魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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第五十九話『出撃、特務隊』

学年合同授業の最中に起きた量産型龍騎士兵の襲撃。

この騒動にいち早く気付いた忍は即座に行動を起こす。

だが、その声は誰にも届かず、それどころか悪戯と一蹴されてしまっていた。

 

その結果…。

 

「なんだ、こいつらは!?」

「トカゲ人間!?」

「生徒達を避難させろ!」

「くそっ! さっきの非常用通信は悪戯じゃなかったってのか!?」

 

教員と局員が龍騎士兵の襲撃に遭い、負傷者が出たことでやっと動き始めた始末。

 

「な、なんなの!?」

「う、うわあぁぁぁ!?」

「きゃあああっ!!?」

 

生徒達もその光景を見て逃げ出す者が多くを占めていた。

 

「早く行け!」

「このくらい、俺達で!」

 

中には勇敢にも龍騎士兵に立ち向かおうとした生徒もいたが…

 

「ぐっ…ぁが…」

「つ、強ぇぇ…」

 

逆に返り討ちに遭って危険な状態に陥るのがほとんどであった。

 

 

 

この状況を打開すべく忍が動こうとしていた。

 

「動くにしても戦力が足りないか。くそっ!」

 

そう言いながら右拳を左手に叩き付ける。

 

龍騎士兵の数は不明。

第47無人世界という広大なフィールドの何処でどんな戦いが繰り広げられているのかも不明。

 

今の忍には圧倒的に情報が足りていない。

 

「(どうする…今の状態で情報網なんて…)」

 

匂いを確かめただけでも最低5、6ヵ所から戦いの匂いがしてくるのがわかったが、その内の一つに絞っていたら他の場所に間に合わないのは目に見えて明らかである。

 

「(それに…こいつらを置いていけるか?)」

 

他の局員に連絡を取ろうとしてるが、何が起きてるのかわからず混乱している様子の相手側にどうしようか悩んでいるティラミスの周りにラト、シルフィー、ラピスの3人がそわそわした様子でいた。

ラトはチラチラと忍を見ているが…。

 

ピピピ…

 

すると、ネクサスに通信が入る。

 

「? こんな時に何処から…?」

 

ネクサスを操作して通信に応じると…

 

『……繋がった? アンタがネクサスの所持者?』

 

通信用投影ディスプレイに表示されたのは見知らぬ少女だった。

見た目は忍よりも年下な感じで、髪は胸元辺りまで伸ばした茜色の髪に深緑色の瞳を持った幼さが残る可愛らしい顔立ちの少女である。

 

「誰だ?」

 

当然知らない少女なのでそう聞き返してしまう。

 

『あたしのことなんてどうでもいいでしょ。それよりもさっさと解析データを受け取る準備してよね、ノロマなの?』

 

初対面であるはずなのに少女は不遜な態度である。

しかし、忍は怒りの前にある単語に引っ掛かっていた。

 

「解析データ?」

 

『………………』

 

少女が無言になると、通信魔法陣の向こうからピコピコとコンソールを操作する音が聞こえてくる。

仕方なく、ネクサスを操作して情報の受信を行うと…

 

ピピッ!

 

あるデータが送られてきた。

 

「これは…!?」

 

それは第47無人世界の地図から地形データ、さらには量産型龍騎士兵達との戦闘が行われているだろう場所の予測ポイントであった。

 

『……いった?』

 

「な、なんでこの情報を…?」

 

忍が困惑していると…

 

『我が隊の優秀なオペレーターだ』

 

別の投影ディスプレイが出現すると、そこにゼーラの姿が映し出される。

 

「シュトライクス少将…!」

 

その声に困惑していたティラミス達も忍の方を見る。

 

『先日振りだな、紅神』

 

「なんで、アンタまで…?」

 

当然の疑問をぶつけてみると…

 

『なに、任務帰りに母校の催しを見学しに来たつもりだったんだが…思わぬ客が来たようだな。それにお前の発した緊急通信もキャッチしたからこの世界に立ち寄らざるを得なかった』

 

ゼーラはそう返していた。

 

「そうだったのか…」

 

『既にうちの隊員も何人か降下して事に当たっている。お前も急げ』

 

それを聞き、忍は慌てた様子で…

 

「だが、龍騎士兵の実力は普通の局員じゃ歯が立たないんだぞ?」

 

そう伝えていた。

 

が…

 

『我が特務隊を舐めてもらっては困る。この程度の雑兵を相手にして後れを取る隊員ではない』

 

ゼーラは不敵な笑みを浮かべてそう答えていた。

 

「(朝陽のこともあるし…意外とそうなのか?)」

 

朝陽の実力を知る忍もそれと同格の隊員がいるならと期待する。

 

『ともかく、お前もすぐに行動しろ。そこから一番近い場所は…』

 

「俺はアンタの部下じゃないが、形振り構ってられないか…」

 

『そういうことだ』

 

「了解だ。紅神 忍。行動を起こす!」

 

『期待しているぞ、次元辺境伯』

 

それで通信は終わり、忍はティラミス達に向き直る。

 

「聞いての通りだ。俺はこれから他の生徒や教員の方々を助けに向かう。お前達はティラミスの先導で合流支店まで行くんだ。護衛はこいつらに任せる」

 

そう言って三種のエンブレムを取り出して放り投げる。

 

「「「「?」」」」

 

その行為にラト達が首を傾げていると…

 

「セットアップ」

 

魔力石を指で弾き、エンブレムに直撃させると…

 

カッ!

 

機械で出来た紺色の鷲、朱色の虎、赤いドラゴンが現れる。

 

「「「「ッ!?」」」」

 

その光景にティラミス達は驚く。

 

「イーグル、タイガー、ドラゴン。こいつらの面倒を頼む」

 

『了解』

 

『護衛対象、4名を確認』

 

『護衛任務の後は?』

 

「適当な場所に隠れてろ。お前らの存在はあまり公にする訳にもいかないからな」

 

『『『了解』』』

 

三機のドライバーに指示を出してから忍は一度人間形態に戻る。

 

「あ、あの、紅神さん…これは一体…」

 

ティラミスが今にも泣きそうな表情で忍を見る。

他の3人も少なからずドライバーに興味を示していたが…。

 

「はぁ…事情は事態が好転した後、ゆっくり話すさ…お前らだけにだが…」

 

そう言って忍はティラミスの頭を軽く撫で…

 

「真狼、解禁」

 

今度は真狼の姿となる。

 

「ワンコ?」

 

その姿を見たラトが一言漏らすと…

 

「犬じゃなく狼だ!!」

 

ブンッ!!

 

怒鳴ると同時に超高速移動でその場から姿を消してしまった。

 

「なんで怒鳴るのさ?」

 

「……さぁ?」

 

怒鳴られた意味が分からないラトにシルフィーも肩を竦めていた。

 

「と、とにかく…今は移動しましょうか」

 

気を取り直してティラミスが3人を連れて合流地点へと向かうのだった。

その護衛にドライバー三機が付きながら…、。

 

………

……

 

~戦闘地点A・草原地帯~

 

『グゥゥ…』

 

3体の龍騎士兵の前に1人の少年が立ち塞がる。

見た目は全体的にツンツンした赤い髪と黄色い瞳を持ち、まだ幼さが残るが整った顔立ちに線は細く見えるが、それなりに鍛えてることが窺える体格をした少年だ。

服装は上に黒いシャツを着て、下にベージュ色の長ズボンを穿き、その上から赤いジャケットを羽織り、両足にコンバットブーツを履いた姿をしており、両手には手の甲部分に小型の円盤状の装甲を持つオープンフィンガーグローブを着けている。

 

「お前みたいな子供が相手出来るレベルじゃないぞ?!」

 

あまりにも無謀なことだと思い、近くにいて生徒の避難誘導をしてる教員が少年に向かって叫ぶ。

 

「いいからお前らは下がってな! ここは特務隊の斬り込み隊長こと、『ジェス・ガレクトン』が出張ってやるからよ!」

 

『ジェス』と名乗った少年はそう言うと右手のオープンフィンガーグローブの手の甲にある装甲に魔力をディスク状に形成したモノを装填していた。

 

「行くぜ!」

 

ダンッ!

 

力強く踏み出すと同時に龍騎士兵の1体に迫ると…

 

「唸れ、魔拳!」

 

ドスンッ!!

 

重たい音と共に龍騎士兵の腹部に直撃する。

 

『グゥ…ッ!?』

 

その意外に重い一撃に龍騎士兵は数歩後退る。

 

「まだまだぁ!」

 

タンッと腰の左右にあるケースを叩いて色の異なるディスク(右側は赤色、左側は黄色)を取り出して空中に投げ…

 

カシャッ!

 

それを両手を伸ばしてから思いっきり引くことで空中でディスク装填すると…

 

双異拳(そういけん)・炎雷ッ!!」

 

ガッ!!

バキッ!!

 

左右から襲い掛かってきた残りの龍騎士兵2体に向かって両腕を広げるような軌道の拳打を叩き込む。

その叩き込んだ拳からは炎と雷が放出されており、龍騎士兵の甲殻を少なからず焦がしていた。

 

『『ッ!?』』

 

思わぬ攻撃に龍騎士兵も驚きながら軽く吹き飛ぶ。

 

「隊長や姉御の地獄の特訓に比べたら…こんなの楽勝だぜ!」

 

そんなことを叫んでいると…

 

ボアァッ!!×3

 

正面、右、左の三方向より火球が放たれていた。

 

「え゛…?!」

 

チュドォォン!!

 

回避する暇もなく、物の見事にジェスは三方向からの火球の直撃を喰らった。

 

「お、おい!?」

 

教員の1人がジェスへと声を掛ける。

 

「けほっ…」

 

黒焦げになって黒い煙を吐き出していた。

無駄に頑丈である。

 

「やりやがったな、この野郎ぉぉぉ!!」

 

黒焦げにされた怒りからか、ジェスは右側のオープンフィンガーグローブの装甲に2枚のディスクを一気に装填する。

 

「激・魔拳弾!!」

 

正面で体勢を崩している龍騎士兵へと右拳を突き出す。

 

ゴオォッ!!

 

龍騎士兵へと拳が当たった瞬間、拳が巨大化したような魔力の塊が撃ち出され、龍騎士兵を吹き飛ばす。

それと同時に龍騎士兵の胴体に大きな風穴を開けていた。

 

『グ、ガガ…!?!?』

 

ドサッ!!

 

倒れた龍騎士兵からは緑色の血が溢れ、地面を濡らしていた。

 

「……………あ、やっべ」

 

つい、勢いで倒してしまったが、ここは未だに避難中の生徒がいる。

今の光景を見て気分を悪くした人間がいるかもしれないし、いくら異形の者でも殺してしまっては尋問のしようがない。

そのことに今更ながら気付いたジェスは少し考えてから…

 

「ま、いっか。まだ2体もいるし」

 

なんというポジティブ(?)な思考だろうか…。

 

「「「よくねぇだろ!!?」」」

 

それを聞き、避難中だった数人の生徒と教員がツッコミを入れる。

 

「次は加減して倒さないとな」

 

そんなツッコミを無視してジェスは残った左右の2体を見比べる。

 

「さて、次はどっちだ?」

 

『『グゥゥ…』』

 

2体の龍騎士兵はジェスを狙って周囲を円状に歩き出す。

 

………

……

 

~戦闘地点B・湖畔地帯~

 

『グゥゥ…』

 

場所は変わり、湖畔地帯では4体の龍騎士兵が背中の龍翼を羽ばたかせて水面スレスレに浮かんでおり、それに対峙するように湖畔の岸にいる青年が1人いた。

見た目はうなじが隠れる程度の金髪と紅い瞳を持ち、野性味のある端正な顔立ちに中肉のように見えるが引き締まった筋肉の持ち主の青年だ。

服装は上に赤いシャツを着て、下に黒い長ズボンを穿き、その上から各所(胸部、両肩、両腕、腰部、両脛、両足)に黒い軽量型の鎧を模した騎士甲冑を装着した姿をしており、右手には片刃の長剣を握っていた。

 

「さて、どうしたもんか…」

 

青年は龍騎士兵と対峙しながら悩んでいた。

何故なら湖畔の周辺にはまだ数多くの生徒がおり、中には動けない負傷者もいるのだ。

局員の姿もあるが、その局員も負傷していてその場にいる全員を避難させるには目の前の龍騎士兵を全て倒してからとなる。

 

「(任務帰りの残業がこんな異形との戦闘なんてな。後で追加手当でも貰いたいもんだ)」

 

しかし、青年の思考は別のとこにあった。

先程、青年と龍騎士兵の間には少し小競り合いがあった。

 

「(火を吐くトカゲに水場、か…)」

 

青年が飛べないとわかると龍騎士兵は火球を空から吐くという戦法に切り替えていた。

それを如何にして攻略するかを考えていた。

 

「……よっしゃ、いっちょ賭けるか」

 

考えが纏まったらしく、青年はニヤッと笑みを浮かべる。

 

「行くぜ! カートリッジ、ダブルロード!」

 

ガシュッ!!

 

長剣の刀身を挟んで鍔に仕込まれた2連装のカートリッジが炸裂する。

 

バチバチッ!!

 

それに同調するように長剣の刀身に稲妻が発生する。

 

『ッ!!』

 

それを見て1体の龍騎士兵が火球を放とうとする。

 

「そこだ! ライトニング・サンダー!!」

 

稲妻の斬撃を龍騎士兵達が浮かぶ"水面"へと放つ。

 

「あ…全員伏せるか、防御しとけよ!」

 

斬撃を放った直後、青年は思い出したように周囲の人間に叫ぶ。

 

その結果…。

 

ジュワァァァ!!

 

水面の水が雷撃によって電気分解、それが気体と化して蒸発したように見える。

 

ゴアァッ!!

 

そこに龍騎士兵が火球を放とうとした瞬間…

 

バチッ!

チュドオォォォンッ!!!

 

気化した酸素と水素に引火し、4体の龍騎士兵達を巻き込んでの大爆発が起こる。

 

『『『『ガアアァァァァ!?!』』』』

 

思わぬダメージに龍騎士兵達は悲鳴を上げる。

 

「よし、大成功!」

 

青年はガッツポーズを決めるが…

 

「何が、"よし"だぁぁ!!」

「こっちまで死ぬかと思ったわ!!」

「危ないじゃないのよ!!」

「何考えてんのよ、このバカ!!」

「てか、忠告するの遅いわ!!」

 

危うく二次災害に繋がりそうになり、周囲の人間からは盛大な罵声が飛び交う。

 

「うっせぇ! この特務隊の『ラルフ・エスカリオン』が助けてやったんだから文句言ってんじゃねぇ!」

 

ラルフと名乗った青年はそんな罵声にそう返していた。

 

しかし…

 

『グガアアア!!』

 

龍騎士兵の怒りの咆哮が木霊する。

 

「タフな連中だな…」

 

そう言いつつラルフは新たなカートリッジを装填する。

 

「怒ってるならこっちに来いよ! 叩き落としてやっからよ!!」

 

『ガアアッ!!』

 

ラルフの挑発が伝わったのか、龍騎士兵の1体がラルフへと突撃する。

 

「もういっちょカートリッジ、ダブルロード!」

 

ガシュッ!!

ボアアアッ!!

 

今度は稲妻ではなく、真っ赤に染まる業火が刀身に灯る。

 

業騎炎斬剣(ごうきえんざんけん)ッ!!」

 

龍騎士兵の特攻を真っ向から受け…

 

斬ッ!!

 

業火の一太刀を浴びせて斬り伏せていた。

 

「次、来いや!」

 

ドゴォォンッ!!

 

斬り伏せた龍騎士兵がラルフの背後で爆発し、ラルフは次の龍騎士兵を待つ。

 

………

……

 

~戦闘地点C・山岳地帯~

 

再び場所は変わり、山岳地帯では3体の龍騎士兵がその龍翼を羽ばたかせて避難する生徒や教員達を追い掛けていた。

 

「くそっ…このままでは…!」

 

殿を務める教員が迫ってくる龍騎士兵をどうしたらいいか考えていると…

 

「クリスタル・シューター!」

 

避難する先から12個の飛来物が飛んできて龍騎士兵達へと迫る。

 

「今のは…?」

 

教員がそちらの方を向くとそこには…

 

「今の内です。早く避難を!」

 

腰まで伸ばした銀髪を赤いリボンで右側ポニーテールに結い、水色の瞳を持ち、綺麗というよりも可愛い系の顔立ちに均等の取れた標準的な体型の少女が浮かんでいた。

服装は上に白のノースリーブを着て、下に青いロングスカートを穿き、その上から青い長袖のジャケットを羽織り、両足に藍色のブーツを履いた姿をしており、その左手には魔導杖を握っている。

 

「助かった。アンタは?」

 

殿の教員が少女の元に辿り着くと、そう尋ねていた。

 

「時空管理局の特務隊所属、『シルヴィア・フューリス』三等空尉です。それよりも早く皆さんの避難誘導を」

 

「わかった。気をつけろよ!」

 

教員が走り去っていくのを確認してから…

 

「さて…私は本来、後衛役なんですが…四の五の言ってる場合でもありませんね」

 

龍騎士兵達を足止めしていた飛来物がシルヴィアの元に集まり、円状に回り始める。

 

『グゥゥ…』

 

それを見て龍騎士兵達もシルヴィアに狙いを定める。

 

『チャージ完了。いつでも撃てるぞ』

 

「わかったわ。ヴェスタ」

 

そうしてる間に魔導杖から電子音が響き、シルヴィアも頷くと魔導杖を龍騎士兵へと向け…

 

「いきます、ディバインバスター!」

 

その先端から直射型砲撃魔法を放っていた。

 

『ガァッ!!』

 

それを見て1体の龍騎士兵が前に出て腕をクロスして防御態勢を取る。

 

ゴオォォォッ!!

 

シルヴィアのディバインバスターの直撃を受け、龍騎士兵の甲殻が融解していく。

しかし、それだけで決定打にはなっていない。

 

「頑丈ですね。なら、追加です。ヴェスタ」

 

それを見てシルヴィアも追撃を行うことにした。

 

『了解。ロードカートリッジ』

 

ガシュッ!

 

カートリッジを一発消費し、12個のクリスタルを直撃を受けている龍騎士兵の周囲に3個4組の編成で配置すると…

 

「クリスタルバスター・クルセイドシフト!」

 

直射の直撃を受けている龍騎士兵へさらに別角度の四方から砲撃が放たれていき…

 

ギュイィンッ!!

 

その砲撃が龍騎士兵の急所を確実に捉え…

 

『グガッ!?!?』

 

チュドォォンッ!!

 

魔力攻撃のみで龍騎士兵は爆発していた。

 

「まず1体!」

 

『しかし、次のチャージまでの時間が惜しい。残り2体はどう攻略する?』

 

シルヴィアの声に魔導杖がそう尋ねる。

 

「こういう時に後衛って不便ね。朝陽か、ジェス、ラルフ辺りがいればもう少し作戦の幅も決まるんだけど…」

 

『そうも言ってられんからな』

 

「皆、それぞれの場所で交戦中。朝陽も向かってる最中だとは聞いてるけど…」

 

『だが、決して倒せない相手でもないことが今でのわかった。ここは敵を倒すよりも学生達の避難時間を稼ぐことに集中すべきだ』

 

「そうね。なら、上手く立ち回らないと…」

 

これからの方針が決まったのか、残り2体の龍騎士兵を睨みながら行く手を塞ぐように構える。

 

「ここから先は通しません!」

 

『グオォォッ!!』

 

シルヴィアの戦い方を本能的に感じたのか、その距離を詰めようと龍騎士兵2体は同時に迫っていた。

 

………

……

 

~戦闘地点D・森林地点(合流ポイント)~

 

さらに別の場所では一風変わった戦況を見せていた。

相対する龍騎士兵はなんと10体、対して女性を筆頭に避難してきた学生や教員、局員達の一部が戦っていた。

 

「次! 左側からの打撃後、すぐさま離脱してから砲撃!」

 

腰まで伸ばした銀髪とサファイアブルーの瞳を持ち、凛とした面持ちの綺麗な顔立ちに健康的で均等の取れた体型の女性が、まるで生徒や教員達を指導するようにして龍騎士兵との戦い方を教えていた。

服装は上にモスグリーンのノースリーブを着て、下に赤を基調にしたストライプ柄のミニスカートを穿き、頭に赤色のベレー帽を被り、首周りに赤色の長いマフラーをマント状に巻き付け、両腕に肘から手の甲までを覆う服から独立したような袖を着け、両足にショートブーツを履いた姿をしており、その右手には円柱型の柄と両端にある円錐型の穂が一体化した長さ2m程の槍を持っていた。

 

「所詮は力しか知らぬ有象無象。我らがしっかりと連携を取れば勝機はある!」

 

そう言いつつ女性自らも槍を振るい、一度に3体の龍騎士兵と戦っていた。

 

「後方は陣形を保ちつつ防御魔法に秀でた者達が魔法を展開し、避難してきた負傷者を守れ! シェーラ、そちらは任せたぞ!」

 

「は、はい!」

 

『シェーラ』と呼ばれた胸元辺りまで伸ばしたウェーブの掛かった桜色の髪とエメラルドグリーンの瞳を持ち、可愛らしい顔立ちに全体的に均等の取れた標準的な体型の少女が後方の防御結界の中で負傷者の治療を行っていた。

服装は上に白いノースリーブを着て、下に緋色のロングスカートを穿き、その上から赤い長袖のジャケットを羽織り、両足に赤いローヒールを履いた姿をしており、その両手の指全てに指輪を嵌めている。

 

「エリザさんもお気をつけて!」

 

シェーラも『エリザ』と呼んだ槍使いの女性に向かってエールを送っていた。

 

「この程度の有象無象に後れを取る、エリザベータ・アルスではない! そこ! もっと魔力を込めて砲撃を撃たんか!」

 

そう答えつつ砲撃を撃とうとしていた学生に厳しい一言を告げていた。

 

「は、はい!」

 

その学生は慌てた様子でチャージ時間を延ばしてからタイミングを見計らっていた。

 

「チャージ・タックル!」

 

そこには忍のクラスメイトであるグラフハイトの姿もあり、チャージ時間を延ばした学生のために一撃を加えていた。

 

「うむ、良い判断と攻撃だ。だが、防御にももっと注意を払え!」

 

そう言いつつエリザはグラフハイトの攻撃後に魔力弾を放ってグラフハイトを捕まえようとした龍騎士兵の手を弾いていた。

 

「ッ?! す、すみません…!」

 

「いや、その勇気には敬意を表しよう。今の内に態勢を整え直せ!」

 

「はい!」

 

エリザの援護もあり、グラフハイトは無事に後退する。

 

「(ベニガミも無事だろうか?)」

 

後退しながらグラフハイトは敗北を喫してその実力を認めた忍のことを考えていた。

 

「(こんなことにならんかったらリベンジマッチを仕掛けたものを…!)」

 

突然襲撃してきた龍騎士兵に対しての怒りも抱いていた。

 

しかしながら10体もの龍騎士兵を相手に善戦してはいるものの、学生や教員では決定打に欠けているのが現状であった。

この数をひっくり返すには…

 

………

……

 

~戦闘地点E・渓谷地帯~

 

「瞬狼斬ッ!!」

 

ギギギギンッ!!

 

渓谷の谷間を飛び交いながら龍騎士兵2体をファルゼンによって斬り伏せた後…

 

「ブリザード・ファン・エクシード!」

 

予め放っていたブリザード・ファングの着弾後収束地点をレフト・フューラーの魔力弾によって撃ち抜き、その勢いで残りの龍騎士兵3体を氷漬けにして動きを封じる。

 

「砕けろ! スパイラルマグナム!」

 

ダダダンッ!!

バリィィンッ!!

 

さらにレフト・フューラーから回転を加えた魔力弾を氷漬けになった龍騎士兵3体に見舞って粉々に砕いていた。

 

「(次は…)」

 

龍の頭部を模した目元を隠す仮面を装着した忍はネクサスに表示された戦闘地点を転々としていた。

 

「(最新情報…こんなことまで出来るのかよ…)」

 

さらにネクサスに送られてきた情報が詳細化していくのに対して忍も舌を巻いていた。

 

「(とは言え、合流ポイントが10体か…内3体を特務隊の人が相手してるとは言え残りの7体に決定打が無いのは厳しいよな。正体は仮面で隠してるし、何とかなるだろ…最悪、一撃離脱すりゃいいし…)」

 

そう考え、忍は合流ポイントへと向かうことにした。

 

「(そういや、あいつら…無事に合流ポイントに向かえたのか? 合流ポイントの状況も状況だし、いない方が楽ではあるが…)」

 

ティラミスやラト達が合流ポイントに着いたかも気にしていた。

特にラトは口が滑りそうな気がして気がならないという厄介な状況に陥りそうな予感もしていた。

 

「……行くか…」

 

仕方なしに忍は合流ポイントへと向かうのだった。

 

………

……

 

~戦闘地点D・森林地点(合流ポイント)~

 

場所は再び合流ポイントに戻る。

 

「わっ! ここにもさっきのがいるよ!」

 

「しかも10体も…!?」

 

10体の龍騎士兵がいることにラトとラピスが驚いていると…

 

「避難学生か? 戦う意志があるなら手伝うがいい」

 

未だ3体の龍騎士兵と戦うエリザがラト達に気付き、そう声を掛けていた。

 

「手伝うって…ホント!?」

 

その申し出に何故かラトは嬉しそうだった。

ちなみにドライバー達は動体反応がしたので森の出入り口付近に待機しており、この場にはいない。

 

「……お姉ちゃん…」

 

さっきやられそうになった鬱憤でも晴らしたいのだろうか、とシルフィーは考えてラトを見る。

 

「やられっぱなしは主義じゃないの!」

 

そう言ってラトは先陣を切るように苦戦中の学生達のいる方の龍騎士兵へと突撃していった。

どうもシルフィーの読みは当たったらしい。

 

「……はぁ…援護します」

 

頭を抱えつつラトの援護にシルフィーが向かう。

 

「負けてられません!」

 

シルフィーが動くとなればラピスも別の龍騎士兵へと向かっていた。

 

「え、え~と…」

 

ティラミスは困ったようにおろおろとしている。

 

「戦意無き者は下がっていろ!」

 

「は、はい!」

 

言われてティラミスもエリザ達の後方へと下がっていた。

 

「ブレイク・フィスト!」

 

戦線に加わって早々ラトは龍騎士兵の腹部に一撃を加えてから下がっていた。

 

「……ライトバスター」

 

そこにすかさずシルフィーが追撃として砲撃を放っていた。

 

「ほぉ、良い連携だ」

 

その息の合い方を見たエリザも感心していた。

 

「凍て付きなさい!」

 

ラピスはバインド魔法に凍結効果を付与して龍騎士兵の動きを封じていた。

 

「こちらもなかなかやるではないか」

 

ラピスの魔法技能も褒めている。

 

「(しかし、普通の学生や教員では決定打に欠けるか。私の一撃でも構わないが、10体というのは流石に多過ぎか…)」

 

エリザが決定打に悩んでいると…

 

「三獣合体!」

 

くぐもった声が合流ポイントに響き渡ると…

 

ジャキンッ!

 

謎の装着音と共に全身が紺色、朱色、赤色のアーマーによって彩られて複数の武装を装着した1人の戦士が現れる。

 

「サーベルバグナウ!」

 

その戦士は右腕の巨大爪装備を振るい、龍騎士兵の1体を縦に引き裂いていた。

 

『ガアァァッ!!?』

 

その一撃に龍騎士兵は木っ端微塵に粉砕される。

 

「何奴!?」

 

流石のエリザも突然の乱入者に警戒するが…

 

「ネクサス…」

 

「ッ!!」

 

その一言でエリザはゼーラから見せてもらった朝陽の報告書のことを思い出す。

 

「残りを排除する。手を貸せ」

 

「わかってる」

 

エリザの要請に戦士は頷く。

その正体は変声魔法も組み合わせてブラッドシリーズを全身に纏い、仮面も被ったままの状態の忍なのだが…。

 

「あ~! シ…」

 

纏っていたのがさっきまで一緒だったドライバーなのでラトが何か言おうとした瞬間…

 

「デュアルバスター!」

 

それに被せるように大声を出す忍はラトの背後から迫る龍騎士兵を狙い撃ちにしていた。

 

「(次、言おうとしたら当てるからな?)」

 

そして、念話で釘を刺しておく。

 

「(え~、秘密なの?)」

 

「(当たり前だ!!)」

 

ラトの不満そうな内心に忍はツッコミを入れる。

 

「ブラッドブレード!」

 

左腕の盾から二又の剣を引き抜くと…

 

キィィン…

 

音叉のような共鳴現象を引き起こしながら魔力を高めていき…

 

「ブラッドフォール!」

 

威力の増した魔力斬撃を放って龍騎士兵の1体を斬り裂いていた。

これで残り8体。

 

「これぞ、好機!」

 

忍の参戦で好機と見たエリザも仕掛ける。

 

「唸れ、ヴェルランサー!」

 

龍騎士兵の1体を踏み台に跳び上がると…

 

キュィィンッ!

 

バリアジャケットのマフラーを魔力へと変換し、槍に付与していく。

 

「ミラージュ・ストライクッ!」

 

ヒュッ!!

グサッ!!

 

『ッ!!?』

 

踏み台にした龍騎士兵にヴェルランサーを投擲し、その心臓を射抜くと…

 

「加速!」

 

近場の木の枝を蹴り、串刺しにした龍騎士兵の背後に移動すると…

 

ギンッ!!

 

ショートブーツの爪先に魔力障壁を張ってヴェルランサーの穂先を蹴って別の龍騎士兵を標的にする。

 

グサッ!!

 

『ガッ!?!?』

 

2体目にも決まると…

 

「三度目だ!」

 

同じ方法で今度はラトの背後にいて忍のデュアルバスターを受けた龍騎士兵へとヴェルランサーを蹴り飛ばしていた。

 

「「「「(怖ッ!?)」」」」

 

その攻撃方法に皆寿命が縮む気がしたとか…。

だが、これで残りは5体にまで減っていた。

 

「(このまま押し切る!)」

 

忍も負けじとブラッドブレードを構え直していた。

 

 

こうして残りの龍騎士兵も特務隊や忍の活躍によって撃破されていった。

最後の龍騎士兵が倒されたタイミングで忍も合流ポイントから一時撤退し、ドライバーを待機状態にして再合流を果たしていた。

負傷者が出たものの、幸いなことに死者は出ることが無かった。

これも特務隊が近場にいた幸運だと学生の大多数が思っていた。

 

しかし、教員や局員は知っている。

この異変にいち早く気付き、行動した者がいることを…。

それが誰かまではわからなかったが、大人として後手に回らざるを得なかったことを少なからず後悔している者が多かったとか…。

 

今回の襲撃事件は何とか無事にその幕を閉じたが、一部の人間はまだ終わってなかった。

そう…忍の正体を知った少女達の疑問に答えるべき時間が…。

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