魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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第四十九話『決戦×終結・皇帝ゼノライヤの最期』

遂に始まった三国同盟と帝国の決戦。

 

三国同盟と帝国の軍勢がそれぞれ激突する中…

 

ブロロロロ…!!

 

この世界には似つかわしくないけたたましい音と共に、それは帝都を目指す。

 

「智鶴、平気か?」

 

「うん、しぃ君が守ってくれてるから…」

 

アステリアに乗る一組の男女、紅神 忍と明幸 智鶴。

彼らは今、山脈地帯をバイクで走行していた。

それもかなりの速度で…。

 

「戦闘は既に各地で始まってるとの報告もきた。こっちも急がないとな!」

 

ブォンッ!!

 

道とも言えぬ道、帝都への最短コースを駆け抜けるバイクの車輪には魔力が付加され、智鶴自身にもフィールド系の防御魔法が張られていた。

 

こうして2人は山や森を越えて帝都へと着々と近付いていくのであった。

 

………

……

 

~次元の狭間・フロンティア~

 

「ふふふ…やはり、直接乗り込む気ですか…」

 

忍と智鶴がアステリアに乗って帝都に向かってる様子を水晶体を用いて観察しながら黒ローブは呟く。

 

「三国同盟の攻勢を囮にし、帝都にいるゼノライヤさんの首を狙う。この程度なら彼も予想済みでしょうね。問題は狼が相手ということ。いくらデバイスを渡したとて、その戦力差は埋まりようがないでしょう。しかし、それでは彼の絶望の表情が見れませんし、エナジーも満たされない。なら、どうするべきか…」

 

わざとらしい困ったような言い草で黒ローブは水晶体の前でひらりひらりと舞い始める。

 

「困りました。あぁ、本当に困りました」

 

すると…

 

「……まったく困った様子ではないように見えますが?」

 

黒ローブの背後にローブを被った6人衆の姿があり、その中の1人が黒ローブにそう言っていた。

 

「おや、揃っていましたか」

 

これまたわざとらしい反応を示しながら舞いをやめる黒ローブ。

 

「ま、呼び出されたからねぇ~」

 

「で、やっと出番なのかよ?」

 

「俺ら全員集合ってことは、なんか大きいことでもあるかも?」

 

「ふんっ…」

 

「…………」

 

「……我々をお呼びになられたとなると、何か事態に変化が?」

 

ローブ衆が好き勝手言ってる中で、その内の1人が黒ローブに尋ねる。

 

「変化というのも些か言い過ぎのようなものですが、フィライトでの抗争がそろそろ終わりそうですかね」

 

どこが些細なものなのか…。

 

「……なるほど。では、帝国は切り捨てるのですか?」

 

「元々、あの次元は実験場のような場所でしたから、捨てても問題ないのですよ」

 

「……そうでしたね」

 

ローブ衆の代表と黒ローブが会話していると…

 

「だぁぁ!! つまらねぇ! まだ暴れさせねぇつもりかよ!!」

 

ガンッと近くにあったコンソールを蹴りながらローブ衆の1人が黒ローブに苦言を呈した。

 

「ゼノライヤさんが負けるのはほぼ確定してますからね。私達がここで出てもそれほど多くの絶望は集まらないでしょう」

 

黒ローブはつまらなそうにそう言い放つ。

 

「……量より質です。ゼノライヤか、彼の騎士の絶望をエナジーに変換しては?」

 

ローブ衆の代表がそう言うが…

 

「くだらん。質に拘っていては時間が掛かり過ぎる。ならば、今は質よりも量を優先すべきだ」

 

別のローブ衆の1人がそう断言した。

 

「あらら、意見が分かれちったよ。どうすんの、これ?」

 

「…………」

 

残りのローブ衆は、片方は面白そうに場を眺め、もう片方はどこか面倒そうにしていた。

 

「ま、俺は殺せさえすればどっちでもいいかな?」

 

「俺も暴れられるならどっちでも構わねぇ!」

 

何とも纏まりに欠ける一団である。

 

「やれやれ。困った子達ですね」

 

黒ローブはそんな彼らの様子を我が子を見るような目で見る。

しかし、その視線はとても冷たいものだった。

 

「しかし、どちらも一理あります。良質な絶望を集めるには時間を惜しみませんが、あまり集まりが悪いとエナジーの枯渇にも繋がってしまいますからね」

 

ふむ、と考える素振りをした後…

 

「仕方ありません。あの女王陛下の要望通りにしてさしあげましょうか」

 

黒ローブはコンソールを操作して以前マリアが使用した回線を多次元世界に対応するように調整を始める。

 

「やるならば徹底的に、そして劇的に…それが新たな絶望の火種となるのですよ。ふふふ…」

 

そうしながら…

 

「そうだ。あなた達もあの狼に挨拶してきなさい。これからきっと長い付き合いになるのですからね」

 

そうローブ衆に伝えていた。

 

「……御意」

 

「そいつ相手なら暴れてもいいんだよな!?」

 

「6人も必要ないと思うがな」

 

「狼の血…ド人外な、特殊な混血……うひゃひゃ♪」

 

「…………」

 

「え~、殺しちゃダメなら俺行きたくねぇ~」

 

約1名を除いてそれなりに行く意思はあるらしい。

 

「……駄々をこねるな。行くぞ」

 

「うぇ~い…」

 

乗り気でない1人のローブの襟に位置する部分を代表に引っ張られてそのまま移動してしまう。

 

「ふふふ…多次元世界を巻き込んでの抗争。これもまた一種の戦争。つまりは『次元戦争』。その始まりの引き金になってもらいましょうかね。ゼノライヤさん」

 

ローブ衆のいなくなった部屋で黒ローブは静かに、そして不気味に(わら)うのだった。

 

………

……

 

~フィロス帝国・帝都郊外~

 

「着いた、な…」

 

「アレが…フィロス帝国の帝都」

 

郊外の丘でアステリアを停車させた忍と智鶴が帝都を見下ろす。

 

「本来なら帝都に強行突破してから呼ぼうと思ったが、そうも言ってられんようだからな…」

 

忍は帝都から感じる空気を察し、ここで眷属を呼ぶことにした。

 

「智鶴、頼む」

 

「うん。スコルピアちゃん」

 

『……御意』

 

その場でゲイトを開き、イーサ王国の王宮へと繋げる。

 

「さぁ、出番だ」

 

その忍の言葉と共に…

 

「やっと出番かよ」

 

「待ちくたびれたわ」

 

「それで、敵はどこかしら?」

 

「慌てなくてもすぐに戦闘よ」

 

「後方支援はお任せください」

 

「非殺傷設定、再確認」

 

「ま、気絶させるだけなら楽よね」

 

「ここが、帝都の喉元…」

 

クリス、吹雪、カーネリア、暗七、シア、フェイト、朝陽、エルメスの順にゲイトから紅神眷属のメンバーが現れる。

それぞれイチイバルのシンフォギアを纏う、冥王化になる、堕天使の翼を広げる、両腕を異形に変化させる、デバイスを起動するなど戦闘形態に移行して準備万端といった感じである。

 

「言っておくが、民家への被害は出すなよ? 目的はあくまでもゼノライヤと、その近衛だからな」

 

眷属に注意だけを促すと…

 

「「「はい!」」」

 

「「「おう!」」」

 

「「「えぇ」」」

 

それぞれ返事をすると同時に飛べる者は飛び…

 

「暗七、クリス。これに乗れ!」

 

忍は2枚のメダルを放り投げると…

 

カッ!

 

メダルが戦闘機と空中戦車へと変化し、戦闘機に暗七、空中戦車にクリスが乗る。

 

「エルメス、君はこれに…来い、イーグル!」

 

さらにブラッド・イーグルを起動させて、その上にエルメスを乗せる。

 

「ソニックロード!」

 

空に魔力道路を作り出し…

 

「このまま一気に駆け抜ける!」

 

そこを駆けて帝都の中心にある城へと向かう。

 

 

 

その様子を地上から民間人は見ていた。

 

「な、なんだあれは…?!」

「人が…空を飛んでる…?」

「いや、それよりも背中からなんか生えてるぞ!?」

「鳥人間?」

「ママー、あれなぁに?」

「虹?」

 

人々は彼らが何者かなど知らない。

しかし、ただ一つ分かったのは…

 

「おい、あいつら城に向かってるぞ!」

「ま、まさか陛下を狙っているのか!?」

 

その事実が人々に不安を募らせていき、動揺を広げていく。

 

 

 

そして、そんな市民の動揺の中…忍達は城の近辺まで肉薄した。

 

「貴様ら! これ以上は行かせん!」

 

そこにシュトーム、モード・アルファを纏った親衛隊の一団が立ち塞がる。

 

「タイガー、ドラゴン! お前達も来い!」

 

ブラッド・タイガー、並びにブラッド・ドラゴンも起動させると戦列に参加させる。

 

「スコルピアちゃん、来て」

 

智鶴もまたスコルピアを起動させると、アーマー形態へと移行させて身に纏う。

 

「アステリアは残してく。皆はこいつらを頼むぞ!」

 

忍はアステリアから飛び降り、城の屋根へと降り立つ。

 

「奴を行かせるな!」

 

モード・ガンマに武装変更した一部の親衛隊が忍を狙い撃とうとする。

 

「させっかよ!」

 

≪MEGA DETH PARTY≫

 

腰部アーマーが展開し、そこから小型ミサイルが発射して親衛隊の射線を封じる。

 

「ちぃっ!!」

 

ミサイルの爆発によって射線を封じられ、舌打ちをする親衛隊。

 

「こっから先は通行止めだ!」

 

「ここから先に行きたいなら、私達を退いてからにしてください」

 

クリスに続き、智鶴も忍のところに行かせないように立ち塞がると、そう言い放っていた。

 

「調子に乗るな! 小娘共が!!」

 

親衛隊がそれぞれの武器を手に紅神眷属と衝突する。

 

………

……

 

~城内~

 

ある一室の窓を蹴破り、そこから城内に侵入した忍は通路を歩いていた。

 

「(おかしい、警備が少な過ぎる。まるで俺が来るのを予想してたかのような…いや、予想したのか?)」

 

周囲の匂いと気配を確認しながらそう考えていた。

 

「(どっちにしろ、俺の相手は決まってる、か…)」

 

そして、匂いを頼りに玉座の間へと到着する。

 

「来たか、噂の狼」

 

「…………」

 

そこには玉座に腰掛けるゼノライヤと、その前に空間に立ち塞がるギルフォードの2名がいた。

 

「お前が…皇帝ゼノライヤ…」

 

「如何にも。して、お前が最近我が軍でも噂になっている狼か?」

 

「どんな噂か知らないが、狼なのは確かだ」

 

「イーサ王国やラント諸島での我が攻勢を邪魔したのも確かか?」

 

「まぁ、確かだわな」

 

ゼノライヤの問いに忍はそう答えた。

 

「そして、我が帝国以外の三国を同盟させ、攻勢を仕掛けさせた上で俺の首を狙いに来たわけか?」

 

「攻勢を仕掛けさせたってのは語弊があるかな。少なくともシルファー女王はアンタの帝国に対して良く思ってはいなかった訳だし、いずれは自らがアンタを討ちに出向いてたかもな」

 

「イーサ王国の女王か。確かにそれは厄介だ」

 

"厄介"と言うわりにはかなり冷静な態度である。

 

「いずれにしろ…俺の首を狙うなら、先に我が親衛隊長を倒すことだ。お前にそれが出来るならば、の話だが…」

 

「…………」

 

ゼノライヤの言葉を受け、ギルフォードが動き出す。

 

「(来るか…?)」

 

それを見て忍も身構える。

 

「そう慌てるな。余興はこれからだ」

 

ゼノライヤがそう言うと、ギルフォードは懐からバックル装備を取り出す。

 

「それは…?!」

 

忍が驚いてる間にギルフォードはそれを下腹部に当てると、自動的にベルトが腰に巻かれる。

 

「……ダークネス・シュヴァリエ、起動」

 

ギルフォードが呟くと同時にバックルから魔力が放出されていき、ギルフォードを包み込む。

 

パァンッ!!

 

魔力が弾けると、鎧で固めていた姿から上に青いワイシャツを着て、下に黒のスラックスを穿き、その上から漆黒の騎士甲冑の衣装を施した胸部プロテクター、両肩プロテクター、肘から指先まで覆う籠手、腰部プロテクター、膝からつま先までを覆う足具を装着した姿へと変化していた。

 

「……思った以上に軽いな」

 

自らの纏ったバリアジャケットの感触を確かめるように軽く拳をグッパーしていた。

 

「バリアジャケット展開型…ネクサスの同系機種か!?」

 

ギルフォードの起動させたそれを瞬時に理解して忍は驚く。

 

「……確か、これだったか」

 

バックルの両端にある鍔のない剣の柄を引き抜く。

しかし、刃が形成される様子がない。

 

「?」

 

その様子に忍も若干首を傾げる。

 

「ふぅ…ギル。リングに魔力石を」

 

やれやれ、といった感じにゼノライヤがギルフォードに伝える。

 

「……あぁ」

 

言われて気づいた様子で、ギルフォードは…

 

ヒュッ!

 

片方の柄を頭上に投げると手早く、籠手から露出した中指に装着している指輪の表面に赤と黄色の魔力石を装填してから降下してくる柄を再度掴み取る。

 

すると…

 

ブォンッ!

 

柄からそれぞれ右が赤、左が黄色の片刃状の魔力刃が形成されていく。

 

「……シュヴァリエ・ブレード」

 

「ファルゼン、セットアップ」

 

それを見て忍もファルゼンを手にしていた。

 

「ほぉ、ギルを相手に剣で勝負とは面白い」

 

その様子を玉座の肘掛けに肘をつけながらゼノライヤが面白そうに呟く。

 

「(…隙がない。どう打ち込んだものか…)」

 

「(ふむ…見たこともない型だが、俺が負ける道理はない)」

 

忍がギルフォードの隙の無さを感じてる中、ギルフォードは冷静に忍の剣を見極めていた。

 

しばしの睨み合いの後…

 

「……業炎刃(ごうえんじん)!」

 

ギルフォードが先手を取り、赤い魔力刃の刀で斬りかかる。

その斬撃は初動速度からかなり速い。

 

「っ!?」

 

ギィィンッ!!

 

忍は反射的にギルフォードの初撃を"読む"と、即座にファルゼンで受け流した。

 

「……?」

 

今の攻防にギルフォードは僅かな違和感を覚える。

 

「(なんだ? 今の奴の反応…?)」

 

ギルフォードは一太刀で決めるつもりでいた。

高速から繰り出す炎の一太刀はこれまでも何人もの猛者を屠ってきた自信の一撃。

それを初撃で繰り出すのは一撃必殺も等しい。

しかし、忍はそれをまるで読んでいたかのように、後から動いたにも関わらず防いでみせた。

 

「(いや、"読んだ"のか?)」

 

その事実に気付いたギルフォードはあることを試そうとした。

 

「……ッ!」

 

ヒュヒュヒュッ!

 

二刀による連続突きを忍へと放つ。

 

「ちっ!」

 

今度も忍は叢雲流の瞬間予知で連続突きを回避していく。

 

シュッ!

 

最後に忍の顔面に向けて突きを放つと、忍はそれを後方宙返りの要領で一気に後退して回避する。

 

「……やはりか」

 

忍の挙動を見てギルフォードは確信した。

 

「……手段はわからんが、俺の行動を読んでいるな?」

 

「っ?!(もうバレたのかよ…)」

 

「……察するに、直前の行動だけのようだが…」

 

「(そこまでわかるもんかね?)」

 

ギルフォードの観察眼に言葉もない忍だった。

 

「……が、だからどうした? 貴公が対応出来なければ問題はない」

 

そう断じるギルフォードを見て…

 

「珍しく饒舌だな、ギル」

 

背後のゼノライヤがそんなことを言う。

 

「…………」

 

ゼノライヤに指摘され、自身でも意外だと感じていた。

 

「ともかく、奴には相手の行動を読む類の力があるか。面白いではないか」

 

ギルフォードの言葉によってゼノライヤも忍の力の一つを知った。

これで忍の手札が一枚減ったことになる。

 

「……炎雷斬(えんらいざん)!」

 

気を取り直すようにギルフォードが忍に仕掛ける。

 

「いきなりかよ!」

 

思わず忍もそう叫びつつもしっかりとファルゼンで二刀の斬撃を防いでいた。

 

「瞬狼斬!」

 

防いだ勢いで後退するも、すぐさま態勢を低くしてから一気に駆け抜け、ギルフォードの周囲を回りながら斬撃の繰り出していく。

 

「ッ!!」

 

ギギギギギンッ!!

 

それらをギルフォードは確かな技術と経験によって全ての斬撃を防ぎ切っていた。

 

「(瞬狼斬が防がれた!?)」

 

瞬狼斬を防がれたことに忍は内心で驚く。

 

「(ふむ…この違和感は…)」

 

瞬狼斬を受け、ギルフォードは新たな違和感を覚えていた。

 

「黒影斬!」

 

黒い魔力斬撃を放ってギルフォードを牽制しようとするが…

 

「……そういうことか」

 

向かってくる黒影斬を容易に切断しながら違和感の正体を突き止める。

 

「……この勝負で、もし仮に俺が膝を着くようなことがあれば…その時はこのシュヴァリエ・ブレードとエナジーリングを貴殿に譲り渡そう」

 

そして、何を思ったのかギルフォードは忍にそう申し出ていた。

 

「なに…?」

 

「どういうことだ、ギル?」

 

ギルフォードの言葉に忍はもちろんゼノライヤも疑問を抱いていた。

 

「……剣士としての勘。貴殿はきっと…俺と同じ"二刀流"の使い手のはず。それが一刀…勝手が違うだろう」

 

ギルフォードはそう判断していた。

 

「俺が…二刀流…」

 

ギルフォードの言葉に忍は思い当たる節があった。

紅蓮冥王と蒼雪冥王の力を掌握する前に己の血の起源を狼夜から聞いた時だ。

その最後の方で、狼夜は忍が二刀の方が映えると言っていた。

そして、それは忍のまだ見ぬ父親…『狼牙』にとても似ているのだとか…。

 

「……自覚がなかったか?」

 

「いや…つい最近、ある人から同じようなことを言われたよ」

 

「……そうか」

 

瞬きする間の静寂が訪れ…

 

「……これ以上の言葉は無用。貴殿も剣士の端くれなら、剣で語れ」

 

ギルフォードが炎の刀の切っ先を忍に向けてそう告げる。

 

「…………」

 

そう言われて忍もファルゼンを握り直して構える。

 

「……行くぞ」

 

「ッ!!」

 

ギルフォードの言葉を合図に…

 

ギギギギギンッ!!

 

玉座の間に壮絶な剣戟音が響き渡る。

 

「(これが剣を極めし騎士の技…!)」

 

互いにバリアジャケットを斬り裂きながら忍はギルフォードの剣技を肌で感じていた。

 

「(粗削りだが…なるほど。これは今後伸びる器…ゼノにも匹敵する程だ…)」

 

忍の剣を受けながらギルフォードは背後に居座る幼馴染みへと少し意識を飛ばしていた。

 

「(あいつは全体的な才に恵まれていた。剣の才能だけはかろうじて上回っていたようだが、それもいつ破られるか…)」

 

ゼノライヤと過ごしてきたこの十数年間の記憶を思い出す。

 

「(そのくらいの実力差があるにも関わらず、あいつは俺を側に置いて信頼してくれた。ならば、それに応えるのが、親衛隊長になった俺の仕事…)」

 

そう考えた後、すぐさま意識を目の前の敵へと向けて二刀を振るう。

 

徐々にギルフォードの剣戟が忍の太刀を圧倒していく。

 

「(ファルゼンだけじゃ手数が足りねぇ! だが、俺は進み続けなきゃならない!)」

 

忍もまた脳裏に大切な者達の姿を思い描く。

 

「(愛する者を守るため、大切な人達を守るため…俺は力を受け入れたんだ!)」

 

バリアジャケットが斬り裂かれ、そこから血を流そうと忍は一歩も退くことはなかった。

 

「……雷光刃(らいこうじん)!」

 

しかし、それでもギルフォードの剣戟に忍は受けに徹するしかなかった。

 

「……追撃、氷紋刃(ひょうもんじん)!」

 

そして、いつの間にか炎の刀から氷の刀へと変化していた突きを雷の斬撃に続けて放つ。

 

「ッ!?(いつ属性が変わった!?)」

 

ファルゼンを斬艦刀に変化させて横に構えると、その場凌ぎで防いでいた。

斬撃と突きを受け、忍は後方に滑るようにして吹き飛んでしまう。

 

「……それもカラクリだったか」

 

一拍を置いてギルフォードがそう呟く。

 

「まぁ、ね」

 

斬艦刀から日本刀に戻すと構え直す。

 

「(室内で斬艦刀は使い勝手が悪いからな。緊急防御以外では使い道もないし…)」

 

ファルゼンの欠点を思い出しながら忍は…

 

「(力を出し惜しんでる場合でもないか。相手が炎、雷、氷の三種を使う以上、こちらも能力を使って相手の手札を削ぐか)」

 

素早く考えを纏めて行動に移す。

 

「紅蓮冥王、解放!」

 

瞬時に紅蓮冥王を解放すると、紅蓮の焔をファルゼンへと灯す。

 

「……姿が…!」

 

「ほぉ…?」

 

忍が紅蓮冥王へと変化したことにギルフォードは驚き、ゼノライヤは興味深そうに見ていた。

 

「フレイム・ブラスト!」

 

左手から紅蓮の焔の砲撃を放って牽制する。

 

「……破ッ!!」

 

自らの膝に左手を打ち付けると黄色の魔力石が外れ、それと入れ替えるようにして近くに落ちていた赤い魔力石を爪先で弾き飛ばして指輪へと装填することで炎の刀を再度作り出すと…

 

斬ッ!!

 

忍の砲撃を逆手に持った炎の刀で真っ二つに斬り裂いていた。

 

「(なんて器用な?!)」

 

その瞬間を見て忍はギルフォードの技量に舌を巻いた。

 

「(さっきの攻防の際…下に魔力石を落とし、あの激しい剣戟の中で変えていたのか)」

 

さっきの変化した刀の謎がわかったものの、忍はそんなことを人間の身で平然とやってのけるギルフォードにある種の脅威を覚えていた。

 

「(人の身でも極めればここまで辿り着けるものなのか…)」

 

その事実に忍は脅威とは別の感情を抱いていた。

 

「(人の身で出来て人外が出来ない道理はないか…)」

 

それを感じた時、忍の体は動いた。

 

左手にレフト・フューラーを起動させて保持すると…

 

紅蓮弾(ぐれんだん)!」

 

自らの魔力を紅蓮の焔に変換し、弾丸のようにして撃ち出す。

それを数発撃った後、忍はギルフォードに斬り込む。

 

「……むっ!」

 

紅蓮弾を逆手に持った炎の刀で斬り裂きながら焔を宿したファルゼンを氷の刀で防ぐ。

 

ジュワッ!!

 

その瞬間、焔と氷が反発し合って水蒸気を発生させる。

 

「……烈火斬(れっかざん)!」

 

ギルフォードは追撃とばかりにもう片方の刀で忍を強襲する。

 

「冥王スキル『イグニッション・アグニ』!」

 

レフト・フューラーでの防御が不可能と察すると同時に先日獲得したばかりの能力を発揮する。

忍にとっては初めて実戦で使う能力でもあった。

 

ピキッ…

フッ…

 

炎の刀が忍に迫ろうとした時、魔力石の表面に罅が入ると同時に赤い刀身が消え去る。

 

「……な、に…?」

 

その事実に今度はギルフォードが驚く。

 

「(何とか成功か…)」

 

忍は熱エネルギーの吸収を炎の刀に限定し、魔力石に宿ってた魔力ごと吸い取ったのだ。

その結果、炎の刀は刀身を維持するだけの魔力を失い、間接的に魔力石を破壊するに至った。

 

そして…

 

ボアアアッ!!

 

逆にファルゼンに宿る紅蓮の焔の勢いが増していく。

 

「……ッ!」

 

紅蓮斬(ぐれんざん)(ほむら)ッ!!」

 

その勢いに加え、忍は右腕に気と妖力を流して半ば力任せにファルゼンを振り抜く。

 

バキンッ!!

斬ッ!!

 

「ぐっ!?」

 

その一撃はギルフォードの氷の刀を砕き、バリアジャケットを焼きながら左肩から右脇腹に向かって深い傷を負わせていた。

 

ズザアァァァ!!

 

その衝撃によってギルフォードは床を滑りながらゼノライヤに向かって後退してしまうも…

 

「ぐ…ぅっ!!」

 

ギィィ…!!

 

砕けた氷の刀を床に突き刺してゼノライヤの眼前で止まる。

その膝を地に着けて…。

 

「……すまない、ゼノ…俺は…」

 

顔を床に向けながら一言、ゼノライヤに詫びを入れていた。

 

「良い。お前の忠義は十分過ぎるほど見せてもらった。ならば、今度は俺がこの帝国の王としてお前の期待に応える番だ」

 

「……っ…」

 

ゼノライヤの言葉にギルフォードは無言のまま右拳を強く握り締めていた。

顔には出さないが、ギルフォードの心中には様々な感情が渦巻いていた。

自分の不甲斐なさへの怒り、ゼノライヤが発した言葉への驚き、膝を着いたうえにゼノライヤの眼前まで下がってしまった悔しさ、忍に対する敬意と敵意…。

それらを知ってか知らずか…

 

「それよりもギル。先の約束を果たすんだ」

 

ゼノライヤはギルフォードにそう告げていた。

 

「………御意」

 

それを受け、ギルフォードは右手に着けていたエナジーリングと同じく右手に持っていたシュヴァリエ・ブレードを忍に向けて投げた。

 

「っ!?」

 

それを受け取りながら忍は驚いた様子でギルフォードを見る。

 

「……言ったはずだ。もし、俺が膝を着くようなことがあれば、シュヴァリエ・ブレードとエナジーリングを譲り渡す、と…」

 

そう言うと、ギルフォードはゼノライヤに道を開ける為に横へと下がる。

 

「そういうことだ。やるなら二刀のお前とやり合ってみたいのでな」

 

そう言いながらゼノライヤは玉座から立ち上がると、ギルフォードと同じように懐からバックルを取り出す。

その手にはギルフォードと同じエナジーリングが既に装着されていた。

 

「ダークネス・エンペラー、起動」

 

バックルを下腹部に装備してベルトが腰を回ると共に黒い魔力石を装填して起動させる。

 

カッ!

バリンッ!

 

黒い魔力球がゼノライヤを包み込み、それが弾けた瞬間…

 

バサァッ!

 

ゼノライヤは上に白のワイシャツを着て、下に黒のスラックスを穿き、その上から騎士甲冑に似た縁沿いに金の装飾を施した漆黒の胸部プロテクター、前腕部から手の甲までを覆う籠手、腰部プロテクター、脛部分を守る足具を装着し、さらにその上から裏地が緋色の漆黒のマントを羽織り、ストレートチップの黒い革靴を履いた姿となり、マントが勢いよく翻っていた。

 

「確かに想像以上に軽いな。そして、体も軽くなった気分だ」

 

そう言ってバックルの表面にマウントされたv字型のパーツを外すと、それが剣の柄へと変形した。

 

「俺はギルほど、魔力石に拘ってるわけではないのでな」

 

さらに右の指輪に山吹色の魔力石、左の指輪に翠色の魔力石をそれぞれ装填し、剣の柄から山吹色の両刃状の魔力刃が形成された。

 

「カイザーソード、か。悪くない出来だな」

 

ゼノライヤがカイザーソードを軽く振るって具合を確かめている中…

 

「………」

 

忍はレフト・フューラーを待機状態に戻すと、左手の人差し指にエナジーリングを着けてその表面に手元にある白の魔力石を装填し、シュヴァリエ・ブレードを左手に保持すると…

 

ブォンッ…

 

シュヴァリエ・ブレードから片刃の白い刀身が形成された。

 

「(二刀流、か…)」

 

右手にファルゼン、左手にシュヴァリエ・ブレードを握り締めながらその感覚を瞬時に覚える。

 

「さて、狼よ。始めようか」

 

ゼノライヤが不敵な笑みを浮かべる。

 

「これがこの戦争の幕引きとなることを願う」

 

今も外で戦っているだろう眷属や三国同盟の皆のことを想いながら忍は二刀を構える。

 

「それは儚き想いというものだ。その願いは俺の手によって砕かれる」

 

そう言うと同時にゼノライヤは灰色の魔力石と浅葱色の魔力石をエンペラーバックルへと装填した。

 

「アクセル!」

 

そう呟いた次の瞬間…

 

ブンッ!

 

「なっ!?」

 

ゼノライヤが忍の眼前まで迫り、カイザーソードを振るおうとしていた。

 

「真狼解禁ッ!」

 

紅蓮冥王から真狼へと即座に変身した忍はファルゼンでカイザーソードを受けると同時にシュヴァリエ・ブレードを横薙ぎに振るう。

 

ガキンッ!

 

しかし、シュヴァリエ・ブレードの刀身はゼノライヤのバリアジャケットを斬り裂くことは出来なかった。

 

「(硬ぇ…!!)」

 

忍は表情を険しくすると、さっきのゼノライヤの行動を思い出す。

 

「(灰色と浅葱色…確か、鉄壁と速度の属性だったか。それがバリアジャケットに反映されたとでも言うのか?!)」

 

そう思考を巡らせる忍に対し…

 

「ふっ…あやつのカラクリも大したもののようだ。この魔力甲冑に属性が反映出来るとはな」

 

ゼノライヤはそう呟いて忍の推測が当たっていたことを認めていた。

 

「その"あやつ"というのは何者だ! 何故、そいつからデバイスを受け取って戦争に使った!?」

 

"あやつ"というワードを聞いて忍はゼノライヤに問い質す。

 

「愚問だな。俺が奴を利用し、その技術を軍事利用したまでだ。本来ならデバイス技術とやらも我が帝国で自作出来るようになればいいのだが、そう簡単にはいかないのでな。奴もこちらを利用してるつもりだろうが…時が来れば俺が直々に手を下すつもりだ」

 

「その考え自体が間違っていてもか!?」

 

その危険な思想に忍が叫ぶ。

 

「間違う? この俺がか?」

 

「そうだ!」

 

忍の言葉にゼノライヤは…

 

「それこそ笑止。仮に俺が奴の掌で踊らされていたとしても、それすらも食い破るのみ!」

 

忍を足蹴りしながら距離を開け、その言葉を一蹴していた。

 

「(こいつは…!)」

 

ゼノライヤの自信に満ちた…いや、もはや独善的とも言える解釈に忍は怒りを覚えた。

 

「お前のその思想は危険過ぎる! その思想を民は本当に理解しているのか!?」

 

「民の理解など不要。民は俺が進むべき道に従って後ろからついてくれば良いのだ!」

 

「それで民が納得するものか!」

 

「民の是非など必要ではない。必要なのは皇帝である俺の決断と覇道のみ!」

 

「それがお前の本性か!!」

 

「本性? それこそ違うな。これは俺自身が生まれながらに背負ってきた生き方だ」

 

忍とゼノライヤの舌戦がしばし続いた後…

 

「所詮は貴様も弱者の思想なのだ。だからそのようなくだらないことを考える」

 

「なに!?」

 

「上に立つ者として俺は正しい姿を示してるに過ぎない!」

 

ゼノライヤがそう叫ぶと共にカイザーソードを構え…

 

「吹き荒ぶがいい、風の刃よ! ストーム・リッパー!」

 

横一閃に振るうと、旋風が吹きながら忍へと向かう。

 

「何が正しい姿だ! 相殺せよ、鎌鼬!」

 

ファルゼンを振るって鎌鼬を発生させると、ゼノライヤのストーム・リッパーを相殺する。

 

「ならば、貴様は何を以って俺の前に立つ? もしも意志無き答えなら、我が前に立つ資格なし」

 

ゼノライヤの問いに…

 

「俺はこの無益な戦いを終わらせたいからここにいるんだ。お前の理想を砕くため…そして、お前の裏で悪意を撒き散らす者を突き止めるために…」

 

忍はそう答えていた。

 

「悪意、だと?」

 

「そうだ。シュトームを用いた軍備増強という戦乱の拡大。お前に取り入ることでこの無益な戦いは加速していった。これが悪意でなくてなんなんだ!」

 

そう叫び、忍はファルゼンとシュヴァリエ・ブレードを広げるように構えてゼノライヤへと向かう。

 

「紅蓮の(ほむら)と蒼雪の氷、相反する属性よ。我が声に応え、その力を発揮せよ!」

 

ボアアア!!

シュウウ!!

 

ファルゼンの刀身に紅蓮の焔、シュヴァリエ・ブレードの刀身に蒼き冷気がそれぞれ発現する。

 

「相反の双刀! ブリザード・エクスプロージョン!!」

 

ゼノライヤに届く距離まで走るとクロスするように二刀を振るう。

 

「顕現せよ、我が鉄壁なる闇の盾!」

 

左手を前に突き出し、闇と鉄壁の属性を組み合わせた魔力シールドを展開する。

 

「それがなんだ!」

 

キュイイイ!!

 

忍の猛る魔力に反応し、光の魔力石が輝く。

 

斬ッ!!

 

「ぐっ!?」

 

闇の盾を打ち砕き、ゼノライヤのバリアジャケットをクロス状に斬り裂いて傷を負わせる。

その衝撃でゼノライヤは後方へと吹き飛んでしまう。

 

「お前の勝手な理想に民を付き合わせてんじゃねぇよ」

 

忍はそう言うと、ファルゼンを待機状態に戻すと吹き飛んだゼノライヤの背後へと瞬時に回り込み…

 

猛牙墜衝撃(もうがついしょうげき)!」

 

魔・気・霊・妖の力を収束した掌底をゼノライヤの背部に叩き込む。

 

「ぐぅっ!!?」

 

ドガァンッ!!

 

その衝撃によってゼノライヤは玉座の間にあった柱に激突し、その柱が瓦礫となってゼノライヤを埋める。

 

「……ゼノ!」

 

その様子にギルフォードが立ち上がる。

 

「狼狽えるな。お前らしくもない」

 

瓦礫の中からゼノライヤが抜け出すと、そう言って自分の体を軽く叩いて埃を払う。

 

「やってくれるな、狼」

 

口の端から流れた血を拭いながら忍を一瞥する。

 

「(今ので倒れないとか、鉄壁属性ってのは意外と厄介だな。いや、真におっかないのはゼノライヤもそうか。俺が一撃を入れた瞬間、前に少しだけ重心を移して一撃の威力を軽減しやがった。それと鉄壁も相俟ってダメージ量を全体的に下げた、ってとこか)」

 

そんなゼノライヤの状態を冷静に分析して背中に冷や汗を掻く。

 

「そういえば、狼。その名をまだ聞いてなかったな」

 

ふと思い出したようにゼノライヤが忍に問う。

 

「そういや、ちゃんとした名乗りはまだだったか」

 

言われて忍もそのことを思い出す。

 

「紅神 忍。紅神がファミリーネームで、忍が名前だ」

 

「紅神 忍、か。その名、覚えたぞ」

 

忍の名乗りにゼノライヤは不敵な笑みを浮かべる。

 

「そりゃどうも」

 

忍は若干面倒そうな表情をすると、再びファルゼンを起動させる。

 

「カイザーソード、出力全開!」

 

ゼノライヤは翠色の魔力石から黒い魔力石に入れ替えると、山吹色の魔力刃に黒い魔力刃が覆うようにして延長して大剣型となる。

 

「チャージアップ!」

 

『CHARGE UP』

 

そして、カイザーソードを両手で掴んで頭上に掲げるように構えると共に魔力石から魔力が収束していく。

 

「(ここで決める気かよ…!)」

 

それを見て忍もまた二刀を広げるようにして構える。

 

「エクシードドライブ!」

 

『EXCEED DRIVE』

 

右腕のエナジーメモリからファルゼンに残りの魔力が流れ、魔力石からも魔力がシュヴァリエ・ブレードの刀身へとそれぞれ収束していく。

 

「「…………」」

 

互いに一撃必殺の構えを取ると睨み合い…

 

ダンッ!!

 

次の瞬間、互いに床を踏み鳴らして肉薄する。

 

「ダークネス・セイバーッ!!」

 

絶刀(ぜっとう)双狼烈牙(そうろうれつが)ッ!!」

 

斬ッ!!!

 

技名を叫ぶと同時に2人の一撃が交差する。

 

ズザアァァァッ!!

 

忍とゼノライヤは背を向け合うようにして床を滑りながら止まる。

 

「「「……………」」」

 

ギルフォードを含め、しばしの静寂が玉座の間を支配する。

 

「ぐっ…!!」

 

先に声を発したのは…ゼノライヤであった。

その胸元には先の一撃で受けた傷をさらに深く抉ったようなクロス状の傷があり、口から血の塊を吐きながらも立っていた。

 

「がはっ…!!」

 

次に声を発した忍もまた吐血しながらファルゼンを杖代わりにして膝を着いていた。

見れば、左肩から右脇腹にかけて大きな斬り傷があり、そこから血が滲んでバリアジャケットを汚していた。

その様はまるで先のギルフォードが受けた傷をゼノライヤが忍にやり返したようにも見える。

 

「……ゼノ!」

 

「案ずるな。この程度で…俺は死なん」

 

心配した様子のギルフォードにゼノライヤはそう答える。

 

「(しかし、同じ場所を正確に狙うとは…)」

 

「(くっそ…あれでもまだ立ってんのかよ!)」

 

互いに振り向くと同時に相手の傷や状態を見る。

 

「まだまだ楽しめそうだな、紅神 忍!」

 

「皇帝なら潔さも大事だと思うぜ!」

 

そう言って再び剣と刀を交えようとした時だった。

 

ザシュッ!!!

 

「ッ!!??」

 

突然、ゼノライヤの腹部から禍々しい輝きを放つ巨大な刃が生えるようにして出現した。

 

「「ッ!?!」」

 

その事態に忍もギルフォードも言葉を失っていた。

 

「は~い、残念賞♪ 時間切れだよ、ゼノちゃ~ん」

 

そう言ってゼノライヤの背後から…以前、京都で忍と交戦した死神ローブが姿を現す。

 

「お前は…!?」

 

まさかの再会(?)に忍は驚く。

 

「やぁやぁ、狼君。この間振りだね。元気してた?」

 

ふざけた態度をした死神ローブの後ろにはいつの間にか緋鞠と戦った双剣ローブの他に4人のローブ衆の姿もあった。

 

この戦争、果たして何処へ向かおうとしているのだろうか?

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