺の魂を解放近くまで浄化した。これは常軌を逸している…)」

 

浄化の力が異様に強いでは片付けられないのかもしれない、と紅牙は思っていた。

 

「紅神 忍…お前は一体…何者なんだ?」

 

窓の外でシアと共に病院から出ていく忍の後姿を見て紅牙は怪訝に思っていた。

 

………

……

 

その翌日。

 

「これからフィライトへ向かう」

 

明幸邸の居間に眷族を集めたかと思ったら忍はそう言い放っていた。

 

「フィライト…確か、アンタが飛ばされてた次元世界だっけ?」

 

忍の言葉に吹雪が尋ねる。

 

「あぁ…」

 

その問いに忍も軽く頷く。

 

「そういえば、あれからそれなりに時間が経ってるわね。大丈夫かしら?」

 

「陛下が無茶をしてなければいいんだが…」

 

忍はむしろそっちの方が心配だったりする。

 

「でも、どうやって行くのよ?」

 

至極もっともなことを朝陽が尋ねる。

 

「ディメンション・スコルピアを用いたいところだが…」

 

「スコルピアちゃんの魔法は私も一回行かないとよくわからないから…まだ使えないよ?」

 

忍の言葉に智鶴も否定的な意見を言う。

 

「そうなんだよな。だから今回は特務隊の艦に頼ろうと思う」

 

それを聞いて忍はそう答える。

 

「はぁ!?」

 

朝陽が盛大に驚く。

 

「既に話はつけてある。早速だが、向かうとしようか」

 

そう言って忍は転移魔法陣を人数分、展開する。

 

「ちょっ!」

 

朝陽が文句の一つも言おうとしたが、それより早く転移が作動する。

 

 

 

そして…

 

「来たか」

 

ヴェル・セイバレスのブリッジにある艦長席で待っていたゼーラが転移反応に機敏に反応する。

 

「お世話になります。シュトライクス准将」

 

代表して忍がゼーラに頭を下げる。

 

「紅神 忍。随分と雰囲気が変わったな」

 

その様子を見てゼーラも眼つきを変える。

 

「色々ありましたので」

 

以前ならその眼光に怯んでいた忍もこれまでの経験で真っ向から目を細めて睨み返すことが出来ていた。

 

「生意気なことだ」

 

その反応にゼーラはそう評すが、内心では面白く思っていた。

 

「先日の邪狼討伐の件ではこちらも世話になったからな。今回は協力しても構わないが、これっきりだと思え」

 

「わかっていますよ」

 

ゼーラの物言いに忍も首を縦に振っていた。

 

「(あの隊長を目の前にしてよくもまぁ、あんな軽口を…)」

 

朝陽は朝陽で内心呆れと共に戦々恐々としていた。

 

「進路、次元世界・フィライト」

 

こうして一行は再びフィライトへと向かった。

 

………

……

 

~フロンティア~

 

「ふふふ…まさか、一片残らず喰らい尽くすとは…」

 

ロキ戦前日に起きた忍と龍騎士の死闘が映像となって黒ローブの前に映し出されていた。

 

「五気を束ねることにも目覚めたようですし、結構なことです」

 

戦闘中に見せた忍の劇的な進化に満足そうに頷く。

 

「それに量産型の試作品とは言え、龍騎士の能力も把握出来ました。流石は古の種…その力はクローニングしても多少衰える程度で済むのですから驚嘆に値します」

 

そう言って別の画面に目を向けると、そこには大量のカプセルの中に培養液漬けにされて眠る龍騎士達の姿があった。

 

「シュトームは管理局にも渡って解析されている頃でしょうが…まぁ、別段困ることはありませんね。管理局も戦力を強化しようと私の技術とフィライトの資源を狙う可能性もありますが…アレはエクセンシェダーデバイスが一機でもあれば問題なく開発出来る代物ですし、魔力石についても魔力の漂う次元でなら容易に精製出来る代物。いずれにしても管理局がドライバーに手を出すのは時間の問題ですね」

 

黒ローブはこれから管理局内で起こるだろうことを予測していた。

 

「まぁ、仮に管理局がドライバー技術を手にしたとしても、エクセンシェダーデバイスには及びません。それに…我々には地球には存在しない"異界の神"という存在もおりますし…その加護を得た暁には…全ての次元世界を絶望の海に沈めて差し上げましょうか」

 

そう言って黒ローブの影に隠れていない口元が狂気に歪む。

 

「ふふふ…復活の儀はもうしばらくお待ちを…」

 

………

……

 

~フィライト・イーサ王国南西部前線基地~

 

キィィンッ…

 

砦の中庭に転移陣が開かれ、その中から忍達が現れる。

 

「戻ってきたぞ、フィライトに…」

 

忍がそう呟いた瞬間のこと…。

 

チュドーンッ!!

 

壁が思いっ切り爆発した。

 

「きゃあああ!?」

 

その爆発に驚き、萌莉が悲鳴を上げてしゃがみ込む。

 

「えっ、えぇ!?」

 

「なに!?」

 

即座にデバイスを起動させるフェイトと朝陽。

 

「こりゃ最悪な時に来たかもな…」

 

そう言いながら忍が防御魔法を展開して眷属達を守る。

 

「カーネリア、朝陽、暗七、吹雪は俺と一緒に来てくれ。智鶴はクリス、フェイト、シアと一緒に萌莉の保護と後方支援を頼む」

 

それだけ言うと忍もまたネクサスを起動させる。

 

「しぃ君?」

 

「俺達は戦闘中の真っただ中に来ちまったってこと。しかもこりゃこの砦が攻撃を受けてるな…」

 

智鶴の疑問符に忍は簡潔に答えた。

 

「ほ、ホントに…せ、せ、戦争…?」

 

怯えながら萌莉が忍を見上げる。

 

「まさか、もう始めてるとは俺の見通しも甘かった。怖い目に遭遇させてごめんな」

 

その言葉は萌莉だけでなく眷属全体に向けられていた。

 

「はっ! 今更遅いわよ!」

 

そう言って朝陽が防御魔法の中から飛び出す。

 

「ま、世界が違うんだから別に問題ないわよね」

 

カーネリアも黒翼を羽ばたかせて朝陽の後を追う。

 

「先に行ってるわよ!」

 

「はぁ…面倒ね」

 

吹雪と暗七も2人に続く。

 

「頼もしいやら血の気が多いのやら…」

 

その様子を見て忍も苦笑する。

 

「しぃ君、気をつけてね」

 

そう言って智鶴もスコルピアを纏い始める。

 

「私が萌莉さんを守りますので、皆さんは忍さん達の援護を…」

 

シアがそう申し出る。

 

「でも、もしものことがあるから私も残るよ」

 

シアと共にフェイトも萌莉の護衛につくらしい。

 

「す、すみま、せん…あ、足手、まといで…」

 

「ったく、んなことは気にしなくてもいいんだよ。仲間、なんだろ?」

 

萌莉のネガティブ発言にクリスがそう言う。

 

「あぁ、頼む」

 

そして、忍もまた前線へと跳躍する。

 

 

 

一方、砦の外では…

 

「だぁぁりゃぁぁ!!」

 

最前線ではシルファー自らが己の拳で帝国兵を文字通り殴り飛ばしていた。

 

「陛下に続け!」

 

そのシルファーの奮戦を見てイーサ王国側の兵達が攻勢をかける。

 

「怯むな! 押し返せ!」

 

そこへシュトームのアーマーモード・アルファを纏った敵将がシルファーへと向けて進撃する。

 

「また例のカラクリかい!」

 

シルファーは忌々しげにシュトームを見る。

これまで起きた数度の攻防戦で確実にその数が増えているような感じであった。

 

「女王シルファー! 御命頂戴する!」

 

ベータブレードを抜きながら敵将がシルファーへと対峙する。

 

「若造が…龍を舐めんじゃないよ!」

 

シルファーがシュトームを纏った敵将へと駆け出す。

 

「(掛かったな! 猪龍め!)」

 

敵将はニヤリと微かに笑みを零す。

 

 

 

シルファーと敵将が対峙している場所から後方では…

 

「これでチェックメイトだ」

 

アーマーモード・ガンマのシュトームを纏った別の将がアルファギアを通して数キロ先のシルファーの姿を正確に捉えていた。

そして、ガンマショットを前にしてガンマライフルと前後合体させた重火器を構えていた。

 

ピピッ!

 

アルファギアのディスプレイに表示されたターゲットマーカーがシルファーの頭部へと照準を合わせると共に…

 

キュィィ…!

 

銃口に魔力が収束されていき…

 

「ファイア」

 

キュインッ!!

 

一筋の魔力光線がシルファーへと撃たれる。

 

 

 

ピピピッ!

 

「(来た!)」

 

後方から撃たれた魔力を感知して警告音が鳴り、をれを聞いた敵将が微かに射線からズレる。

 

「(なんだ? 今、微かに移動したような…?)」

 

微かに動いた敵将に少なからず違和感を覚えていると…

 

キラッ!

 

前方から光が迫ってくる。

 

「ッ!?」

 

それでシルファーは何かを確信したが突進中のため、急な回避が無理な状態である。

 

「終わりだ!」

 

「くっ!!?」

 

敵将の言葉にシルファーは悔しそうに目の前を見た。

 

「(エルメスの晴れ着ぐらい…見たかったな…)」

 

娘の花嫁姿を想像しながら収束魔力光線の着弾が目前まで迫った時だった。

 

「黒影斬ッ!!」

 

その声と共に飛来した黒き魔力刃がシルファーの前に現れ、収束魔力光線と衝突した。

 

「なにっ!?」

 

「これは…?!」

 

突然の事に敵将は驚き、シルファーは覚えのある魔力の波動に驚いていた。

 

「ったく、遅いんだよ! 随分と待たせてくれるじゃないか!」

 

そして、その正体を察すると悪態を吐いた。

 

「助けたのにその反応かよ。まぁ、遅くなったのは素直に悪いとは思ったけどな」

 

そう言ってシルファーの横を駆けながら忍が敵将へと突っ込む。

その姿は既に真狼となっている。

 

「貴殿が前に噂されていた狼か!」

 

「そうだとしたらなんだ!」

 

ガキンッ!

 

ベータブレードとファルゼンが斬り結ばれる。

 

 

 

一方で…

 

「ちっ…まさか、邪魔が入るとは」

 

後方にいた狙撃兵が舌打ちをしていた。

 

「だが、次は外さな…」

 

そう言って重火器を再び構えようとした時…

 

ヒュッ!

バゴンッ!!

 

一発の弾丸が重火器に直撃して破壊していた。

 

「っ!? どこから!?」

 

向かってきた弾道から割り出してそちらの方をアルファギアを通してズームで見ると…

 

「この方角は…砦からだと!?」

 

ズームの限界により、砦の上に人影が見える程度でしか確認できなかった。

 

「バカな! ここから砦まではアウトレンジのはず! それを正確に撃ち抜くなど!!?」

 

その事実に狙撃兵はかなり驚いていた。

 

バサァ!

 

「ふふ…うちには優秀なガンナーがいるのよ」

 

翼の羽音と共にそのような声が狙撃兵の背後より聞こえてくる。

 

「ッ!?」

 

思わず振り向こうとした狙撃兵だが…

 

ズサッ!!

 

その胸部を黒い光の槍が貫き、鮮血が飛び散る。

 

「がっ!?」

 

「残念。私は坊や達みたいに甘くは無いのよ」

 

ズリュッ!

 

光の槍を一気に引き抜くと体内に開いた穴から血が噴き出し…

 

バタンッ…

 

そのまま狙撃兵は失血によって事切れてしまった。

 

「デバイス…回収した方が良いのかしら?」

 

そう言ってカーネリアは狙撃兵の死によって活動を停止して待機状態へと戻ったシュトームを拾い上げる。

 

「意外と大したことないのね。ちょっと期待外れかも…」

 

溜め息を吐きながらその場から飛び、次の標的を探すことにした。

 

 

 

他の場所では…

 

「ば、化け物め!」

 

帝国兵が1人の少女に対してそのようなことを言う。

 

「年頃の娘に対してそれは無いんじゃない?」

 

暗七が両腕を異形の形状へと変化させながら帝国兵を薙ぎ倒していた。

 

「どの口がそれを言うのよ?」

 

そう言って吹雪が蒼く染まった翼を広げながら季節外れの吹雪を発生させて帝国兵を足止めさせる。

 

「アンタも良い勝負じゃないの?」

 

「はぁ!? 勝手に言ってろ!」

 

口喧嘩しながらも互いに背を合わせてる辺り、決して不仲というわけではない…のかな?

 

 

 

朝陽はシュトームを纏った敵将と出会っていた。

 

「これが報告にあった量産型デバイス…」

 

それを見て朝陽が呟く。

 

「シュトームの存在を知っている? 貴様、何者だ!」

 

「答える義理は無いわね!」

 

言うが早いか、朝陽は敵将へと突っ込む。

 

「問答無用という訳か!」

 

ベータブレードを抜いて朝陽のヴェルセイバーと斬り結ぶ。

 

「(ちっ…流石にセイバーだけじゃ分が悪いか…)」

 

シュトームの武装の多さに内心舌打ちする。

 

「喰らえ! ガンマバスター!」

 

腰部左右からガンマバスターが展開されて朝陽へとその砲口を向ける。

 

「ちっ!」

 

それを朝陽は持ち前の反射神経で踏み台にし、射線をずらすと同時に後方に跳んで距離を稼ぐ。

 

「小賢しいことを…!」

 

ベータブレードをもう一本引き抜くと、朝陽へと接近するべく詰め寄る。

 

『接近警報、多数確認』

 

「っ!」

 

そこへ砦の方から小型ミサイルの雨が降ってくる。

 

ヒュドドドドドッ!!

 

「これは…!」

 

通信が出来ないからわからないが、十中八九クリスのイチイバルによる援護だろう。

 

「貸し一つか。そのうち返してやるわよ!」

 

そう言って爆発による砂塵の中を駆け出し…

 

カチッ!

バシュッ!

 

セイバーのトリガーを引いてカートリッジを炸裂させる。

 

「バイパー!」

 

『バイパーフォーム♪』

 

それに合わせてセイバーの刀身が連結刃となり…

 

「そこっ!」

 

ミサイルの着弾前後から移動した範囲を予測して連結刃を飛ばす。

 

チャキッ!

 

その予測が当たったのか、ベータブレードに連結刃が絡みつく。

 

「なっ!?」

 

砂塵の中から連結刃が現れ、さらにそれが自らの武器に絡みついたことに敵将は驚く。

 

「デバイスの扱いならこっちの方が長いのよ。ブレード!」

 

カチッ!

 

『ブレードフォーム♪』

 

絡みついた切っ先を起点としてセイバーが元の剣へと戻ろうとする。

その結果、朝陽の体は勢いよく敵将の方へと向かい…

 

「はぁっ!」

 

ドガッ!

バリンッ!

 

その勢いに任せて膝蹴りを敵将の顔面に叩き込んでHMDごと叩き壊す。

 

「がぁっ!!?」

 

顔面から鮮血が飛び散りながら敵将はベータブレードを手放して顔を押さえながら数歩後退る。

 

「(バリアジャケットが無いから身体的ダメージがダイレクトに伝わる訳ね…)」

 

その様子を見ながら朝陽は冷静にシュトームの欠点を考えていた。

 

「(ま、あたしには関係ないけど…)」

 

そこまで考えてからすぐに頭を切り替える。

 

「サンダー、トリプルロード!」

 

カチッ!×3

ピシャァァッ!!

 

『わぉ♪ 朝陽ちゃん、これで決めちゃう?』

 

「当たり前でしょ!」

 

ダンッ!

 

地面を力強く蹴り、雷の纏ったセイバーを敵将へと向ける。

 

「ライトニング・スカッシュッ!!」

 

閃ッ!!

 

稲光を伴った斬撃を敵将へと一閃するようにして叩き込む。

 

「っ!?!?」

 

叩き込んだ後、朝陽は敵将の背後へと通り過ぎると…

 

「爆ぜろ、稲妻!」

 

そのワードと共に…

 

ピシャアアア!!

 

一閃した傷口から電気エネルギーが解き放たれるようにして敵将の体を焦がしていく。

 

「-----ッ」

 

声も無く敵将は地に伏してしまった。

 

「一応、非殺傷にはしてから安心なさい。ま、当分はまともに動けないだろうけど…」

 

アレだけのことをしておいて今更ながらという感じで朝陽は呟いていた。

 

 

 

そして、シルファーを助けに入った忍はと言えば…

 

「はぁ!」

 

「ぐっ!?」

 

一度は打ち破ったデバイスのためか、終始優位に立ち回っていた。

 

「これで決める!」

 

自らの妖力を冷気へと変質させていき、ファルゼンの刀身へと馴染ませていた。

 

「瞬狼斬…」

 

ブンッ!

 

一瞬にして忍の姿が消えたかと思うと…

 

斬ッ!!×13

 

無数の斬撃音が響き渡り、次に忍の姿が現れた時…

 

「氷牙ッ!!」

 

シャキィィンッ!!

 

一瞬にして敵将は無数の斬り傷が生まれ、その傷口から一気に凍結してしまった。

 

「----???」

 

敵将は何が起きたかも分からず、その命を散らすことになる。

 

「砕けろ!」

 

バリィンッ!!

 

トドメとばかりにシルファーが凍結した敵将をデバイスごと殴り壊した。

 

「さて、次はだれが雪結晶になりたい?」

 

その冷たくも鋭い眼光を光らせ、忍は帝国兵達を威圧する。

 

「(なんだ? 忍から感じる…同族…?)」

 

心なしかその威圧感は龍の波動が混じっているようにシルファーは感じていた。

 

「に、逃げろ!」

「こ、殺される…!?」

「て、撤退だぁ!!?」

 

その威圧に気圧されてか、蜘蛛の子を散らすようにして帝国兵は逃げていった。

 

こうして戦況は一変。

イーサ王国はまたしても忍に危機を救ってもらう形になった。

 

………

……

 

~イーサ王国南西部前線基地~

 

戦後、忍達は謁見の間へと通されていた。

 

「忍様!」

 

謁見の間に入ると、嬉しそうな表情でエルメスが出迎えてきた。

 

「エルメス。久し振りだな」

 

無意識にか、忍がエルメスの頭を撫でていた。

 

「しぃ君、こちらの女の子は?」

 

智鶴が忍に尋ねる。

 

「あぁ、この娘はエルメス。俺が記憶喪失でこっちにいた頃に世話になってた陛下の娘さんだ」

 

「まぁ、そうなの? しぃ君がお世話になりました。私は明幸 智鶴と言います」

 

「あ、ご丁寧に…私はエルメス・ファル・イーサと申します」

 

そんなやり取りをしていると…

 

「も、もしかして…」

 

「坊やってそういう趣味でもあるのかしら?」

 

忍とエルメスの親しそうな様子を見て一部の眷属達がざわめく。

 

「私…これでも今年で17になりました…」

 

皆の反応を察してか、エルメスは泣きそうな顔をしながらそう言う。

ロリ体型だが、エルメスはれっきとした17歳(人間換算)である。

 

「タメかよ!?」

 

「わぁ、意外…」

 

「それよかあの女王の娘ってことは…お姫様なんじゃないの?」

 

クリス、暗七、吹雪が別々の意味で驚く。

 

「あのってなんだ、あのって」

 

吹雪の言葉に玉座に座るシルファーがツッコミを入れる。

 

「ったく、随分と侍らせてるな。忍」

 

「………人聞きの悪いことを言うな」

 

「だったら今の間はなんだい?」

 

「冷静に考えたらそういう見方もあるか、と不覚にも思ったんだ」

 

一国の女王相手に忍は物動じせずに話していた。

 

「ま、色々と気をつけるこったい」

 

ニヤニヤと笑いながらシルファーは忍にそう言う。

 

「それはともかく戦況は?」

 

「そんな変わってないけど…強いて言うなら例のデバイスとか言うカラクリかい? あれでが段々と増えていってるように感じられるんだ。事実、最近じゃ他の戦地でも目撃報告があったりしてね」

 

「どういう訳か、量産化がかなり進んでる訳か…参ったな…」

 

「あぁ、困ったことだよ」

 

予想よりも深刻な事態に忍は表情を険しくしていた。

その様子を見てか、眷属達にも緊張感が走る。

 

「……なら陛下。一つ提案がある」

 

「なんだい?」

 

「こうなりゃ残り二国と同盟を結ぼうぜ?」

 

不敵な笑みを浮かべて忍はそう提案していた。

 

フィライトに存在する残りの二国『ラント諸島』と『トルネバ連合国』。

果たして、その二国とイーサ王国は同盟を結ぶ事が出来るのだろうか?

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