魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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第六十一話『龍を喰らう者と天輪聖王』

駒王学園で中間テスト直前の日の事。

 

「そういや、最近忍の奴を見かけないよな…」

 

「イッセー、なんか聞いてないのかよ?」

 

「いや、何も聞いてねぇけど…」

 

変態三人組がそんな会話をしていた。

だが、その話はすぐに明らかなものとなる。

 

朝のSHRで…

 

「あ~、今日は紅神についてちょっとした知らせがある」

 

担任と共にやってきたアザゼルが開口一番そう漏らす。

 

「忍がどうかしたんすか? そういや、最近姿を見てませんでしたけど…」

 

イッセーがアザゼルに尋ねると…

 

「あぁ、あいつは今海外に留学中だ」

 

アザゼルは一言で済ませた。

 

「「「「「えええええええ!??!」」」」」

 

その言葉にクラス中がどよめく。

 

「ちょ、留学って…!?」

「中間テスト前なのに!?」

「なんで? なんで?」

「あいつ、試験免除されたのか?!」

「てか、何処に留学したんだ!?」

「明幸先輩はそれを許したのか!?」

 

クラス中からの一斉の質問に…

 

「試験は事前に受けさせた。その上で海外に行った。行き先は…ヨーロッパ辺りだな。あいつの嫁なら何とか説き伏せたらしいぞ?」

 

アザゼルは事前に用意していた適当な理由と行き先を言って、クラスを鎮めようとした

 

「マジか!?」

「なら、紅神の答案は既に教師陣の手に…?」

「つか、明幸先輩もよく許したなぁ…」

 

そんな会話があちこちで囁かれる。

 

「あいつの答案は俺が預かってるから盗んで見ようなんて思わないこった」

 

アザゼルはそう言っていた。

 

「マジかよ…あいつ何も言わずに行っちまったのかよ…」

 

その話を聞き、イッセーは軽いショックを受けていた。

 

「ま、明日は中間テストの本番だ。しっかり復習しとけよ」

 

そう言ってアザゼルが退出した。

 

………

……

 

その日の放課後。

オカ研の部室では…

 

「紅神君の留学は私も後で知ったのよ。ごめんなさいね」

 

リアスがイッセー達に謝罪していた。

ちなみに部室にグレモリー眷属+αが集まっていた。

 

「俺が口止めしてたのもあるがな。あいつの留学先はちょいと特殊だったしな」

 

まるで悪びれた様子のないアザゼルはそう言っていた。

 

「特殊? ヨーロッパじゃないんですか?」

 

アーシアの質問にアザゼルは…

 

「あいつは今、次元を越えた別世界…ミッドチルダに留学してる」

 

「「「ッ!?!?」」」

 

それを聞いて一同はかなり驚いていた。

 

「次元を越えてって…そんなことが可能なのか!?」

 

ゼノヴィアの驚き声に同調するように何人か頷いてみせる。

 

「可能にしてみせた、ってのが正直なところか。お前ら、時空管理局のゼーラは知ってるだろ? あいつの母校に忍を送り込んでミッド式の魔法を勉強させてるところだ。どんな進捗具合かは俺もわからんが…」

 

と、そこで…

 

「ゼーラと言えば、厄介な情報も仕入れた。あいつの留学中、絶魔らしき勢力の侵攻に遭ったそうだ」

 

「絶魔…確か、忍が言ってた…」

 

絶魔のは話は各勢力に通達済みだったりする。

 

「あぁ、その先兵…量産型の龍騎士兵が出張ってきたって話だ」

 

アザゼルは緊張感に満ちた表情でそう告げる。

 

「お前達クラスの強さがあれば問題はないが…一般人とか、力をかじったような人間だと歯が立たんらしい。実際、局員の何人かは病院送りにされ、生徒達にも少なからず被害が出たようだ」

 

「「「「「…………」」」」」

 

その話を聞き、全員の表情も引き締まる。

 

「試験前に言うことじゃないのは重々承知だが…心構えはしておけ。お前達は対禍の団の戦力を担ってる部分もある。だが、敵は一つの勢力だけとは限らんからな」

 

そう言い残してアザゼルはオカ研メンバーを解散させた。

 

「(先生はそのためにオーフィスを俺達に引き合わせたのかな?)」

 

忍の留学と入れ違いにやってきた人物を考えながらイッセーは思う。

 

そう、忍と入れ違いにやってきた『ある奴』とは…禍の団のトップである無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)と称される最強のドラゴン『オーフィス』であった。

忍が旅立った二日後くらいに兵藤家へと来訪してからずっとイッセー達の様子を見続けている。

その仲介にはアザゼルとヴァーリが関わっており、アザゼルは下手すれば今の立場を追われることとなる危険な賭けを行ったのだ。

 

………

……

 

駒王学園が中間テストに突入した頃、フィクシス魔法学園では…

 

「なぁ、ラト」

 

「なぁに?」

 

あの話以降、忍はラトと行動を共にするようになっていた。

 

「いい加減、妹さんと仲直りしたらだうだ?」

 

「嫌」

 

忍の言葉にラトは即答していた。

 

「そんなに意固地にならなくても…」

 

「フィーがわかってくれるまでは嫌」

 

「はぁ…」

 

何とか仲直りさせようと考えているものの、ラトも意固地になっているのかシルフィーと疎遠状態が続いていた。

そんな会話をしていると…

 

「あ…」

 

ラピスと共に歩いているシルフィーと廊下でばったり会う。

 

「「「…………」」」

 

「(き、気まずい…)」

 

重い沈黙の後…

 

「「(プイッ)」」

 

互いにそっぽを向いてラトとシルフィーは擦れ違ってしまう。

 

「(どうしたらいいんだ…)」

 

ラピスから鋭い視線を向けられながら、忍はこの状況をどう打開すべきか考えていた。

 

………

……

 

それから数日後の休日。

 

「そういえば…今日辺りだったか」

 

「何がです?」

 

「何かあるの?」

 

外でもう少し詳しい話をすべくティラミスとラトと会っていた忍が思い出したように呟き、それを2人に尋ねられていた。

 

「友人の…その、昇格試験が今日辺りだったなと思ってな」

 

「「昇格試験?」」

 

あまりピンとこない響きに2人揃って首を傾げる。

 

「前に多種族の話をしたろ? その中には神話に出てくるような天使や悪魔の存在も当然ながら実在しているんだ。だ、堕天使も加えたその三勢力は大昔の戦争でそれぞれ数を減らしてしまってな。それで悪魔は自らのチェスの駒に例えて眷属を集める少数精鋭の制度を確立したんだ」

 

「へぇ~」

 

「神話の存在が現実に…?」

 

ラトはポカンとそんな反応を示し、ティラミスも驚いていた。

 

「あぁ。で、その眷属に俺の友人が一回死にそうになり、下級悪魔として転生した。これを転生悪魔と言うんだ。だが、彼はたゆまぬ努力と数々の経験を得て今日辺りに中級悪魔になるための試験を受けることになったんだ。仲間の人と一緒にね」

 

一応、遮音結界を張って話しているので周りの人間には詳しい内容はわからないでいた。

 

「他の世界にも試験なんかあるんだねぇ~」

 

「まぁ、冥界は貴族社会が未だ根強いからな…」

 

「そうなんですか?」

 

「あぁ…かく言う俺も悪魔でないのに辺境伯に任命される始末だし…」

 

「「え?」」

 

忍の一言で2人はまた揃って忍を見る。

 

「貴族? シノブが…?」

 

「辺境伯って…それなりに地位が高かったような…」

 

「まぁ、まだ未成年だし…本格的な権限は成人してからだろうしな…」

 

忍は苦笑しながらそう答えていた。

 

そうしていしばらく3人で歩いていると…

 

「「「「あ…」」」」

 

また、ラピスとシルフィーのコンビに出会っていた。

この2人もまたあの話以降、よく一緒にいることが多くなったようだ。

しかも今回は忍の事情を知る者が揃い踏みとなった。

余計に空気が悪くなってしまう。

 

「(せっかく会えたんだ。ここらで関係の修復を…)」

 

忍がそう意気込んだ時だった。

 

ブゥンッ!!

 

白昼堂々、青と黒の混ざった禍々しい魔法陣が5人の足元に展開されていた。

 

「これは…?!」

「な、なに…この魔法陣…!?」

「……転移系…?」

「こんな街中で…!?」

「誰がこんなことを…!」

 

5人が一斉に周りを気にする中…

 

シュンッ!!

 

あっという間に5人の姿がその場から消えてしまった。

不思議なことに周りで騒ぐ者がいなかった。

 

「5名様、闇の世界へご案内な~い♪」

 

近場の影の中ではそんなことを言う鎌を持った少年の姿があったが、誰かに認識される前にすぐさま消えてしまっていた。

 

………

……

 

~冥界~

忍達が転移させられた場所、それは…

 

「ここは…冥界!?」

 

冥界のとあるホテルの前であった。

しかし、人の気配がまるでなく、むしろこの気配は…

 

「忍!?」

 

「イッセー君!?」

 

戦いの気配が忍の肌にヒシヒシと伝わってきていた。

そこには禁手化と化したイッセーを始め、グレモリー眷属やアザゼル、ヴァーリなどの顔触れがいた。

 

「龍を宿した狼か。これはこれは思わぬ来客だ」

 

「ッ!」

 

その声に忍が振り返ると、そこには…

 

「やぁ、狼君」

 

「曹操!」

 

禍の団・英雄派のリーダー、曹操がいた。

 

「誰の指図かは…まぁ、大体の予想はつく。彼かな…?」

 

曹操は忍が誰によって転移させられたのか予想をつけていた。

 

「な、なにが起きてんのさ!?」

「ここが、冥界…? さっきの話に出た…?」

「……冥界…?」

「誘拐か、何かですか!?」

 

忍と共に転移してきたラト達はかなり取り乱していた。

 

「なんで女連れなんだよ!?」

 

「ノヴァの野郎にまた強制転移させられたんだよ!! くそ、何とかこいつらだけでも…!!」

 

忍は何とか4人の保護を求めるが…

 

「今は状況が状況だ! お前が何とかしろ!」

 

アザゼルが一喝して戦闘態勢を整える。

 

「忍! ここは京都での結界と同じだ!」

 

「ちっ…マジかよ!」

 

その一言で忍も状況を少しだけ理解した。

つまり、霧使いの結界内で援軍は期待出来ず、ラト達の無事も忍の手に掛かっていることになる。

 

「てか、こっちも疑問なんだが…なんで敵の頭がお前らと一緒なんだよ!?」

 

匂いを察知してわかったが、忍もイッセー達側にオーフィスがいるのは理解出来なかった。

 

「内部分裂か何かか!?」

 

「こっちにも事情があんだよ!」

 

そんなことを叫び合っていると…

 

「そろそろいいかな?」

 

軽く忘れられている曹操とゲオルグが何かをしようとしていた。

 

「二天龍、龍を宿した狼、龍神…ここには龍を持つ者が豊富だからな。そろそろ頃合いと見た。ゲオルグ」

 

「わかった」

 

ゲオルグの背後には不気味な魔法陣が展開されており、そこから何かが出てきそうな雰囲気だった。

 

「噂の『龍喰者(ドラゴン・イーター)』か。一体何者なんだ? 龍殺しに特化した新手の神器使いか…新たな神滅具使いか?」

 

ヴァーリはその魔法陣を見ながら曹操に尋ねていた。

 

「違う。違うんだよ、ヴァーリ。『龍喰者』とは既に存在しているモノに俺達が勝手に付けたコードネームみたいなものさ。そして、今…それを呼ぼうじゃないか…地獄の窯の蓋を開いてね」

 

「ふっ…今この瞬間が…無限を喰らう時だ」

 

曹操とゲオルグがそう言った瞬間…

 

ズオオォォォォォ…!!!

 

魔法陣からさらに不気味な気配が湧きだしてきて…

 

「「「ッ!!?」」」

 

イッセー、ヴァーリ、忍の三者がその気配にぞっとしたものを感じ取っていた。

 

『これは…! ドラゴンに対する圧倒的な悪意…!?』

 

赤龍帝であるドライグの声も心なしか震えてるように聞こえた。

 

「な、なに…?」

「……召喚魔法陣…?」

「シノブ?」

「何か、出てくる…?」

 

4人を背後に庇いながら忍は身震いを覚えていた。

 

そして、魔法陣から現れた存在は…

 

『オオオオォォォオオォォォォォォ…』

 

上半身が堕天使、下半身は東洋の龍のような細い長い体躯に体中をがんじがらめにした拘束具、無数に突き刺さった杭、上半身を磔にした十字架、その隙間から見える血涙…と異様な姿の者だった。

 

その姿を見たアザゼルは…

 

「こ、こいつは…!? なんてものを呼びやがった…!! コキュートスの封印を解いたのか!?」

 

驚愕と憤怒の面持ちだった。

 

「曰く『神の毒』。曰く『神の悪意』。聖書に記されし神の呪いを一身に受けた天使であり、ドラゴン。今は亡き聖書の神の呪いが未だ渦巻く原初の罪…。それはエデンにいた者に禁断の果実を食わせた禁忌の存在。そして、その存在を抹消されたドラゴン……『龍喰者』・サマエルだ」

 

そんなアザゼルをよそに曹操はそう言葉を紡いでいた。

 

その存在を知らない者が多い中、アザゼルは語る。

 

蛇に化け、エデンのアダムとイヴに知恵の実を食べさせた存在。

それが聖書に記されし神の逆鱗に触れ、神は極度の蛇…ひいてはドラゴン嫌いとなった。

それが教会の書などでドラゴンが悪として描かれている由縁だとか…。

サマエルは、ドラゴンを憎悪した神の悪意、毒、呪いというものをその身に全て受けた存在。

本来は神聖であるはずの神の悪意はあり得ない。

それだけに存在そのものが猛毒。

ドラゴン以外にも影響がある上、ドラゴンを絶滅しかねない…。

だからこそ地獄の底…コキュートスの深奥で封印されていた。

故にサマエルに掛かった神の呪いは究極の龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)

存在するだけで凶悪な龍殺しである、と…。

 

その話を聞き、イッセー達もかなり驚いていた。

無論、その身に龍を宿してしまった忍も例外ではない。

 

「ハーデスの野郎! 何考えてやがる…?」

 

しかし、その答えはすぐに見当がついたようだ。

 

「! ま、まさか…!」

 

「えぇ、ハーデスと交渉して幾分かの制限を設けて彼の召喚を許可してもらいましたよ」

 

「野郎! ゼウスが各勢力との協力態勢に入ったのがそんなに気に入らなかったのか…ッ!!」

 

いつもはふてぶてしいくらいのアザゼルが激昂した様子で叫んでいた。

 

「ま、時間も限られてるんで手っ取り早く行こうか。アザゼル殿、ヴァーリ、赤龍帝、狼君。彼の龍殺しは龍に対して必殺だ。それを忘れないでくれよ?」

 

そう言ってから曹操は聖槍をオーフィスへと向け…

 

「……喰らえ」

 

一言発していた。

 

その刹那…

 

バクンッ!!

 

オーフィスがいた空間が黒い球体で覆われていた。

 

「オーフィス!?」

 

その球体は如何な攻撃も寄せ付けず…

 

ゴクン…ゴクン…

 

不気味な音を立てて何かを吸い取っているようだった。

 

「ラト、ティラミス、シルフィー、ラピス! お前らは彼女の元まで下がってろ!」

 

オーフィス救出の間に忍はレイヴェルを指さし、4人に避難を警告していた。

 

「で、でも…!」

 

「いいから行け! お前らは本来この場に居てはいけない存在なんだ!」

 

ラトが何か言い掛けたが、忍はそれを最後まで言わせずに叫んだ。

 

「わ、わかりました…!」

 

「……お姉ちゃん!」

 

「行きますよ!」

 

ラトの手を引っ張ったシルフィーとラピスがティラミスの先導でレイヴェルの元に走る。

 

「さてと…これだけのメンツを相手にするんだ。俺も少し本気を見せようか」

 

そう言って曹操は聖槍をクルリと回してから…

 

禁手化(バランス・ブレイク)

 

静かな、しかし確かな強さを秘めた言葉を発し、曹操の背後に神々しく輝く輪後光が現れ、曹操を囲むようにボウリング並みの大きさの七つの球体が宙に浮かんで出現していた。

 

「これが『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』の禁手、『|極夜なる天輪聖王の輝廻槍《ポーラーナイト・ロンギヌス・チャクラヴァルティン》』………まぁ、未だに未完成なんだけど」

 

その姿を見て…

 

「亜種か!? 『黄昏の聖槍』の今までの所有者が発現してきたのは『真冥白夜の聖槍(トゥルー・ロンギヌス・ゲッターデメルング)』という禁手だった!」

 

アザゼルも驚く。

 

「未完成…?」

 

曹操の言葉に疑問を持った忍は1人呟いていた。

 

「気をつけろ。あの禁手には『七宝(しっぽう)』と呼ばれる能力が備わっていて、神器としての能力が七つある。あの球体一つ一つがその具現化したものと考えていい」

 

「七つだぁ!? 二つや三つとかじゃなくて!?」

 

ヴァーリの一言にイッセーが驚く。

 

「あぁ、七つだ。とは言え、俺の知っているのは三つ…そのどれもが凶悪な能力だ。故に称される訳だ、最強の神滅具と。紛れもなく、人間の中では最強の男だよ…」

 

ヴァーリをしてそう言わしめる曹操の実力とは…。

 

「七宝が一つ、『輪宝(チャッカラタナ)』」

 

フッ!

 

七宝の一つが消えたかと思うと…

 

バギャアンッ!!

 

「エクス・デュランダルが…!?」

 

盛大な破壊音を立ててゼノヴィアの持つ複合型の聖剣が砕け散っていた。

 

「速い!?」

 

その攻撃を誰も止めることが出来なかった。

 

「輪宝の能力は武器破壊。相当な手練れでない限り回避は無理だね」

 

曹操が言葉を漏らした次の瞬間…

 

ブシャアアァァ!!

 

「かはっ!?」

 

ゼノヴィアの体から鮮血が飛び散り、ゼノヴィア自身も口から吐血していた。

 

「な、なにが起きたのよ!?」

 

「きゃあああっ!!」

 

その光景を見てラトの驚きとティラミスの悲鳴が聞こえる。

 

「ゼノヴィアさん!? いやああぁぁぁぁ!」

 

そんなゼノヴィアを泣き叫びながらアーシアが回復し始めた。

 

「テメェ!!」

 

「許さない!!」

 

それに激昂したイッセーと木場の同時攻撃を曹操は聖槍で軽く捌くと、七宝の一つをリアスと朱乃の方へと飛ばしていた。

 

「迎撃します!」

 

2人がその球体を迎撃しようとした時…

 

「弾けろ、『女宝(イッティラタナ)』」

 

球体から光が発せられ、リアスと朱乃を包み込む。

 

「この程度!」

 

そうして2人は手を突き出したまま……何も起こらなかった。

 

「女宝は異能を持つ女性の力を一定時間、完全に封じる。これも相当な手練れじゃないと無力化出来ないよ」

 

曹操はニヤリとそう説明していた。

 

「(この状況、この戦況の中で既に3人が封じられた…!)」

 

サマエルとゲオルグを守りながら、最小限の動きだけで曹操は目の前のメンツを相手にしている。

 

「ならば防衛対象を直接叩くのみ!」

 

忍に合わせるように別方向から黒歌とルフェイが魔法攻撃を放とうとする。

 

「よせ、忍!!」

 

アザゼルは止めに入ろうとするが…

 

「ゲオルグ! 狼は任せた!」

 

そう言って曹操は球体の一つを黒歌達の方に放つ。

 

「『馬宝(アッサラタナ)』、これは任意の相手を転移させる」

 

その瞬間、黒歌とルフェイは転移させられ、その攻撃方向はゼノヴィアを回復中のアーシアの元に移る。

 

「ッ!! 『龍星の騎士』!!」

 

それを見たイッセーは即座に対応し、薄い装甲の騎士状態のままアーシア達の前に出て…

 

「稲妻を…喰らえ!」

 

戦車になる時間が惜しいのか、音速の拳打で黒歌とルフェイの魔法を食い止めようとするが…

 

ズガガガガガ!!!

 

「ぐわああああ!!?」

 

サマエルとゲオルグを攻撃しようとしただけのことはあり、威力が高く音速の拳打でも食い止められずにイッセーの右腕を中心に焼け焦げる。

 

「ブリザード・ファング・エクシー…!!」

 

片や忍も得意の収束砲撃魔法紛いの攻撃を仕掛けようとした時だった。

 

『オオオォォォオオオォォォォォォッ』

 

ブゥゥンッ!!

 

「ッ!!?!?!?」

 

サマエルの咆哮と共に忍もまた黒い球体に包み込まれたかと思えば…

 

キュバンッ!!

 

すぐさま黒い球体が弾け飛び…

 

「ごぼっ!!?」

 

ベチャ…!

 

忍は何とか倒れることはなかったが、それでも片膝を着いて大量の血を口から吐き出し、それを手で押さえるので必死だった。

 

「シノブ!?」

 

「紅神さん!?」

 

それを見ていたラトとティラミスが駆け寄ろうとしたが…

 

「……ダメ…」

 

「行ったところで私達には何も出来ません…!」

 

ラトはシルフィー、ティラミスはラピスがそれぞれ手を引っ張って引き留めていた。

 

「ヴァーリ! 俺に合わせろ!」

 

「まったく…俺は単独で挑みたいというのに…!」

 

そう言いながらもヴァーリはしっかりとアザゼルに合わせて曹操に攻撃を仕掛ける。

 

「金色の龍王を纏った堕天使の総督に白龍皇が相手ともなると厄介極まりないが…これを御すれば俺は更なる高みへと至れるかもね!」

 

そう言って曹操は2人の攻撃を…特に龍気の流れを見ながら回避していた。

 

「ならば、こうだ!」

 

ヴァーリは隙を見て強大な魔力攻撃を敢行していた。

 

ギュイィィンッ!!

 

しかし、その攻撃は曹操の前に現れた球体の一つに吸い込まれてしまう。

 

「『珠宝(マニラタナ)』、襲い掛かってくる攻撃を他者に受け流す。俺でも当たれば死に、防御も難しい一撃だ。でも、受け流す手段ならあるのさ」

 

そして、吸収されたヴァーリの魔力攻撃は小猫の前方に撃ち出されていた。

 

「小猫ちゃん!!」

 

傷だらけのイッセーがそれを見て動くが、いくら騎士の速度でも間に合わない距離にあった。

 

「バカ! なんで避けないの、白音!」

 

その攻撃を受けたのは小猫を庇った黒歌だった。

 

「黒歌!? おのれ、曹操…俺の手で仲間を…!!」

 

この一連の結果にヴァーリの怒りも高まっていく。

 

「焦るな、ヴァーリ! 焦れば奴の思うつぼだぞ!」

 

そう言ってアザゼルが光の槍で曹操に攻撃を仕掛けるが…

 

カッ!!

 

曹操の右眼が金色に光り、アザゼルの足元を石化させる。

 

「っ!? メデューサの眼か?!」

 

「以前の戦いで失った右眼の代用さ。だが、これで総督の隙は作れた」

 

そう言うと曹操はアザゼルの金色の鎧を破壊しながら確実な一撃を加えていた。

 

「がはっ!?」

 

「アザゼル!? 貴様…!!」

 

親代わりだったアザゼルをやられ、ヴァーリの怒りも頂点に達したのか…

 

「我、目覚めるは…!」

 

覇龍の呪文を唱え始める。

 

「ゲオルグ!」

 

「わかってる。サマエルよ!」

 

それを察し、曹操がゲオルグに指示を出してサマエルを動かす。

 

ブゥゥンッ!!

 

「ッ!?!?」

 

『オオオォォォオオオォォォォォォッ』

 

再びサマエルの咆哮が木霊し、ヴァーリが黒い球体に包み込まれると…

 

バリィンッ!!

 

「がはっ!!?」

 

黒い球体が弾け、中にいたヴァーリも血を吐きながら倒れる。

 

「さてと…これで目ぼしい脅威はいなくなったかな? 赤龍帝、白龍皇、アザゼル総督、狼…残りは聖魔剣の木場祐斗に、ミカエルの天使、ルフェイ…あと、迷い込んだ小娘が何人かっと…」

 

曹操は指折り数えながらそんなことを言っていた。

 

「あ、でも赤龍帝はまだ少し動けるっぽいか?」

 

イッセーが多少動けることを考慮しているようだが…

 

「木場君!! 俺に合わせろ!!」

 

「忍君!?」

 

血を吐き出しながら真狼と化した忍が曹操に仕掛ける。

それに驚いたものの、木場も一太刀入れようと忍の後に続く。

 

「これは驚いた。サマエルの毒を受けてまだ立てるのかい? 君には龍騎士力も宿っているのだろう?」

 

それに驚きつつも曹操は忍と木場の攻撃を捌いていた。

 

「かはっ…テメェの、好きにさせんのが…癪なんだよ!」

 

「つまりは意地か。でも、実際のところ…俺に対抗できる人材は君と木場祐斗なんだよね。後者は力こそないが、聖魔剣の特性を変えて臨機応変に対応出来る柔軟性がある。前者は近接系でありながら万能に近い要素を持った厄介な相手だ。弱点を着かないと厳しいが…」

 

そう言って聖槍から光の刃を創り出すと…

 

「こういうのも効果的かな?」

 

光の斬撃をラト達目掛けて放っていた。

 

「ッ!!」

 

ブンッ!!

 

それを見た忍は神速でラト達の前に立つと…

 

ザシュッ!!!

 

「がぁっ!!?」

 

その身を挺してラト達を庇う。

 

「シノブ!?」

 

「紅神さん、しっかりしてください!」

 

近くで倒れそうになる忍をラトとティラミスが支える。

服を忍の血で汚しても今は気にしてる余裕が無いらしい。

 

「あの状態でも神速で動けるとは恐れ入った。が、狼は元来群れで行動し、仲間想いな動物だ。それを突けば攻略もしやすいかな?」

 

忍の行動を見ながら曹操は独りごちるようにそう呟いていた。

 

 

その後、オーフィスは球体から解放され、曹操も何を思ったのかイッセーやヴァーリ達に止めを刺すことなく1人撤退していった。

その曹操と入れ替わるようにゲオルグに召喚されるジークフリートと、ハーデスの命を受けてオーフィスを回収しに死神一団がやってくるそうだ。

 

そこで、曹操は一つのゲームを提案していた。

この空間からグレモリー眷属、ヴァーリチーム、忍達がオーフィスを死守しながら無事に抜け出せるかどうかという…。

ハーデスにオーフィスが渡れば、何が起きるかわからない状況でそのようなことがをさせるとは…。

しかし、曹操はこのくらいの危機を脱しなければ相手にする気はないという。

強者の余裕か、それとも…。

 

こうして、急遽共同戦線を張ることになった一同の運命は…?

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