第五十一話『次元サミット』
フィライトでの紛争が終結して早三日が過ぎようとしていた。
皇帝ゼノライヤと親衛隊長ギルフォードの惨死は帝国でも極秘扱いとなっていた。
民に知らせるにはあまりにも凄絶且つ悲惨で衝撃的と言えるからである。
帝国は三国同盟によって敗退。
国土は三分割することで各国が管理することになった。
帝都は今回の紛争での立役者であるイーサ王国が管理することになっていた。
帝国側に出回っていたシュトームは投降してきた兵達から出来るだけ回収したものの、まだ数十単位のシュトームが未だ帝国の負けを認めず三国同盟に抗戦意志を持つ残党の手に渡っているのが現状である。
また、回収したシュトームはフェイトや朝陽経由で時空管理局へと渡り、ノヴァがエクセンシェダーデバイスを基にして設計したデバイス技術や魔力石を出力する異世界の技術を解析する目的などで研究されることになるだろう。
とは言え、既に特務隊の研究チームがある程度の解析を行っているので、シュトームの今後の使用目的が議題になるだろうが…。
しかし、それよりも問題なのは黒ローブこと、ノヴァ・エルデナイデによって多次元世界の存在が公になったことである。
既に多次元世界の存在を知るミッドを中心とした世界はともかくとして、地球を始めとした次元世界の概念すらなかった世界には大なり小なりの混乱が広がっていた。
………
……
…
~深夜・駒王学園~
「冥界代表、サーゼクス・ルシファー」
「天界代表、ミカエル」
「
「時空管理局代表、クロノ・ハラオウン」
「時空管理局代表補佐、ゼーラ・シュトライクス」
「特異災害対策機動部二課代表、風鳴 弦十郎」
「フィライト三国同盟代表、シルファー・ファリウム・イーサ」
「次元辺境伯、紅神 忍」
深夜の駒王学園の大会議室に集まる大人達に混ざって忍の姿もあった。
忍には今回の事件の首謀者であるノヴァについての情報を話してもらうために参列してもらっている。
「早速で悪いが忍。あいつが何者なのか教えてもらおうか」
挨拶もそこそこにアザゼルが切り出す。
そのためか全員の視線が忍に集まる。
「ハッキリ言っときますけど、俺だってあいつの事なんて知りません。知ってるとしたらあいつの言っていた
『絶魔』に関する微々たるものですよ」
視線が集まる中、忍はハッキリとそう断言していた。
「絶魔。聞いたこともない呼称だが、それは個人を表すのか、組織を表すのか。それはわかるのかな?」
サーゼクスの問いに…
「おそらくは組織、もしくは種そのものを表すと思います。伯父の言葉から察するに結構な規模の組織としても機能してる可能性もあるかと…」
忍はそう答える。
「伯父? それは一体誰の事だい?」
忍の伯父が誰かについて知らないだろう人達を代表してクロノが尋ねる。
「伯父の名は狼夜。生前は"邪狼"と呼ばれてた傭兵で、俺が殺しました」
そんな忍の言葉に…
「ッ!?」
驚きと共にクロノの表情が険しくなる。
「うちの隊員の報告でも似たようなものがある。そちらの執務官も居合わせたのだから報告を受けていても不思議ではあるまい」
クロノの様子を見てか、隣に座っていたゼーラが口を開く。
「だが、彼は身柄を拘束してその罪を償うべきでした。それが殺された…ましてやそれが…」
「おいおい、今はそんなことよりももっと大事な話があるだろ?」
話が路線が逸れたことにアザゼルが口を挟む。
「そうですね。今は絶魔とやらの情報を少しでも詳しく紅神君から聞くことが先決かと…」
アザゼルに同意するようにミカエルが頷く。
「それで忍。絶魔ってのはどういう奴等なんだい?」
シルファーが続きを促す。
「伯父が言うには…全ての生命に絶望を与える存在だとか…」
「全ての生命ときたか。他には?」
「正直、容貌なんかは想像が出来ないかな。伯父もそこまで詳しく知ってるような口振りではなかったですし…代々伝えられてきた情報を俺に教えてくれた。そんな感じです」
「確かにこりゃ微々たるもんだな」
忍の説明に他のメンツも険しい表情を見せる中…
「そもそも…邪狼は死んだはずでは? 何故、彼が死人から情報を得られるんですか?」
クロノがもっともらしい疑問を口にする。
「それは俺も疑問に思っていたが…」
弦十郎もまたその疑問を抱いていたのだが…
「目の前にこうして超常の存在がいると、どうにも色々と説明されてしまう気がしてならん…」
悪魔や天使、堕天使、龍、混血といった人間とは異なる種が既に目の前にいることで、弦十郎は超常現象を簡単に説明されてしまうのでは、と感じていた。
「僕には未だ信じられないんですが…」
多次元世界を認知するクロノでも、人間以外の種族がいることに関しては未だ信じられない様子だった。
「提督殿も頭が固い。もっと柔軟な思考を持つべきでは?」
既に超常の存在を知るゼーラはそう言う。
「…………」
忍は徐に右目のカラコンを外すと、琥珀色の瞳を露わにする。
「この右目は元々狼夜伯父さんのものでした。それをフィライトで移植してもらった結果、彼の残留思念が俺の中に流れ込み、深層意識の中でのみ、伯父さんとの交信が可能になったんです。今はもう消えてしまいましたが…」
そして、簡潔に説明した。
「移植に関しては私が証言するよ。私が忍を助け出した時には既に右目が潰れてたからね。で、一緒に落ちてた邪狼とかいう奴の遺体から右眼を摘出して忍の眼に移植したのさ。なんでか知らないけど、そいつの右眼だけは無事だったからね。幸いだったのが、移植が成功して目が見えるようになったことかね。まさか、そんなことになってるとは私も思いもよらなかったけど」
それを裏付けるようにシルファーが付け加える。
「医学は専門外だが…いくら親類とは言え、移植には相性もあるだろうに…よく踏み切ったな」
シルファーの判断に弦十郎は軽く舌を巻いていた。
「それで、結局絶魔に関しての情報は本当に微々たるもんだったわけか」
「すみません…」
アザゼルの嘆息に忍は謝るしかなかった。
「しかし、ノヴァ・エルデナイデ。奴が行方知れずのフロンティアを掌握していたとは…」
「超先史文明にも造詣があると?」
「超先史文明…」
弦十郎の言葉にミカエルが反応する。
「それだけでなく、シュトームという量産型デバイスの大量生産…」
「山羊座のエクセンシェダーデバイスを保有してるってだけじゃないだろうな…」
「うちの魔力石の技術も取り込んでたしね…」
ゼーラの言葉に忍とシルファーが付け加える。
「多種族、絶魔、超先史文明、ロストロギア系デバイス……頭が痛くなりそうな案件ばかりだな」
それらを聞いてクロノが頭を抱える。
「若いのに苦労してんな」
そんなクロノを見てアザゼルが苦笑する。
「こうして集まったのも何かの縁だ。連絡先を交換しようじゃないか」
サーゼクスがそんな提案をし出す始末。
「出来るならプライベート用と仕事用の2つは確保しておかないとね」
「おっ、そいつはいいな」
サーゼクスの提案にアザゼルも乗り気だった。
「お~い…話がズレてませんか?」
約2名の提案に忍がツッコミを入れるが…
「そうですね。何かあった時の場合、各次元世界との連携は必要ですからね。私は賛成ですよ」
「小難しいことはわからんけど、連絡を取り合うことに関しては賛成だよ」
ミカエルとシルファーは賛成のようだった。
「プライベートはともかく、仕事用はちと厳しいかもな…」
弦十郎もプライベート回線については賛成の意を示している。
「僕もプライベート回線ならともかく、仕事用の回線となると問題がありますので…」
「問題あるまい。あくまでも我々のプライベート回線で会話したり話したりする分には…」
クロノの応対にゼーラが何やら含みのある言い方をする。
「じゃあ、そういうことでプライベート回線をオープンするということで」
「フィライトには俺から次元間通信機をいくつか送ってやるか」
「そいつはありがたいね」
「(いいのか、それで…?)」
通信回線を教え合う大人達を見て忍は少しばかり呆れたような眼差しで見ていた。
「なに呆れてんだ、お前も交換するんだぞ?」
「え…?」
アザゼルが忍からネクサスを取り上げると勝手に連絡先を追加していく。
「ちょっ?!」
「君も大変だな」
その様子を見てクロノが忍の肩を軽く叩く。
「(そういえば、この人…フェイトと同じ姓だったな…)」
今更ながら忍はクロノがフェイトの親族かと考える。
「何か?」
忍の視線にクロノは少し首を傾げる。
「あ、いえ…もしかすると、フェイト…さんのご親戚かと思って…」
「あぁ、フェイトは僕の妹だよ。義理だけどね」
「(やっぱりか…)」
「そういう君は…確か、次元辺境伯とか…」
「えぇ、まぁ…何というか、成り行きというか何というか…そういうことになってまして」
忍としては少し気まずかった。
何しろ、フェイトを自らの眷属としてスカウトしたのだ。
出来るだけ執務官としての職務を優先させるようにしてはいるものの、フィライトでの戦闘介入など要所要所(?)で呼び出しているのだから…。
「……時に、君は全てを守りたいと思ったりしないか?」
「え?」
「答えてくれ」
真剣な眼差しのクロノの問いに対して忍は…
「……全てを守るなんて、そんなの無理ですから…俺は俺の手の届く範囲で守れるモノや救える命を助け、守りたいと…そう思ってるだけですよ」
クロノを真っ直ぐに見て答えていた。
「……そうか…」
それを聞き…
「妹を、頼む。僕にとっても大切な家族だからね」
そう忍に伝えていた。
「はい」
それに忍も頷くことで答えていた。
こうしてプライベート回線の交換が終わった後、会議は次の議題に移ることになった。
「各地…というよりも各次元世界の様子はどうですか?」
ミカエルがそう切り出す。
「こちらはあまり大きな騒動は起きていない。強いて言うなら、多種族に関してくらいだろう」
まずゼーラがミッドを中心とした管理世界の状況を答える。
「冥界は逆に種族問題よりも次元世界がある事に関して各方面から政府に色々と質問がきているよ」
サーゼクスは逆に次元世界のことが騒ぎの問題となっていることを指摘する。
「我々の天界も冥界と似たようなものですね」
ミカエルも冥界と同じような状況だと答える。
「うちは…そもそもが騒ぎの元になるには十分だからね。種族は私とかミゲルがいるから多少は肝要だけど…問題は他にも世界があるってとこかね。私らみたく事前に知ってたのならともかく…知らなかったら私らもかなり混乱してたろうね」
フィライトの現状もまた冥界や天界と似ているようであった。
「それを言ったら人間界…地球だって騒ぎの元になるには十分過ぎる。世界がいくつもある事もそうだが、種族も様々なものがあるなんて言われたんだ。俺も事前情報がなければ、かなり混乱していただろうな。それだけあの放送は衝撃的だったんだ」
どちらの知識も知る由もなかった地球にとっては大騒ぎになっても不思議じゃないと弦十郎は言う。
「ネットの様子からしても様々な憶測が飛び交ってますしね。ゲリラ的な映画の宣伝、テロリズム、合成映像、一種のプロパガンダと捉えるものと、それはもう様々です」
ネクサスからネットを閲覧した忍がそう付け加える。
「アレが真実という見方や意見も当然ありますが…そういった意見は真っ向から否定されてますね。非現実過ぎるって…」
「しかし、その反面…話題を独占しているがな。次にまたこんな手を使われたり、決定的な何かを放送されたら本格的な騒動に発展しかねん。そうしたら各国政府もお手上げ状態になる」
「幸いなのは、人々が真実として認識しないように意識を向けていることですか」
忍と弦十郎の見解にミカエルがそう言う。
「だが、いずれは時間の問題だろうよ。いくら俺達がひた隠しにしてたって、ああやって事実を公表する奴もいるんだ。その時のために俺達も色々と準備を行っとく必要があるんじゃねぇか?」
話を聞いていたアザゼルがそう提案する。
「未だ人間同士での紛争が行われている現状で、それは危険だと思うが…」
「確かに…地球の情勢は不安定だ。僕らの技術を戦争の道具にする可能性だってある」
「耳が痛いが、そういう輩がいるのも確かだからな…」
アザゼルの提案に弦十郎とクロノは難色を示す。
「だから言ってるだろ、時間の問題だってよ。事実、俺らが何もしなくてもフィライトだっけか? そこではデバイス技術を導入した兵器が使われたんだ」
「そうさね。なら、今から対策を講じとくのは間違いじゃないと私も思うよ。その結果、どう転ぼうとしても、ね」
アザゼルの意見に賛成するシルファーだった。
「どっちにしろ、進めるに越したことはないと私も考えるよ」
「私も同意見です。我々の存在が明るみになった今だからこそ最悪の事態を想定して行動すべきです」
サーゼクスとミカエルはアザゼルやシルファーと同意見らしい。
「ハラオウン提督。すまんが、俺も信用に値する地球の要人とコンタクトを取るべきだと考える」
今まで静観していたゼーラも賛成派に賛同する。
「シュトライクス准将!?」
「少なくともここにいる連中は信用に値するだろう。我々管理局も変わらねばな」
ゼーラの言い分も尤もだろう。
「それは…確かにそうだが…」
それでもクロノは躊躇する。
「ぬぅ…」
弦十郎も腕を組んで唸る。
「忍君はどうだい?」
サーゼクスが忍に話題を振る。
「俺が意見してもいいのか疑問ですが…俺も賛成側ですかね。ノヴァが次にどんな手段を用意してるかわからない以上、ミカエルさんの言う通り常に最悪の事態を想定した方が良いと思います」
この中で最年少の忍も賛成意見だった。
「………わかった。各国政府には俺からも打診してみる。一般人への事実への公表…それがどのような事態を招くとしても、腹を括らせるよう説得してみせる」
最年少の忍に触発されたのか、弦十郎も腹を括る覚悟を決めたようだ。
「………はぁ…上層部がなんというか…」
「会議室と現場では現場の判断が優先されると俺は考えるがな」
「机に向かってばかりでは変わるものも変わらない、か…」
そんな言葉を呟いた後…
「わかった。僕の方でも出来るだけ何とかしてみるけど…あまり期待しないでほしい」
クロノも今後の対策に尽力することを決意した。
「決まりだな」
こうして話の流れは、多次元世界の公表へと踏み切ることに纏まりつつあった。
「各勢力には俺からも口添えしてみるさ。ま、各勢力にはこの案件に反対する動きもあるだろうがな」
「それは各国政府も同じだろう」
「うちの上層部も似た感じだな」
アザゼル、弦十郎、ゼーラといったそれぞれの勢力に詳しそうな面々が反対勢力のことについてを議題に上げた。
「反対勢力か…」
「当然、出てきたり邪魔してきたりするでしょうね」
「むしろ、反対されて当然の案件ですから…」
「そりゃあ、ねぇ?」
サーゼクス、ミカエル、クロノ、シルファーの順に反対勢力の出現には同意していた。
「そもそも人間界の政はあんま詳しくないが、どの国もこんなの認めねぇだろ」
「それは…そうだな。普通に考えればこのような案件、各国政府が容認するとは思えないか…」
アザゼルの指摘に弦十郎がそう答える。
「管理局はどうなんですか?」
忍がクロノやゼーラに管理局の内情を尋ねる。
「正直なところ、こちらも一筋縄ではいかないよ。というよりも上が何を考えているのか、僕たちにはわからない部分も多いんだ」
「何処の世界の重鎮もどんな組織の上役も自身の保身を第一に考えるものだ。うちの組織も例外ではない。一個人の力などたかが知れているしな」
クロノとゼーラはそう答える。
「組織が大きいとそれだけで大変なんですね…」
「そういうこった。そういうあぶれた者達の集まりが禍の団みたいなテロリスト集団を作るとも言えるがな」
改めて話すと、組織の上層部を説得するのがどれだけ大変かということが浮上してきた。
さらにそういった反対分子が組織から外れてテロリスト紛いの存在に成り下がるということも事実であることが窺えた。
「少しずつでもやらなければな。例え小さな一歩だとしても前進していることには違いないから」
「同意見です」
「そのための大人の仕事ってことだな」
サーゼクスの言葉にミカエルと弦十郎が頷く。
「さてと、そうなると対絶魔・テロ部隊を本格的に作らないとならないな」
アザゼルがそんなことを言い出す。
「各勢力から選抜したメンバーで構成した、今後の多次元世界で起こるであろう戦闘行為を鎮圧出来る特殊部隊をよ」
「選抜基準は?」
「多次元世界を知り、一定の戦闘力を持つ者…この中で言えば、忍だな」
ゼーラの問いにアザゼルは忍を指す。
「お、俺…?」
思わぬ指名に忍は自身を指さしてアザゼルを見る。
「そりゃお前、次元辺境伯なんて言われてるんだから選抜されても不思議じゃないだろ?」
「確かに、彼には既に実績もある」
「私らの世界への介入、ね」
アザゼルの答えにサーゼクスとシルファーが納得する。
「より正確に言えば、お前さんの眷属も部隊に引き入れるつもりだ」
「智鶴達も?!」
「あいつらも女にしてはかなり強い部類だからな…」
忍の眷属を思い出してアザゼルは苦笑する。
「ひ、否定は……したくても、出来ない…だと…?」
萌莉やシア、フェイト、エルメスといった戦闘に積極的でない眷属でも一定の力を保有しているので、否定する要素があまりないのも事実だったりする。
「将来は尻に敷かれるかな?」
ニヤニヤと笑いながらアザゼルはそう言う。
「うぐ…」
近い将来のヴィジョンを想像してか、忍は何も言い返せないでいた。
「あまり若者を困らせるものではありませんよ、アザゼル」
「それにあまり子供に頼るのもな…大人たる俺達の立場がない」
ミカエルがアザゼルを注意し、弦十郎が忍を巻き込むことへの抵抗感を露わにする。
「今更何を言ってやがる。これまでに若い世代がどれだけテロの対象になってきたことか…」
弦十郎の言葉をアザゼルが呆れたように呟く。
「ぬっ…」
「アザゼル、その言い方はあまり良くないと思うぞ?」
今度はサーゼクスがアザゼルの物言いを注意する。
「そりゃ悪かったな。ま、俺も人のことを言えた義理でもないか…結果的にあいつらを戦いに巻き込んでるんだからよ」
「それは…私達にも責がある事だ」
「そうですね。我々がもっとしっかりしていれば…」
アザゼルの謝罪後の言葉にサーゼクスとミカエルも若い世代を戦わせていることを少なからず気にしていた。
「組織の頭がそう簡単に動く訳にもいかんだろう」
「まぁ、魔王や天使長はアザゼルのように自由気ままという訳にもいかんからな」
弦十郎とゼーラが揃って3人にそう言う。
「おい、ゼーラ。そりゃどういう意味だよ?」
ただ、アザゼルはゼーラの言い分に引っ掛かりを覚えていた。
「事実を言ったまでだ」
「何が事実だ。俺だってちゃんと仕事くらい…」
「ほぉ? 神器関連の研究にコレクター趣味、女遊び、外交、有事の際の戦闘及びその指揮…まともな仕事を誰かに押しつけでもしない限り難しいと思うが?」
「…………くそ、悔しいが言い返せねぇ…」
ゼーラの的確なツッコミにアザゼルは悔しそうに握り拳を作る。
その様子を見て…
「随分と仲が良いんですね…」
「確かに…」
クロノと忍がそんなことを口にする。
「こいつとは腐れ縁なだけだよ」
「そうだな。互いに己の立場を利用し合い、情報を交換するような関係だ」
2人の反応に対してアザゼルとゼーラはそう言い切る。
「それって色々と問題がありゃしないかい?」
話を聞いてたシルファーが口を挟む。
「「問題ない」」
シルファーの問いに対して2人はシンクロ気味にこれまた言い切る。
「…………いやいや、ありますから…!」
言い切られて納得しそうになったクロノだが、すぐさま意識を"問題ない"と言い切った年長者2人へと向ける。
「何か問題でも?」
そんなクロノに対してゼーラは平然としている。
「何か問題でもって…准将、もしかして機密情報を漏らしたりしたことは…」
「あぁ、そのことですか。問題ありません。あくまでもプライベートでの出来事です。仕事に影響はありません」
「~~~っ」
ゼーラの平然とした物言いにクロノは盛大に頭を抱える。
「そういうこった。仕事の話をプライベート時に"愚痴として零しても"誰も責めることは出来ねぇよ」
「えぇ。プライベート時にまでそんなことを言い出したら我々のプライバシーに関わりますから…」
そう言ってアザゼルはニヤニヤ笑いと、ゼーラは不敵な笑みをそれぞれ浮かべていた。
「モノは言い様ですね…」
忍は呆れてそれ以外に何も言える気がしなかったとか…。
「それで…忍君以外だと、誰をメンバーに挙げる?」
サーゼクスが脱線した話題を元に戻す。
「テロを阻止してる実績のある若手悪魔…リアス率いるグレモリー眷属、サイラオーグ率いるバアル眷属…それからシトリー眷属にアガレス眷属…」
「御使いからも何名か選抜しましょうか」
「うちには装者達しかいないんだが…」
「多次元世界の事件を解決させるつもりならこちらからも増員しないといけませんよね」
「ならば、提督殿と親しいあの娘共はどうですか?」
「こっちは…そもそもが人手不足なんだけどねぇ。若いのも少ないし、後は頭でっかちとか血の気の多い野郎くらいしかいないし…」
話が戻ると、各勢力から選抜メンバーを集結させて一つの部隊として機能させることになりそうだった。
「若手悪魔達に関してはしばし待ってくれないか? 若手対抗のレーティングゲームがもうすぐ行われる予定で、駒王学園の学園祭、さらに中級悪魔への昇進試験もある」
サーゼクスが若手悪魔の選抜メンバー入りに待ったをかける。
「悪魔の社会というのも色々とイベントが目白押しなんだな…」
「レーティングゲームの方は冥界でテレビ中継もされるみたいですよ」
驚くクロノに忍が情報を付け加える。
「そんなに大きなイベントなのか?」
「対戦カードが対戦カードだけに、ですかね」
片や目の前に出席している魔王の妹、片や若手ナンバーワンと称される大王の血族。
注目されないのがおかしいくらいの対戦カードである。
「そんなに面白いイベントなら私も観戦してみたいけどねぇ」
「弟子が出張る試合なら俺も見てみたい気はするな」
クロノと忍の会話を聞いていたシルファーと弦十郎がそんなことを言い出す。
「なら、どっちも会場に招待してもいいんだぜ? なぁ、サーゼクス」
「アザゼルが言うセリフではないが、お二人さえよろしければ観戦部屋をこちらで手配します」
アザゼルとサーゼクスが2人を冥界に招待しようとする。
「ホントかい? なら、私は行かせてもらおうかね?」
その招待にシルファーは乗り気だったが…
「気持ちはありがたいが、俺にも仕事がある身だからな」
弦十郎は仕事があると招待を辞退する。
「なら代わりにあの潜水艦に中継を繋いでやるよ。そうすりゃ仕事中でも問題ないだろ?」
「それなら…まぁ…」
特異災害対策機動部二課の仮設本部でレーティングゲームの観戦…。
「「(それでいいのか?)」」
忍とクロノの思考が一致した。
「俺の執務室にも繋いでくれると助かる。レーティングゲーム…少しは興味があるのでな」
さらにゼーラからもそんな注文が入る始末。
こうして第一回、次元サミットは終わりを告げるのだった。
今回のサミットで決まったことは各自が独自の行動を起こすようになっている。
サーゼクスやミカエルなどの組織の長とは違い、クロノや弦十郎のように組織の中に身を置く者もいるので、行動は慎重にならざるを得ないのだ。
まずは多次元世界を知る者達に事情を説明するところから始まるだろうが…。
それでも確実に多次元世界を包む大局は少しずつ動き出し始めたと言える。
事実を公表したその先に何が待つというのか…?
今はまだ、誰もその答えを見い出すことは出来ない。