魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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第六十四話『友との誓い、義兄として』

深夜。

木場はリアス達を連れて駒王町から電車で八駅も離れた市街だった。

その町外れにある廃棄されたビルがアジュカの人間界(地球)での隠れ家の一つらしい。

 

アジュカはそのビルの屋上に作られた庭園にいた。

リアスはイッセーの駒をアジュカに見てもらおうとしたが、もう一組の来客によってそれは中断されてしまう。

 

それは禍の団…。

その英雄派であるジークフリートと、英雄派に協力する上級悪魔クラスの旧魔王派数名だった。

 

「(何故、禍の団がこんな場所に…?)」

 

その登場にアーシア以外の女性陣は殺気立ち、木場も禍の団が何故いるのか違和感を覚えていた。

 

「初めまして、アジュカ・ベルゼブブ。僕は英雄派のジークフリート。こちらは英雄派に協力してくれている前魔王の関係者だ」

 

「知っているよ。魔帝(カオス・エッジ)ジークと言ったかな? 教会でも上位に入る戦士だったね。協力態勢前の我々からしたら脅威だったけど…その君が俺に何のようだい?」

 

「前から打診していたことですよ。我々と同盟を結んではくれないかな、アジュカ・ベルゼブブ」

 

「「「「ッ!?」」」」

 

それを聞いたグレモリー眷属は驚いていた。

 

ジークフリート曰く、アジュカはサーゼクスに対抗出来る唯一の悪魔。

アジュカの研究もまた魅力的であり、その力と技術が加わればテロリストも一気に強化してしまうだろう。

 

しかし、アジュカは現魔王の1人として、その申し出を蹴った。

サーゼクスの友として、彼とは昔馴染みであり、互いに互いを理解し合っているからこそ、その申し出を断ったのだ。

 

それを受け、ジークフリートと共にいた悪魔達がアジュカを襲うが、アジュカは魔術式のみでそれを返り討ちにしていた。

アジュカ曰く、この世で起こるあらゆる現象、異能は大概法則性が決まっており、数式や方程式に当てはめることで答えを導き出すことが出来る。

これがアジュカ・ベルゼブブの『覇軍の方程式(カンカラー・フォーミュラ)』。

 

「さて、残るは君だけだ、ジークフリート君。どうする?」

 

「まだ、切り札を切ってないので、それを使ってから撤退させていただきますよ」

 

アジュカの問いに嫌な笑みを浮かべるジークフリート。

それを見て…

 

「それは楽しみだ。しかし、グレモリー眷属の騎士君が良い殺気を君らに送ってるし、ここは彼に譲ろうじゃないか。なに、心配はない。この庭園はちょっとやそっとじゃ崩壊しない堅牢な造りになってるからね」

 

「ッ!!」

 

アジュカは木場の殺気に気付いて、そう言っていた。

 

「……祐斗?」

 

その言葉に木場が動くのを見てリアスが声を掛ける。

 

「部長、僕は行きます。もし、共に戦ってくださるのなら…その時はよろしくお願いします」

 

そう言いながら木場は聖魔剣を一振り創ると、ジークフリートに向けて足を運んでいた。

 

無二の親友を、親しくなれた友人を、彼らの下らない計画のせいで失った木場の激情。

それは計り知れないだろう。

それでも木場は冷静でいようと頑張った。

眷属のために、友人を失ってもその分まで眷属のために戦うと誓った親友のために…感情を押し殺していた。

だが、それも憎き相手の出現によって限界だった。

 

「ジークフリート。僕はあなた達を許さない。僕の…大切な親友を奪った代償は高くつく。あなたが死ぬには十分な理由だ…!」

 

それを聞いてジークフリートも愉快そうに口の端を吊り上げる。

 

「君からかつてないほどの重圧を感じる。だが、面白い。このような場でも君達グレモリー眷属と出会うとは予想外だったが……まぁいいか。さぁ、始めようじゃないか。赤龍帝の無二の親友騎士君?」

 

そう言ってジークフリートは禁手と化し、龍の腕を背中から4本生やすと、帯刀していた魔剣を全て抜き放っていた。

 

ギィィィンッ!!!

 

それを見て木場が一気に駆け出すと、その一太刀目をジークフリートが軽々と魔剣で防ぐ。

 

「…………」

 

その一撃を受け、目を細めるジークフリート。

何かを考え込むような仕草から溜息を一つ吐く。

 

「やれやれ…現状の君と戦い、勝ったとしても深手は免れない。かと言ってこのままアジュカ・ベルゼブブとの交渉が失敗したまま君らグレモリー眷属の相手をせずに帰ったとしても仲間や下の者に示しがつかない。僕も難しい立ち位置にいるものだ。特にジャンヌやヘラクレスに笑われるのはこの上なく不愉快だ」

 

そう言うと、ジークフリートは光の剣を地面に突き立てて懐から拳銃型の注射器を取り出していた。

 

「これは旧魔王シャルバ・ベルゼブブの協力によって完成した代物だ。いわばドーピング剤だ。神器のね」

 

「神器能力を強化するということか」

 

「ご名答」

 

木場の言うことを肯定するジークフリート。

 

「聖書に記されし神が生み出した神器に、宿敵である真の魔王の血を加工した場合、どのような結果を生み出すか。それが研究テーマだった。かなりの犠牲と膨大なデータ蓄積の末に神聖なアイテムと深淵の魔性は融合を果たした」

 

「魔王の血…!?」

 

その情報に木場は驚かずにはいられなかった。

 

「本来、この魔帝剣グラムの力を出し切れば君を倒せるだろう。しかし、残念ながら僕はこの件に選ばれながらも呪われていると言ってもいい。その理由…君ならわかるね? 木場 祐斗」

 

「…………………」

 

魔帝剣グラム。

その特徴は攻撃的なオーラを有し、その切れ味は如何なものも断ち斬ると言われる鋭利さにある最強の魔剣。

しかし、もう一つこの魔剣には特性がある。

それは『龍殺し』の能力。

過去、五大龍王の一角であるファーブニルを討ち滅ぼしたこともある強力な特性を合わせ持っている。

 

しかし、それを加味して現在の持ち主であるジークフリートの持つ神器を考えると、これほど皮肉な答えが生まれる。

それは彼の神器『龍の手』、その亜種である。

この神器を含めた龍の関する神器はドラゴン系神器と呼ばれており、多かれ少なかれ龍の性質と龍気を所有者に与える。

通常時でグラムを使うのであれば、それほど危険も少ないだろう。

しかし、これが力が格段に跳ね上がる禁手ともなると話は別になる。

ジークフリートは力を高めれば高めるだけ、グラムとの相性が恐ろしく最悪になる。

 

イッセーが同じく龍殺しの聖剣であるアスカロンを籠手に収納し、何事もなく使えるのは天界の助力と神器が規格外の類のためである。

その点、ジークフリートの神器は亜種であっても規格外ではなかったらしい。

最強の魔剣に選ばれても、持ち主の有した能力までは祝福しなかった…。

これがジークフリートがグラムに選ばれたにも関わらず、呪われていると言った理由である。

 

「禁手状態でも攻撃的なオーラを殺して使えば、鋭利で強固なバランスの良い魔剣なんだけどね。しかし、それではこの魔剣の真の特性を発揮出来ない。かと言って力を解放してもね…。僕の身が滅びてしまう。この魔剣は主の体を気遣う…そんな殊勝なことをしてくれないのさ」

 

そう言いながらグラムをひゅんひゅんと片手で回してみせる。

 

「グラムを使いたければ通常状態でやればいい。が、君達グレモリー眷属相手だと禁手六刀流でないと通常時よりも対応出来ないのが正直なところさ。でも…もしも禁手状態でもグラムの力を解放出来たら? 話は別さ」

 

そして、ジークフリートは自身の首筋に注射器を打ち込み、その中身を注入していく。

 

ドクンッ!!

 

僅かな静寂の後、ジークフリートの体が脈動する音が響く。

 

ミチミチ…!!

 

ジークフリートの背後から生える4本の龍の腕が音を立てて太く肥大化していき、五指も徐々に形を崩して持っていた魔剣と同化していく。

ジークフリートの表情も険しくなり、顔中に血管が浮かび上がり、全身も別の生物のように蠢き回って身に着けていた英雄派の制服も端々から破れていく。

地に届きそうなほどに太く長くなった4本の腕を背から生やす怪人。

もはや人の身では無くなっていた。

 

『これが『業魔人(カオス・ドライブ)』。そして、この状態になるためのドーピング剤を『魔人化(カオス・ブレイク)』と僕らは呼称している。それぞれ覇龍と禁手から名称の一部を拝借してるんだよ』

 

声すらも変調したジークフリートはそう言い放つ。

 

「素晴らしい。人間とは、時に天使や悪魔以上のモノを創り出してしまう。やはり、俺は人間こそが可能性の塊だと思えてならないよ」

 

魔人と化したジークフリートを見てアジュカがそう漏らす。

 

『ふっ…』

 

ジークフリートの背中から生えた4本の変異した腕がしなる。

 

「ッ!!」

 

木場は攻撃を視認する前に動き、ジークフリートの4本の魔剣での攻撃を回避していた。

見れば、先ほどまで木場のいた場所には渦巻き状の鋭いオーラが刺さり、氷柱が生え、地が抉れ、次元の裂け目まで見えていた。

 

「(魔剣同士の相乗攻撃!)」

 

一瞬でも判断が遅れていれば、木場の五体は易々と引き裂かれていたかもしれない。

 

「ッ!?」

 

木場は前方から感じる異様な悪寒を感じ取り、持っていた剣を聖魔剣から聖剣に変化させ、龍騎士団の甲冑を1体創り出すと、それを足場にして空中に跳ぶ。

 

ズガアアアア!!

 

その刹那、極太で凄まじいオーラの奔流が通り過ぎていき、木場の創り出した龍騎士団の甲冑を跡形もなく消し去っていた。

見れば、ジークフリートがグラムを振るった後であった。

 

「(これがグラム…! なんて威力なんだ…これじゃあ、まるで溜め無しのデュランダルと相対してる気分だ…!)」

 

回避した木場だが、グラムの攻撃的なオーラの余波で体にダメージを受けていた。

 

それから数度の打ち合い…と言えるかも怪しい一方的なジークフリートの攻撃を回避しながら木場は龍殺しの聖魔剣を手に奮戦していた。

そして、ジークフリートが全ての魔剣を使った攻撃を仕掛けた時に出来た僅かな隙を突き、足の爪先に展開した龍殺しの聖魔剣の刃をジークフリートの脇腹へと蹴り抜こうとしたが…

 

パリィンッ!!

 

儚い音を立てて聖魔剣の刃は砕け散ってしまう。

 

『僕の強化された肉体は君の龍殺しの聖魔剣を超えていたようだね』

 

その結果を見て笑ったジークフリートは…

 

ガシッ!

 

光の剣を無くした左手で木場の足を掴み上げ…

 

ブンッ!!

 

力任せに地面に叩き付けていた。

 

ブォンッ!!

 

さらに追撃とばかりにディルヴィングの一撃によって、倒れた木場へと強い衝撃が走り、その勢いでクレーターが出来上がる。

 

「がぁっ!?」

 

ジークフリートの連続攻撃に木場は血反吐を吐き、意識が飛びそうになるものの…

 

「……ッ!!」

 

何とか立ち上がって態勢を立て直してから再びジークフリートに聖魔剣を振るう。

 

ガキィンッ!!

 

その一撃を魔剣をクロスさせてジークフリートは易々と防ぐ。

 

『防御の薄い君では、さっきの連撃はかなり効いたと思うけど?』

 

そう言ってドンッと木場の体を押し返すと同時に…

 

キィンッ!!

 

ダインスレイブの凍結攻撃によって両足の動きを封じられてしまう。

 

「(しまった!?)」

 

すぐさま炎の聖魔剣で氷を溶かそうとするが…

 

ズシャアアッ!!

 

地面から新たに現れた氷柱によって両足を貫く。

さらに動けなくなった木場に容赦なく魔剣の一撃が振るわれようとしていた。

 

「ッ!?」

 

木場は複数の聖魔剣を束にして盾の様にして防ごうとするが…

 

バキバキバキィンッ!!

ザシュッ!!

 

無残にも聖魔剣は砕かれ、左腕を肩口から斬り落とされてしまった。

 

「ッ!!?」

 

それでも足の氷を炎の聖魔剣で取り除いて後退する。

そして、聖魔剣の属性を炎から氷に変化させて傷口を塞いで応急処置を施す。

 

「祐斗…!」

 

沈痛な面持ちでリアスが木場の名を叫ぶ。

その両手に持つイッセーの駒を握り締めて…。

 

「(部長…気持ちはわかりますが、イッセー君に頼ろうとしても、彼はここには来られないんですよ?)」

 

リアスの動揺はそのまま眷属にも影響する。

朱乃も小猫もハラハラした様子で木場を見るばかり…。

 

「木場さんまで…いや、そんなのはいや…」

 

アーシアは木場を回復させようとオーラを出そうとしてもいつもの出力が出ていない。

他にもリアスや朱乃の魔力攻撃は弱々しくジークフリートの一振りで掻き消えてしまい、小猫の闘気もレイヴェルの炎の翼も力がかげっている。

 

「(僕が皆を守らないと…イッセー君の代わりに戦わないと…!)」

 

そう思いながら木場はルヴァル・フェニックス氏から貰い受けたフェニックスの涙を一つ取り出して左肩口に振り掛ける。

傷口は塞がったものの、左腕の再生までには至らなかった。

 

『酷いな。これが今のグレモリー眷属か。赤龍帝を失っただけでこうも脆くなるとは…』

 

つまらなさそうにジークフリートは呟く。

 

『兵藤 一誠は無駄死にをしたのさ。出涸らしとなったオーフィスを救うために狼と共にあの空間に残り、シャルバを葬ったんだろう? シャルバが生きていれば、今頃は僕達や冥界に対して宣戦布告しているだろうからね。でも、あのまま兵藤 一誠や狼が帰還していれば体勢を立て直して再出撃出来たはずだ。オーフィスはともかくシャルバはあとで確実に屠れたはずだよ? 自分の後先考えないで行動するのは赤龍帝の悪いところだった。狼まで消えてくれたのは計算外の幸運だったよ。彼もまた危険な因子だったからね。シャルバの奸計によってか、それ以外の要因かは知らないが…これはなかなか大きく嬉しい誤算だった』

 

そんなジークフリートの台詞を聞き…

 

「………ッ!!!」

 

木場の中からどす黒い感情が湧き上がってくる。

 

「オオオオオオオオオオオオオッ!!!」

 

普段の冷静な木場からは考えられないような声量での叫びだった。

 

「……まだだ…!」

 

木場は右手に聖魔剣を創り出しながらジークフリートへと歩を近づける。

 

「まだ僕は戦える! あの男のように僕も立ち上がらないといけないッ! グレモリー眷属の兵藤 一誠はどんな時も、どんな相手にも立ち向かっていったのだから!!」

 

そう叫びながら木場はジークフリートを睨む。

 

「赤龍帝は…彼はあなたのような奴が貶していい男なんかじゃない! 僕の親友を…バカにするなッ!!」

 

涙混じりの咆哮を上げる木場。

 

『無駄だッ! 赤龍帝のように立とうとも、君では限界がある! ただの人からの転生者では、才能がいくらあろうが…君の肉体に受けたダメージが君自身の足枷になる!!』

 

そう叫び返すジークフリートに木場が再び挑もうとした時だった…。

 

カアアアアッ!!

 

「イッセーの駒が…?!」

 

リアスの持っていたイッセーの駒が紅く輝き、その一つが木場の元へと飛来し、更なる光量を発したかと思えば…

 

パァンッ!

 

光が弾けて一振りの聖剣が姿を現す。

 

「イッセー君の駒が…アスカロンに…?」

 

困惑する木場の耳に…

 

『行こうぜ、ダチ公』

 

幻聴のようなイッセーの声が聞こえた。

 

「…ッ!!」

 

涙を溢れさせ、顔がぐちゃぐちゃになりながらも木場は聖魔剣を消してアスカロンを握る。

 

「あぁ、行こうよ! イッセー君! 君となら、僕はどこまでも強くなれる! どんな相手だろうと、斬り刻める!!」

 

不思議と活力に溢れ出した木場は一気に駆け出し、ジークフリートに斬り掛かる。

 

ギィィンッ!!!

 

『ッッ!!? ば、バカな?! 立つというのか!? 血をあれだけ失えば自慢の足も動かないはず!!』

 

先程までの剣撃とは違う重さを感じ、ジークフリートは驚愕の声を漏らす。

 

「行けってさ。イッセー君がこの聖剣を通して無茶を言うんだ。なら、行かないとね!!」

 

アスカロンから放たれる一撃にジークフリートは苦悶の表情を浮かべる。

 

『ぐぉぉっ!? なんだ、その聖剣から感じる力は…!?』

 

グラムに対応出来ても、イッセーの持っていた龍殺しの聖剣『アスカロン』の力には対応出来ない様子だった。

 

その時だった。

ジークフリートが持つグラムに変化が起き始めた。

突然、輝き始めたかと思えば、その輝きを木場へと向けていたのだ。

 

ここに来て、グラムは己の主の再選定を行ったのだ。

木場はグラムを受け入れた。

その声に応じるようにしてグラムはジークフリートの手から木場の元へと飛来していた。

 

『こ、こんなことが…!? 赤龍帝は…駒だけでも戦うというのか!? この男を奮い立たせるのか!!?』

 

その状況にジークフリートは絶叫していた。

 

そして、イッセーの駒は他の皆にも手をしており、それぞれにイッセーの声が聞こえていたようだった。

アーシア、小猫、レイヴェルは木場の体を支え、斬り裂かれた左腕を接着させようとし、リアスや朱乃もまた立ち上がっていた。

朱乃の新能力『堕天使化』とリアスの消滅魔力により、ジークフリートは黒焦げとなって背中から生える4本の腕もまた消滅していった。

トドメに木場がアスカロンとグラムを突き立ててジークフリートとの決着は着いた。

 

『この僕…負ける…?』

 

未だ信じられないような…

 

『兵藤 一誠は殺しても戦い続ける、か…!!』

 

そのような言葉を発し…

 

『やっぱり…あの戦士育成機関で育った教会の戦士は…まともな生き方をしないのさ…』

 

ジークフリートの体は崩れ去っていった。

 

 

その後、特異な現象を引き起こしたイッセーの駒をアジュカに調べてもらったところ。

八つの駒の内、四つの駒が価値にバラつきがあるものの『変異の駒』と化していたという。

さらに先程の現象もイッセーの想いがダイレクトに伝わったからではないかとアジュカは言う。

 

そして、一番聞きたかった言葉…。

イッセーの生存の可能性は…どんな状態になっているかは不明だが、かなりの確率で高いとアジュカは分析してた。

イッセーの魂は赤龍帝の籠手と共にあり、駒もその機能が死んでおらず、彼限定にだが駒も戻せるという事実が判明した。

その情報を聞き、グレモリー眷属とレイヴェルは歓喜していた。

 

そして、もう一つ。

 

「赤龍帝ドライグが帰還すれば狼君の行方も分かるかもしれない。彼の意識は先の出来事の全てを見ているはずだからね」

 

アジュカはそうも言っていた。

 

………

……

 

~冥界~

 

豪獣鬼1体の侵攻ルート上にその男達はいた。

 

「よぉ、紅牙。久し振りだな」

 

「秀一郎か」

 

腕組みして仁王立ちする紅牙の横に秀一郎が姿を現す。

 

「あれから調子の方はど~よ?」

 

久し振りに会う戦友に話し掛ける。

 

「順調、なのかな……あれから故郷にも行って話し合いの場が設けられた」

 

「そうかそうか。そりゃ良かった」

 

紅牙の様子が予想よりも穏やかなのを見てうんうんと頷く秀一郎。

 

「お前の方こそ、どうしていたんだ? あれから一向に連絡もなかったが…」

 

最後に会ったのは病院以来だったか、と紅牙は呟いていた。

 

「ん~? いやはや、悪魔の皆さんも人使いが荒くてな。各地を転々としながら元所属テロ組織の壊滅に尽力してましたよ? 孫悟空の爺さんとも共闘したっけかな。ありゃ出る幕がなくなるってもんだぜ」

 

やれやれといった具合に秀一郎は肩を竦めていた。

 

「そうか」

 

「反応薄いな…」

 

紅牙の反応の薄さに秀一郎は呆れる。

 

が…

 

「聞いたぜ、あの狼小僧が行方不明なんだって?」

 

すぐに佇まいを直すと、紅牙にそう切り出した。

 

「あぁ、そうらしいな…」

 

「そうらしいな、って…心配とかじゃねぇのかよ?」

 

意外にも淡白な反応に秀一郎は驚く。

 

「あいつは大切な者を守るために戦うと言っていた。この程度で行方をくらますような男じゃない。第一…」

 

ゴゴゴゴゴ…!!!

 

紅牙の背後より炎が立ち昇る。

 

「シアを悲しませるようなことをしたら…たとえ恩人だろうと容赦はせん…!」

 

「おおぅ…シスコンみたいなことを…(こいつ、こんな奴だったっけか?)」

 

人は変わるもんだな、と秀一郎はしみじみ思ったとか…。

 

「ともかく…あいつは俺の義弟になるかもしれない男だ。何が起きようとも帰ってもらわなければ困る」

 

「義弟、ね。狼小僧も大変な兄貴を持ったもんだ」

 

そう言いながらも秀一郎はシュティーゲルを起動させていた。

 

「そういや、聞いたぜ。狼小僧と同じく眷属の駒ってのを魔王から貰ったとか」

 

「俺は眷属など作らん予定だったんだがな…」

 

紅牙も秀一郎がデバイスを起動させたのと同時に冥王と化していた。

 

「年下の女を2人も眷属にしたんだって?」

 

ニヤニヤと笑いながら秀一郎は尋ねる。

 

「不可抗力だ。こうなった以上、貴様にも駒を渡してやろうか?」

 

イラついた表情で秀一郎を睨みつつ、紅牙は戦車の駒を取り出してみせる。

 

「また、こき使う気じゃねぇだろうな?」

 

「そうしても一向に構わんが?」

 

「やれやれ…俺の雇い主ってのはどいつもこいつも人使いが荒くてしょうがねぇや…」

 

そう言いながら秀一郎が戦車の駒を分捕(ぶんど)るように受け取る。

 

「交渉成立だ」

 

「これが交渉か?」

 

そんなやり取りをしていると…

 

『ギャアアアッ!!』

 

アンチモンスターの群れが押し寄せてきた。

 

「「失せろ!!」」

 

その言葉と同時に…

 

「エレキトリック・ハマーッ!!!」

 

「ブレイジング・フレアッ!!!」

 

秀一郎の両腕から稲妻が周囲一帯に迸り、紅牙の背後から巨大な火球が降り注ぐ。

それぞれの攻撃がアンチモンスター群へと放たれていた。

 

「背中は預けるぞ、秀一郎!」

 

「お互いにな!!」

 

そう言いながら互いに背中合わせでアンチモンスター群を相手にしていた。

どちらも広域破壊の能力に優れていたため、瞬く間に豪獣鬼の生み出すアンチモンスター群を殲滅していったのだった。

元禍の団の構成員だった2人が、今は冥界のために戦っている。

 

「(紅神…早く戻ってこい。貴様を待つ者がいるのだからな…)」

 

紅牙は戦いながら忍の帰還を待っていた。

 

 

生存がわかったイッセーと、未だ行方知れずということになっている謎の龍に喰われた忍。

果たして、2人の今の状態とは…?

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