魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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第五十五話『告白は蜜の味、再会は危険な香り…?』

グレモリー眷属vsバアル眷属のレーティングゲームから数日。

駒王学園では学園祭が行われていた。

オカルト研究部は旧校舎を丸々使った『オカルトの館』なるイベントをしていて大盛況であった。

 

そんな駒王学園に三人一組の男女がやってきた。

 

「駒王学園、か…」

 

白に近い水色の短髪にエメラルドグリーンの瞳を持った凛々しさを含んだ端正な顔立ちに、青みがかった銀縁のハーフフレーム眼鏡を掛け、ほっそりとした体格の男性が校門の前で感慨深そうに呟いていた。

服装は黒の長袖長ズボンに蒼いパーカーを羽織り、スニーカーを履いた姿をしている。

 

「そっか。アンタは何事もなければここに通ってたんだっけ?」

 

男性よりもちょっとだけ身長の高い前髪に白いメッシュを入れた背中まで伸ばした黒髪と藍色の瞳を持った少し中性的で綺麗な顔立ちに、長身に対して少しだけ控えめな凹凸に見えるが、十分に女性らしさを有する体型をした女性がそんなことを言う。

服装は白のノースリーブに黒のホットパンツにロングブーツを履いたちょっと季節外れな姿をしている。

 

「そ、そうでしたね…」

 

首の後ろで一纏めに束ねた腰まで伸びた白い髪と黒い瞳を持った綺麗というよりも可愛らしい顔立ちに、均等の取れた平均的な体型をした女性がちょっと不安気な表情で男性の様子をチラチラと確認する。

服装は白のワンピースに水色のビーチサンダルを履いたこれまた季節外れな姿をしている。

 

「『シルト』、気にする必要はないよ。『アルカ』もあまり不用意な一言は控えてくれ」

 

男性は『シルト』と呼ばれた男性をチラチラ見ていた女性にそう言った後、『アルカ』と呼ばれた長身の女性に苦言を呈していた。

 

「あいはい、悪かったよ。『海斗(かいと)』」

 

そう言って男性のことをアルカは『海斗』と呼ぶ。

 

「本当にわかってるのかな?」

 

やれやれといった感じで海斗は駒王学園の校門を潜る。

 

「あ、待ってください」

 

シルトが海斗の後を慌てて追い、その後ろをアルカがゆっくりとした歩調でついていく。

 

「はわっ!?」

 

何もないところでシルトが転びそうになるが…

 

「慌てなくても置いて行きはしないから…」

 

苦笑しながら海斗がシルトを抱きかかえる。

 

「す、すみません…///」

 

恥ずかしいのか、シルトは顔を赤くして俯く。

 

「相変わらず何もないとこでよく転べるねぇ…」

 

アルカがそんな2人の横を通り過ぎながらそんなことを呟く。

 

「あぅぅ…////」

 

アルカに言われて余計に恥ずかしくなったのかさらに顔が赤くなる。

 

「しかし、学園祭か。一般公開されているのはありがたいね」

 

シルトが可哀想になったのか、海斗は話題を変えるように各クラスの出し物を見ながら校舎へと続く道を歩いていく。

 

「色々とやってるんだな…」

 

入り口でもらったパンフレットを見ながらアルカが呟く。

 

「…………」

 

楽しそうにしている学生の姿を見ながら海斗は物思いに(ふけ)っている。

 

「気ぃ抜くんじゃないよ。いつ"あいつらが襲ってくる"か、わからないんだからね」

 

アルカがそんな海斗に耳打ちする。

 

「そう、だね。ありがとう、アルカ」

 

この楽しいイベントに水を差すのも野暮かと思い、海斗は少し回って駒王学園から去ろうと考えていた。

 

「ま、それでも楽しめる時には楽しまないとね」

 

アルカはそう言うと、プールの方へと歩いていこうとする。

 

「アルカ、別行動は…」

 

それを海斗が止めようとするが…

 

「こんな季節に寒中水泳を催そうなんざ良い度胸じゃない。ちょっと行って来るだけだけだからアンタ達も2人でデートでもしてな」

 

そう言ってアルカはさっさと行ってしまった。

 

「まったく…緊張感があるのか、ないのか…」

 

困ったなと言わんばかりの海斗はシルトに向き直る。

 

「仕方ないから少し回ろうか?」

 

「え…で、でも…」

 

シルトはアルカの歩いて行った方を見る。

 

「アルカならすぐに戻ってくるさ。それに彼女なら大丈夫って知ってるだろ?」

 

「それは…そうですけど…」

 

「だから、俺達も少しだけ楽しもうか」

 

そう言って海斗はシルトの手を優しく握って歩き出す。

 

「ぁ…////」

 

それに抵抗することもなく、シルトも海斗と一緒に歩いていく。

 

「それにしても向こうの方が賑やかだね。何があったかな?」

 

アルカの見ていたパンフレットの内容を思い出しながら海斗は歩く。

 

「確か…『オカルトの館』だったかな? オカルト研究部の催しだったはず」

 

少ししか見てないはずなのに、海斗はパンフレットの内容を完璧に暗記していた。

そうして海斗とシルトがオカルトの館に到着すると…

 

「凄い行列だね」

 

「で、ですね…」

 

長蛇の列を見て海斗とシルトは驚いていた。

 

「お~、大盛況デスね」

 

「…想像以上に並んでる」

 

「なんで俺がこんなことを…」

 

その横を調と切歌を連れた紅牙が歩いてきた。

どうやら2人に無理矢理(?)連れて来られたのかもしれない。

 

「というよりもお前ら、学院はいいのか?」

 

学園祭ではしゃぐ様子の2人に対して紅牙は当然の疑問を聞いていた。

 

「こ、細かいことは気にしないでデス!」

 

「…興味があったから来てみたかったの」

 

「要はサボりか…」

 

それを聞いて紅牙は頭をクシャクシャと掻く。

 

「そ、そう言う紅牙こそなんで学園に入らないんデスか?」

 

「今更学園に入る気にはならん。第一、これでも年齢的には3年生くらいだからな。入って一年も満たない内に卒業というのも味気ない。だったら敢えて入る必要もない。それだけだ」

 

切歌の問いに紅牙はそう言ってのけた。

 

「(? どういう意味だ?)」

 

それを横で偶然にも聞いてしまった海斗は少し首を傾げていた。

 

「それよりも…」

 

そう言葉を切って紅牙は横にいた海斗に視線を向ける。

 

「お前、ここの人間じゃないな?」

 

「ッ!?」

 

一目で海斗がこの辺りの人間ではないと判断する紅牙に一瞬警戒レベルを上げようとする海斗だが…

 

「観光か?」

 

その一言で海斗は最低限の警戒に留めていた。

 

「え、えぇ…とは言っても昔はこの辺りに住んでまして…今は全国を転々としてますが…」

 

海斗は苦笑しながらそう言っていた。

 

「女同伴でか?」

 

シルトの方をチラ見してから尋ねる。

 

「家族ですので」

 

「……そうか」

 

紅牙と海斗が話している横では…

 

「…お姉さんは寒くないんですか?」

 

調と切歌が薄着のシルトに寒くないのか聞いていた。

 

「えぇ、このくらいの気温なら大丈夫」

 

「寒さに強いんデスか?」

 

「そんな感じかしら…」

 

まさか"本当のこと"を言う訳にもいかず、シルトはそう答えていた。

 

「それにしても時期が良かったな。学園祭の時にこの町に来れたんだ。せいぜい楽しんでけよ」

 

「ありがとう。えっと…」

 

そこで互いにまだ名乗ってなかったことに気付く。

 

「紅牙だ。神宮寺 紅牙」

 

「ありがとう、紅牙。俺は…水神(みずがみ) 海斗というんだ」

 

「海斗か」

 

「…私は月読 調」

 

「あたしは暁 切歌っていいますデス」

 

「私はシルトと申します」

 

それぞれ名乗っていると…

 

「お、紅牙じゃねぇの。お前も祭りに来たのか?」

 

焼きそばとたこ焼き片手にアザゼルが旧校舎裏の方から歩いてきた。

 

「アザゼルか。見ての通りこいつらのお守だ」

 

そう言って調と切歌を指す。

 

「…お守とは心外」

 

「そうデスそうデス!」

 

紅牙の言葉に2人して抗議する。

 

「で、そっちのカップルは?」

 

「今さっき知り合ったばかりだ」

 

「どうも」

 

海斗はアザゼルに一礼していた。

 

「(どっか良いとこの坊ちゃんか? 所作に品がありやがる)」

 

海斗の一礼だけでアザゼルはそんなことを思うが…

 

「ま、祭りだからな。楽しんでってくれや」

 

そう言い残してアザゼルは校舎の方へと向かってしまった。

 

「アレでも一応はこの学園の教師らしい」

 

紅牙が補足するように海斗に説明する。

 

「そのわりに遊んでるような…」

 

「…気にしたら負け」

 

「そういうことデス」

 

海斗の苦笑を見て調と切歌がそんなことを言う。

 

「しかし、ここのイベントは他と比べて一際賑わってるような…」

 

話題をオカルトの館に移す。

 

「部員が美人揃いでイケメン役もいるからな。男女共に人気なんだろう。俺は興味ないが…」

 

紅牙がそう言うと…

 

「もう、まだそんなことを言ってるデスか?」

 

「…いい加減に観念するべき」

 

「ちっ…」

 

調と切歌が来たかったらしく、紅牙はそれに付き合わされたのだろう。

 

「良かったらお二人も一緒にどうデス?」

 

「…結構並ばないとならないけれど…」

 

調と切歌が海斗達を誘うが…

 

「気持ちだけ受け取っておくよ。もう一人の連れがプールで寒中水泳とやらに参加してるからね…」

 

海斗はそう言ってやんわりと断っていた。

 

「こんな肌寒くなってきたのに寒中水泳に参加だぁ!?」

 

「もっと猛者がいたデス!」

 

シルトもそうだが、寒さ耐性を持つ者がまだいたことに紅牙も切歌も驚いていた。

 

「まぁ、驚かれても仕方ないかな…」

 

「…それよりも何故寒中水泳が…」

 

海斗が今日何度目かの苦笑を浮かべていると、調が当然な疑問を口にする。

 

「アルカさん…無茶をしてないといいんですけど…」

 

シルトはアルカのことを心配しているが、その心配は無用な気がする。

 

「とにかく、お誘いありがとう。俺達はこの辺でお暇させてもらうよ」

 

「では、失礼します」

 

海斗とシルトはそう言ってその場から立ち去ろうとする。

 

「"また"、とは言わないのか?」

 

そんな海斗の背に紅牙はそう投げ掛ける。

 

「…………」

 

海斗がその言葉に一瞬だけ立ち止まるが…

 

「気のせいじゃないかな?」

 

笑顔という仮面を着けて振り向いた海斗はそう言い放っていた。

 

「…そうか」

 

そう言う紅牙は少し鋭い視線を海斗に送っていた。

 

「(彼、なかなかに鋭いな…)」

 

「(あいつ、何者だ?)」

 

海斗と紅牙が互いに相手についてそのようなことを考えていた。

 

そんな時だった。

 

「あら、調ちゃんに切歌ちゃん?」

 

「紅牙、お前も来てた、の、か…?」

 

海斗と入れ替わるようにして海斗の横を通り過ぎようとしていた一組のカップルが…

 

「潮の、香り…?」

 

「ッ!?」

 

振り向き様に互いの姿を見て目を見開く。

 

「海、斗…?」

 

「し、忍…?」

 

そのカップルは忍と智鶴であり、海斗の匂いを察知した忍がその存在に気づき、海斗もその成長した親友の姿に驚きを覚えていた。

それは古き親友との再会であった。

 

………

……

 

学園祭が後夜祭に様変わりする中…

イッセーは部室にいたリアスに名前を呼びながら告白し、それをリアスが受け入れる形でやっとスタートラインに立った2人だったが、その様子を眷属達に見られてしまい、部室で告白したイッセーが悪いことになってしまっていた。

 

しかし、その夜…。

別問題が浮上していた。

 

場所は兵藤家のVIPルーム。

 

「…………」

 

そこに海斗が通されていた。

当然、アルカとシルトも同じ部屋で待機している。

 

「ま、一先ず此処なら安全は保障出来るけどな」

 

アザゼルが開口一番にそう言う。

 

「そんで、お前さん達は何者で、"何処"から来たんだ?」

 

「ッ」

 

アザゼルの言葉にバツが悪そうにアルカが逃げる隙を窺うが…

 

「「…………」」

 

窓の近くには忍と紅牙が控えていた。

さらにアザゼルがそう簡単に隙を与えるはずもない。

告白した日の夜に押し掛けられたせいもあり、リアスもご立腹。

イッセーも困惑していたりする。

ちなみに神宮寺眷属として調と切歌も同席している。

 

何故、こうなったかは少し時間を遡る。

 

………

……

 

それは後夜祭も近付いてきた夕刻のこと。

 

「どうして、何も言わずに行っちまったんだ?」

 

「家の事情でね。何も言えなかったんだ…そのことについては悪いと思ってる」

 

場所を旧校舎裏に移し、忍は海斗に詰め寄っていた。

 

「連絡の一つもなく…これでも心配してたんだぞ?」

 

「すまない…」

 

何度忍が言葉をぶつけても海斗は謝るだけの一点張りであった。

 

「埒があかんな…」

 

その様子を傍目から見ていた紅牙がそう呟く。

 

「やったデス! マリアに声がそっくりなリアスさんとの写真が撮れたデ~ス♪」

 

「…まだ、やってたの?」

 

忍と海斗のやり取りを紅牙に任せ、調と切歌は智鶴やシルトと一緒にオカルトの館に入っていた。

 

「あぁ、見ての通り平行線でな」

 

「困ったわね。海斗君はしぃ君の親友だし、手荒な真似は控えたいし…」

 

「ッ?!」

 

智鶴の物騒な発言にシルトがおっかなびっくりする。

 

「海斗。本当のことを言ってくれ。お前は一体どうして姿を……ッ!!」

 

改めて忍が海斗に詰め寄ろうとした時、何かの匂いを察知し…

 

四重結界(しじゅうけっかい)!」

 

魔・気・霊・妖の順序で力を練り、それを四重構造の結界状にして展開する烈神拳の防御技。

応用技として力の順序を変えることで色々な場面や攻撃に対応可能で、さらに忍は龍気も保有しているので五重の結界も不可能ではない点も見過ごせないだろうか。

その四重結界を自分を含め、智鶴や海斗達を守るようにして展開していた。

 

ビシュッ!!

 

その結界に阻まれるようにして一筋の閃光が弾ける。

 

「水…? それに今の軌道は…」

 

近くに水飛沫が飛び散った後のように水が弾けており、その軌道を読んで忍は余計に困惑した。

水は明らかに海斗を狙っていたのだから…。

 

「忍…その力は…?!」

 

「海斗。お前は…」

 

海斗は忍の扱った力に驚き、忍は海斗に『何者なんだ?』と投げ掛けようとした時…

 

バキッ!

ドカッ!!

 

「海斗! 無事かい?!」

 

そこに黒いローブで身を隠したであろう人物を2人ほど殴り飛ばし、その内の1人の胸倉を掴み上げながら競泳水着姿のアルカが出てきた。

さっきまで水に浸かっていたのか、髪はしっとりしており、体中から水が滴っていた。

 

「何故に競泳水着デスか!?」

 

「…寒そう」

 

「あ、アルカさん!////」

 

「あらあら…」

 

そのあられもない姿に女性4人がそれぞれの反応を示す。

 

「そんなことは今はどうでもいい! とにかく、ここからさっさと去るよ!」

 

アルカの言葉を聞き、海斗も潮時だと判断し…

 

「忍。また会えて良かったよ。さよならだ…」

 

そう言いながら忍から少しずつ離れていく。

 

「海斗!?」

 

それを忍は追おうとした時…

 

「なんだなんだ? こんな祭りの時ぐらい仕事を増やさんでほしいんだがな…」

 

空から黒い翼を生やしてやってきたアザゼルが海斗達の退路を断った。

夕刻の薄暗さに認識阻害の術を使っているので、一般生徒や一般客にはバレてはいないが…。

 

「察するに襲撃があったな? だが、おかしいな…この辺一帯はそれなりに強力な結界が張り巡らせてあって滅多なことじゃ通り抜けられんのだが…」

 

首を傾げるアザゼルに…

 

「だからこの町に来る時に少し苦労したのか…」

 

海斗が得心したような呟きを発する。

 

「どういう意味だ?」

 

「単純な話です。"俺達にとって魔力は日常的に使ってきたモノ"だから、如何に強力な結界でも"波長さえわかれば水の中を泳ぐみたいに通り抜けられる"。それが…俺の"種族の特性"」

 

「ほぉ?」

 

海斗の話に少なからず興味を抱くアザゼル。

 

「種族、だって…?(確かに海斗からは潮の香り以外にも…魔、霊、妖の匂いもする。昔はわからなかったが、今ならハッキリとわかる。じゃあ、海斗も異種族?)」

 

その事実に忍は少なからずの動揺を隠せないでいた。

 

こうして海斗達の身柄は一時的にアザゼルが預かり、学園祭が終わった夜に改めて話を聞くことになった。

 

………

……

 

以上が夕刻の出来事である。

別に明幸邸でも良かったのだが、気密性と安全性は兵藤家の方がより確実で襲撃の心配もないから兵藤家での事情聴取となった。

 

「あたしらの話を聞いてどうする気だい?」

 

「話の内容にもよる。今は結構微妙な時期でもあるからな」

 

アルカの問いに対してアザゼルはそう答えた。

 

「微妙な時期?」

 

「お前さんらもどこかで見たはずだ。どっかの野郎が多次元世界のことを流布した映像をよ」

 

「アレ、か…」

 

ノヴァが流布したフィライトの戦争映像のことを言ってるのだと海斗は察した。

 

「ただでさえ人間界ではあの映像かどうかの真偽も政治の世界で未だ賛否両論状態なんだわ」

 

「先生、政治にも詳しかったんすね」

 

そんなことを言うアザゼルにイッセーが口を挟むと…

 

「ニュース見て、弦十郎との会話もしてりゃこのくらいはな」

 

さも当然とばかりに言い放つ。

 

「で、最初の質問に戻るが…お前さんらは何処から来た誰なんだ?」

 

「…………」

 

アザゼルの眼が海斗を捉え、海斗もしばし逡巡した後…

 

「俺達は…正確には俺は『ブルートピア』と呼ばれる次元世界の"人間"だ」

 

海斗は静かに語り出した。

 

「海斗!」

 

「海斗さん!?」

 

それにアルカとシルトが驚く。

 

「いいんだ。これ以上の隠し事は逆に怪しまれるだけだからね」

 

2人を宥めた後、海斗は話を続けようとする。

 

「ブルートピア…聞いたことねぇ世界だな。ま、俺達は俺達の世界でまだ手一杯だから仕方ねぇんだが…それよりも多次元世界を全て網羅してる世界がありゃお目にかかりてぇとこだな…」

 

アザゼルがそんなことを言いながら目で先を促す。

 

「ブルートピアは世界の九割を海は占める世界のことを言う。そこでは『ネオアトランティス』という一つの国がブルートピアの全土を統べているといっても過言ではない」

 

「へぇ、そりゃ凄ぇな」

 

「海しかないって…冥界とはまるで逆ね」

 

海斗の話をアザゼルを含め、その場の全員が耳を傾けていた。

 

「昔は当然ながらバラバラな国が乱立していたが、初代のネオアトランティス国王がブルートピアの守護龍と契約したのを皮切りに全土を統一していったらしい。主に話し合いでだそうだが、武力行使も少なからずあったと思う」

 

「ま、そりゃ当然か」

 

「その結果、ネオアトランティスはブルートピア唯一の大国となり、今に至る。各地の政治は当時の支配していた地域の王や族長に連なる者に任せていて今もそれは変わらない」

 

「その初代国王ってのは余程の徳の人間だったんだろうな」

 

「てか、海しかないなら人間はどうやって生きてんだ?」

 

一区切りしたのを確認してからイッセーが当然の疑問を持ちかける。

 

「俺達には元からリンカーコアが存在する。その魔力や環境に適応して進化した呼吸器官から海中でも長時間の行動が可能だ。しかし、人間のそれと変わりないから海の中でも窒息する場合がある。そこで俺達の祖先は海中都市と海上都市を作り、そこで生活するようになった。素材は海中にあった石や砂を用いた建造物を作ったんだ」

 

「な、なるほど…」

 

イッセーの突然の質問にも海斗は普通に解説してみせた。

 

「海に住む人間…『海人族(かいじんぞく)』ってとこか」

 

海斗の解説を聞き、アザゼルはそう評した。

 

「呼称はご自由に」

 

その呼称を海斗は平然と受け止める。

 

「海斗。さっき"正確には俺は…"って言ってたけど、そこの2人はなんなんだ? 同じ海人族じゃないのか?」

 

忍が気になっていたことを聞く。

 

「そういえば…そんなことを言ってたような気もするデスね」

 

「…切ちゃん、言ってたよ」

 

一度に色んな話を聞かされたせいか、切歌やイッセーは頭から湯気が出そうだった。

 

「彼女達は…"人間じゃない"。俺の"使い魔"だ」

 

その言葉に使い魔という単語に馴染みのない調と切歌だけが驚く。

 

「え? 驚いたのはあたし達だけデスか?」

 

その反応を見て切歌が他の人達を見る。

 

「使い魔なら私も持っているわ」

 

「俺は未だいないけど…」

 

「使い魔の存在では驚かん」

 

「まぁ、萌莉も召喚獣を育ててる訳だしな…」

 

「ごめんなさいね」

 

リアス、イッセー、紅牙、忍、智鶴の順でそう答えた。

 

「…なんだか、疎外感」

 

調がちょっといじけていると…

 

「ブルートピアの人間は一定の年齢になると使い魔を必ず持つ風習がある。人によって使い魔はそれぞれだが…」

 

「なるほどなぁ」

 

アザゼルは海斗の話の大部分を理解したようだ。

 

「で、肝心のお前さんの"正体"ってやつは教えないのかい?」

 

そこまで聞き、海斗が襲撃されたという事実を鑑みれば自ずと答えは出てくるが、敢えてアザゼルは海斗の口から言わせたいらしい。

 

「それは…」

 

海斗が言いよどむと…

 

「先生はわかってるんすか!?」

 

「正体ってなんデス?」

 

「…?」

 

イッセー、調、切歌がアザゼルに教えを乞う。

 

「察しの良い奴なら大体の予想は出来てるはずだ。なぁ、お前ら?」

 

アザゼルはリアス、智鶴、紅牙、忍に視線を投げ掛ける。

 

「確信は無いわ」

 

「そうね。でも、ある程度は…」

 

「そうだな」

 

「………」

 

アザゼルに振られた4人も予測が出来ているような反応である。

 

「……わかりました。では、言ってしまうけど…俺はネオアトランティスの王族。その直系に当たる存在なんだ…」

 

観念したように海斗は自らの出自を話す。

 

「やっぱりな」

 

予想してたらしいアザゼル達はそんなに驚かなかったが…

 

「えぇぇぇ!?」

 

「お、王族デスか!?」

 

「…つまり、リアル王子様?」

 

イッセーと切歌は声を大にして驚き、調もそれなりに驚いてそう聞いていた。

 

「ま、王族の醜い争いに巻き込まれたんだろ。だから命を狙われてる、ってとこだろ」

 

「えぇ、まぁ…そんなところです」

 

もう隠す必要がなくなったせいか、海斗も開き直る。

 

「ちなみにそれはいつ頃からだ?」

 

「先代の王…つまり、俺の父が崩御したのは小学校を卒業する直前だったので…それからアルカやシルトと契約し、一緒に雲隠れしてきました」

 

「だから、俺にも何も言わず、去ったのか…?」

 

「あぁ…すまない、忍…話せば君を巻き込む可能性もあったから…」

 

「…………」

 

当時の自分のことを考え、忍は悔しさのあまり拳を強く握っていた。

 

「そういえば、お前さん。右腕は怪我でもしてんのか? チラチラと包帯が見えるんだが?」

 

「これは…次期国王の証を隠しているだけですよ」

 

「ほぉ? そんなのもわかるもんなのか?」

 

ちょっと興味深そうに海斗の右腕を見る。

 

「代々の王は右腕に初代が契約した守護龍の頭部を模したような痣が表れるんです。それと同時に臣下も代を変える度に代わります。これは王と同様に右腕に龍の各部を模した痣が表れるのが目印なんですが…今のところ、俺は見つけられていないんです」

 

「ふむふむ。それがお前さんの右腕に表れたから命を狙われてんのか…」

 

「そうなりますね」

 

「なら、今のネオアトランティスには王様不在なのか?」

 

「それなんですが…ずっと雲隠れしてたせいで、わからないんです。おそらくは叔父か誰かが代行を務めてる可能性が高いと思いますが…」

 

そう言って海斗は険しい表情を見せる。

 

「その叔父ってのが胡散臭そうだな」

 

「叔父は特に権力などに固執してた傾向があると記憶してますので…何事もなければいいのですが…」

 

「ま、心配事は尽きないか」

 

すると、アザゼルは忍の方を見て…

 

「おい、忍。次元辺境伯権限でこいつらを保護したらどうだ? お前ら知り合いなんだろ?」

 

ニヤニヤ顔でそう提案してきた。

 

「それは別に構いませんが…海斗自身の心情もありますから…」

 

「この町にいる限りは俺達三大勢力が目を光らせてるんだ。何の問題もねぇよ」

 

アザゼルの言葉に…

 

「既に学園で襲撃を受けたが…?」

 

紅牙が事実を突きつける。

 

「それを受けて結界も強化したんだ。今度はそう簡単に抜けられねぇよ」

 

「だといいんだがな」

 

紅牙はそう言って口を閉ざした。

 

「それでどうする? 今ならもれなく駒王学園への編入も特典に含んでやるよ」

 

「駒王学園への編入、か…」

 

しばらく考えた後…

 

「さっき、さよならと言ったのに…それでも俺を受け入れてくれるなら…」

 

と言ったところで…

 

「水臭いんだよ。俺達は親友だろ?」

 

忍がそっぽを向きながらそう言い放つ。

 

「忍……ありがとう。その話、受けさせてもらいます」

 

海斗は保護を受け入れると決めてくれた。

 

「また、勝手に決めて…」

 

困ったようなリアスの声が漏れる。

 

 

こうして海斗達の身柄は一時的に次元辺境伯である忍が預かることになった。

仮住まいとしては木場とギャスパー、紅牙と同じマンションに海斗達は同棲するような形で住むことになる。

また、海斗とシルトの駒王学園への編入手続きも行われることになった。

 

また、新たな次元世界『ブルートピア』や『海人族』のことはリアスやアザゼル経由で冥界と天界に、忍からフェイトや朝陽経由で管理局にも知らされることとなった。

果たして、この情報がどのような事態をもたらすのか…。

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