魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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第四十六話『修学旅行三日目・英雄達との戦乱』

修学旅行も三日目である。

 

イッセー達のグループは午前中から嵐山方面を攻めていた。

その途中、天龍寺で初日にイッセーと忍を襲撃し、昨日それを謝罪した九尾の御大将の娘『九重(くのう)』が案内を申し出ていた。

 

昼食時、同じく湯豆腐を食すためにやって来た木場のグループや萌莉のグループ、昼酒を飲むアザゼルとそれを咎めるロスヴァイセ、さらに同じく京都に修学旅行に来ていたクリス達私立リディアン音楽院の二年生グループといったメンバーと遭遇していた。

 

「げっ、忍!?」

 

「よぉ、クリスもこっちに来てたのか」

 

この一言ずつで互いのグループから追及を受けることになる。

 

「し、忍! お前、リディアンの生徒と知り合いだったのか!?」

 

「し、しかもあんな美少女と! 明幸先輩に言いつけるぞ!」

 

松田と元浜が忍に問い詰め…

 

「ね、ね、雪音さん。あの人とどういう関係なの?」

 

「見たところ駒王学園の生徒だよね?」

 

クリスと一緒にいた女生徒達もクリスに詰め寄っていた。

 

「いや、その…何と言っていいのやら…」

 

忍がお茶を濁そうとする一方…

 

「べ、別に忍とは"居候同士"だし、特にそんな関係とかは…」

 

クリスは不用意な一言を言ってしまっていた。

 

「「「「「居候同士!?」」」」」

 

事情を知らない一般生徒からしたら驚くに値する事実だったらしく皆一様に大声を出した後、すぐに周りの他のお客さんに対して謝っていた。

 

「(あちゃ~…)」

 

表情には出さないが、忍も内心で頭を抱え…

 

「あ…」

 

クリスも自分の失言に今更ながら気づいたようだ。

 

「忍! お前、明幸先輩と同居してるだけでなく、そこの銀髪巨乳美少女とも同棲してんのか?!」

 

「なんて羨ま…いや、()しからん奴だ!」

 

松田と元浜がさらに問い詰めるが…

 

「いやぁ、ここの湯豆腐は美味いな」

 

忍は湯豆腐を堪能するのだった。

 

「「誤魔化すな!!」」

 

それでも松田と元浜の追及は終わらなかった。

 

「雪音さん、本当なの?」

 

「あんなカッコいい人と同居してるとか…」

 

「でも、話を聞く限り向こうには恋人らしい人がいるように聞こえるんですが…?」

 

「それは…その、なんだ…」

 

こっちはこっちで矢継ぎ早に問われるのにどう対応していいのやら困るクリスの姿があった。

 

ちなみに…

 

「美味しい?」

 

『きゅっ!』

 

萌莉は大きめのバッグの中に入れているファーストに湯豆腐を隠れながら食べさせていたりする。

 

「あはは、若いってのはいいもんだねぇ」

 

そんな光景を見てアザゼルも笑っていた。

 

「聞いてるんですか?! アザゼル先生!」

 

ロスヴァイセに説教をされながらだが…。

 

その後、昼食を取ったそれぞれのグループが店を出ると、それぞれの目的地へと足を運ぶのだった。

そして、イッセー達が渡月橋を渡り切った時だった。

ぬるりとした生暖かい感覚がイッセー達(三大勢力及び妖怪などの関係者)を包んでいた。

 

………

……

 

「な、なんだ?」

 

「これは…霧?」

 

京都の街並みのはずなのに、そこにはイッセーや忍達以外の人間はいなかった。

差異があるとすれば、足元に霧があることぐらいだろうか…。

 

「お前ら、無事か?」

 

「イッセー君!」

 

「忍!」

 

「し、忍さん!」

 

そこへ空から黒い翼を広げたアザゼル、地上からは木場、クリス、ファーストの入ったバッグを担いだ萌莉が合流していた。

 

「こいつはおそらく『絶霧(ディメンション・ロスト)』の仕業だろう」

 

絶霧(ディメンション・ロスト)』。

13ある神滅具(ロンギヌス)の中でも上位に部類される神器である。

その能力は霧で包み込んだものを任意の場所へと転移させることも可能で、使い方によっては国一つ滅ぼすことが出来ると言われている。

 

皆が合流したのを見計らったかのように渡月橋の反対側に複数の気配が現れる。

 

「! 何か来ます!」

 

それを匂いで探知した忍が叫び、それに応じて各自臨戦態勢に移る。

 

「噂通り、随分と鼻が良いようだね。それと初めまして、アザゼル総督、冥王に連なる人狼、そして赤龍帝」

 

渡月橋の中央まで歩いてくる人物がそう言って軽い挨拶をする。

その人物は黒髪で学生服の上から漢服らしき民族衣装を羽織り、その手には不気味なオーラを放つ槍を持っていた。

 

「お前さんが噂の英雄派を束ねてる男か?」

 

アザゼルが前に出ると、槍を持つ男に尋ねる。

 

「えぇ、『曹操(そうそう)』と名乗らせてもらっている。一応、三国志で有名な曹操の子孫…ってことになるけどね」

 

アザゼルの問いに曹操と名乗った男はそう答える。

 

「全員、あの男の持つ槍には絶対に気をつけろ。最強の神滅具『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』。神をも貫く絶対の神器。神滅具の代名詞となった原物だ」

 

その言葉に神器を知る者は誰もが険しい表情をする。

わかっていないのはそれほど詳しくないイッセー、忍、クリス、萌莉などだったりする。

 

「貴様! 一つ訊くぞ!」

 

あおこに九重が憤怒の形相で曹操に叫ぶ。

 

「これはこれは小さき姫君。わたくし如き者に一体何を聞きたいのでしょうか?」

 

平然としてるが、明らかに何かを知ったような口調である。

 

「母上をさらったのはお主達か!?」

 

「左様で」

 

九重の問いをあっさりと肯定する。

 

「母上をどうするつもりじゃ!」

 

「お母上には我々の実験にお付き合いしていただくだけですよ」

 

「実験? お主達、何を考えておる?」

 

「ふむ…強いて言うならスポンサーの要望を叶えるため…と言っておきましょうか、建前上は」

 

曹操の答えを聞いて九重は歯を剥き出しにして悔しそうに涙を流していた。

 

「スポンサー…オーフィスか? しかし、解せん。俺達に姿を見せた理由は何だ?」

 

「隠れる理由がなくなったからですよ。それと実験前に挨拶と手合わせをと思いましてね」

 

不敵な曹操の発言に…

 

「わかりやすくて結構なこった。九尾の御大将を返してもらうぜ?」

 

光の槍を構えるアザゼルに続き、各自戦闘モードに移行する。

その際、イッセーは籠手からアスカロンを抜いてゼノヴィアに投げ渡していた。

 

「ふむ…ザッと見て悪魔が多いかな? なら、レオナルド。悪魔用のアンチモンスターを頼む」

 

曹操は自分の隣にやって来た男の子…『レオナルド』にそう頼んでいた。

 

すると…

 

ブゥンッ…

 

男の子の足元から不気味な影が広がり、そこから100体ものモンスターが現れる。

モンスターの肌は黒く、体は肉厚であり、爪も鋭く、牙も剥き出しという風貌だった。

 

「『魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)』か」

 

アザゼルの表情が少し険しくなる。

 

魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)』。

13ある神滅具の中でも絶霧と並び、上位に部類される神器。

その能力は所有者のイメージした魔獣を創造することが出来る能力を持ち、所有者の想像力次第では映画に出てくるような怪獣も創造出来る。

さらに使い手次第ではそれを数十、数百単位で創造してしまう危険極まりない代物だったりする。

 

「ご名答。さらに言ってしまえば、レオナルドはアンチモンスターを生み出す才に恵まれていてね。これまで刺客を送り込んでデータ収集をしてきたから悪魔、天使、ドラゴンなどメジャーな存在のアンチモンスターなら創れるようになったよ」

 

「それに加えて禁手使いも増やす算段もしてるとは…厄介極まりないが、神殺しの魔物だけは創れてないようだな?」

 

「…………神はこの槍で屠るからいいのさ」

 

曹操とアザゼルの会話が終わった瞬間…

 

「さ、戦闘(ゲーム)の始まりだ」

 

曹操の言葉が開戦の合図となる。

 

「お前の相手は俺がしてやるよ。禁手化(バランス・ブレイク)

 

そう言うとアザゼルは人工神器に黄金の龍王・ファーブニルを封じた宝玉をセットすると、手早く禁手化して黄金の鎧を纏い、黒き翼を広げる。

 

「これは光栄の極み! かの聖書に記されし堕天使の総督がこの俺と戦ってくれるとは!」

 

まるで芝居がかったような口調で槍を構えると、槍の先端が開いて光り輝く金色のオーラで刃が形作られる。

 

そして、アザゼルと曹操は互いに槍での攻撃をしながら川の下流へと移動していった。

アザゼルが曹操との戦闘を開始した直後…

 

「萌莉は後方待機。クリス、後方支援を頼む」

 

忍はテキパキと自分の眷属達に指示を送っていた。

 

「(忍の奴、慣れてやがるな…俺だって!)」

 

忍の姿を見てイッセーも考え出す。

 

「(部長達はいない。なら、誰でもいいから部長の代わりをしないとならない。こういう時、部長ならどうする?)」

 

イッセーはリアスがどのように考えて眷属を動かすか考えた。

 

「ゼノヴィア! アーシアと九重の護衛を頼む!」

 

「ッ! クリス! ゼノヴィアさんと連携してくれ! 萌莉はアーシアさんと九重ちゃんと合流するんだ!」

 

イッセーがゼノヴィアに指示を出すのと同時に忍もクリスと萌莉に追加指令を与えていた。

 

「っ! 了解だ!」

 

「ったく、しゃあねぇな!」

 

「は、はい…!」

 

言われた通りに萌莉はアーシアと九重と合流し、その3人をゼノヴィアとクリスが守りながら後方支援をするという構図になった。

 

「すまねぇ、忍!」

 

「気にしないでくれ! それよりも俺も前線に立つ! 対悪魔モンスターなら俺にはダメージは少ないからな」

 

そう言って忍はファルゼンを起動させて木場と共に前線に立った。

紅神眷属は実質2人しかいないため、役割を決めたら忍が前線に立つのは当然とも言える。

 

「あ、待てよ、忍!?」

 

忍から少しアドバイスでも貰おうと考えていたイッセーだが、忍が前に行ってしまった以上、自分で考えるしかなく、無い知恵をフル回転させて何とかしようとする。

 

「(あ、そうだ!)木場! お前、光を喰らう魔剣を創れたよな?!」

 

「え? うん………そうか!」

 

イッセーの意図を察した木場は魔剣の柄を創り出すと、それを眷属悪魔に放り投げる。

 

「それは普段、柄のみだ。闇の刀身を出したい時は魔力を送ってくれ!」

 

木場の補足説明を受け…

 

「ゼノヴィアはそいつを使って光を吸って防御してくれ! アーシアも不慣れだろうけど、ないよりマシだから持ってくれ!」

 

イッセーはゼノヴィアとアーシアにそう指示を付け足していた。

 

「やるな、イッセー!」

 

「は、はい!」

 

イッセーの指示にゼノヴィアとアーシアが答えて、それぞれ魔剣を持つ。

 

「イリナ! 悪いが、ゼノヴィアの代わりに木場や忍と一緒に前線に立ってくれ! 天使なら光の攻撃は平気だよな?!」

 

「確かに弱点じゃないけど…ダメージは受けるんだよ!? でも、わかったわ。私はミカエル様のA(エース)だもん!」

 

イリナが前線に加わり、3人の戦士によってアンチモンスターを屠っていく。

 

「よし、俺も行くぜ、プロモーション・僧侶!」

 

アスカロンの抜けた籠手に闇の剣の柄を差し込むと、そこから闇の盾が形成され、さらに僧侶にプロモーションしたことでイッセーの魔力が底上げされる。

 

「ドラゴンショット、乱れ撃ちだ!」

 

イッセーはクリスのように中距離での砲撃手となって皆を援護していた。

 

「赤龍帝の相手は私達がします!」

 

そんなイッセーの元に英雄派の女性戦士達が複数で向かってくる。

 

「っ! やめておけ、女性では赤龍帝に勝てないよ!」

 

白髪の優男がそう叫ぶが…

 

「プロモーション解除からのプロモーション・騎士! ついでに広がれ、俺の夢空間!」

 

時既に遅しと言わんがばかりにイッセーから謎の空間が広がる。

さらにイッセーは僧侶から騎士へと昇格変化を行い、速度を上げた上で乳の語る言葉に従って女性戦士達の攻撃を避けていた。

回避の際、女性戦士に触れることも忘れない。

 

「『洋服崩壊』!」

 

そして、女性戦士達の制服をバラバラにしていた。

 

「きゃああああ!?」

「魔術が施された服が…役に立たないなんて!?」

 

イッセーの洋服崩壊を喰らった女性戦士達は堪らず、近くの民家に駆け込んでいた。

 

「さ、最低な技じゃな。これほど酷い技は生まれて初めてじゃぞ…」

 

まだ幼い九重でさえこの反応である。

イッセーの精神は少しダメージを負った。

 

「やはり、女で赤龍帝は勝てないか」

 

白髪の優男はそう言うと…

 

「じゃあ、僕が相手になろうかな?」

 

一歩前に出て腰に帯刀していた複数ある剣の内の一本を抜く。

 

「初めまして、グレモリー眷属に噂の紅神眷属。僕の名はジーク。仲間からは『ジークフリート』と呼ばれてる。ちなみに英雄シグルドの末裔さ」

 

そう白髪の優男…ジークフリートは自己紹介していた。

 

「『魔帝(カオス・エッジ)ジーク』…!」

 

「そんな! 教会を裏切ったの!?」

 

ジークフリートの自己紹介を受け、ゼノヴィアとイリナが反応する。

 

「知り合い?」

 

斬艦刀にしたファルゼンを一薙ぎしてアンチモンスターを片付けながら忍が尋ねる。

 

「教会の悪魔祓いで教会内でも上位に入るほどの実力者だ。だが、この様子では"元"のようだが…」

 

その問いにゼノヴィアが答えると…

 

「まぁね。今は禍の団に所属してるわけだし…とまぁ、それはともかく剣士同士、剣で語ろうじゃないか。デュランダルのゼノヴィア、天使長ミカエルのA・紫藤 イリナ、聖魔剣の木場 祐斗。それと君もどうだい? 叢雲流魔剣術の叢雲 萌莉」

 

「っ!?」

 

思わぬ指名に萌莉はファーストの入ったバッグをぎゅっと抱きしめる。

 

「あらら、嫌われちゃったかな?」

 

萌莉の反応を見てジークフリートがそう呟いていると…

 

ガギィィィンッ!!

 

前線を忍に任せた木場が神速の速度で聖魔剣を振るったが、それをジークフリートは手にした魔剣で防いでいた。

 

「魔帝剣グラム。魔剣最強のこれならその聖魔剣も受けられる」

 

そう言って木場と鍔迫り合いを見せるジークフリートに…

 

「でやぁ!」

 

3人の護衛をクリスに任せたゼノヴィアが加勢に入る。

 

「おっと」

 

それを難なく避けるが…

 

「はぁ!」

 

背後からイリナが光の剣を突き刺そうとしている。

それに合わせるようにゼノヴィアが跳躍からの剣を振り下ろし、木場も神速を用いた撹乱戦法で死角を突く構えを取る。

 

「ふむ」

 

しかし、ジークフリートはグラムを背に回してイリナの攻撃を防ぐと、空いた方の手でもう一本魔剣を引き抜いてゼノヴィアの攻撃を弾く。

 

「バルムンク。北欧に伝わる伝説の魔剣の一本さ」

 

それでもまだ木場の攻撃が終わっていない。

死角を突いた攻撃は誰もが決まったと思わせたが…

 

ギィィィンッ!!

 

「残念。これも伝説の魔剣の一本、名はノートゥングという」

 

そう言って木場の攻撃を防ぐジークフリート。

その背中から銀色の鱗で覆われた腕が生えており、それが三本目の魔剣を抜いて木場の攻撃を防いでいたのだ。

 

「「「っ!?」」」

 

「この腕が気になるのかい? これは『龍の手(トゥワイス・クリティカル)』。ありふれた神器の一つだけど…見ての通り、僕のそれは特殊でね。亜種なんだ。それがどういうわけか背中から生えてきてね」

 

驚く皆を前にジークフリートは悠々と説明を始める。

それを知って一度ジークフリートから離れる。

 

「同じ神器使い…! けど、あっちは剣の特性どころか、神器の能力も出してない…!」

 

木場が珍しく苦虫を噛み潰したような表情でジークフリートを見る。

 

「あ、ついでに言うと禁手にもなってないけどね」

 

「なっ…?!」

 

この発言で、木場も言葉を失う。

これまでの攻防をジークフリートは素の状態でやってのけたということになる。

 

この攻防で互いに一旦戦力を退いたところにアザゼルと曹操がそれぞれの陣に戻る。

見ると、2人の戦闘後の下流方面は…煙を上げ、荒地、焦土と化していた。

 

「心配すんな。お互い本気じゃねぇよ。ただの小競り合いだ」

 

アザゼルはそれだけ言っていた。

というか、小競り合いだけで地形が変わるというのも甚だ迷惑な気がする。

ここが通常空間でなかったことだけでも幸いか…。

 

その後、ヴァーリチームの魔法使い『ルフェイ・ペンドラゴン』と古代の神が造りしゴーレム的な量産破壊兵器『ゴグマゴグ』の乱入によって戦闘継続が困難と判断した英雄派がグレモリー眷属と紅神眷属、アザゼル達を元の空間に戻そうとしていた。

 

ただ、その際…

 

「我々は今夜この京都という特異な力場と九尾の御大将を使い、二条城で一つ大きな実験をする! 是非とも制止するために我らの祭りに参加してもらいたい!」

 

曹操はそれだけ告げていた。

 

そして、元の空間に戻った際に混乱が起きないように皆、戦闘形態をすぐさま解いていた。

 

その短くも長いような時間を過ごしたイッセー達は未だ冷めぬ戦闘特有の昂揚感に身を置き、険しい表情のままだったが、何とか平静を取り戻そうと努めながら、それを知らない松田や元浜、桐生達、グループの友人と残りの自由時間を過ごすのだった。

 

………

……

 

その夜、就寝時間を間近にしてイッセーと忍の部屋にグレモリー眷属+イリナ、シトリー眷属、萌莉、紅崎姉妹、アザゼル、レヴィアタンが集結していた。

クリスは別校なので仕方なく欠席している。

 

しかし、八畳一間にこれだけの人数が入ると、窮屈極まりないので立ち見や押し入れなど入れる場所やスペースを使って作戦会議に参加しているのが現状である。

 

作戦概要は以下の通りになった。

 

まず匙を除いたシトリー眷属は京都駅周辺で待機し、不審者が近づいてきた場合は全員で当たること。

 

次にグレモリー眷属+イリナに加えて匙はオフェンス。

要は九尾の御大将を奪還する任務を与えられている。

 

残った紅神眷属…その内、萌莉はシトリー眷属と共に京都駅周辺で待機、クリスはもとものためにリディアン側の防衛に徹するように指示が出る。

忍は匙と同じくグレモリー眷属に同行することになっている。

 

紅崎姉妹は雲雀がシトリー眷属に同伴し、忍の監視とグレモリー眷属への同行には緋鞠がついていくことになった。

 

さらに九尾の御大将の拉致事件及び、英雄派の実験の事は既に各勢力に通達されており、京都の外では悪魔、天使、堕天使、妖怪などの勢力が集結している。

その指揮をするのが魔王レヴィアタンとなる。

 

アザゼルは空から独自に英雄派を捜すそうだ。

 

また、ソーナ会長には連絡したが、リアス達にはグレモリー領での暴動が起きてしまい、伝わっていなかったりする。

ちなみにこの暴動を止めるべくリアスの母こと『亜麻髪の絶滅淑女(マダム・ザ・エクスティンクト)』、リアスこと『紅髪の滅殺姫(ルイン・プリンセス)』、リアスの義姉・グレイフィアこと『銀髪の殲滅女王(クイーン・オブ・ディバウア)』が揃って出陣したとかどうとか…。

 

作戦会議後。

近くで痴漢事件が発生し、偶然居合わせたアザゼルによって撃退されたものの…その痴漢から赤い宝玉が出てきて、それがイッセーの可能性だと発覚した。

ここ連日の痴漢事件の増加はこの可能性の仕業ということも判明した。

なんて傍迷惑な可能性だろうか…。

 

そして、作戦開始時刻となり、オフェンス陣が二条城へバスで向かうべく京都駅のバス停に赴いた際、九重がイッセーに肩車するように飛びつき、同行を懇願していた。

ちなみに忍は緋鞠と共にアステリアに乗り、バス停の近くで待機している。

 

その時だった。

オフェンス陣の足元に霧が立ち込め、昼間に襲った感覚が再び起きたのだった。

そして、イッセーと九重、木場とロスヴァイセと匙、教会トリオ、忍と緋鞠といった組み合わせでそれぞれ異空間の別地点に転移させられてしまった。

バラバラにされたオフェンス陣は連絡を取り合い、二条城での合流となった。

しかし、バラバラに転移させられた先にはそれぞれの刺客が待っていた…。

 

 

 

イッセーや木場と連絡を取った後…

 

「で、どうすんのよ?」

 

アステリアの後部に横向きで座る緋鞠が連絡を終えた忍に尋ねる。

 

「とにかく、二条城を目指す。幸いアステリアも一緒に飛ばされたからな。俺達はこれで向かう」

 

「わかったわ」

 

「途中で英雄派の刺客に遭遇する可能性もあるから戦闘準備は怠らないようにしてかないとな」

 

そう言いながら周囲の匂いを確認しながらアステリアに跨る。

 

「ふ~ん…」

 

それを聞いて緋鞠はちょっと感心したような声を出す。

 

「な、なんだよ?」

 

「いえ、ちゃんと考えてるのね、って思ったのよ。あんな力を暴走させた人間の発言とは思えないくらいにね」

 

「ぐっ…」

 

先のグレイスとの一戦で見せた龍騎士の暴走のことを言われ、忍は何も言えないでいた。

 

「……発進する」

 

「ちょ、待ちなさいよ!」

 

忍の言葉に緋鞠は慌てて忍の腰に手を回す。

 

ブロロロロ…!

 

忍はそれを確認するとアステリアを発進させる。

 

 

 

それを近くの寺院の屋根から見る影が二つ。

 

「やれやれ…旧魔王派、フィロス帝国の次は英雄派に肩入れか。"あの方"も人使いが荒いわな…」

 

「そう言うな。これも"あのお方"の計画のためだ」

 

それはいつだったか、忍とイッセーをブリザード・ガーデニアへと転送した黒ローブの背後に控えていた6人のローブを頭まで被ったグループの内の2人だった。

 

「わぁってますよ、っと。ほんじゃま、それなりに仕事しますか」

 

「そうだな…」

 

バッ…!

 

そう言うと、ローブを被った二つの影は寺院の屋根から飛び降り、二条城へと向かう忍と緋鞠の元へと魔法陣を伝って何度も跳躍するのだった。

 

 

 

それを察知したのか…

 

「後方から追跡者が二名、前方にはアンチモンスター群…」

 

忍はそう呟いていた。

 

「敵?」

 

忍から発せられる警戒的な気を読んだのか、緋鞠はそう尋ねた。

 

「あぁ、恐らくは…」

 

そう答えると、忍はネクサスの起動コードを入力する。

 

「セットアップ!」

 

アステリアの走行方向に魔法陣が現れ…

 

バリィンッ!

 

魔法陣を通り抜けると同時に魔法陣が砕け散り、忍の体にバリアジャケットが纏われる。

 

「ライト・フューラー、レフト・フューラー、起動。アステリア、走行は任せる!」

 

『了解』

 

アステリアに走行を任せると…

 

「ハウリング・マグナム!」

 

ドォンッ!!

 

双銃をアンチモンスター群に向け、カートリッジ一発分の魔力砲撃をアンチモンスターへと発砲していた。

 

「ちと燃費は悪いが、威力は相応だぜ?」

 

ドゴォンッ!!

 

その魔力砲撃は着弾すると共に爆発してアンチモンスター群を一掃する。

 

「このまま押し通る!」

 

「無茶苦茶するわね!?」

 

忍に引っ付いていた緋鞠が抗議するような声を出す。

 

魔剣創造(ソード・バース)

 

だが、その声と共にそれを阻むかのような勢いで空から無数の魔剣が降り注いで地面に突き刺さる。

 

「っ!?」

 

キィィッ!!

 

その光景に忍は思わず車体を横に向けて急停止を行っていた。

 

「これは…木場君と同じ神器!?」

 

忍が驚いていると…

 

シュタッ!

 

「ピンポ~ン♪ とは言え、俺の神器じゃないけどさ」

 

「………」

 

ローブの纏った二人組が魔剣を挟んで忍と緋鞠の反対側に降り立つ。

 

「お前達は…英雄派か?」

 

警戒しながらアステリアを降りる忍は目の前のローブに対して質問していた。

緋鞠もいつでも動けるようにアステリアから降りる。

 

「ん~、一応は英雄派…の食客かな?」

 

何とも曖昧な返答である。

 

「ま、別に俺らがどこの誰だっていいじゃん。要は殺し合えれば、さ」

 

そう言うとよく喋る方のローブは巨大な鎌を何処からともなく取り出す。

 

「あ、こいつは死神の鎌だよ。文字通り、魂を刈り取るぜ?」

 

鎌を忍と緋鞠に向けながら微かに見える口元がニヤリとした笑みを浮かべる。

 

「喋り過ぎだ…行くぞ」

 

ジャキンッ!

 

もう片方のローブが両手によく似た形状の剣を創り出すと、一気に忍と緋鞠に向けて駆け出す。

 

「はいよ!」

 

鎌を持ったローブもまた空中を蹴って忍と緋鞠に向かう。

 

「緋鞠さん! お前は双剣使いを頼む。俺は死神を相手する!」

 

ライト・フューラーを待機状態に戻すと、代わりにファルゼンを起動させて死神ローブを相手するべく空中を蹴って移動する。

 

「あたしに命令しないで!」

 

そうは言うものの緋鞠も双剣ローブを相手するべく自らの爪を伸ばして素早く移動する。

 

 

 

「あらよっと!」

 

大振りなモーションで鎌を振るう死神ローブ。

 

「はっ!」

 

それを忍は空中を蹴って頭上に回避すると、レフト・フューラーを死神ローブに向けて魔力弾を発砲する。

 

「おろ、っと」

 

その魔力弾を死神ローブは鎌を軸に回転しながら回避してみせるが、傍から見たらふざけてる様にしか見えない。

 

「(こいつ、ふざけてんのか? それともわざと…?)」

 

その動きをどう捉えていいのかわからず、忍も困惑する。

 

「(いやぁ~、適当に遊んで帰りますか)」

 

忍の困惑など無視して死神ローブはそんなことを考えていた。

 

 

 

「はぁ!」

 

伸ばした爪に紅蓮の焔を灯しながら緋鞠は双剣ローブと打ち合っていた。

 

「っ!」

 

ヒュッ!

 

距離が開くと同時に双剣ローブは自らの武器である双剣を緋鞠に投擲した。

 

「ふんっ!!」

 

それを緋鞠は爪で弾き飛ばすが…

 

「………」

 

双剣ローブは"投擲した双剣と全く同じ双剣"を創り出すと、緋鞠に急接近する。

 

「ちっ!」

 

緋鞠は思わず回し蹴りでそれを迎撃する。

 

「………」

 

それを双剣ローブはバッと後ろに飛び退くことで回避する。

 

 

 

シュタッ!

 

互いに数合だけ打った後、忍と緋鞠はアステリアのそばに着地し、それと相対するようにローブコンビも着地する。

 

「ん~…ま、こんなもんかな?」

 

鎌を首の後ろに横向きで担ぎ、そこに両腕を絡めながら死神ローブは呟く。

 

「曹操達なら二条城の本丸御殿で待ってるよ」

 

「なに…?」

 

あっさりと曹操達の居場所を教えた死神ローブに忍は疑問を抱く。

 

「はい、俺らのお仕事終了。お疲れちゃ~ん♪」

 

言うが早いか、手早く転移陣を敷くとローブコンビはその場から姿を消していた。

 

「なんだったのよ、あいつら…」

 

「わからん。が、今はともかく急いで皆と合流しよう」

 

「えぇ…」

 

忍と緋鞠は疑問を抱きながらもアステリアに乗ると、二条城を目指して再び発進した。

 

………

……

 

忍と緋鞠が二条城に到着した時には既に他メンバーがの揃っていた。

 

「忍、随分遅かったな」

 

「来る途中で刺客と遭遇したのかい?」

 

アステリアから降りる忍に既に禁手状態のイッセーと木場が近寄って尋ねる。

 

「あぁ…それらしい人物2人と少しだけやったが…勝手に向こうから退いちまった」

 

それを聞いてイッセーと木場は顔を見合わせる。

聞けば、どちらも刺客達と戦い、撃破してきたという…。

 

「あいつらは自分の事を英雄派の食客と言っていた。つまり、外部からの助っ人か、協力関係にあるのかもしれないな」

 

「英雄派と繋がりのある組織、か…」

 

「何がなんやらだな…」

 

忍の言葉に木場は神妙な面持ち、イッセーは頭を掻いていた。

 

「あ、それとその内の1人が木場君と同じ神器を使ってたよ?」

 

「魔剣創造を…?」

 

「あぁ、そっちは緋鞠さんに任せたけど…」

 

そう言って微かに見た緋鞠と双剣ローブの戦いを思い返してみる。

 

「木場君と違って同じ剣を何度も創ってそれを使い捨てにしてるような感じだったかな? 俺が相対したわけじゃないから全貌までは把握出来なかったけど…」

 

そうこう話してる内に…

 

ゴゴゴゴゴ…!!

 

二条城の巨大な門が開く。

 

「英雄派は演出好きなのか?」

 

「だね。向こうもお待ちかねのようだ」

 

「ったく、舐めやがって…!」

 

そして、全員で敷地内へと入り、本丸御殿を目指す。

 

 

 

本丸御殿に到着した一行を待ち構えていた英雄派との戦いはゼノヴィアのフライング先制攻撃で開始した。

 

また、英雄派は京都という特異な力場と、そこを治める九尾の御大将の力を用いてグレートレッドを呼び出すことにあった。

そして、呼び出したグレートレッドを調査したいような発言もしていた。

 

対戦カードは以下のような感じだ。

 

木場&錬金術によってエクスカリバーを鞘として用いた新生デュランダル『エクス・デュランダル』を持つゼノヴィアvsジークフリート。

 

イリナvs英雄ジャンヌ・ダルクの魂を受け継ぐ神器『聖剣創造(ブレード・ブラックスミス)』を保有する女性『ジャンヌ』。

 

ロスヴァイセvs英雄ヘラクレスの魂を受け継ぐ神器『巨人の悪戯(バリアント・デトネイション)』を保有する巨躯の男『ヘラクレス』。

 

龍王変化(ヴリトラ・プロモーション)』した匙vs洗脳されて巨大な九尾の狐と化した九尾の御大将『八坂』。

 

そして、イッセー&忍vs曹操。

 

緋鞠はアステリアと共にアーシアと九重の護衛となっている。

 

しかし、戦況はあまりよろしくはなかった。

禁手のバーゲンセールと形容する程の事態が起きたのだ。

 

ジークフリート、ジャンヌ、ヘラクレスの三名が禁手化したのだ。

 

ジークフリートの龍の手(亜種)。それは亜種の禁手『阿修羅と魔龍の宴(カオスエッジ・アスラ・レヴィッジ)』。

文字通り、腕が六本に増え、腕の分だけ倍加するという単純にして強力な能力である。

 

ジャンヌの聖剣創造。それは亜種の禁手『断罪の聖龍(ステイク・ビクティム・ドラグーン)』。

聖剣で作り上げられた巨大な龍を使役するというもの。

 

ヘラクレスの巨人の悪戯。その禁手『超人による悪意の波動(デトネイション・マイティ・コメット)』。

全身からミサイル状の突起を生やして撃ち出すというもの。

 

 

 

「これが俺達、人間なりのインフレの仕方だよ。こうでもしなきゃ君ら超常の存在とは渡り合えないからね」

 

その様子を見て曹操がそうイッセーと忍に伝える。

 

「それが英雄派の戦い方か」

 

周囲の匂いを常に察知しながら忍が呟く。

その表情はかなり険しい。

 

「なら、お前も他の奴等みたいに禁手になるのか?」

 

イッセーが曹操に尋ねると…

 

「いや、そこまでしなくても今の君らなら倒せる。ま、赤龍帝の方はともかく、そっちの冥王に連なる人狼は厳しいかな? まぁ、どっちにしろ…今回は君ら相手に戦いを堪能させてもらおうかな?」

 

そう言って曹操は槍をイッセーと忍に向ける。

 

「(この自信…本物か…!)」

 

「女王にプロモーションだ!」

 

忍が警戒してる間にイッセーは女王に昇格する。

 

「真狼解禁!」

 

それに続くように忍も真狼の力を解放する。

 

『JET!!』

 

イッセーが曹操の真正面から突貫し…

 

「まずは赤龍帝からか!」

 

曹操が喜々として聖槍を振るう。

 

「(あの槍に触れるとヤバいよな? なら…)」

 

右手に龍気を溜めてドラゴンショットを撃つ準備をする。

 

「させるとでも?」

 

曹操はイッセーの右手を蹴り上げる。

 

「くっ!」

 

無防備となったイッセーの腹部に聖槍が突き刺さろうとする瞬間…

 

「ふっ!」

 

ギィィンッ!!

 

聖槍の先端を忍がファルゼンで受けていた。

 

「ここまで素早いとは…!」

 

曹操が忍の速度に驚嘆していると…

 

「イッセー君!」

 

忍が聖槍を受け止めてる間に…

 

「応ッ!」

 

『BoostBoostBoostBoostBoost!!』

 

イッセーが横移動しながら増大した威力の拳を曹操に向けて放っていた。

 

「パワーの中のパワーを感じるな!」

 

ゲシッ!

 

「ちっ!」

 

忍の腹を蹴って聖槍を素早く戻すと、曹操はイッセーの拳を払おうとした。

 

「(ここだ!)」

 

イッセーは木場との訓練で培ってきたフェイントを駆使するように右拳を止めると…

 

『BoostBoostBoostBoostBoost!!』

 

『Transfer!』

 

その場から飛び退きながら左腕の籠手からアスカロンの刃を突き出し、それを振るって波動を撃ち出す。

 

「ほぉ…」

 

予想外だったのか、感嘆の声を上げる曹操はアスカロンのオーラを左腕に受け…

 

ザシュッ!!

 

曹操の左腕が宙に舞った。

 

だが…

 

「なるほどなるほど。人狼の補助があったとは言え、強いな。なら、こっちもギアをもう少し上げないとかな?」

 

そう言いながら曹操は聖槍を地面に突き刺すと、宙に舞った左腕をキャッチしてから小脇に抱え、懐から何かを取り出そうとしていた。

 

「そ、それは…!?」

 

曹操が取り出したものを見てイッセーが驚く。

 

「これは裏ルートで入手したフェニックスの涙だ。ま、フェニックス家はこれが俺達に回っているなんて露程にも思ってないだろうけどね」

 

小瓶からフェニックスの涙を傷口に振り掛け、左腕を接続するとそこから煙が上がって左腕が完全に接続する。

 

「ッ!!」

 

それを聞き、怒りでイッセーの龍気が増す。

 

「怒りで龍気が増す、か。怒りで感情を爆発させるのは時と場合によって破滅を生み出す。それで君は一度『覇龍』になったんだろ?」

 

曹操がそう忠告の言葉を言うと…

 

ガシャッ!!

 

イッセーの体を覆っていた赤龍帝の鎧が崩れ落ちていた。

 

「なっ?!」

 

その現象にイッセーもかなり驚いていた。

 

「悪いが、飛び退く時にいくつか斬った。少しばかり時間差が生じるようだが、この槍のちょっとした攻撃でもその鎧は破壊出来るらしいな」

 

「あの一瞬でそこまで…!?」

 

曹操の底知れぬ実力にイッセーの隣に移動していた忍も驚いていた。

 

すると…

 

「あり? こっちはまだやってたんの?」

 

「ま、僕も2人同時だけど、曹操の場合は赤龍帝と冥王様だからね」

 

「俺が赤龍帝とやりゃ良かったぜ!」

 

ジャンヌ、ジークフリート、ヘラクレスの順に戻って来た。

見れば、それぞれ血塗れとなったイリナ、木場、ゼノヴィア、ロスヴァイセを抱えていた。

 

『グオオオオッ!!?』

 

さらにヴリトラと化した匙も九尾の御大将の九つの尻尾によって拘束され、苦悶の咆哮を放っていた。

 

「っ!?」

 

その事実にイッセーは強い衝撃を受けていた。

 

「イッセー君! 気をしっかり持て!」

 

そんなイッセーに忍が叫ぶが…

 

「無駄さ、人狼。確かに君たちは強い。しかし、今の君達では英雄の力を持つ俺達には届かないし、勝てないのさ。さて、ゲオルグ、魔法陣の方はどうかな?」

 

曹操はそう言ってイッセー達を無視すると、既に意識を実験の方に向けていた。

それに倣うようにして他の英雄派も抱えていた敗者たちを無造作にその場に置くと、曹操の元へと集結していた。

 

「ふざけるな!!」

 

それに怒りを覚えた忍は吸血鬼へと変身して一気に駆け出す。

 

「うるさいな、負け犬君。ジークフリート、ジャンヌ、ヘラクレス。彼の相手をしてやってくれ」

 

曹操は3人にそう言うと、一歩下がってしまう。

 

「今度は冥王が相手か。相手にとって不足なしってとこかな?」

 

「う~ん、結構なイケメンなのに残念」

 

「力比べなら負けねぇぞ!!」

 

相手は既に禁手状態の英雄派3人。

ヘラクレスが前に出てミサイル状の突起を発射させていた。

 

「邪魔だ!」

 

忍はファルゼンを斬艦刀にすると、それを盾にして走る。

 

ドゴゴゴゴゴッ!!!

 

無数の爆発と爆風によってファルゼンがボロボロになるものの、バリアジャケットのおかげで忍はほぼ無傷でヘラクレスの元に辿り着く。

 

妖華撃(ようかげき)!」

 

ファルゼンを日本刀に戻すと同時に左手に持ち直すと、右腕に妖力を流し込んで"力"へと変換し、気と龍気でコーティングした右拳をヘラクレスへと叩き込もうとする。

 

「オラァ!」

 

右拳に突起を生やした状態でヘラクレスも忍の渾身の一撃を叩き込む。

 

ドゴォォンッ!!

 

拳同士がぶつかると、突起が爆発して一方的に忍を襲う。

 

「ぐぅっ!!?」

 

今の爆発で右腕の感覚が麻痺してしまうが…

 

「ブリザード・ファング!」

 

麻痺した右腕をヘラクレスに向けて凍結効果のある中距離拡散砲撃を放つ。

 

「させないわよ!」

 

そこにジャンヌが聖剣で作られた龍を割り込ませて忍の砲撃を防ぐ。

 

「ちっ!」

 

吸血鬼から真狼に素早く変化すると…

 

「瞬狼斬ッ!!」

 

妖力と気のミックスで脚力を限界まで高め、真狼の速度をさらに昇華させてから一瞬の内に無数の斬撃を繰り出す。

だが、利き手ではないために威力はだいぶ軽減している。

 

「速い! だが…!」

 

今度はジークフリートが六刀流の剣技で忍の斬撃を防いでいた。

 

「くっ!」

 

忍も苦戦している時だった。

 

パアアアアア!!

 

イッセーの方から強い光が発生していた。

 

「なんだ?」

 

その現象に曹操を始め、忍と他の英雄派も何事かと視線を向けてしまう。

 

そこに広がる光景は…赤い宝玉から無数の人影が出現すると、口々に「おっぱい」と連呼し続け、広大で儀式めいた円形の魔法陣を形作っていた。

 

召喚(サモン)! おっぱいぃぃぃ!!」

 

そして、何らかの気が触れたのかと思うようなイッセーの叫びと共に魔法陣が輝きを増していくと…

 

「な、何事!? こ、ここは…?」

 

着替え中だったのか、下着姿のリアスが魔法陣の中心に現れていた。

 

その後、イッセーはキラキラと光り輝くリアスの乳首をつつくと、リアスは赤い閃光と共に天…というか元の場所へと帰っていき、イッセーは新たな段階へと進むのであった。

それは赤龍帝と称されし赤き龍がまだ肉体を持っていた頃に、白き龍に勝つことだけを考えていた頃の気質を甦らせていたのだった。

 

「(なんだ、この匂いは…?!)」

 

そして、イッセーから感じる新たな匂いに忍は驚いていた。

 

「どうせ、俺も変態ですよぉぉぉぉ!!」

 

その叫びと共に赤い閃光が周囲一帯に広がり…

 

「行くぜ、赤龍帝の籠手ぁぁぁぁぁ!!!」

 

イッセーから赤龍帝本来の力が溢れ出していた。

 

『Desire!』

『Diabolos!』

『Determination!』

『Dragon!』

『Disaster!』

『Desecration!』

『Discharge!』

 

イッセーの鎧の各部にある宝玉からそんな音声が響き渡り…

 

『DDDDDDDDDDDDDDDD!!!!』

 

最後の方では壊れたかのように『D』を繰り返していた。

 

「モードチェンジ! 『龍牙の僧侶(ウェルシュ・ブラスター・ビショップ)』ッ!!」

 

イッセーの叫びに応えるように赤龍帝の鎧に新たな装備…背部バックパックと両肩上部から大口径キャノンが追加されていた。

 

ブゥゥゥンッ…!!

 

僧侶になったことで底上げされた魔力と、赤き龍気がバックパックに蓄積されていき、両肩のキャノンへと収束していく。

 

「避けろよ、忍!!」

 

「ッ!?」

 

言われて初めて忍は自分が棒立ちだったのを思い出し、すぐさまその場から離脱する。

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!』

 

「吹っ飛べぇぇぇ!! ドラゴンブラスタァァァァァ!!!」

 

それを見てからイッセーは膨大なエネルギーを英雄派に向けて解き放っていた。

 

「ッ! 避けろ!」

 

曹操が叫ぶと同時に英雄派が散開して、イッセーのドラゴンブラスターを回避する。

目標を失ったドラゴンブラスターは英雄派の遥か後方へと飛んでいき…

 

ドオオォォォォォォンッ!!

 

着弾と共に町全体を赤い閃光が包み、閃光後には…何も残っていなかった。

そう、今の一撃で町を丸ごと吹き飛ばし、空間さえも歪ませていたのだ。

 

「曹操ぉぉぉぉ!!」

 

イッセーは曹操の名を叫びながらバックパックとキャノンをパージすると…

 

「『龍星の騎士(ウェルシュ・ソニックブースト・ナイト)』ッ!!」

 

今度は鎧の装甲の大部分がごっそりと崩れ落ちると、必要最低限の神速の速度に対応したシャープなフォルムの鎧へと変化していた。

 

「テメェに体当たりするぐらいなら問題ねぇよなぁぁ!!」

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!』

 

神速の速度と化したイッセーは曹操へと体当たりをかます。

 

「速い…!?」

 

曹操はそれを聖槍を横に構えることで迎え撃とうとするが…

 

ドンッ!!

 

「ごふっ?!」

 

イッセーの方が速く曹操を捉える。

 

「君は真正面バカなのか? しかし、その装甲の薄さで俺の聖槍の一撃に耐えられるかな? パワーアップ早々悪いが、これで終わりだッ!」

 

曹操がイッセーを仕留めようと聖槍を構える。

 

「『龍剛の戦車(ウェルシュ・ドラゴニック・ルーク)』ッ!!」

 

しかし、イッセーが再び叫ぶと共に今度は鎧が分厚くなり、両腕の籠手も5、6倍の重厚さを持っていた。

 

ガシュッ!!

 

右の重厚な籠手で曹操の聖槍を受ける。

だが、聖槍は籠手の途中で止まり、装甲を貫けないでいた。

 

「ッ!! もっと出力を上げないとその鎧は壊しきれないというのか! 上級悪魔なら瞬殺出来る出力なんだぞ!!」

 

そう叫ぶ曹操にイッセーは左拳を構える。

 

「おっぱいドラゴン舐めんな! このクソ野郎ぉぉぉぉぉ!!!」

 

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!』

 

「くっ!」

 

曹操は聖槍でイッセーの高速の拳打を受けるが…

 

「この一撃は稲妻の如く!!」

 

肘部分に新たに追加された撃鉄が打ち込まれ、膨大な龍気が放出されて曹操を地面に叩き付ける。

 

その後、元の鎧へと戻ったイッセーは息を切らせていた。

この形態変化をイッセーは曹操とドライグの言葉を借りて『赤龍帝の三叉成駒(イリーガル・ムーブ・トリアイナ)』と命名した。

 

そして、実験の最終段階とも言える場面で魔法陣からは最強の助っ人『初代孫悟空』と、五大龍王の一角『西海龍童(ミスチバス・ドラゴン)玉龍(ウーロン)』が現れて戦況は一変した。

その状況で英雄派は撤退しようとしたが、イッセーの最後の一撃で曹操の右目を潰した。

 

それから九尾の御大将も無事洗脳から解き放ち、今回の事件は終幕へと続くのであった。

 

だが…

 

「(イッセー君は新たなステージに上がったっていうのに…俺は…)」

 

忍はイッセーの新たな可能性を見て自分の力不足を痛感していた。

 

「(伯父さん…真なる狼って、一体なんなんだ…?)」

 

未だ狼夜から語られぬ『真なる狼』の詳細とは…?

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