魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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第五十三話『トラウマという名の悪夢』

グレモリー眷属vsバアル眷属のレーティングゲームが数日に迫ったある日の事。

 

前日の夜に冥界でのゲームへの意気込みを合同記者会見にて発表した両眷属。

その際、イッセーの緊張ガチガチな一言で翌日の週刊誌が凄いことになったのだが…。

それはともかくとして、グレモリー眷属内ではちょっとした波乱が起きていた。

 

その波瀾とは、イッセーとリアスの関係性に関わる事である。

 

リアスにとってイッセーはライザーとの婚約での出来事からイッセーを意識するようになり、将来的には結婚を考えているものの、当の本人であるイッセーはそれを

それは周囲も同じ考えなようで、リアスの家族はイッセーを婿にと考えている。

しかし、イッセーはいつまで経ってもリアスのことを『部長』と呼び続けている。

それが関係を進展させたいリアスにとって最大の苦痛だったのかもしれない。

 

対するイッセーは内心ではリアスの事をとても好いている、それは一目惚れに近い感情かもしれない。

憧れを抱き、惚れた女性には違いないが、それが恋として発展できるかと言えば、それは今のイッセーにとっては難しい課題であった。

イッセー自身もリアスと恋仲になりたいと考えている。

しかし、それは今の主と従者の関係から一歩踏み出さなくてはならないのだが、イッセーは消極的とも言えるほどにそのことを考えないように、そして自らその考えを否定してきた。

 

何故か?

 

そもそもイッセーが悪魔になる切っ掛けになった事件を思い出してほしい。

堕天使レイナーレ。

かつてイッセーの恋人として振る舞い、そしてイッセーの命を奪い去った存在。

今でこそ赤龍帝の籠手と認識されているが、最初の頃は危険な神器として排除された。

そこへリアスが自らの駒を用いて眷属にした。

その後、堕天使レイナーレが率いる"教会"という小さな組織との衝突し、それが真に赤龍帝の籠手であることが判明。

その際、レイナーレはイッセーに対して罵詈雑言を笑いながら言い放ち、イッセーの心の奥底に決して消えないトラウマを残していた。

それ故か、イッセーはハーレム王を目指すと公言しながら一向に、尚且つ積極的に特定の女性と距離を縮めようとはしなかった。

むしろ、その内心では恐怖していたのだ。

普段から仲の良く優しい眷属の女の子達、一歩踏み込んでさらに仲良くなろうとしたらバカにされるんじゃないか、と…。

眷属の女の子達が悪い子達ではないとわかっていたも、深く知ろうとするとブレーキがかかる。

そう、イッセーは女の子と仲良くなるのが怖いのだ。

 

当時を知る朱乃、アーシア、小猫の3人が苦悩するイッセーの元を訪れ、そんなイッセーのずっと溜め込んでいた想いを聞いていた。

それでもイッセーの事が好きであると、3人は答えてくれた。

そのことがイッセーの心に巣食う闇を少しでも氷解させた。

そして、イッセーは勇気を持とうと改めて考えた。

例え、どんな結果になろうと…次のバアル戦でサイラオーグを倒せたら、リアスに告白すると…。

 

………

……

 

その夜のこと。

 

イッセーとリアスが気まずい雰囲気となってしまったため、今回ばかりは一緒に寝ることはなく…

 

「なんか悪ぃな、忍」

 

「気にしないで。今日は皆グレモリー先輩の方に行って慰めてくれるらしいから」

 

そう、イッセーは明幸邸の居間に泊まることになった。

 

「僕らもお呼ばれされてしまってよかったのかな?」

 

「こ、ここが極道のお屋敷…」

 

「なんで俺まで…」

 

何故か木場、ギャスパー、紅牙も呼んでの男水入らずのお泊り会である。

 

そして、それと入れ替わるように兵藤邸に紅神眷属の女性陣が押し掛けることになった。

向こうは向こうで女性だけのパジャマパーティーだろうか?

 

「それにしても…なんだか不思議だね」

 

居間に布団を敷き、その上に座ったりする忍やイッセー、紅牙に既に布団に潜り込んでるギャスパーを見渡して木場が呟く。

 

「ん? 何がだよ?」

 

そんな木場にイッセーが尋ねる。

 

「いや、一学期が始まった頃はイッセー君やギャスパー君と一緒に寝泊りをするなんて思いもよらなかったからさ」

 

「そうなのか?」

 

木場の言葉に意外そうな表情を見せるのは紅牙だった。

 

「そっか。紅牙はイッセー君の学園での評価を知らないんだっけ」

 

紅牙の反応を見て忍がそう言う。

 

「学園での評価? 赤龍帝ではないのか?」

 

ちょっと一般常識に疎い紅牙がそう言うと…

 

「いやいや…普通の人間にそんなこと言ってもわからねぇって…その、なんだ…」

 

イッセーが言いにくそうに表情を歪める。

 

「松田君と元浜君って人間の友人達と揃って"変態三人組"って呼ばれるくらい、この辺ではちょっとした有名人だったんだよ。特にイッセー君はね」

 

「それでも最近はイッセー君の評判も落ち着いてきたかな?」

 

イッセーの代わりに忍が答え、木場も言葉を付け足す。

 

「変態、三人組…だと?」

 

その言葉を受け、布団に潜り込んでるギャスパーを見る(が、目つきが悪いため睨んでるように見える)。

 

「は、はいぃ。ネットでも少し話題になってましたし…学園の掲示板にも色々と書き込みがありましたぁ~!」

 

睨まれたと思ったのか、おっかなびっくりに答えるギャスパーだった。

 

「赤龍帝の名が泣くぞ?」

 

「うっせぇ!」

 

真顔で言われたため、イッセーも勢いで反発してしまった。

 

『もっと言ってやってくれ。相棒にはもっと自覚を持ってほしいものだ』

 

そこにドライグも加わる。

 

「ドライグ!?」

 

「今の声が…赤龍帝か?」

 

その声に応えるようにして…

 

『冥王とはこれが初めてか。我が名は赤龍帝・ドライグ。今は相棒・兵藤 一誠と共にいるものだ』

 

ドライグが紅牙に軽い挨拶をする。

 

「そうか。俺は神宮寺 紅牙。紅の冥王だ」

 

それを受け、紅牙も軽い挨拶を返した。

 

「そういや、紅牙は眷属とかの引き入れはしてるのか?」

 

思い出したように忍が紅牙に尋ねる。

 

「俺は眷属など作らん……つもりだったんだが…」

 

そう言ってから軽い溜息を吐いて先日の出来事を話した。

 

「事故、ね」

 

「そうだ。俺はあいつらを眷属にする気はなかったんだ。なのにあいつらの持った駒に俺が触れた瞬間、駒が勝手に反応してあいつらを眷属にしてしまった」

 

どうも紅牙は調と切歌を眷属にしたことを未だ割り切れていないようである。

 

「まぁ、同じ眷属の駒を持つ者として言えることは…そうだな。自分の考えを眷属に反映した方が良いんじゃないか?」

 

「どういうこった?」

 

忍の言葉にイッセーが尋ねるが、他の皆も興味があるようだった。

 

「俺は…自分の手の届く範囲で守りたいって考えから眷属を選んでる。もちろん、それは俺の勝手な考えだし、皆にはそれぞれの気持ちもあるから無理強いはしてないけどさ…それでも俺は俺の信念で眷属を守りたいと思ってる。残る兵士の駒5個も…俺がホントに守りたいような人のために使いたいんだ。これって智鶴に対して浮気、になるかな?」

 

恥ずかしそうに、自重するように忍は自分が選んだ眷属に対する想いを口にしていた。

 

「う~ん…明幸先輩が許してるんなら大丈夫じゃね?」

 

「ど、どうなんでしょう?」

 

「イッセー君はもうちょっと紅神君を見習った方が良いかな?」

 

「要は己の決めた道、か…」

 

忍の考えにイッセーや紅牙達は色々な反応を示していた。

 

「でも…未だ絵札の方は訳が分からないから使ってないけど…」

 

そう言って眷属の絵札を皆に見せる。

 

「7枚の絵札、か…」

 

「確か、天界の御使いと眷属の駒を基に作られたんだっけ?」

 

「そう聞いてる」

 

紅牙と木場の言葉を受けながら布団の上に放る。

 

「触っても平気だよな?」

 

イッセーが忍に尋ねる。

 

「あぁ。駒と一緒だと聞いてるから俺が認証しなきゃ動かないだろうが…紅牙は遠目で見てくれ。同じ冥族で反応しても困るからな」

 

「む、わかった」

 

そう答えながら紅牙に釘をさすと、触ろうとした紅牙も手を引っ込めて絵札を覗き込む。

 

「剣、弓、槍の三騎士に、戦車を駆る者、魔術師?」

 

「魔導士という線もあるだろう。それに狂戦士に暗殺者」

 

木場が3枚の絵札を手にしながら言うと、紅牙も続けて言う。

 

「な、なんだか、それぞれに役割がありそうですね…」

 

「役割? 駒みたいにか?」

 

「は、はい…」

 

ギャスパーの発言にイッセーが尋ねると、ギャスパーもそれに頷く。

 

「役割か。う~ん…御使いがトランプになぞられてるようにこれにも意味がある、か…」

 

そんな会話を横で聞きながら忍は魔術師の絵札を器用に指先で回してみる。

 

「そうだね。やっぱり、この絵柄が鍵じゃないかな?」

 

木場が絵札を布団の上に戻しながら言う。

 

「ん~…しっかし、天界もなんでこんなわかりづらい絵柄で作ったんだか…」

 

考えてもわからない以上、この話題はそう長くは続かなかった。

 

「にしても…イッセー君が女性に対してちょっとした恐怖症を抱えていたとはね」

 

「い、意外過ぎます…」

 

「さっきの話を聞いた上で答えるなら…確かに意外だ」

 

事の経緯を聞いた一同の反応は木場以外は意外そうであった。

 

「僕も当時のことは見てたけど…アレは確かに酷かったからね」

 

あの時に見せたレイナーレの言動を思い出し、木場も苦い顔をする。

 

「あんま思い出させんなよ…」

 

布団の上で胡坐を掻きながらイッセーが不貞腐れる。

 

「ごめん。でもイッセー君にとっては避けては通れない道だからね」

 

木場が謝りながらもそう言う。

 

「そうだね。グレモリー先輩の気持ちだってあるだろうし…」

 

忍がそんなことを言うと…

 

「忍は…その、どうなんだよ?」

 

「どう、って?」

 

イッセーの問いに忍が首を傾げる。

 

「明幸先輩とは今じゃ公認カップルみたいだけど…その馴れ初めとかさ…」

 

「智鶴との馴れ初め、か…」

 

ふむ、としばし考える素振りを見せた忍は…

 

「俺が物心つく頃にはもうここに預けられてた後だったからな。それ以来の付き合いになるし…ずっと一緒だったから自然と惹かれ合ったというか…俺も智鶴も理想の相手がお互いだったのかな? だから、俺は智鶴を大切に想っているし…眷属として守りたい人が増えた今でも智鶴が傍にいてくれたらとも思う。もちろん、他の眷属の娘が大切じゃないって訳じゃないんだけど…」

 

そう答えていた。

 

「「…………」」

 

「ご馳走さま」

 

「あわわ…////」

 

イッセーと紅牙は呆然とし、木場は笑顔で受け流し、ギャスパーに至っては布団を頭から被ってしまっていた。

 

「だから…イッセー君もあんまり考え込まないで、グレモリー先輩に全力でぶつかればいいと思うよ? 俺が人外の存在とわかっても智鶴達はそんな俺を受け入れてくれたんだし…たとえ主と下僕、先輩と後輩だとしてもちゃんと想いを伝えれば届くんじゃないかな?」

 

そんな言葉を受け…

 

「想いを伝えれば届く、か…」

 

イッセーの中の覚悟が少しずつ固まっていく。

 

「良い面構えになってきたな」

 

紅牙がイッセーの表情を見て呟く。

 

「俺、サイラオーグさんとの勝負に決着を着けたら…頑張ってみるわ」

 

それを聞き…

 

「なら、僕も親友のために頑張ろうかな?」

 

「ぼ、ぼくも頑張りますぅ~」

 

木場とギャスパーがそんなことを言う。

 

「俺はその勝負を見届けさせてもらおうかな」

 

「暑苦しい奴等だが、そういうのは嫌いじゃない」

 

「お前が暑苦しい言うな」

 

紅牙の言葉にツッコミを入れる忍にドッと笑いが起きた。

 

男達の語らいは夜遅くまで続いたという…。

 

………

……

 

一方で…

 

兵藤邸ではグレモリー眷属と紅神眷属の女子によるパジャマパーティー的なものが開かれていた。

場所は6階の空き部屋である。

しかし、人数が人数だけに魔法で一時的に壁を取り払って二部屋分のスペースを確保しているが、それでも部屋が狭く感じてしまうのは…きっと気のせいではなかろう。

 

ちなみに参加メンバーを表記するなら…

 

グレモリー眷属…リアス、アーシア、朱乃、小猫、ゼノヴィア、ロスヴァイセ

 

紅神眷属…智鶴、カーネリア、シア、朝陽、フェイト、エルメス、暗七、萌莉、吹雪、クリス

 

その他…イリナ、レイヴェル(先日駒王学園に通うためにホームステイしてきた)、緋鞠、雲雀

 

以上である。

 

「どうして私まで…私には任務(忍の監視)があるというのに…」

 

何故か参加させられた緋色の長襦袢を身に着けた雲雀が小言を呟く。

 

「ま、まぁまぁ…」

 

そんな雲雀をジャージ姿のロスヴァイセが宥める。

歳が近く、同じ教職員という立場上、雲雀とロスヴァイセは自然とその仲を縮めていた。

 

「アンタの姉さんって姫島 朱乃に匹敵する大きさよね?」

 

暗七が緋鞠と雲雀の体型を比較するようにして緋鞠に尋ねる。

 

「それはなんかの皮肉かしら…?」

 

暗七の言わんがしてることに眉をヒクヒクさせながら緋鞠が言う。

 

「うぅ…」

 

「はぅぅ…」

 

「……この部屋には敵が多過ぎます…」

 

緋鞠の言葉にエルメス、アーシア、小猫がちょっとだけ肩身狭そうにしている。

 

「あたしだってその気になれば…」

 

ブツブツと何かを愚痴る緋鞠を他所に…

 

「カーネリアさん? それは一体なんでしょうか?」

 

ゴゴゴゴゴ…と背後に炎の幻影を見せる智鶴は白のパジャマ姿でカーネリアを見ていた。

心なしか目元に影が差してるような気がする…。

 

「それって何の事かしら?」

 

とぼけたように振る舞うカーネリアの姿は…黒の下着にワイシャツを一枚羽織っただけの露出度の高い姿だった。

 

「そのワイシャツ…しぃ君のですよね?」

 

「え…?」

 

智鶴の言葉にシアが驚いたようにカーネリアを見る。

 

「流石は明幸先輩。一目で紅神の衣服だと気付くとは…」

 

「お、幼馴染みならそのくらい出来て当然よ……ボソッ(多分…)」

 

ゼノヴィアはゼノヴィアで別の観点から智鶴の凄さに感嘆し、イリナはイリナで自分にも出来るかと思ったらちょっと自信無さ気だった。

 

「あらあら…流石は智鶴ね。そう思わない、リアス?」

 

「え、えぇ、そうね…」

 

話を振られて一瞬戸惑うリアスだった。

どこか心ここにあらずといった感じである。

 

「に、賑やか…ですね…」

 

薄い翠色のパジャマに身を包んだ萌莉がファーストを抱えながら賑わう様を遠目に見ている。

 

『きゅっ?』

 

むにゅん…

 

ファーストが萌莉の胸を押し退けるように頭を後ろに動かして萌莉を見上げるようにして何かを尋ねるように鳴く。

 

「え…? わ、私、は…ちょっと…」

 

その意図がわかったのか、萌莉はちょっと寂しそうにファーストの頭を撫でる。

 

「で、も…ありが、と…」

 

『きゅっ!』

 

そんな何ともほんわかした雰囲気の中に…

 

「お前なぁ。もちっと輪に溶け込めっての」

 

「そういうこと」

 

パジャマ姿のクリスと白い浴衣姿の吹雪が萌莉の両隣にドカッと座って近くにいた召喚獣(クリスはフィフス、吹雪はサード)を抱き上げる。

 

「く、クリス、さん…? ふ、吹雪、さん…?」

 

驚いたように両隣を交互に見る。

 

「そのオドオドした言動、治らないもんか?」

 

「なんかの切っ掛けがあれば、少しは改善もできるんじゃない」

 

そう言いながらクリスと吹雪はフィフスとサードを撫でていた。

 

『にゃぅ』

 

『シュルル…』

 

フィフスは気持ち良さそうに、サードはなんだか眠そうにしていると…

 

「ちょっと、この鳥を何とかしなさいよ」

 

「まぁまぁ、流星さん」

 

フォースに肩に留まられた黒のパジャマ姿の朝陽が萌莉に文句を言いに来て、その付き添いにピンク色のパジャマ姿のフェイトが一緒にやって来た。

 

「あ、わわ…フォー、ス…その、ご、ごめんなさ…ぃ」

 

朝陽の肩からフォースを受け取ると、萌莉は縮こまってしまう。

 

「別にそこまで怒ってる訳じゃないわよ」

 

そうは言うものの、朝陽の言動は怒ってるようにも聞こえてしまう。

 

「その言い方が既に怒ってるように聞こえんのよ」

 

朝陽の物言いに吹雪がそう返す。

 

「仕方ないじゃない。これがあたしの素なんだもの」

 

この言葉に…

 

「(朝陽って友達少なさそう…)」

 

「(なんだか似たような空気を感じる気が…)」

 

「(流星さんって…不器用なのかな?)」

 

吹雪、クリス、フェイトはそれぞれそんなことを考えていた。

 

「それにしても…あの兵藤とかいう男。案外根性無しだったのね」

 

ピシッ!

 

朝陽の発した言葉が一瞬にして部屋内の温度を下げ、わいわい騒いでた周囲も急に沈黙してしまった。

 

そんな空気の中…

 

「そうね。私もちょっと驚いたわ」

 

智鶴が朝陽に続いてそう言い放つ。

 

「リアスちゃんもリアスちゃんだけど、兵藤君も押しが弱いのかしら?」

 

「ぅぐっ…」

 

友人にズバリ言われて凹むリアス。

 

「私としぃ君は…しぃ君が中学を卒業した時のお祝いで、間違ってお酒を飲ましちゃった時に一緒に寝てたら…」

 

「「「「おい!」」」」

 

何かを懐かしむように言いながらもポッと赤くなる智鶴の言葉にクリス、朝陽、吹雪、緋鞠の4人が声を揃えてその先を遮る。

 

「ともかく、リアスちゃんはもっと怒ってもいいと思うのよ。結構わかりやすいアプローチをしてる訳だし。でも、辛い経験をしたのなら…相手の気持ちもわかってあげないとよね。私も朝陽ちゃんに言われて痛感したもの」

 

冥族の集落でグレイスとの戦闘中、忍の中の龍騎士が暴走した時に言われた朝陽の一言を思い出しながらそう言う。

 

「あぁ、あの時の…」

 

その場に居合わせて朝陽が忍に好意を持ってると確信したシアも思い出したのか、そう呟く。

 

「へぇ…」

 

「なんか意外」

 

「同じ騎士として見習わないとかな?」

 

暗七、吹雪、ゼノヴィアの順にそんな言葉が並ぶと…

 

「べ、別に大したこと言ってないし!!////」

 

照れているのか、すぐさま否定の言葉を漏らすとそっぽを向く。

その際に寝る時は結っていない髪がふわりと舞う。

 

「だからリアスちゃんも昔の女なんて気にせず、それを補って余りあるくらいに兵藤君を幸せにしちゃった方が良いのよ」

 

「補って余りあるくらい?」

 

言われたリアスは智鶴を見てキョトンとする。

 

「えぇ。精神の深いところに関わるから私にもわからないけれど……兵藤君は単に怖がってるだけ。それをわかってあげた上で優しく包み込んであげれば、きっと兵藤君もわかってくれるわよ」

 

「そうよ、リアス。イッセー君だっていつまでもこのままって訳でもあるまいし、私達からも歩み寄っていかなくちゃね」

 

「智鶴、朱乃…」

 

両眷属の女王に諭されて少し気持ちが楽になったのか…

 

「そうね。私だってあの時の傷を知ってたのに、それを見て見ぬふりしてイッセーが自然に立ち直ると考えてたわ。でも…それじゃあ、いけなかったのね」

 

リアスも少しだけ元気になったように見える。

 

「男達も向こうで話し合ってるだろうし、きっと平気よ」

 

退屈そうに窓際にいたカーネリアがそう口にする。

 

「そうね…………って、あなたにも責任の一端はあるんだからね!?」

 

レイナーレに協力していたことを思い出したのか、リアスがカーネリアに向かって叫ぶ。

 

「あら? そうだったかしら?」

 

既に興味のないことだったため、カーネリアはスルッと逃げてしまった。

 

「下らない。男1人にどうしてそこまで熱心になれるのか…私には理解出来ないわ」

 

そこへ雲雀が教員用の書物を読みながら口を挟む。

 

「雲雀さんは恋とかしたことはないんですか?」

 

シアの問いに…

 

「そんな非合理的なこと、ありません」

 

雲雀は即座に答えた。

 

「そういうのに限って恋したら結構一途だったりするものよね。私もあんまり恋とかわからないけど…」

 

「……そうですね。意外とそういうのに目覚めたら、ってこともありますね」

 

「そういうものなのですか?」

 

「私も詳しくないから何とも言えないが…イリナ、そうなのか?」

 

「うぇぇ!? 私に聞くの?! で、でも…興味がない人なんていないんじゃない、かな?」

 

暗七の言葉に小猫、アーシア、ゼノヴィア、イリナが続く。

 

「姉様が認める程の男がいれば、話は別かもしんないけど…そんな男、そうそういる訳じゃないから」

 

雲雀の妹である緋鞠がそう言うと…

 

「じゃあ、アンタはどうなのよ?」

 

矛先が雲雀から緋鞠に移る。

 

「あ、あたしぃ!? そんな奴、いないわよ!」

 

そう言い張る緋鞠だが…

 

「? 緋鞠、嘘とはいただけませんね」

 

「ね、姉様!?」

 

まさかの姉の裏切りである。

いや、雲雀としては妹の嘘を見過ごせなかっただけで、裏切りとは違うか…?

 

「よく言っていたではありませんか。昔、母と共に人間界に行った時に迷子になり、そこで助けてくれた男の子にまた会えたらいいなとか。それが好意があるというのでは?」

 

「ひ、雲雀姉様ぁ~!?」

 

雲雀に真実を言われ、わーわーと騒ぐ緋鞠。

 

「へぇ、そんなことが…」

 

「人は見かけによらねぇもんだな…」

 

緋鞠の初恋話題に周囲もきゃいきゃいと騒ぐ。

 

「まったく、今何時だと思ってるのですか? あまり騒ぐとご近所迷惑ですよ?」

 

先生らしくロスヴァイセがそう言う。

 

こうしてパジャマパーティーも賑やかに幕を閉じるのであった。

 

 

 

翌日からリアスのイッセーに対する態度も少しだけ柔らかくなったものの、流石に昨日の今日ではギクシャクしたままであった。

 

そのままの状態で、サイラオーグとのゲーム当日を迎えるのであった。

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