第47無人世界で行われているフィクシス魔法学園の学年合同授業。
開始後、間もなくして忍は交戦中だったラピスとスフィーリア姉妹の戦闘を影から見ていたが、簡単に探知されて姿を見せざるを得ない状況に立たされてしまった。
「正直な話…シノブってグラフハイトを手加減で倒したでしょ?」
「ッ……何のことかな?」
一瞬だけ眉を顰める忍の反応を見て…
「白を切るんだぁ。まぁ、あたしくらいしか気づいてないっぽかったからいいけど…」
笑顔のままラトはそんなことを言う。
「(まさか、俺の正体がバレた? いや、そんなはずはないか…なら、この間の不良達を相手した時か? あの時は確かに匂いで見つけてはいたが、そのまま気付かぬ振りをして帰ったしな…)」
不良グループを相手した時のことを思い出すが、少しだけ自身の魔力変換資質を発揮しただけで終わったので、それだけでは手加減してるという確証にはならないはずだ。
「(なら、ブラフ? いや、だが…ラトは何か確信してる様にも見える。その根拠はなんだ?)」
考えても答えが出ない以上、この問答に意味はないと判断した忍は…
「参考までにそう思う根拠を聞いてもいいか?」
ラトに直接聞くことにした。
「根拠? う~ん、そうだな…」
ラトは腕を組んで少し考える素振りを見せると…
「なんていうのかな? シノブの戦い方には無駄がないというか、敢えて無駄を演じてるみたいな…あたしから見てちょっとした違和感があってね? あとは、あたしの勘かな?」
その答えを聞き、忍は…
「(この姉妹…勘とか、なんとなくで俺の予測を超えてきたのか?)」
頭が痛くなる思いだった。
「もういいでしょ? さ、早く始めようよ♪」
そう言ってその場で軽いステップを踏むラトだった。
「(なんか嬉々としてるな…)」
そう思いながら忍も軽くステップを踏む。
「それじゃあ、いっくよぉ~!」
ダンッ!
足を踏み出す瞬間に魔力で足を瞬間強化し、ほぼ一歩で忍との間合いを詰める。
「ッ!」
一気に詰め寄られた忍は…
「シールド!」
古代ベルカ式の防御魔法陣を即座に左手から展開してラトの打撃に備えた。
「ブレイク・フィスト!」
ガッ!
バリンッ!!
ラトの打撃で忍のシールドが簡単に砕ける。
「なっ?!」
その光景に流石の忍も驚く。
「まだまだぁ!!」
忍に避ける暇を与えないように打撃の連打を加えようとする。
「ちぃっ!」
が、忍は理力の型の瞬間予知を用いてその連打を回避してみせる。
「あはっ♪ これ、避けちゃうんだ?」
心底楽しそうにラトは忍に尋ねる。
「(戦闘狂…って訳ではなさそうだ。本当に楽しんでるのか?)」
答える余裕が無い様子で忍はラトの心境を分析しようとしていた。
「じゃあ、これは?」
ブンッ!
連打から一転、後ろ回し蹴りを放っていた。
「(切り替えが速い!)」
腕をクロスしてラト後ろ回し蹴りを受けると、その勢いを利用して少し後退する。
「あれ? 切り返してこないの?」
忍の切り返しを期待してたような発言と共に首を傾げる。
「(受けてわかった。ラトはインパクト時の魔力操作が上手いんだ。それに加えて格闘センスも悪くない…厄介な相手だ…)」
忍はさっきの攻防でラトという少女の戦闘スタイルを分析していた。
それでわかったことはいくつかある。
まずは打撃の当たる瞬間、つまりはインパクト時、最小限の魔力を最大限に活かす形で強化・放出していると考えられる。
これはイッセーが禁手状態で見せる龍気による拳打に近いかもしれない。
それをラトは自分の感覚で行っており、その格闘センスは侮れないものがある。
その証拠に先ほど忍のシールドを容易に破壊したのが良い例である。
次に魔力による身体強化。
前衛向きで、尚且つ彼女の戦闘スタイルに合ったスピードと手数を重視した強化に割り振っている。
そういう点では忍とラトは似ているのかもしれない。
「(まだ全部を見たわけじゃないが、それでも前衛として手強いのは確かか…)」
そう考えながら忍は魔力を左手に集中させる。
「お? 来る?」
忍から流れる魔力を感知したのか、ラトが身構える。
「ブリザード・ファング!」
忍の十八番である中距離拡散型砲撃を放つ。
「中距離!?」
今度はラトが驚く番だった。
堪らずその場から下がると…
シュゥゥ…
着弾した岩場が凍り付いていく。
「しかも凍結効果付きって!?」
それでも襲ってくる中距離拡散型砲撃をバリアを張って凌いでいく。
「(ホントに古代ベルカなの? 近代の間違いじゃ…)」
ラトがそう思うのも無理はなく、本来なら古代ベルカ式は対人戦闘や近接系を最も得意とする魔法体系。
広域攻撃魔法や支援特化デバイスなども存在するが、あくまでもそれは一部の例外だろう。
それを忍は古代ベルカ式でありながら本来不得手であるはずの中距離拡散型の砲撃を撃ってきたのだ。
それ故にラトは自分と同じ近代ベルカ式ではないかと疑った。
「(でもさっき見たシールドは間違いなく古代ベルカ式だったような気もするし…)」
自分で壊した忍のシールドを思い出しながらラトは頭を捻った。
「(………あ~もう、細かいことは後で考えよ!)」
考えるのを放棄したラトはバリアを張ったまま忍へと突っ込む。
「(そもそも考えるのはあたしの担当じゃないしね)」
そう考えながら凍り付いたバリアを前に飛ばして空に跳ぶ。
「上か!」
それを匂いで察知した忍も空へと跳び…
「はぁッ!」
「てやっ!」
互いに魔力を纏わせた拳をぶつける。
忍とラトが戦っている頃…
「お姉ちゃん…」
その様子を横目に見ながらシルフィーがラピスとの魔法合戦を行っていた。
「よそ見とはいい度胸ですね!」
ミッドチルダ式の魔法陣を足元に展開したラピスが純粋魔力砲撃を放つ。
「………プロテクション」
それをシルフィーは左手に展開した魔力バリアで防ぐ。
「……ライト・シューター、行って」
さらに右手から小さな魔力弾をいくつか生成し、それをラピスに向けて発射する。
「くっ…フロスト・ガード!」
足元に広がる水場を利用し、冷気の壁を作って魔力弾を防いでいく。
「相変わらず、手数が多いですね」
「……あなたが一辺倒過ぎるだけ」
シルフィーの言う通り、ラピスの魔法は必ず凍結属性が付与されていた。
「名門故の視野の狭さと言いたいんでしょうが、こちらにも伝統の技術があります!」
「……誰もそこまで言ってない」
対するシルフィーは属性付与こそないが、複数の魔法を駆使した戦法を取っている。
「それはそうと…あなたはどう思いまして?」
「……?」
ラピスの言わんがしてることがわからなかった。
「あなたのお姉様と戦ってる転入生の事です!」
そう言ってラピスは再び魔力砲撃…今度は凍結効果付き…をシルフィーに目掛けて放った。
「……あぁ、お姉ちゃんのクラスに入った…」
やっと話題が飲み込めたシルフィーはその砲撃を受けるのではなく、移動魔法で回避していた。
「じゃあ、年上だったんですか?!」
「……うん」
ラトから話を聞いていたシルフィーはラピスの驚きの声に頷いていた。
「…はっ!? そういうことではありません! 先程のシールドを見てませんでしたの!」
自分の驚きはさておき、ラピスは忍が見せたシールドのことを言っていた。
「……古代ベルカ式…」
シルフィーも戦闘をチラ見していただけにそこは気にしていたようだ。
「そうです! それなのに、さっきあの人は…」
「……中距離砲撃を撃った。しかも拡散型で凍結効果付与の…」
魔法を扱う者として忍が行っていた魔法が気になっている様子だった。
「一体何なんですか? あの人は…?」
「……知らない…」
そう言いながら互いに魔力砲撃を放って相殺し合っていた。
「知らないなら直接聞き出すまでです!」
「……ご自由に…」
完全に投げやりなシルフィーの反応に…
「あなたは興味がないんですか!?」
ラピスが大声を出す。
「……別に…関係ないし…」
とは言いつつもチラリとラトの様子を見る辺り、ラトが心配なのだろうか。
その一方で…
「(魔法合戦か…姫島先輩とアバドンの試合も凄かったが、こちらも引けを取らないか…)」
ラトとの攻防の中、シルフィーとラピスの戦闘風景をチラ見していた忍がそんな感想を抱く。
「よそ見厳禁!」
その僅かな隙を突いてラトが拳を放つが…
「ふっ…!」
その拳を掌底で相殺しながら後ろ向きに回転し…
ヒュッ!
その勢いを利用してサマーソルトキックを決めようとする。
「わっぷ!?」
顎下にバリアを展開してダメージを軽減したものの、その衝撃によって少し頭がグラグラと揺れる。
スタッ!
それでも両者は上手く着地していた。
「やっておいてなんだが…大丈夫か?」
「うぅ~…ちょっとクラクラする~…」
そう言って頭を何度か叩いてからブンブンと頭を振り…
「…よし、何とか大丈夫」
「(……ホントか?)」
そのあまりの回復の早さに忍が内心首を傾げていた。
「う~ん…それにしてもこりゃ、想像以上かも」
「?」
ラトが言わんとしてることが見当もつかず、忍はリアルでも首を傾げる。
「すぅ~……フィー! そろそろ援護してちょうだい!」
息を吸い込んだと思えば、そう大声で叫んでいた。
「なに…?」
忍が軽く驚く中、ラトの要請に…
「……了解」
応えたシルフィーが仕掛ける。
「……クイック・シューター」
高速発射された魔力弾が忍を横撃しようとしていた。
「ッ! エア・ステップ!」
周囲の空間に魔力球を散布し、それを足場に空中に逃げる。
「逃がさないよ!」
その魔力球をラトも利用して忍を追撃する。
「……」
それを見てシルフィーもラピスを無視して忍の追撃に参加するため、浮遊魔法で飛んでいく。
「あ、待ちなさい!」
それをラピスも追う。
「フィー!」
忍のエア・ステップを利用して空に上がったラトがシルフィーを呼ぶと…
「……フレイム・ショット」
シルフィーは忍とラトの間に向かって火炎弾を放っていた。
「(誤射?)」
忍はそう考えていたが…
「流石フィー! ジャストタイミング!」
ラトが拳をシルフィーのフレイム・ショットを捉え…
「フレイム・マグナム!」
無理矢理軌道を曲げた上にラトの魔力も混ぜて威力を底上げした火炎弾が忍に迫る。
「ッ!?」
その様に忍は一瞬驚いたものの…
「ハウリング・バスター!」
すぐさま反転して白銀の砲撃を放って相殺する。
「また砲撃!?」
「……本当に古代ベルカ式?」
魔力球の一つに着地したラトは再度驚き、ラトの隣に移動したシルフィーも疑っていた。
「ちょっと、そこの転入生!」
そこへラピスまで乱入する。
「ラピスちゃんか。あの時は助かったよ」
お礼をちゃんとしてなかったと思い、忍はその場で礼を言うが…
「そんなことよりも…あなた、年上だったんですね! しかも古代ベルカ式で砲撃魔法だなんて…!」
「(後半はともかく、前半はそこなのか?)」
後半の疑問はともかくとして前半のことは特に気にしてなかったりする。
「大事なことです! まさか、先輩だったとは…」
「別に口調に関して俺は気にしないけど…」
そう言う忍だが…
「そういう問題ではありません!」
ラピスは別のことで怒っているようだった。
「?」
状況がよくわからない忍は首を傾げる。
「まぁ、いいです。今、大事なのはシルフィーとの戦闘ですから…」
「(よくわからない子だな…)」
そんなことを考えていると…
「話、終わった~?」
ラトが器用に魔力球に胡坐を掻いて座ってそう尋ねてくる。
「待ってたのか、律儀だな…」
「まぁね~、っと」
忍の言葉にラトは短く答えると、魔力球の上に立つ。
「でも、ラピちゃんの疑問ももっともかな? なんでシノブは古代ベルカ式を使ってるのに、砲撃とかが使えるの?」
そして、この場の誰もが思っていた疑問を代弁する。
「それは…」
改めて聞かれても忍には答えようがなかった。
「出来たものは出来た、としか言い様がないんだが…」
そして、結論から言ってしまえばこうなってしまう。
「……そんなのおかしい」
「まったく非常識です」
「対人戦闘向きならまだわかるんだけどねぇ~」
流石に魔法学園に通ってるだけあって常識外の忍の運用法には色々と疑問が持たれていた。
「そこまで言われてもなぁ…」
頭を掻いて困ったというアピールをする。
「ま、細かい詮索は後にして続きしない?」
いち早く考えるのを放棄したラトがそう切り出す。
「(結局、あとで詮索されるのな…)」
そう思った忍は足元の魔力球を消し去って地面に降下する。
「あ、逃げる気!?」
それを追ってラト、それをさらに追ってシルフィーとラピスも降下する。
「フィー!」
「……スターダスト・レボリューション」
話し込んでる間にチャージしてたのか広域対応型の砲撃魔法を忍へと放っていた。
「マジか!?」
星屑が落ちてくるような砲撃の雨に驚き、忍は思わず…
「神速!」
魔力・気・妖力をミックスさせた移動術を使ってその砲撃の雨を回避してしまった。
「(しまった…妖力を使っちまった…!?)」
気ならまだ許容範囲だったが、妖力の使用は出来るだけ控えていた忍は少し後悔した。
「(気付かれ…たか?)」
あまりにも速い移動術によって広域砲撃魔法を回避したため、忍は少し焦る。
「……なに、今の…?」
「移動系、ですよね?」
魔法に敏感なシルフィーとラピスが困惑したような表情になっている。
「あれを避けちゃうんだ…魔力を速さに割り振り、ってわりにフィーとラピちゃんの様子が変か。何かしたのかな?」
2人の様子を見たラトも少なからず警戒しているようだった。
「(妖力の存在までは知らなかったか。だとしても違和感は確実に覚えられたよな…)」
一先ずはバレてないと思い、ホッとした忍だが、妖力を使った時の違和感が伝わってるのではないかと考える。
スタッ!
忍よりも少し遅れてラトも着地し、シルフィーもラトの隣に、ラピスは距離を取って忍の反対側くらいの位置にそれぞれ着地していた。
「(さて、どうしたものか…)」
次の手を考えていると…
「あ、紅神さん」
ティラミスとまたも遭遇していた。
「イリスちゃんか。今日はよく会うな」
「そうですね」
さっきの緊張感は何処へやら何とも和やかな会話を繰り広げてしまった。
「……局員の人?」
ティラミスの服装を見てシルフィーが首を傾げる。
「知り合い?」
親しそうに話してる様子からラトが尋ねる。
「あぁ、ちょっとな」
忍は手短にそう答えた。
「こんにちは。フィクシス魔法学園も面白い催しをするんですね」
マイペース気味にティラミスはその場の皆に挨拶していた。
「なんか調子狂うな…」
ティラミスのマイペース気味な発言にラトがそう漏らす。
そんな中…
「……?」
忍が周囲の気配が妙に静かなのを気にしていた。
「(なんだ? 急に静かになったような…)」
距離があるためにわかりづらいせいもあるのだが、周囲から感じていた他の生徒達の戦いの空気を再度嗅ぐように確かめると…
「(気のせい…? いや、この匂いの感覚には覚えが…!)」
過去、明幸邸の夜に感じたあの気配が周囲に漂い始めたことに気付く。
「ッ!!」
それに気付いた瞬間…
「四重結界!!」
この後の事など、あとで考えると言わんが如く魔気霊妖の力を収束した結界を周囲に張り巡らせる。
「紅神さん?」
「シノブ?」
「……なに、この壁?」
「どういうつもりですか!?」
いきなりのことにティラミスとラトは忍を見、シルフィーは忍の張った結界から感じる異質な力に眉を顰め、ラピスは忍に怒鳴っていた。
「話は後だ! "ティラミス"、他の局員に連絡して生徒達の避難を要請してくれ!」
それに怒鳴り返すようにして忍はティラミスにそんな要請をしてからネクサスを素早く起動させて制服姿からバリアジャケット姿になる。
「は、はい?」
いきなり呼び捨てにされたこともそうだが、突然の要請にティラミスは鳩が豆鉄砲を食ったような反応になってしまう。
「あり? 急に本気になったの? それならとそうと言ってくれれば…」
ラトが茶化すようにそう言っていると…
「……何か、来る?」
シルフィーが四重結界の外を見て呟く。
「ちっ!!」
その声に反応して忍が舌打ちしながら魔力と妖力をミックスさせて球体状に形成していく。
「ハウリング・デバスター!!」
シルフィーの見ていた方向に向かって砲撃を放つと、砲撃は壁をすり抜けていき…
カッ!!
チュドォォンッ!!
直後に飛来してきた"何か"と衝突して爆発する。
「「「「ッ!?!」」」」
その光景にその場にした忍以外の4人が息を呑む。
「くっ! 間に合うか!?」
そう叫びつつ…
「ネクサス、緊急事態コードを管理局の周波数に合わせて送信。生徒達の避難が最優先だ! これを聞いてる局員や教員は近場の生徒達を避難させろ! これは特務隊のシュトライクス少将からの命令だ! あと、緊急避難用に集合用の信号弾も使用しろ!」
ネクサスに向かってそんな命令を指示していた。
半分、嘘を混ぜているが…事態が事態なので仕方ないと忍は判断していた。
「シュトライクス少将って…えぇ?!」
忍の口から出たゼーラの名前を聞いてティラミスも流石に驚く。
「フィー、シュトライクス少将って…誰だっけ?」
「……時空管理局の現役少将の1人で学園のОBだよ」
呑気にそんなことを話してる姉妹を他所に…
『誰だ? この回線を使ったのは?』
『悪戯か? それにしては悪質過ぎるが…』
『声からして若いな…生徒か?』
ネクサスから聞こえる声も何とも呑気なものであった。
「人的被害が出る前にさっさと行動しろ! それでも大人か!!」
イラついた様子の忍がさらに叫んでから通信を切ると…
「お前ら、さっさと避難するんだ! ここは"戦場"になる!」
忍は目の前にいる4人にも避難するように呼びかけていた。
「戦場って、もうなってるでしょ?」
「「(コクコク)」」
ラトのもっともな言葉にシルフィーとラピスが頷く。
「そういう問題じゃねぇ!」
そんな問答を続けていると…
「あっれ~? 狼じゃん?」
「なんで、こんなとこにいんのさ?」
近くの岩場から聞き覚えのある声が二つ聞こえてきた。
「ッ!!」
そちらを振り向くと…
「ディーに、クーガ!」
そこには死神の鎌を肩に担いでしゃがみ込んでいるディーと岩場に胡坐を掻いて座ってるクーガの2人がいた。
「こりゃ想定外の出会いだ」
「だよねぇ。でも、実験には打って付けじゃね?」
「確かにぃ~」
2人してそんな会話を繰り広げていると…
「あ~! 前に変な放送に映ってた内の2人だ!」
ラトが思い出したように2人を指さして叫ぶ。
「あん?」
「なんか平凡そうな血だなぁ」
ディーとクーガの視線が忍の後ろにいる4人に移る。
「あぁ、この世界に来たって連中と管理局の人間か」
ポンと手を叩いてクーガがわざとらしく言う。
「じゃ、ちょうどいいわな」
そう言ってディーが死神の鎌を掲げ…
「量産型龍騎士兵、GO!!」
死神の鎌を忍の方へ向けて言い放つ。
「ッ!?(量産型龍騎士兵…アザゼル先生の推測が当たったか!)」
そして、ディーとクーガの背後より4体の龍騎士兵が姿を現す。
「こいつらはオリジナルの龍騎士や狼君の喰った復元率50%のクローン龍騎士よりもランクダウンした代物だけど…局員相手なら圧倒出来る実力を持ってんだよねぇ~」
「ま、質が落ちた分は量で補うってね。よくあること、よくあること♪」
クーガの説明とディーの言葉に…
「なんかムカつく言い方だな…」
「私じゃ、歯が立たないとでも…?」
「……でも、凄い威圧感…」
「わ、私が守らないと…」
2人の言葉にラトとラピスが反応し、シルフィーは龍騎士兵から感じる威圧感を警戒し、ティラミスは局員として生徒を守ろうとワンハンドタイプの拳銃型デバイスを起動させる。
ギィィンッ!!
その直後、龍騎士兵が四重結界を破ろうと口からブレス攻撃を放っていた。
「見た目はただのトカゲ人間でしょ!」
そう言ってラトが四重結界から抜け出すと、横から龍騎士兵の1体に殴り掛かる。
「ストレイト・ナックル!」
次のブレス攻撃の合間を狙っての攻撃であったが…
バシッ!!
龍騎士兵の尻尾がそれを阻んでいた。
「……お姉ちゃん!?」
「っ!?」
まさか、尻尾で弾かれるとは思ってもみなかったラトは少しの間、硬直してしまう。
「んじゃ、まず1人♪」
『グウゥゥ…』
ディーの合図で攻撃された龍騎士兵がラトの方を向いてブレス攻撃を放とうとする。
「妖華撃!!」
そこに再び神速を使って移動した忍がラトと龍騎士兵の間に割って入ると、妖力を主体に魔力と気をミックスさせた右拳の一撃を龍騎士兵の今にもブレスを放とうとする口内へと叩き込んでいた。
『グガァッ!?』
「爆ぜろ!」
そう言う忍の左手はラトの方に向けて魔力シールドを張っていた。
チュドオォォォンッ!!!
妖華撃に加えてブレスに用いていた龍気が体内で暴発し、龍騎士兵が忍を巻き込んで爆散する。
それを予期していたため、ラトの方に魔力シールドを張って爆風からラトを守っていた。
「シノブ!?」
「……先輩!?」
「紅神さん!?」
「あんなの、まともに食らったら…!?」
4人の悲鳴に近い声が聞こえるが…
「いやいや、このくらいじゃ狼君は死なないから」
「つか、ピンピンしてるだろうねぇ~」
忍と対峙したことのある2人がそのようなことを漏らす。
「そんなはずは…!!」
ラトが否定しようとした時…
バサァッ!!
爆炎の中から4対8枚の紅蓮の翼が出てくる。
「え…?」
その光景にラトは目を丸くする。
「悪いな、ラト…そいつらの言葉は正しい」
その言葉と共に爆炎が収まると…
「…………」
紅蓮冥王と化した忍が無傷で立っていた。
「やっぱりねぇ~」
「ひゃひゃひゃ♪」
そんな忍の様子をディーとクーガは見て笑っている。
「(確かにあの時よりもランクが低く感じる。クローニングを繰り返した影響か?)」
右拳から感じた龍騎士兵の強さに違和感を覚える。
「(だが、それでもティラミスみたいな一般局員が相手だと…この強さは脅威か)」
そう考えて残り3体の龍騎士兵を見る。
「(これだけじゃないはずだ。なんとかしてこの状況を打開しなければ…!)」
そう考える忍の背後では…
「シノブ…? 本当に、シノブなの…?」
未だ自分の眼が信じられないのか、ラトが忍の背に声を掛けていた。
「まったく…だからさっさと避難しろと言ったんだ」
やれやれと言った感じで忍がそう漏らす。
「まさか、四重結界から抜け出して攻撃を仕掛けるとは…その勇気は買うが、あまり無茶をするな。妹さんが悲しむぞ?」
そう言いながら振り返ってラトに忠告をしていると…
バッ!!
3体の龍騎士兵が忍に向かって一斉に飛び掛かってきた。
「シノブ!?」
ラトが叫ぶ中…
「蜘蛛の巣」
忍は冷静に妖力で練られた糸を背後に展開し、龍騎士兵の動きを封じていた。
「よっと…」
「わわっ!?」
それを確認するまでもなく、忍はラトを抱き上げると四重結界の中へと移動した。
「お姉ちゃん!」
「大丈夫ですか!?」
ラトの身を案じてシルフィーとティラミスが駆け寄る。
「あ、あたしは平気だけど…」
「俺も平気だから心配すんな」
ラトを降ろすと、シルフィーがラトに抱き着く。
「あなた…一体何者なんですか?」
そこにラピスが神妙な面持ちで忍に尋ねていた。
その言葉にラト達も忍の方を見る。
「それを答えるのはここを乗り切ってからな」
そう答えると、忍は四重結界の中から再び外に出る。
「ディー! クーガ! この龍騎士兵達はあとどのくらい連れてきやがった!!」
忍がディーとクーガに怒鳴るように尋ねると、2人は顔を見合わせてからプッと噴き出し…
「そんなの答える訳ねぇじゃん!」
「自慢の鼻で確かめたらどうよ?」
ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべながら2人揃ってそう言い放っていた。
「それもそうだな。が、今は時間が惜しいんでな…」
そう言うと…
「
魔気霊妖の力を右拳に収束し、先ほどの爆炎から吸収した熱エネルギーを追加して強化した一撃を蜘蛛の巣に捕らえている3体の龍騎士兵に纏めてぶつけていた。
ドゴオォォォンッ!!!
激しい爆発と共に3体の龍騎士兵を一網打尽にしていた。
「やっぱ、劣化版じゃ狼君相手には足りないか?」
「でも、今回は龍騎士兵の性能テストだし、こんなもんじゃね?」
「ま、そうだな。じゃあ、俺らはこれで失礼するわ」
「せいぜい頑張って残りの龍騎士兵を掃討してねぇ~♪」
そう言い残し、ディーとクーガはその場から消え去ってしまった。
「ちっ…やることやったら即時撤退かよ。相変わらず読めねぇ…」
忍は右拳を強く握り締めながら険しい表情をしていた。
しかし、ディー達の置き土産は未だ数多く残っているだろう。
この学年合同授業、無事に終わることが出来るのだろうか?