魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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第四十一話『新たな力はカードと共に』

先日、忍達はラント諸島での帝国侵略に介入し、無事ラント諸島との同盟を締結させることが出来た。

 

これからトルネバ連合国との同盟交渉が控えている中、忍達はフィライトでの同盟活動を一時中断し、地球へと帰還していた。

 

「どうして戻ってきたんだよ?」

 

地球に戻るなり忍にそう聞いたのはクリスだった。

 

「しかもみんな揃ってって…」

 

「何があるのよ?」

 

暗七と吹雪もまたクリスに続くように尋ねる。

 

「いや、俺も連絡を受けただけだからな。俺に用があるって人がいるって…アザゼル先生から…」

 

次元間通信なんぞ、いつの間に開発(?)したのか知らないが…ラント諸島との同盟があった翌日、ネクサスにアザゼルからの通信が入ったのだ。

 

『おぉ、感度は良好良好♪ 忙しそうなとこ悪いが、眷属と一緒に戻ってこい。お前さん達…正確には忍に渡したいもんがあるんだとよ。じゃ、確かに伝えたぜ~』

 

という具合の一方的なやり取りで通信は切れたのだった。

 

「(アザゼル先生からの通信か…なんだか嫌な予感しかしないのは気のせいかな?)」

 

そんなことを考えつつも忍は眷属と一緒にスコルピアのディメンション・ゲイトを通って地球へと帰還したのである。

 

そして、明幸の屋敷で来訪者を待っていると…

 

「失礼します」

 

中庭より声が聞こえると、そこには…

 

「っ…!」

 

黄金の翼を広げた人物が立っていた。

 

「大天使ミカエル…」

 

カーネリアがその人物の名を呟く。

 

「中庭から訪問というご無礼をお許しいただきたい」

 

来訪者…ミカエルはそう言って頭を下げる。

 

「いえ…まさか、天界のトップが来られるとは思わず、気を抜いていました。どうぞ、中に…話は居間で…」

 

「ありがとうございます」

 

ミカエルを居間に迎え、その対面に忍と智鶴が座る。

 

「粗茶ですが…」

 

ミカエルの前にシアがお茶を差し出す。

 

「これはどうも。日本のお茶は美味しいですからね」

 

そう言ってお茶を一口飲むと…

 

「なんだかホッとしますね」

 

「それは良かった。それで俺に話しというのは…?」

 

ミカエルの反応を見てから忍は話を切り出す。

 

「わかりました。我々が悪魔の駒や人工神器の技術を基にして御使い(ブレイブ・セイント)を作り出したのは知っていますね?」

 

「えぇ、それはもちろん」

 

先日、クラスに転校してきたイリナは目の前にいるミカエルのA(エース)であり、その時に御使いの情報もある程度入手している。

 

「冥界…ベルゼブブ殿は冥族専用の駒を開発したとか…」

 

「はい。試験的に俺が使用させていただいてます。まだ、眷属の駒は余ってますが…」

 

そう言って忍は未使用の駒…戦車1、兵士5を取り出してミカエルに見せる。

 

「最大で後6枠の眷属が出来るわけですね」

 

「そうですね。今のところ候補はいませんが…」

 

ミカエルの問いに答える忍に対して…

 

「(エルメスはどうなんだよ?)」

「(さぁ? 異界のお姫さまなんでしょ?)」

「(好意があるのは見て取れるし…)」

「(また増える可能性があるのね)」

 

忍の後ろに控えている他の眷属(特にクリス、朝陽、吹雪、暗七)がヒソヒソ話をする。

 

「(お前らな…)」

 

比較的近くなので容易に耳に届いてしまい、忍は内心で溜め息を吐いていた。

 

「そこで紅神君に提案なんですが…その枠をもう7つ増やしてみませんか?」

 

「はい?」

 

ミカエルの唐突な申し出に忍も生返事をしてしまう。

 

「実は私達天界もこのような物を作りまして」

 

そう言ってミカエルは懐から7枚の絵札を取り出してテーブルの上に置く。

 

「これは…?」

 

テーブルに置かれた絵札にはそれぞれ剣を掲げた騎士、弓を構える騎士、槍を持つ騎士、戦車を駆る者、妖しげなローブを纏った魔術師、戦に狂いし戦士、黒尽くめの暗殺者の絵が描かれていた。

 

「眷族の駒に倣い、『眷属の絵札(サーヴァント・カード)』とでも名付けましょうか。実は天界でも切り札はいくつか用意しておこうということになりまして…魔王ベルゼブブから眷属の駒の技術を提供してもらい、御使いの技術と組み合わせて作り上げたのがこれなんです」

 

「なるほど。でも、何故俺に? 天界の切り札なら冥界で辺境伯なんて地位を貰った俺に渡すのはまずいのでは?」

 

ミカエルの説明に忍は当然の疑問をぶつけた。

 

「お恥ずかしい話ですが…眷属の駒を基にしたためか、冥族でないと機能しないという問題が明るみになりまして…我々では運用出来ない事からこの一組しか作れず、計画自体を白紙に戻してしまったんです。しかし、一組は作ったので誰かが運用した方が今後の戦力にも繋がると考えまして、私の提案で紅神君に渡すことにしました」

 

その疑問にミカエルは丁寧にそう答えていた。

 

「なるほど。ですが、何故俺なんですか? 冥族の協力者なら俺以外にも…」

 

そう言って忍は後ろの吹雪やシア、今は冥界にいる紅牙のことを指してみた。

 

「理由はいくつかあります。既に眷族の駒を運用している実績、悪魔側で辺境伯という地位を持ちながら悪魔側だけでない広い視野を持ってること、かの赤龍帝とは違った可能性を秘めていること…大まかな理由としてはこんなところでしょうか?」

 

「……なんか、改めて言われると…こそばゆいというか…恐縮してしまいますね」

 

それを聞いて忍は頬をポリポリと掻く。

 

「ふふ、それだけのことを君はしてきたんですよ」

 

そう言うとミカエルは立ち上がり…

 

「絵札はお預けします。使うかどうかは紅神君自身が見極めてください。今日はお忙しい中、時間を取っていただきありがとうございました」

 

深々と忍達に頭を下げる。

 

「い、いえ…三大勢力の一角のトップが頭を下げられるほどのことでは…!」

 

慌てて忍がそう言うが…

 

「気にしないでください。それでは…」

 

ミカエルは黄にした風も無く、その場を後にしたのだった。

 

「「「「「……………」」」」」

 

ミカエルが去ってからしばしの沈黙の後…

 

「しかし、絵札か…絵柄に意味でもあるのかね…?」

 

そう言って忍はテーブルに置かれた絵札の一枚を持つとその絵柄を興味深く見る。

 

「パッと見。騎士、弓兵、槍兵、騎乗者、魔法使い、狂戦士、暗殺者のように見えますね」

 

シアが他の絵札を眷属達に回しながら絵札の絵柄をそう評する。

 

「ミカエルさんからもう少し詳しく聞きたかったが…向こうも向こうで忙しそうだったしな…」

 

そう言って忍も地球や冥界で起きている禍の団のテロ活動を思い出す。

 

何処(どこ)彼処(かしこ)も事件や事変続きか…」

 

異世界・フィライトで起きてる戦争も含めて地球や冥界でも大変な時期であることを再確認していた。

 

「そういえば…しぃ君、そろそろ修学旅行の時期でもあるでしょ?」

 

ふと思い出したように智鶴が忍に言うと…

 

「………………ぁ…」

 

それを言われて忍は修学旅行のことをスッカリ忘れていたことに気づき、ダラダラと汗が流れる。

 

「ヤベェ…すっかり忘れてた…班決めとか、どうしよ…イッセー君達に同行させてもら…えるかな? 多分、大丈夫なはず…でも、今はフィライトにも顔を出さないとならないし……そうだ、冥界で冥族との話し合いもあるんじゃないか?」

 

ブツブツと独り言を呟く忍を見て…

 

「もう、しぃ君ってば…」

 

困った様な表情で智鶴は忍の頭を撫でていた。

 

「え、えっと…わ、私も…手伝うから…」

 

同じく駒王の2年生である萌莉も忍を励ます。

 

「リディアンも修学旅行の時期では?」

 

「……あ~、そうかもな」

 

シアの言葉にクリスはどうでもよさそうに答える。

クリス自身、団体行動はまだ苦手らしい。

 

「シアちゃんや暗七ちゃんも学園に入ればいいのに…」

 

そう言って智鶴は話の矛先をシアや暗七に向ける。

 

「私は元テロリストの一員ですから…そこまでしてもらうのは流石に…」

 

「私もドクターの元で色々学んでたからね。今更学園に入る気も無いわ」

 

シアは後ろめたさから、暗七はどうでもよさそうな、それぞれの理由で駒王学園への入学はしていなかったりする。

 

「けど…それだと修学旅行ってのは皆、別行動になりそうね。大丈夫かしら?」

 

そんな中、カーネリアが珍しくそんなことを言う。

 

「坊や達はしばらくいない訳でしょ? 誰かさんは耐えられるのかしら?」

 

いや、心配というよりはむしろ面白がっているのか…?

 

「いや、たかが二泊三日なんだから大丈…夫…?」

 

カーネリアの言葉に忍が反論しようとするが…

 

「…………」

 

"ズーン…"という効果音が聞こえてきそうなくらい、明らかに沈んだ様子の智鶴が隣にいた。

 

「ほらね」

 

そして、勝ち誇ったようにカーネリアは可笑しそうに笑う。

 

「どんだけよ…」

 

「そのくらい辛抱なさいよ…」

 

その様子に呆れて朝陽と吹雪がそう言い放つ。

 

「あなた達も学園はいいの?」

 

シアと暗七にした質問を今度はカーネリアが朝陽と吹雪に聞く。

 

「あたしはミッドでいくらか勉強はしたし、騎士になるために専攻してたから別に今更って…」

 

「私も閉鎖してたとは言え、母さんや父さんからそれなりに教わってたし…それにたった一年程度通ってもねぇ…」

 

どっちも勉学は出来るらしいが、別々の理由で学園に入る気は更々ないらしい。

 

すると…

 

ピピピ…!

 

誰かから誰かに向けての通信が入る。

 

「あ、私だ」

 

着信者はフェイトで相手は…

 

「あ、シャーリーからだ」

 

補佐官であるシャーリーだった。

周りを気にする必要が無かったので、そのまま通信用魔法陣を展開する。

 

「シャーリー、どうかしたの?」

 

『やっほ~、フェイトちゃん。忍君とは上手くいってる?』

 

「ちょっ!? シャーリー!?///」

 

シャーリーの言葉に驚き、フェイトは慌てた様子になる。

 

『あはは、今日は前にフェイトちゃんがユーノ君に頼んでたモノが届いたからそれを知らせようと思ってね。あ、それとネクサス用の新しい装備も預かってるよ』

 

笑って誤魔化しながら本来の要件を伝える。

 

「ホント? それにネクサス用の新装備って…?」

 

『ふっふっふ、それは持っていってのお楽しみ~♪ それじゃあ、今から持ってくねぇ~』

 

「あ、ちょっと!」

 

フェイトが何か言う前にシャーリーは通信を切ってしまった。

 

「あの、忍君? 今の聞いて…」

 

「一応…聞いてはいたぞ」

 

色々と頭を悩ましている忍もネクサスび新装備と例のモノと聞いたら頭を切り替えたらしい。

 

 

 

それからしばらくして…

 

「いや~、これが純和風ってやつですか?」

 

アタッシュケースを持ってシャーリーがやってきました。

 

「はい。これがお土産の新装備。名前を『ライト・フューラー』と『レフト・フューラー』って言ってアームド系統の拳銃って聞いてるよ」

 

テーブルの上にアタッシュケースを置いて忍の方に差し出す。

 

「あと、こっちがユーノ君から預かった資料だよ」

 

アタッシュケースとは別にフェイトからユーノに預けていた古文書とその翻訳データの入ったメモリチップをテーブルに置く。

 

「これが…あの本の解読文の入った…」

 

そう言って忍はまずメモリチップを手に取っていた。

 

「多分、ネクサスの規格なら読み取り可能だから早速見てみたら?」

 

「では、早速」

 

シャーリーの言う通りにメモリチップをネクサスへと挿入してデータの呼び起こしをする。

 

ピピ…!

 

しばらくしてネクサスから投影ディスプレイが展開されて翻訳データが映し出される。

 

烈神拳(れっしんけん)

 

表示された最初の文字はそう書いてあった。

 

「烈神拳? それがこの古文書に記された武術の名か?」

 

そう呟き、忍は翻訳データを進める。

 

(いにしえ)よりある力。

 

魔・気・霊・妖。

 

これら四つの力を秘めし存在。

 

即ち、混血が扱う格闘戦術。

 

それがこの烈神拳である。

 

しかし、混血でも四つの力を秘めた存在は少ない。

 

よってこの本に記されし多くの技は力単体でも発動し、それらを駆使することで更なる効力を発揮することを主眼に置いている。』

 

最初のページに当たる記述なのだろう。

そのようなことが書かれていた。

 

「混血が使う、格闘術…」

 

そこから先は技の詳細な記述が続くばかりだった。

 

「(これは後でも覚えられるな…)」

 

ある程度読み進めた後、ディスプレイを消してアタッシュケースの方へと向き直る。

 

カチッ!

 

アタッシュケースを開けるとそこには…

 

「これは…」

 

「あら? トーラス・レイジングブルにデザートイーグル?」

 

何処からどう見ても地球製の拳銃にしか見えない代物だった。

どちらもマグナム弾を発射する拳銃として知られている。

 

「なんか、シュトライクス准将が知人から聞いた情報とサンプルを基にデバイス技術で作り上げたって聞いたよ?」

 

シャーリーが受け取る時に聞いたことをそのまま忍達に伝える。

 

「知人というと、アザゼル辺りかしらね」

 

カーネリアが言ってる間に智鶴がデザートイーグルっぽい銃を持って確かめる。

 

「でも、確かに普通の"ハジキ"とは質量から色々違いそうね。触った感じも軽く感じるし…」

 

「弾倉はあたしのセイバーや執務官のデバイスと同じリボルバー式のやつとマガジン式のやつか」

 

朝陽が横から覗いてそれぞれの目立った特徴を言う。

 

「朝陽ちゃんのセイバーと同じくECにも対応してるって話だよ? あと、魔力石だっけ? アレのおかげでECの弾種も広がったって」

 

すかさずシャーリーの補足説明がなされる。

 

「しかし、この口径の精密さ…普通の弾でも装填出来そうだな…」

 

フューラーを観察してからの一言に…

 

「流石にそれはないよ~。質量兵器は禁止されてるんだし、准将だってそんなことはしないってば」

 

シャーリーは笑って否定するものの…

 

「(本当にそうなのか?)」

 

忍は一抹の不安を抱いていた。

 

こうして忍は新たに戦う術として二挺拳銃と格闘技、さらには『眷属の絵札』というモノまで手に入れたのだった。

 

………

……

 

忍達が地球に帰還して数日が経った日のこと。

 

忍は何故か冥界に呼び出され…

 

「とう!」

 

とある集団の一員として活動させられていた。

 

その集団とは…

 

「我等は魔王戦隊サタンレンジャー! 私がリーダーのサタンレッド!」

 

「同じくサタンブルー!」

 

「めんどいけど、サタングリーン」

 

「レヴィ…じゃない、サタンピンクよ☆」

 

「……はぁ…サタンイエローです」

 

「何故俺まで…? サタンシルバー」

 

チュドーンッ!

 

それぞれの名乗りの後、色取り取りの爆発が背後で巻き起こる演出まである。

 

ちなみに場所はグレモリー領のとある山岳地域にある遺跡の前である。

そこには制服姿のリアスとイッセーの姿があり、開いた口が塞がらないという状態だった。

 

「(いやいやいやいやいや…!!?)」

 

そんな中、イッセーはかなり驚いていた。

 

「(魔王戦隊って…四大魔王様じゃねぇかよ!? しかもイエローは最強の女王様で、シルバーなんて俺の同級生じゃねぇかぁぁぁぁぁ!!!)」

 

その正体を察したため、心の中で絶叫していた。

 

「(あ~…あの様子だとイッセー君は気付いたっぽいかな? というかホントになんで俺までこの余興に駆り出されるの?)」

 

一応、事情はコスプレする前にある程度聞いてはいたものの、これに参加させられる意図が全く分からないサタンシルバーこと忍であった。

 

ただ…

 

「凄い魔力だけれど、何者かしら?」

 

リアスは魔王戦隊の正体がわからないでいた。

 

 

 

それからサタンレンジャーは遺跡の中へと一足先に入り、試練の間でイッセーとリアスの両名を待ち受けるのだった。

但し、サタンレッド、サタンイエロー、サタンシルバーの3名だけは遺跡の奥に位置するコロシアム風の天井のない広々とした空間で待機していた。

 

「それでサーゼクスさん」

 

「今はサタンレッドだよ、シルバー」

 

「(拘るなぁ…)で、レッド。俺をここに呼んだ理由は?」

 

マスク越しに真剣な眼差しでレッドに尋ねる。

 

「ふむ、理由は二つあってね。一つ目は君にもイッセー君と戦ってもらいたいんだ」

 

「(君にも? まさか、魔王直々にイッセー君と戦うんじゃ…)」

 

そんなシルバーの嫌な予感をよそにレッドは続ける。

 

「二つ目はこれが終わった後にしようか」

 

そう言ってる間に通路の方から足音が聞こえてきた。

 

「おめでとうございます、お二方」

 

イエローがやってきたイッセーとリアスにそう言った後…

 

「よくぞ、試練を乗り切った! しかし、兵藤 一誠君だけには追加試練として私とシルバーの2人と戦ってもらうぞ! 見事我等2人を倒してみせたまえ!」

 

「(やっぱりか…)」

 

レッドの口上にシルバーは軽く頭を抱えてやれやれといった感じであった。

 

「えええええええ!?!?」

 

イッセーもイッセーでかなり驚いていた。

 

「ふふふ、私のイッセーを甘く見ない事ね。彼はあの悪神ロキを倒した赤龍帝でもあるのよ。それを相手にするなんて良い度胸だわ!」

 

正体を知らないが故か、リアスはそんなことを言い出す。

 

「(ぶ、部長! そんなハードルを上げないでください! てか、目の前の人、あなたのお兄さんですから!)」

 

心の中でイッセーはその事実を声を大にして言いたそうだが、それを飲んでイエローとシルバーの方を助けを求めるように見る。

 

「……無理はなさらないように」

 

「……まぁ、彼とは手合せしたいと思ってたし、別にいいけど…」

 

イエローは諦めたように言い、シルバーはちょっと乗り気であった。

 

「(あっれぇぇぇ!?!? いいんですか!? あなたの夫は下級悪魔に本気なんですよ!? つか、忍! お前もお前でなんで乗り気なんだよ!!?)」

 

2人の思わぬ対応にイッセーは更に驚愕した。

 

「では、行くぞ!」

 

レッドの掛け声と共にシルバーが駆け出し、レッドが紅く輝く滅びの魔力を放つ。

 

ブオオオンッ!!

 

「ぎゃあああ!?!?」

 

イッセーは滅びの魔力を慌てて回避すると、滅びの魔力がコロシアムの一角を削り取った。

 

「(あれが魔王ルシファーの実力か…これは間近で見られるチャンスと考えた方が良いかもしれないな)」

 

「(ま、マジか?! サーゼクス様はマジなのか!?)」

 

レッドの攻撃にシルバーは冷静に、イッセーはかなり慌てた様子で篭手を出現させ…

 

「ドライグ! 禁手になるぞ!」

 

『漸くか。待ちくたびれたぞ!』

 

禁手のカウントダウンが始まる。

その間、レッドは謎のポージングをして攻撃する様子が無かったのでシルバーも空気を読んでその場で立ち止まる。

 

「変身中の攻撃はご法度だからね!」

 

「(律儀だな…)」

 

かくして…

 

『Welsh Dragon Balance Breaker!!』

 

赤い龍気が鎧を形成していき…

 

「行くぜ! サタンレッドにサタンシルバー!」

 

「さぁ、来たまえ!」

 

「(今更だが、二対一でいいのか?)」

 

無事に禁手が完了したイッセーVSノリノリなサタンレッド(サーゼクス)と、今更そんな心配をするサタンシルバー(忍)の戦いが始まった。

 

 

 

「まずはドラゴンショットだ!」

 

イッセーは初っ端からドデカい魔力弾を放つ。

 

「(力を増大させての一撃。前の俺なら回避に徹したが…)」

 

サタンレッドの前に移動したサタンシルバーはパンと両手を合わせると…

 

「蜘蛛の巣!」

 

妖力を両手に収束し、手を離すと共に両手の間に妖力で練られた糸を無数に紡ぎ出すと、それを前方に撃ち出してドラゴンショットを絡め取る。

 

「結界!」

 

さらに両手に収束した妖力を霊力へと即時に切り替え、両手を再び合わせると絡め取ったドラゴンショットを立方体型の結界に包んで無力化する。

 

「なんじゃそりゃ!?」

 

シルバーの手早い対処にイッセーは叫ぶ。

 

「返すぞ!」

 

そして、結界に絡め取ったドラゴンショットを霊力を纏わせた足でイッセーの方へと蹴飛ばす。

 

「解!」

 

その一言で結界と糸は消えると、イッセーに向かってドラゴンショットが返っていく。

 

「回りくどい反射だなぁぁ!?」

 

自分の撃ったドラゴンショットを龍翼を生やして空に回避しながらイッセーは叫ぶ。

 

「(確かに回りくどいな。別の組み合わせを考えないとな…)」

 

イッセーの言葉にシルバーも改善の余地ありと判断する。

 

「余所見はいけないね!」

 

そこへレッドが滅びの魔力を両腕に纏ってイッセーの鎧を削りに掛かる。

 

「げぇ!?」

 

その事実にイッセーは即座にレッドから距離を置こうとする。

 

「させるか!」

 

そこにシルバーが砲撃をイッセーの後退進路上に放つ。

 

「(忍の砲撃くらいならこの鎧で…!)」

 

イッセーは砲撃を無視して後退を続けようとするが…

 

『相棒、避けろ!』

 

ドライグが回避するように叫ぶ。

 

「え?」

 

イッセーがその言葉に反応するよりも早く…

 

ズガンッ!!

 

「がっ?!」

 

シルバーの砲撃がイッセーに直撃し、軽く吹き飛ばす。

 

「な、なんで!?」

 

前の忍の砲撃なら難なく鎧で防げたものの、今回はダメージを受けていたことに驚きを隠せないでいた。

 

「さてな」

 

当のシルバーは知らないフリをしていた。

 

ただ、この仕掛けは単純である。

忍は五気の内、龍気以外の力を扱えるようになっているため、魔力砲撃を霊力や妖力で強化したのだ。

その結果、禁手状態のイッセーにもダメージを与えられるくらいに威力を持たせることが可能になった。

 

『あの狼、異なる力を一つに合わせたらしいな。だから鎧に対しても少なからずのダメージを与えられるようになったと見た』

 

「(マジかよ!? あいつ、いつの間にそんなのまで…)」

 

ドライグの分析にイッセーはシルバーを見た。

 

『お前もうかうかしてられんぞ。お前の成長も著しいが、あの狼の成長速度も異常だからな』

 

「(あぁ!)」

 

イッセーは気持ちを切り替えると、今度は散弾式のドラゴンショットをレッドとシルバーに向けて撃ち出す。

 

 

 

そうして十分が過ぎた頃…。

 

「ぜぇ…はぁ…ぜぇ…はぁ…」

 

「どうした、兵藤 一誠君! 君のリアスへの想いはその程度なのか!?」

 

息を切らしたイッセーを見てレッドが叫ぶ。

 

「(2人相手によく善戦したと思うけどな…)」

 

シルバーはシルバーで力の解放こそしなかったが、新たな力『烈神拳』を上手い具合に混ぜた攻防でイッセーを翻弄していた。

 

この様子は既にマスクを脱いで正体を明かした状態の残りの四大魔王が観戦していた。

 

その後、イッセーはタンニーン直伝の龍の息吹をレッドとシルバーに向けて放つも、レッドは滅びの魔力で文字通り打ち消し、シルバーは吹雪を発生させて相殺するというやり方でそれぞれ回避していた。

 

それでも一矢報いてやりたいと考えていたイッセーにイエローが打開策を与えた。

単純にしてイッセーに対して効果抜群の方法。

それは…リアスの胸を触ること。

これによってイッセーは絶大な力を発揮し、特大のドラゴンショットを撃ち出したのだった。

しかし、この一撃をレッドは打ち消したのだ。

 

その隙にサタンレンジャーは姿を消していた。

その後に出てきた四大魔王…特にアジュカ・ベルゼブブによってイッセーは新たな可能性のカギを手にしたのであった。

そして、その際にグレモリー眷属VSバアル眷属のレーティングゲームが決定したことがリアスとイッセーに告げられた。

 

 

 

それぞれがグレモリーの(やしき)に帰還した後のこと…。

但し、イッセーとリアスはまだ帰還途中。

 

「それで…俺に一体何の用なんでしょうか? 魔王様方」

 

忍は今回の件で呼び出された本題を聞くために四大魔王の元を訪れていた。

 

「ミカエル殿から面白いものを渡されたそうじゃないか」

 

アジュカが開口一番にそう聞いてきた。

 

「えぇ、まぁ…」

 

「眷属集めの方も順調かな?」

 

「そっちは残り6枠あります」

 

「ふむふむ。後6枠か。若手悪魔とのゲームまでにはフルメンバーを揃えてもらいたいものだが…」

 

アジュカと忍の他愛のない会話を聞いてか…。

 

「アジュカ、そろそろ本題に」

 

サーゼクスが先を促す。

 

「ん、わかったよ。では、次元辺境伯殿」

 

「はい」

 

次元辺境伯と言われた瞬間、忍も頭を切り替える。

 

「修学旅行だったかな? その前にセラフォルーや神宮寺 紅牙達と共に冥族の集落げと赴いてほしい」

 

「遂に、ですか…」

 

その言葉に冥族との和平の第一歩が始まろうとしていたのがわかった。

 

「あぁ、眷属の駒の二号版も作っておいたから神宮寺 紅牙に渡してほしいんだよ」

 

「紅牙に、眷属の駒を…?」

 

「うむ。彼らともこれからは共存するのだから技術提供は当然のことだろう?」

 

「わかりました。紅牙には俺から…?」

 

「あぁ、その方が助かる」

 

そのやり取りの後、忍はアジュカから駒の入ったケースを受け取ると…

 

「で、それだけですか?」

 

違和感を感じていた忍はそう四大魔王に尋ねていた。

 

「ふむ、流石に気づくか」

 

「まぁ、こういう時はサーゼクスさんが色々と話してますからね」

 

その違和感とはアジュカが話し続けていることだった。

 

「やっぱり慣れないことはするもんじゃないね。サーゼクス、あとは頼んだ」

 

「わかった」

 

アジュカからサーゼクスに交代し、本当の本題が始まる。

 

「忍君は『現世の神』という男のことを知ってるかな?」

 

「? いえ、知りませんが…」

 

話の意図が見えず、怪訝な表情で答える。

 

「彼は…今でこそ和解したが、それ以前に誕生した…天使と悪魔の血を引くハーフでね」

 

「天使と悪魔のハーフ!? そんな存在が…」

 

「いるんだよ。とても信じられないと思うがね」

 

「しかし、何故『現世の神』なんて…」

 

「彼の力は常軌を逸していてね。相反するはずの聖と魔の力を自在に操る事が出来るんだ。その様は正に"現世に顕現せし神の如く"、という意味合いも込めてそう呼ばせてもらっている」

 

「…………」

 

その事実に忍は開いた口が塞がらない様子だった。

 

「ここ何年かは行方が分からなかったんだが、最近になって漸く足取りが掴めてね」

 

「……何処にいるんですか?」

 

嫌な予感を感じつつも忍は尋ねた。

 

「冥族の集落だ。それも訪問先に指定している地域でね」

 

「こりゃまた…厄介なことになりそうだな…」

 

それを聞いて忍はイッセーとは違った意味で自分も色々と巻き込まれやすい体質なんだと改めて自覚したのだった。

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