魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

60 / 137
あの熱き戦いを一話に濃縮してお届けする愚をお許しください…。


第五十四話『激突! 龍vs獅子』

グレモリー眷属vsバアル眷属。

そのゲーム当日が遂にやってきた。

 

ゲームを行う場所はアガレス領の空中都市『アグレアス』。

空を浮かぶ島の上に存在する都市であり、島の都市から地上に水が落ちる様は滝のようで、それがいくつも点在する様は幻想的である。

島を浮かせている動力は旧魔王時代のものらしく、現状では魔王アジュカ・ベルゼブブしか詳細を知らないようであり、深奥部での調整はそのベルゼブブ眷属が行っているとのこと。

 

それ故か、アグレアスは冥界の世界遺産や観光地としても有名である。

移動方法は三つ。

魔法による転移ジャンプ(但し、VIPや特別なことがないと許可されない)。

飛行船などの空の乗り物。

ゴンドラによる地上からの移動。

 

イッセー達はゴンドラからの景色を見るために三番目の手段を使ってアグレアス入りをしている。

忍達、紅神眷属もまた別のゴンドラでアグレアス入りしていた。

 

その後、会場となるアグレアス・ドームの横の高層高級ホテルにてグレモリー眷属と紅神眷属が合流し、それぞれの部屋で時間まで待機となる予定である。

 

余談だが、同時期には別会場でシトリー眷属vsアガレス眷属のゲームも行われるのである。

そちらの注目度はあまり高くないが、それでも若手悪魔のゲームともなるとそれなりに注目を浴びているだろう。

 

………

……

 

部屋まで両眷属の合流後、ボーイに部屋まで案内されている時のこと。

 

《これはこれは…珍しい所で会ったな。紅髪のグレモリーに、堕天使の総督よ》

 

司祭服を身に纏った骸骨こと冥府の神『ハーデス』と、それに付き従う死神(グリムリッパー)の集団と遭遇していた。

 

「(冥府の神…ハーデス…これが死の匂いというやつか?)」

 

ハーデスとアザゼルが言葉を交わしてる間、他の者達はまるで生きた心地がしなかったとか…。

 

その後は、ハーデスと同じ神話体系であるギリシャ側の神『ゼウス』と『ポセイドン』に遭遇したり、チビドラゴン化したタンニーンに出会ったり、新しいお付きヴァルキリーを従えたオーディンを見つけたりと、待機部屋に辿り着くまでちょっと騒がしかった。

 

グレモリー眷属が待機部屋へと向かう途中で、紅神眷属は別れて一足先に会場のVIPルームの一つへと案内されていた。

 

「あれが会場か」

 

VIPルームの観戦窓からドーム内を見て忍が一言漏らす。

 

「意外と狭いわね」

 

ドーム中心であるだろう両陣地の仕様を見て暗七がそう呟く。

 

「きっと特殊ルールでもあるのよ。ゲームにはあまり興味がないから知らないけど…」

 

カーネリアがそんなことを言う。

 

「そ、それに、しても…す、凄い、人…」

 

観戦窓から会場を見れば既に観客席は満席のような状態であった。

それだけ注目度が高いとも言える。

 

「しかし、さっきは驚いたわね。まさか、冥府の神とかが出てくるなんて…」

 

吹雪が思い出したように身震いしていた。

 

「アレが死を司る神様ってわけ。いつかはお世話になるのかしらね?」

 

朝陽が壁際に背を預けながらそんなことを言い出す。

 

「そんな不吉なこと…」

 

「ないとも限らないでしょ?」

 

フェイトの否定の言葉を朝陽が一蹴する。

 

「紅神は次元辺境伯だなんて持ち上げられてるけど、実際は便利屋みたいなもんでしょ? それがテロ組織と命懸けの戦闘。いつ死んでもおかしくない状況にいるのよ」

 

これまで避けてきた話題を朝陽は口にする。

 

「そうよね。敢えて黙ってきたけど…結構な修羅場を潜ってきてるのよね。私は面白いからいいのだけれど…」

 

朝陽の言葉にカーネリアはフフッと妖艶な笑みを浮かべて付け足す。

 

「笑い事じゃありません!」

 

カーネリアの言動に智鶴が怒る。

 

「……………(俺は死なない。と言いたいとこなんだがな…)」

 

しかし、忍は今の会話で思うところがあるのか、黙っていた。

 

「しぃ君?」

 

「忍さん?」

 

「忍様?」

 

忍が黙っていることに智鶴、シア、エルメスが不安そうな視線を送る。

 

「あぁ、すまん。ちょっと考え事をな」

 

そう言って忍は柔らかい笑みを浮かべつつ…

 

「さて、時間まで少しのんびりしてようかな」

 

部屋を一旦出てしまった。

 

すると、そこには…

 

《む?》

 

さっき出会ったばかりのはずのハーデスが死神集団を従えて通りかかろうとしていた。

 

「……………」

 

まさかの出会いに忍も固まっていると…

 

《ほぉ…貴殿が噂に聞く次元辺境伯という犬か》

 

「ッ!」

 

犬発言に忍は少し苛立ちを覚えたが…

 

「え、えぇ…冥界でも異例なことなので、まだ右も左もわかりませんが…」

 

相手が神ということを思い出し、平静を装いながらもそう答えていた。

 

《しかし、妙な話だ。貴殿からは微かな神格を感じる。それは一体何なのだろうな?》

 

「(俺から…神格…?)」

 

ハーデスの言葉に忍は無意識に自分の胸の前に拳を作る。

 

《ふむ。異世界の存在を容認するつもりはないが、それ関係か。ファファファ、面白い。いずれ行われるだろう貴殿のゲームも興味半分に見てやろうぞ》

 

そう言い残し、ハーデス一行は忍の横を通り過ぎていった。

 

「……………」

 

それを見送る形で忍はハーデス一行の後ろを睨むように見ていた。

 

「死を司る神との邂逅か。縁起の悪いことだ」

 

ハーデス一行が見えなくなってから忍は独り言のように呟いていた。

 

………

……

 

そして、いよいよゲームの始まる時間になった。

グレモリー眷属とバアル眷属の入場に観客達は沸いていた。

 

「遂に始まるのか」

 

観客達の歓声はVIPルームにまで響いていた。

 

今回の特殊ルール『ダイス・フィギュア』。

両陣営の王がダイスを振り、その出た目の合計値によって出せる眷属の基準を決める。

基準となる数字はチェスの駒の価値と同じ。

つまり、兵士なら1、騎士よ僧侶なら3、戦車なら5、女王なら9という具合になる。

但し、グレモリー眷属もバアル眷属も兵士はイッセーとポーンの一人ずつのみ。

よって駒の価値はイッセーが8、ポーンが7という具合になる。

また、王の数値は事前に審査委員会が決めた駒価値になる。

リアスは8、サイラオーグは12。

サイラオーグは出た目がマックスでなければ出られないことになる。

さらに同じ選手を連続して出すことは出来ない。

これは王も同様とのこと。

なお、フェニックスの涙は両陣営に一つずつ支給されている。

 

実況によってそのような説明がなされていく。

また、実況は元七十二柱ガミジン家『ナウド・ガミジン』、解説にはアザゼルと、現王者『ディハウザー・べリアル』、審判には人間の転生悪魔にして最上級悪魔でゲームランキング7位の『リュディガー・ローゼンクロイツ』といった豪華なメンバーである。

 

「なるほど。こういう内容のゲームなのか」

 

実況の説明を受け、忍は何となく理解する。

 

「出た目の数で出られる人が変わり、組み合わせも重要か…」

 

「それだけじゃありません。相手の手を読み、最適の人選を行わなければならないと思います」

 

「同感。それだけにグレモリー眷属はわかりやすい人選よね」

 

忍の言葉にシアと朝陽が付け加えるように言う。

 

「確かに、な…」

 

グレモリー眷属の情報は互いに訓練をしていることや客観的に見てもわかりやすいパワー重視のチームであることは明白だった。

対してバアル眷属の情報はあまりわからないので、どういう人選で組まれたのかまでは予想が出来ない。

 

そんな中、出た目は…リアスが2、サイラオーグが1…合計値は3。

つまり、これで両眷属の騎士と僧侶が出られる。

 

「騎士か、僧侶…うちで例えるなら朝陽、萌莉、フェイト、シアになるな」

 

「ま、萌莉は除外でしょ」

 

「グレモリー眷属の方もアーシアさん、ギャスパーさんは単体では使えませんし、ゼノヴィアさんもパワー重視の傾向がありますから…」

 

「ここは木場君だね。さて、それを見越して向こうの陣地は誰を差し向けてくるか…」

 

忍、朝陽、シアが他の紅神眷属にもわかりやすいように話していると…

 

第一試合のステージがスクリーンに映し出され、そこに木場とバアル眷属の騎士であろう馬に乗った騎士『ベルーガ・フールカス』が広大な平原へと降り立っていた。

その後、互いに名乗りを上げるとそれぞれの得物を構える。

木場は聖魔剣、ベルーガは円錐形のランス。

 

「やはり、木場君か」

 

「あの馬…普通じゃないわね」

 

その後、アザゼルの説明でベルーガの駆る馬(名は『アルトブラウ』という)は地獄の最下層ことコキュートスの深部に生息するという高位の魔物『青ざめた馬(ペイル・ホース)』であることが判明。

死と破滅を呼ぶ馬と言われ、気性は荒く、気に入らない者ならば主でさえ蹴り殺すという。

 

『第一試合、開始してください!』

 

審判の合図と共に第一試合が開始される。

 

その瞬間、両者の姿が見えなくなる。

 

ギンッ! ギィンッ!!

 

普通の人なら剣戟で生じる金属音と火花しか見えない程の超高速戦闘。

常に木場と訓練してきたイッセーですらぶつかる瞬間だけ姿を捉えることが出来る程度である。

 

「(これは…目で追うのはきついか)」

 

同じく高速戦闘を得意とする忍も気配や匂いで感知出来ない以上、辛うじて目で追うのがやっとといったところだった。

それでも黙った上にかなり集中して見ないとならないが…。

 

ギィィンッ!!!

 

鍔迫り合いをする形で両者の姿が観客達にも見えるようになる。

 

「…………すぅ…ふぅ…流石に速いな…」

 

軽く目頭を押さえながら忍が呟く。

 

「忍君…もしかして、見えたの?」

 

そんなフェイトの問いに…

 

「ん、少しだけなら、な」

 

そう答える。

 

「アレが見えたっての!?」

 

「映像越しで見えるとか…お前、どんだけ目が良いんだよ!」

 

吹雪とクリスが忍の視力の異常さを感じていた。

 

その後、木場とベルーガの試合は少しだけベルーガが押すものの、木場が後天的に会得した『聖剣創造』の亜種禁手『聖覇の龍騎士団(グローリィ・ドラグ・トルーパー)』の発現によって決着を着けた。

 

第一試合を制したのは木場であった。

 

………

……

 

第二試合、出た目はリアスが6、サイラオーグが4…合計値は10。

 

「10か。わりとでかい数値だが…」

 

ふむ、と忍は考え込む。

 

「ダブル戦車、戦車+騎士or僧侶+兵士×2、騎士×2+僧侶+兵士、僧侶×2+騎士+兵士、騎士+僧侶+兵士×3、女王+兵士ってとこかな?」

 

今の自軍の眷属を見て忍はそう呟く。

考えうる組み合わせを瞬時にして組み立てたようだ。

 

「あら、私単体じゃダメなのかしら?」

 

その呟きにカーネリアは忍の背中から首に手を回して絡みつきながら尋ねる。

 

「お姫様やお嬢ちゃん達と組むのって…私的には結構気を遣うのよ?」

 

そう言って忍の頬を指で撫でる。

この中では一番の最年長に当たるだろうカーネリアの戦闘は力押しに近い傾向にあり、さらに破壊衝動に従って動くことからチーム戦よりも単体での方が動きやすいのだ。

 

「カーネリアさん! しぃ君から離れてください!」

 

そう言って智鶴はカーネリアを忍から引き剥がす。

 

「ただのスキンシップくらいで目くじら立てるなんて…ホントに坊やの事が大好きなのね~」

 

そう言ってくるりと智鶴の手から逃れてスクリーンに映る戦闘を観戦する。

 

見れば、既に第二試合が始まっており、グレモリー眷属からは小猫とロスヴァイセ、バアル眷属からは断絶したはずのクロセル家の末裔で魔法剣士の騎士『リーバン・クロセル』と巨人の戦車『ガンドマ・バラム』が戦闘を繰り広げていた。

小猫はガンドマの大振りな攻撃を避け、確実に一撃一撃を当てにいっている。

対するロスヴァイセとリーバンの戦いは魔法合戦となっていた。

 

そして、状況はすぐに変わる。

リーバンの持つ神器『魔眼の生む枷(グラビティ・ジェイル)』を防ごうと仕掛けたロスヴァイセの魔法を鏡で防御するリーバンだが、その鏡を利用してロスヴァイセがガンドマと位置を交換。

小猫の仙術で防御力を削られたガンドマとリーバンに向けてロスヴァイセがフルバーストを発動させる。

しかし、リーバンは勝利した時に生じる隙を突き、2人を重力でこうそく。

そこに満身創痍のガンドマの最後の一撃が小猫に直撃。

結果、リーバン、ガンドマ、小猫の3名がリタイヤしてしまった。

 

………

……

 

第三試合、合計値は8。

イッセーが出られる数字でもある。

しかし、そのタイミングでサイラオーグから提案が挙げられた。

 

「こちらは『僧侶』のコリアナ・アンドレアルフスを出す」

 

この宣言に会場もどよめく。

 

「ここで選手を宣言? どういうつもりだ?」

 

忍も困惑する中、サイラオーグは続ける。

 

「兵藤 一誠のスケベな技に対抗する術を彼女が持っていたとしたら、兵藤 一誠はどう応えるか?」

 

何という宣言だろうか…。

完全なイッセー対策を用意してきたらしい。

 

「イッセー君のスケベ技の攻略法? そんなの………」

 

相手が男なら絶対に使用しない。

使わせる前に打倒するにも触れられただけで衣服バラバラ…。

対策が遅れれば女子限定で胸の内を読まれる。

 

「………地味に隙が無いな。女性限定だけど…」

 

考えるだけでもそんな風に思えてしまっていた。

 

「(しかし、それの対策…?)」

 

唸っても答えが出ない忍を他所に第三試合にイッセーが出ることが決まり、バトルフィールドへと転送されてた。

それによって冥界の子供達のボルテージが上がっていた。

 

「相変わらず、凄い人気だな…」

 

女性にはともかく、子供人気だけは凄まじいイッセーであるため、クリスがそんなことを呟く。

 

そうこうしてる内に戦闘開始。

コリアナの魔法攻撃を龍気を纏わせた拳や蹴りで捌きながら禁手の準備に入る。

 

「流石にイッセー君が優勢か…」

 

その様子を見て忍はそう漏らす。

 

そして、イッセーが禁手と化し、乳語翻訳を展開しようとした時…

 

「「「「ぶっ…!?」」」」

 

コリアナがいきなり脱ぎ始めて、お茶を飲んでいた数名(朝陽、暗七、吹雪、フェイト)がお茶を噴き出す。

 

「しぃ君は見ちゃいけません!」

 

そう言って忍の眼を智鶴が手で覆う。

 

いきなり始まったストリップに観客の男性陣はもちろん、イッセーやアザゼルもガン見していた。

そんな状態で乳語翻訳を使っても次に脱ぐ箇所を言うだけで、イッセーもストリップを邪魔するような愚行を犯さぬために攻撃が出来なかった。

しかし、下着に差し掛かったところで互いの性癖の相違のため、コリアナはイッセーに敗北したのだった。

 

「酷い試合だったな…」

 

おおよそ誰もが思っていたことを忍もまた思っていた。

 

………

……

 

第四試合、再び合計値は8。

ルールのため、イッセーは出場出来ない。

 

グレモリー眷属からはゼノヴィアとギャスパー、バアル眷属からはリーバンと同じく断絶した家の末裔である戦車の『ラードラ・ブネ』と僧侶の『ミスティータ・サブノック』が出てきた。

しかし、ゲームも中盤…何が起こるかわからない。

 

「これは…ちょっ予想外だな」

 

グレモリーの人選を見て忍がそう漏らす。

 

「予想外?」

 

智鶴が首を傾げて忍を見ると…

 

「あの吸血鬼が出てきたことでしょ?」

 

朝陽が答える。

 

「あぁ…サポートが主目的だと思うが、あの気弱なギャスパー君を出すなんて…何か思うところでもあったのかな?」

 

出場前の陣地の会話まではわからないため、忍はそんなことを考えていた。

 

「そうね。あの聖剣使いと出すなら数値ギリギリの戦乙女か、聖魔剣のどちらかが適任かとも思ったけれど…」

 

「ゲームも中盤…不測の事態に対処するためでしょ?」

 

「そういうもんなの?」

 

「あたしに聞くなよ…」

 

カーネリアと暗七のそれぞれの見解に吹雪は隣のクリスに尋ねるが、クリスはこういうのは苦手だとばかりに口をへの字に曲げる。

 

「ともかく、この試合…ちょっと荒れるかもな…」

 

そう言った忍の予想は的中してしまう。

 

試合開始後、ラドーラはドラゴンへと変身した。

ブネ家は悪魔であると同時にドラゴンを司る一族であり、変身できるのはごく一部らしいのだが…ラードラは修行して変身能力を獲得していたのだ。

それを見たゼノヴィアがデュランダル砲を撃とうとしたが、ミスティータの持つ神器『異能の棺(トリック・バニッシュ)』を用いてゼノヴィアの聖剣を扱う能力を封じてしまった。

そのため、デュランダルは機能しなくなり、ただのお荷物となってしまう。

そんなゼノヴィアをコウモリと化したギャスパーがゼノヴィアを包み込んで一時的に退却した。

 

「これは…相性が悪いのと当ったな…」

 

その試合運びを見て忍は眉を顰める。

 

「ゼノヴィアさんは…パワー傾向にあります。それが仇になったかもしれませんね」

 

「ったく、なんだって剣にパワーを求めるのよ」

 

シアの言葉に同じ騎士である朝陽が苦言を呈する。

 

「で、でも…け、剣は、人、それぞれ、ですし…」

 

萌莉はゼノヴィアをフォローしようとする。

 

「こうなると、鍵はギャスパー君だが…」

 

不安そうな目で試合を見ていると…

 

ゼノヴィアの呪いをギャスパーが解こうと地面に魔法陣を描き、持参していたイッセーの血を使って呪いの解除に当てた。

そして、その間…ギャスパーはその身を挺して時間を稼ぐことにしていた。

しかし、それは凄惨な時間の幕開けだった。

時間を稼ぐギャスパーはラドーラによって徹底的に痛めつけられた。

 

「……………」

 

忍はその光景を目を逸らさずに見据えていた。

 

「こんな、酷いです…!」

 

その光景に目を逸らす者は少なからずいた。

エルメスや萌莉、フェイト、シアなどが目を逸らしていた。

 

「グレモリー先輩…この光景を見てあなたは、何を思いますか?」

 

陣地でイッセーに諭され、ギャスパーの勇姿を見るリアスを見た。

 

「(ギャスパー君…君も立派な"男"ということか…)」

 

その後、無事に呪いから解放されたゼノヴィアが最高の一撃を仕掛けようとしていた。

それを見てミスティータは再び能力を発動させようとした。

しかし、それはリタイヤギリギリのギャスパーの停止の邪眼によって時間を停止させられていた。

その光景にラドーラは絶叫、ゼノヴィアの咆哮と共にデュランダル砲が2人を直撃。

勝敗はグレモリー眷属の勝利となった。

勇敢な僧侶の活躍によって…。

 

………

……

 

第五試合、いくどかの振り直しがあって合計値は9。

グレモリー眷属からは朱乃、バアル眷属からは『番外の悪魔(エキストラ・デーモン)』の出身である女王『クイーシャ・アバドン』が出る。

奇しくも女王対決となった。

 

「この対決、勝負は短期で決まるわね」

 

朝陽が率直な意見を出す。

どちらも魔法の使い手であり、互いに特殊な特性を持つ者同士であった。

 

「同感です。魔法体系は違うけど、朱乃さんは魔法に秀でてる。見たところ相手側も魔法戦に長けた方だと思いますので…」

 

シアも朝陽の意見に頷いていた。

 

「勝負の分かれ目は…それぞれの持つ特性ってところか…」

 

そうこうしている内に、朱乃とクイーシャの魔法戦が開始された。

そして、試合は朱乃の放つ雷光をクイーシャはアバドンの特性である『(ホール)』によって吸い込み、その中で雷光を光と雷に分解し、光だけを朱乃に返すというカウンターで決着を着けていた。

忍達の予想通り、短期での決着であった。

 

………

……

 

第六試合、合計値は…出目のマックス、12が出た。

終盤に差し掛かってのこの合計値が意味するところは…

 

「サイラオーグ・バアルの…出陣」

 

静かに呟く忍の予測通り、バアル眷属の陣地ではサイラオーグが上着を脱いで下の戦闘服姿を晒していた。

 

バトルフィールドに転送されたのはバアル眷属はサイラオーグ。

対するグレモリー眷属は…

 

「3人か…」

 

木場、ゼノヴィア、ロスヴァイセの3名であった。

 

「敵大将の首を取る…まではいかなくても、ダメージを蓄積させるのが目的、か」

 

「そうね」

 

その布陣を見て忍が呟くと、それに同意するように朝陽が頷く。

 

「モニター越しだけど、あいつらからは覚悟が見受けられるわ」

 

同じ騎士としての眼から、朝陽はそう判断する。

 

「ふふ…良い戦いになりそうね」

 

カーネリアもまた楽しそうにそう呟いていた。

 

そして、試合開始の合図が告げられる。

サイラオーグは自ら施していた枷を外すと共に、彼から溢れ出す活力と生命力を闘気として纏って3人を相手にした。

フルバーストで迎え撃とうとしたロスヴァイセの魔法をサイラオーグは拳のみで弾き、次にロスヴァイセの腹部を殴って湖の方へと吹き飛ばした。

残った剣士2人を相手にサイラオーグは聖魔剣を拳で砕き、デュランダルの波動を闘気で相殺するという芸当を見せていた。

 

「若手最強…ここまでのものか…!!」

 

それをモニターで見ていた誰もが息を呑んでいた。

 

木場の新たな禁手によって撹乱しようにも防御力が足りないため、それほど足止めにもならなかった。

そのサイラオーグの一撃をまともに受け、木場もゼノヴィアも一度は地に倒れるが、少しでもサイラオーグの体力を削るために立ち上がる。

そこへ最初の一撃を喰らったはずのロスヴァイセが現れ、至近距離からの魔法フルバーストを叩き込む。

 

「な、何が起きたの?!」

 

予想外のことにフェイトが驚きの声を漏らす。

 

「け、剣…?」

 

ロスヴァイセが持つ一振りの剣に萌莉が気付く。

 

「エクスカリバーか!」

 

それを聞き、忍が合点のいったような声を出す。

 

「なるほどね。アレは鍛え直す際に七つの特殊な力を七本の聖剣に分けたものだったものね」

 

カーネリアも聖剣に関する知識を持っていたことから頷いていた。

 

そんな3人の見事な連携にサイラオーグは敬意を表し、掠っただけでも致命傷となりうる拳打を打ち込み、ロスヴァイセを撃破した。

そこへ木場とゼノヴィアが同時に斬り掛かるものの、木場の聖魔剣では歯が立たず、デュランダルもまた傷が浅い程度であった。

そこに木場もデュランダルの柄に手を掛け、2人がかりで何とか右腕を斬り落とすだけだった。

その後はサイラオーグの左拳と蹴りの空中コンボでゼノヴィアを屠り、それを目の当たりにした木場を捕まえて地面を抉りながら走り、空中に蹴り上げた後に左拳の正拳突きを木場の腹に突き刺してトドメを刺した。

 

結果は当然ながらサイラオーグの勝利。

しかし、サイラオーグは右腕の修復にフェニックスの涙を使用し、イッセーとの決戦に備えるのであった。

 

………

……

 

第七試合、出目はリアスが5、サイラオーグが4の合計値9。

グレモリー眷属からはイッセー、バアル眷属からはクイーシャが出た。

 

「イッセー君…」

 

バトルフィールドに現れたイッセーの表情を見て、忍はただ彼の心情を考えていた。

 

「この勝負…イッセー君が勝つ」

 

そして、その後に起こるだろう戦闘状況も予測出来てしまう。

 

「次の試合でアーシアさんを捨て駒にして兵士を退け、最後はイッセー君とサイラオーグさんの一騎打ち…」

 

誰もがそうした予測をした時だった。

イッセーがクイーシャを文字通り瞬殺しようと仕掛け、それを見たサイラオーグが強制的にリタイヤさせていた。

イッセーの殺意に満ちた視線と言葉を受け、サイラオーグが互いの全てでの団体戦を提案していた。

 

委員会はそれを承諾し、最終決戦の幕が開こうとしていた。

 

………

……

 

最終試合。

グレモリー眷属からは既に禁手化となっているイッセーとリアス。

バアル眷属からはサイラオーグと謎に満ちた選手『ポーン』。

それぞれが最後の舞台である広大な平地へと降り立っていた。

 

「これが最終決戦…!」

 

熱き戦いもこの一戦で決まる。

観客のボルテージもかなり上がっている。

 

そんな中、イッセーとサイラオーグの戦いが始まった。

まずは互いにクロスカウンター気味に拳を交わらせるが、イッセーの増加能力でインパクト時に一撃を強化する。

その結果、サイラオーグの体を若干だが吹き飛ばす。

 

「木場君達を圧倒したあのサイラオーグさんに一撃を加えた…!?」

 

その光景に忍は目をパチクリさせて驚いた。

 

「流石は赤龍帝。力押しには力押し…嫌いじゃないわよ」

 

「しかも、悪魔になって短い月日でここまで成長するなんて…」

 

カーネリアと暗七がそれぞれ考えていたことを口にする。

 

それからもイッセーとサイラオーグの拳打合戦が続く。

 

一方、リアスとポーンの戦いはというと…

ポーンは少年のような姿から巨大な獅子へとその姿を変貌させていた。

その姿を見てアザゼルから説明が入る。

獅子の正体は十三ある神滅具の一つ『獅子王の戦斧(レグルス・ネメア)』。

極めれば一振りで大地を割る威力を放ち、獅子にも変化出来て、敵の放った飛び道具からも所有者を守るという。

しかし、サイラオーグによれば発見した時には所有者は謎の集団に殺害され、主を失った戦斧は次の所有者も元へと向かうはずだったが、意志を持ったかのように獅子に変化すると集団を全滅させたのこと。

その時にサイラオーグはその獅子を眷属にしたらしい。

だが、所有者がいないせいか力が不安定であり、サイラオーグと組める場面でしか出せれなかったという。

そんな相手と、リアスは戦うことになる。

 

「リアスちゃん…大丈夫かしら?」

 

友人の事が心配な智鶴も声が不安げであった。

 

それでも最後の戦いらしく、イッセーとサイラオーグの戦いは白熱した。

しかし、戦いの中、イッセーはサイラオーグの右拳に違和感を覚え、先の戦いで木場の台詞が脳裏を過ぎって鎧の中で涙を溢れ出す。

その右腕をトリアイナの戦車で突いて打ち上げ、トリアイナの僧侶による砲撃をサイラオーグに向けて放つ。

しかし、片方の砲撃は外れてしまうものの、片方の砲撃に巻き込まれてダメージを貰っていた。

また、智鶴の心配通り、リアスは獅子に手傷を負わされてしまい、フェニックスの涙を使わざるを得なかった。

その時、獅子はサイラオーグに自らを纏うように進言し、更なる力を提示した。

 

「この上、まだ上限があるのか!?」

 

「正にチートってやつか?」

 

忍の驚き様にクリスが目元を引くつかせて聞く。

 

しかし、イッセーは獅子の力を纏ったサイラオーグとの決戦を選んだ。

 

「バッ!? あいつ、正気か!!?」

 

「男には意地を突き通す場面もあるが…これは…」

 

叫ぶクリスに、忍も苦々しい表情を見せる。

 

そして、覚悟を決めたサイラオーグはレグルスを…黄金の獅子の全身鎧を纏っていた。

獅子王の戦斧の禁手『獅子王の剛皮(レグルス・レイ・レザー・レックス)』。

それを目の前に

イッセーは戦車の力で対抗しようとした。

しかし、それはあまりにも無謀であり、あまりにも呆気なくイッセーの戦車の鎧を粉砕していた。

 

「あの堅さを一撃で…?!」

 

模擬戦で何度か攻撃をしたものの、忍や牙では全く傷をつけられなかった戦車の鎧をサイラオーグは一撃で穿っていた。

しかも攻撃されたサイラオーグの方は無傷。

 

「ここまで、か…」

 

その様子をモニターから見ていた忍は静かに目を閉じる。

 

しかし…観客の子供達はイッセーが立ち上がることを願った。

泣く子もいたが、1人の少年やイリナの声で子供達はイッセーを呼び続ける。

サイラオーグもまたイッセーが立ち上がることを望んでいた。

そして、リアスがイッセーの元に駆け寄り、彼の復活を望む。

 

そして、奇跡は起きる。

 

カッ!!

 

「なんだ!?」

 

突如としてイッセーの体を紅きオーラが包み込むと共にリアスの胸が光り、赤き鎧が真紅の鎧へと変貌していた。

 

『お、俺は…?』

 

そして、何事もなかったように立ち上がるイッセー。

 

『赤いオーラ…いや、もっと濃い…真紅のオーラだ。そう、紅の輝き。『紅髪の魔王(クリムゾン・サタン)』と称されし魔王と同じ…あのバカの惚れた女と同じ髪の色……あいつにだけ許された奇跡か!!』

 

解説のアザゼルも興奮気味に叫んでいた。

 

『………『真紅の赫龍帝(カーディナル・クリムゾン・プロモーション)』と言ったところか。その色は紅と称された魔王様と同じ……そして、リアスの髪と同じ色』

 

サイラオーグもまたそんなことを口にしていた。

 

『惚れた女のイメージカラーだ。部長は、リアス・グレモリーは俺が惚れた女だ。惚れた女を勝たせたい。惚れた女を守りたい。惚れた女のために戦いたい。俺は…俺はッ! 俺を求める冥界の子供達と、惚れた女の目の前であなたを倒すッ! 俺の夢のためッ! 子供達の夢のためッ! リアス・グレモリーの夢のためッ! 俺は今日あなたを超える!! 俺はリアス・グレモリーが大好きだぁぁぁぁぁ!』

 

立ち上がったイッセーは会場に木霊する程の告白を叫んでいた。

 

「ここで告白かよ!?」

 

「あら、この場面では情熱的じゃない?」

 

「告白された本人は…顔が真っ赤ね」

 

クリス、カーネリア、暗七がそれぞれ呟いた後…

 

「ははっ…イッセー君。君はまだ成長を止めないんだね。なら、俺も…まだまだ上を目指せそうだ…」

 

自らの可能性を信じ、忍はイッセーの姿を見て呟いていた。

 

「(俺に宿るという神格…龍騎士の血肉…未知なる吸血鬼…それを知ることで俺も更なるステージに上がる…!)」

 

イッセーとサイラオーグの壮絶な殴り合いの戦いを見ながら忍は決意する。

 

殴り合いはバトルフィールドを壊さんばかりの威力を誇った。

イッセーはサイラオーグの僅かな隙を突き、新たな砲撃『クリムゾンブラスター』によって一度はサイラオーグを打倒した。

だが、サイラオーグは咆哮と共に立ち上がった。

それでも終わらないイッセーとサイラオーグの戦い。

 

しかし、決着は意外な展開を見せる。

禁手が解けたイッセーはそれでもサイラオーグに立ち向かおうとした。

だが、サイラオーグは既に意識を失っていた。

それも立ったまま、目をギラギラとした闘志を燃やしながら…。

それに対し、イッセーは精一杯の感謝を向けて叫んだ。

 

こうして、グレモリー眷属vsバアル眷属の試合は…グレモリー眷属の勝利に終わったのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。