魔導騎士物語~覇王と称された狼~   作:伊達 翼

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ちょっとオリジナル(かな?)なゲームを考えてみました。

果たしてこれが吉と出るか、凶と出るか……わからない。
けど、作ってしまったから仕方ない。

内容は本編にも書いてありますが…。
ま、簡単に言えば、要は点取り合戦だと思ってください。


第六十八話『テイク・ア・ポイント』

来たる次の休日。

グレモリー眷属vs紅神眷属のゲームが開催されることとなった。

 

冥界、場所は魔王領にある悪魔側の首都・リリス。

大部分は未だ復興作業中ではあるものの、レーティングゲームを行うためのドームを優先的に修復したので何の問題もない。

そのドームに隣接する高層高級ホテルにグレモリー眷属と紅神眷属は入っていた。

無論、別々の控室でそれぞれ最終調整を行ったり、精神を統一させたり、気分を和ませたりと様々なリラックス方法で過ごしていた。

 

………

……

 

・グレモリー眷属の場合

 

「いよいよ、忍達とのゲームか…」

 

軽いストレッチをし終えたイッセーが独りごちるように呟く。

 

「一時は中止も視野に入ってたそうだけど…イッセー君も忍君も無事に帰ってきたから実現出来たカードだよね」

 

そんなイッセーの言葉に木場がそう伝える。

 

「イッセー達が中級悪魔になって最初の相手が智鶴達だなんて…上役もやってくれるものね」

 

紅茶を一口飲んでからリアスが愚痴るように呟く。

 

「それにこの一戦は大事な意味もありますしね」

 

「冥族との和解を大々的にアピールする…でしたっけ?」

 

ロスヴァイセの一言にイッセーがそう聞き返すと…

 

「えぇ、そうよ。この一戦は冥族初の眷属持ちで、辺境伯に任命された紅神君の実力を測りつつ冥族との和解を悪魔達に伝える大事な一戦なのよ」

 

リアスがそう答えていた。

 

「難しいことはともかく、紅神達と戦えるのは少し楽しみではあるな」

 

ゼノヴィアのその言葉に何人かの眷属達は頷いていた。

 

「いつもは味方だったからな。こうして戦えるとなるとやっぱ楽しみだよな」

 

「手の内はお互いに明らかな部分もあるけど、向こうには新しく入った眷属もいるみたいだし」

 

「そこが不安要素ですわね」

 

「……それに今回もきっと特殊ルールがあると思いますし…」

 

「それによってはどちらも有利不利に繋がりますね」

 

イッセー、木場、朱乃、小猫、ロスヴァイセの順にそれぞれの見解を示す。

 

「ともかく、今回の一戦は冥族側の他にも様々なところに中継されるそうだから無様な姿は見せられないわ。サイラオーグを倒した手前、若手ナンバーワンになったんだもの。今回も勝ちに行くわよ!」

 

「「「「はい、部長!」」」」

 

ゲーム前からグレモリー眷属は意気込んでいた。

 

………

……

 

・紅神眷属の場合

 

「ゲーム観戦は何度か経験があるけど…自分がいざ舞台に立つとなると流石に緊張するな…」

 

これまではゲームを見てきた側だったが、今日はゲームをする側に回ったことで忍も少し落ち着きがなかった。

 

「各勢力との和平や冥族と和解して初めて行われる異種ゲームですからね。冥界中が注目してると言っても過言じゃありません」

 

妙にそわそわしながらシアがそんなことを言う。

 

「それに堕天使側や天界、各勢力にも中継されるそうじゃない」

 

カーネリアも楽しそうに言う。

 

「先輩達の所にも中継されてんだよな…なんか気恥ずかしいぜ…」

 

クリスは二課のメンツに見られることを意識していた。

 

「こっちも似たようなもんよ。なんで隊長はこんなことに興味を持つんだか…」

 

クリスと同様に朝陽もうんざりした様子だった。

 

「フィー、変じゃない?」

 

「……大丈夫」

 

フィクシス魔法学園の制服姿を確認しながらラトがシルフィーに確認を取っていた。

 

「まったく、こういう時だというのに…マイペースな」

 

そう言うラピスだが、少し手が震えているように見えた。

 

「ティラミス。アンタの方も大丈夫でしょうね?」

 

「は、はい。デバイスのチェックは済ませましたし…朝陽さん達のおかげで少しは自信が付いた気がします」

 

「そ、ならいいけど…」

 

うんざりした様子の朝陽だったが、同僚の心配もしていたようだ。

 

「リアスちゃんと朱乃ちゃんと戦う、か…」

 

「智鶴、辛いか?」

 

「ううん、大丈夫。リアスちゃんには夢があるもの。それにはちゃんと応えなくちゃね」

 

「そうだな…」

 

忍は智鶴と言葉を交わしてから…

 

「この一戦。俺は冥王として戦いの場に立つ。たとえ、誰かがやられそうになっても俺は動かないつもりだ。ゲームだからと手を抜くつもりはないが、それでも俺は皆を信じる。相手はグレモリー眷属。無傷で勝とうなどとおこがましい愚は犯さない。相対するなら全力で…相手を噛み砕く。それが紅神眷属だと、世間に知らしめてやろう!」

 

「「「「はい」」」」

 

「「「おう」」」

 

忍の号令に一同は呼応する。

 

「……………」

 

やはり、萌莉以外だが…

 

「萌莉…すまないが、君もゲームの現場に出てもらわないとならない。戦いが嫌いなのは知っているが…耐えてくれないか?」

 

「は、ぃ……わかって、ます…から…」

 

萌莉は悲しそうな笑みを浮かべて答えていた。

 

………

……

 

そして…決戦の夜。

 

『さぁ、やって参りました! 冥界初の異種対抗ゲーム! 今夜の実況は前回のグレモリー眷属vsバアル眷属でもお世話になった私、ナウド・ガミジンがお送りさせていただきます!』

 

ドーム内の中央に設置された巨大な四面型モニターにイヤホンマイクを耳に着けた派手な格好のナウドが姿を現す。

 

『今回の審判役は誰もが知る最強の女王! グレイフィア・ルキフグス様だ!』

 

いつものメイド服ではなく、正装したグレイフィアが現れると会場の観客から歓声が沸く。

 

『我が主、サーゼクス・ルシファー様の名のもとに、今回はルシファー眷属の女王として審判役を引き受けました。悪魔側のグレモリー眷属、並びに冥王側の紅神眷属の試合を見守らせていただきます』

 

それから画面が変わり…

 

『そして、今回も解説役として特別ゲスト! 堕天使"元"総督、アザゼル様に来ていただきました!』

 

『元を強調すんな、元を! まぁ、事実なんだけどな』

 

前回のゲームで解説役を務めたアザゼルも特別に招待されていた。

 

『さて、グレモリー眷属に関しましては前回のゲームであのサイラオーグ・バアル率いるバアル眷属を撃破したことで実質的に若手ナンバーワンの座を手にしたと言ってもいいでしょう! そのグレモリー眷属が今回相手にするのは…なんと、同じ冥界に住む種族、冥族からの初めて出来た眷属チーム! その名も紅神眷属! 資料によりますとアジュカ・ベルゼブブ様直々に新たな駒を渡されたそうですが…』

 

『らしいですね。私も直接、現場を見た訳ではないですが、現ベルゼブブが冥族用に調整し直した駒を渡したのは間違いありません』

 

ナウドの言葉にアザゼルが答える。

 

『アザゼル元総督も知る紅神眷属の実力とは一体…!? さぁ、いよいよ選手の入場です! まず、先に現れるのは…!』

 

東ゲートより、グレモリー眷属が姿を現す。

 

『若手ナンバーワンをの座を手にしたグレモリー眷属だぁぁ!!』

 

「「「「「おおおおおおおおお!!!」」」」」

 

グレモリー眷属の姿を見て観客から大歓声が沸く。

グレモリー眷属の衣装はいつもの駒王学園の制服や自前の戦闘服、シスター服とそれなりに統一感がある。

 

「アウェー感が半端なさそうだ…」

 

その様子を見て西ゲート内で待機していた忍がぼやきつつ…

 

「さて、行きますか。向こうや観客を待たせても仕方ないし…」

 

忍を先頭に紅神眷属も進む。

 

『さぁ、続いて現れたのは紅神眷属! 王以外は女性という構成だが、その意図は王の趣味か、それとも別の意図があるのか!』

 

忍と智鶴、萌莉はグレモリー眷属と同様に駒王学園の制服姿、フェイトと朝陽、ティラミスは管理局のそれぞれの制服姿、ラトとシルフィー、ラピスはフィクシス魔法学園の制服姿、クリスはリディアンの制服姿、残りはそれぞれの私服といった具合で見事にバラバラである。

 

『また、紅神眷属の王と女王はおっぱいドラゴンとスイッチ姫と同じ学園の出身で友人同士とのこと! それがゲームにどう影響するのか!』

 

『友人同士の対戦ではあるからお互いの手の内は知っているだろう。そこがゲームの行方を左右するかもしれませんなぁ』

 

アザゼルが面白そうに呟く。

 

『さて、今回もフェニックスの涙について最初に説明をします。以前にも申し上げましたが、禍の団によるテロの連続でフェニックスの涙の需要はまたまた跳ね上がっております。入手するのも困難な状況ではあります。が!!』

 

中央モニターに二瓶のフェニックスの涙が映し出される。

 

『今回もフェニックス家現当主のご厚意とグレモリーを支持される皆さまや各勢力のお偉方のご要望もあって、なんとか両陣営に一つずつのフェニックスの涙が支給されることになりました!』

 

「「「わああああ!!!」」」

 

その知らせに観客が沸く。

 

「(フェニックスの涙か。使うのは初めてだな…)」

 

紅神眷属にとってフェニックスの涙を使うのは地味に初めてだったりする。

 

『今回もまた特殊ルールがございます!』

 

「初参戦で特殊ルールからとは…」

 

ナウドから特殊ルールの説明が始まる。

 

『今回のゲームもまた短期決戦(ブリッツ)を想定したものとなっております。しかし、今回は前回の試合形式ではなく、眷属全員がフィールドを駆け回るタイプのものです! よって制限時間を設けさせていただきます!』

 

「(制限時間あり、か…シトリー戦の時みたいなものか?)」

 

ナウドの説明に忍はシトリー戦の事を思い出す。

 

『そして、気になるゲーム内容の特殊ルールですが、『テイク・ア・ポイント』です!』

 

「「(テイク・ア・ポイント?)」」

 

忍とイッセーが同じことを思い、紅神眷属のほとんども頭に?マークを浮かべていた。

 

『ご存じない方のために"テイク・ア・ポイント"をご説明します。以前の試合でも駒の価値を参照したと思いますが、今回のゲームもまた駒の価値を参照いたします!』

 

中央モニターにそれぞれの駒の価値が映し出される。

 

『今回のゲーム、"テイク・ア・ポイント"はその名の通り、相手の眷属を"撃破(テイク)"することで得点を加算していく方式となっております。つまり、相手側の女王を撃破したらその駒価値である9が得点となる訳です』

 

駒を撃破した側のチームの上に得点が表示される。

 

『ここでゲームの肝になるのが、兵士の駒を持つ方の価値です。兵士の駒は相手本陣まで到達すれば昇格することが可能となります。よってその価値は変動することになります。例えば、兵士の方が相手本陣で戦車に昇格し、撃破された場合はその時点で昇格した駒の価値…つまり、5が得点として加算されることになります。また、兵士の駒を複数消費した方の場合は、"消費した兵士の駒×各駒の価値"の数値になります』

 

兵士の駒から騎士、僧侶、戦車、女王に昇格した場合に撃破したなら、その時に兵士の駒から昇格した駒の価値に比例して得点になる。

 

『また、基本ルール通り、王が撃破された場合は得点が勝っていたとしても、その眷属の敗北が確定しますのでご注意ください』

 

王が撃破されればその時点で負けになる。

 

『以上が特殊ルール"テイク・ア・ポイント"となります!』

 

その説明を聞き、両眷属の王は表情を険しくしていた。

 

『そして、今回されたバトルフィールドは…!!』

 

中央モニターにバトルフィールドが映し出される。

そこは…

 

『広大な自然を舞台にしたバトルフィールドです! それぞれの本陣はグレモリー眷属が東側の丘地帯、紅神眷属が西側の渓谷地帯となります!』

 

中央に巨大な湖があり、その東側には小高い丘があり、逆の西側には少し入り組んだ渓谷があった。

さらに丘側から渓谷側に流れる河川が湖を経由して存在したり、湖の周りを森林が囲っていたり、北側には山岳地帯が点在したり、南側には砂漠地帯があったりとバラエティに富んだバトルフィールドとなっている。

ちなみに天候は晴れ。

 

『ゲーム開始は30分後! 両眷属はそれぞれの本陣にて作戦会議を行ってください! また、作戦会議中に相手側チームとの接触は禁止となりますのでご注意を…。それでは両眷属、転送!!』

 

両眷属の足元に転移用魔法陣が展開され、それぞれの自陣へと転送される。

それぞれの作戦会議が始まる。

 

………

……

 

・東陣地、グレモリー眷属

 

「丘の上。守りやすく攻めにくい陣地ね」

 

自陣を見ながらリアスが呟く。

 

「ですが、向こうの渓谷も攻める側からしたら少々厄介ですわね」

 

朱乃は相手側の陣地のことを口に出していた。

 

「お互いに守りやすく攻めにくい点では同じ、かしらね」

 

「しかし、人数的には向こうの方が勝っています。防衛に徹せられたら少し厳しいかもしれません」

 

リアスの言葉に木場が意見を出す。

 

「そうね…。それに今回は制限時間内に相手よりも多くの眷属を倒して得点を稼ぐか、紅神君を倒さないとならないものね」

 

「フェニックスの涙の使用は…恐らくサイラオーグ・バアルと同じく最大戦力でもある忍君に使われるでしょうね」

 

リアス達は回復要員がいない紅神眷属はフェニックスの涙を忍が使うと予想していた。

 

「こちらにはアーシアちゃんがいますからフェニックスの涙の必要性は少し低いですわね」

 

「でもアーシアを前線には出せないから誰かしらに持ってもらった方がいいわよね」

 

こちらは前線に出るメンバーの誰かにフェニックスの涙を持たせるようだ。

 

「攻撃に出てもらうメンバーだけど…まずはイッセー、祐斗、ゼノヴィア。そのサポートに小猫とギャスパーの5人に任せようかしら」

 

「高得点の対象であるイッセー君を相手が狙う可能性が高いですわよ?」

 

リアスの采配に朱乃が意見を出す。

 

「だからこそよ。イッセーを囮に祐斗とゼノヴィアが北と南から相手の陣営に斬り込むの」

 

「囮、ですか?」

 

囮と言われたイッセーが聞き返す。

 

「今回、イッセーは技を一部禁じられているから…でも、その他のトリアイナや真紅の鎧に関しては音沙汰が無かったのよ。つまり、向こうもその能力については容認してるはず。だからイッセーは単騎で真正面から相手を引き付けてほしいのよ。可能なら得点を狙ってもいいわ」

 

「了解です!」

 

「小猫は祐斗のサポートと援護を、ギャスパーはゼノヴィアのサポートをそれぞれお願いね」

 

「……わかりました」

 

「は、はいぃ!」

 

攻撃陣の采配は決まった。

 

「なら残った私達は防衛に徹すればいいのですね?」

 

ロスヴァイセが確認するように発言する。

 

「えぇ、朱乃は空から、ロスヴァイセは丘の麓を固めてちょうだい。アーシアは私と一緒にいてもらうわね。あとは戦況に応じて指示を出していくわ」

 

「「「はい」」」

 

グレモリー眷属の基本方針は決まり、あとは時間を待つのみとなった。

 

………

……

 

・西陣地、紅神眷属

 

「さてと…」

 

忍は少し考えを纏めてから作戦を決めていた。

 

「まずは吹雪に中央の湖を制してもらおうかな?」

 

「湖を?」

 

「あぁ、あんな大量の水場…俺達が活用しないでどうするよ?」

 

「まぁ、そうね」

 

忍の意図が何となくわかって吹雪も頷く。

 

「吹雪と一緒にラピスも行ってもらう。護衛はカーネリアに任せる」

 

「あら? 私なんかでいいの?」

 

空中に漂うカーネリアがそんなことを聞く。

 

「この中で唯一悪魔に対して弱点攻撃出来るのは光を使えるカーネリアだけだからな。誰が中央から来てもいいようにって対策だ。吹雪とラピスと協力して事に当たってほしい」

 

「私は単身の方が気が楽なのに…」

 

「大物が釣れたら、殺さない程度に遊んでいいから…」

 

「まぁ、それならいいかしらね」

 

そんなカーネリアの答えに忍も内心で溜息を吐きつつ…

 

「次に北側から攻める人材だが、朝陽を中心にラトとシルフィー、シアがサポートに入ってくれ」

 

「あたしにお守させる気?」

 

その人選に朝陽が口を尖らせる。

 

「お守って何よ!」

 

「……心外」

 

「朝陽さんは突っ込み過ぎるから…私達でフォローする。ということでいいんですよね?」

 

朝陽の物言いにラトとシルフィーが抗議し、シアは忍に確認を取っていた。

 

「あぁ、頼む。朝陽を1人で行かせるのは心配なだけなんだよ」

 

シアの確認に忍も頷く。

 

「南側から攻めるのはフェイトを中心に暗七とティラミスがフォローしてくれ」

 

「私が中心になって?」

 

意外な人選にフェイト自身が驚く。

 

「あぁ、短期決戦が念頭に置かれている以上、スピードも重視するからな。奇襲要員として機能してもらいたいんだ」

 

「忍君がそう言うんなら…やってみるよ」

 

「そのフォローに私と新米ちゃんね…」

 

「よ、よろしくお願いします…!」

 

これで攻撃要員はほぼ決まったと言える。

 

「残った智鶴、萌莉、クリス、エルメスは防衛に回ってもらう。戦況によっては打って出るかもしれないから全員念話には注意を払ってくれ」

 

「「はい」」

 

「おう」

 

「は、い…」

 

こうして紅神眷属も基本方針が決まり、残りの時間は出発の準備に取り掛かっていた。

 

………

……

 

~30分後~

 

『作戦時間の終了です。これよりゲームを開始してください。制限時間は三時間です』

 

グレイフィアによる開始の合図と共に各眷属が動き出す。

三時間という時間制限の中、ゲームが始まった。

 

グレモリー眷属、紅神眷属共に基本方針通りにまずは動く。

 

北側を進む木場と小猫、朝陽とシア、ラト、シルフィー。

 

中央を進むイッセー、吹雪とラピス、カーネリア。

 

南側を進むゼノヴィアとギャスパー、フェイトとティラミス、暗七。

 

残りのメンバーは防衛と称して体力も温存している。

 

『さぁ、始まりました! 冥界初の異種対抗ゲーム! どちらもまずは小手調べなのか、三方から進んでいますね』

 

実況のナウドが解説のアザゼルに振る。

 

『そうだな。どちらも短期決戦と聞いて同じような戦法を使ってきたように見えるが…問題はここからだ。それぞれ相対したチーム同士がどう戦果を挙げるか…』

 

中央の四方モニターの内、一つが実況と解説、残りの三つが進行している三チームをそれぞれ映し出していた。

 

………

……

 

・北側

 

「っ……祐斗先輩。来ます」

 

いち早く気配に気づいた小猫が木場に報告する。

 

「読まれた? それとも…」

 

木場と小猫が立ち止まると、反対側から…

 

「神速の貴公子に猫娘か…」

 

「厄介な方達に出会いましたね」

 

「えっと…イケメン君が騎士で、ちっこい娘が戦車だっけ?」

 

「……うん、合ってる」

 

セイバーを起動させた朝陽、シア、ラト、シルフィーの4人が現れる。

 

「……ちっこい…」

 

ラトのちっこい発言に小猫から殺気が湧き立つ。

 

「時空管理局の騎士…一度本気で手合せしてみたいと思ってたんだ」

 

「言ってくれるじゃない。そっちも騎士を名乗ってるなら決闘でもする?」

 

木場と朝陽の会話に…

 

「朝陽さん!?」

 

シアが止めようとするが…

 

「邪魔すんじゃないわよ? ここでこいつを仕留められるなら今後の試合運びが楽になる。それに騎士なら一対一の方がやりやすいのよ」

 

「それには同意しますよ。同じ騎士の駒を賜った者同士。剣で勝負しましょう」

 

騎士同士の決闘が開始されようとしていた。

 

「小猫ちゃん、悪いけど…」

 

「……わかってます。私も少し向こうの兵士の人と拳を交えようと思ってますから…」

 

よっぽど気に障ったのか、ラトへの敵意が増していた。

 

「冷静にね?」

 

「……はい」

 

木場の忠告に小猫はラトに狙いを移す。

 

「あたしの相手はちっこい猫ちゃんか。ま、何とかなるでしょ」

 

楽観的なラトに…

 

「油断したらダメですよ? 小猫さんはラトさんよりも実戦経験があります。そういう意味では気の緩みが敗北に繋がります」

 

シアがラトを諫めていた。

 

「うっ…シアちゃんも手厳しいなぁ…」

 

ラトはラトで頭を掻いて困った表情をしていた。

 

「……援護するから…」

 

北側では騎士vs騎士、戦車vs兵士コンビの戦いが開始されようとしていた。

 

………

……

 

・南側

 

「ぜ、ゼノヴィア先輩!」

 

「誰か来たか?」

 

ギャスパーの警告にゼノヴィアがエクス・デュランダルを構える。

 

「あなた達は…」

 

「脳筋のゼノヴィアと女装趣味のギャスパーじゃない」

 

バルディッシュを起動させたフェイトと暗七に加え…

 

「そ、その言い方もどうかと思いますが…」

 

新デバイス『ヴェルブラスター』を起動させたティラミスも後から来ていた。

ちなみに服装(バリアジャケット)は、上に薄い翠色のノースリーブを着て、下に緑色のロングスカートを穿き、その上からスカートと同じ色の緑色の長袖のジャケットを羽織り、両足に黒のローヒールを履いた姿となる。

 

「ギャスパー、前衛は私に任せてお前は後衛に徹しろ」

 

「は、はい!」

 

ギャスパーはコウモリへと変身すると、ゼノヴィアの周りに待機する。

 

「ニンニクでも持ってくればよかったかしら?」

 

そう言って暗七は両腕を異形の腕に変化させる。

 

「油断は禁物です。特にギャスパー君は…」

 

バアル戦で見せたガッツ。

それを思い出してフェイトは警戒を強める。

 

「そうだったわね。あの赤龍帝に感化された後輩君だったわね」

 

その時の光景を思い出し、暗七も警戒を強めた。

 

「私も以前のような失態はしないつもりだ」

 

そう言ってゼノヴィアはエクス・デュランダルを握る手に力を込めていた。

 

「エクス・デュランダルの能力は厄介だけど…ゼノヴィアはまだ完全には使いこなしてない。そこが狙いよ」

 

「ふんっ…やられる前にパワーで押し切るだけだ!」

 

「だから脳筋なのよ…」

 

「ティラミスさんは無理せず、後方支援に徹して。前衛は私と暗七さんで何とかするから」

 

「は、はい!」

 

南側の対決はコンビネーション対決となりそうだった。

 

………

……

 

・中央

 

湖の沿岸部では…

 

「ふふ、これはこれは大きな獲物は釣れたみたいねぇ~」

 

「よりによって赤龍帝か…」

 

「破廉恥な人ですか…」

 

カーネリアが楽しそうに言うが、吹雪とラピスは険しい顔をしていた。

 

「3人、か…」

 

籠手を出現させたイッセーはその顔触れを見て少し考える。

 

「(よりによって堕天使の姉ちゃんがいるとか…ちょっと相性的にヤバいかも…ここはトリアイナのコンボで早々に決着を着けるべきか? でも、いきなりトリアイナは…後々のことを考えると温存しておきたいしな…)」

 

鎧を装着すれば吹雪とラピスの魔法はほぼ無力化出来るだろう。

カーネリアの光攻撃もある程度なら対抗出来ると予測したイッセーは…

 

「(ともかく、ここは…)禁手化!」

 

赤龍帝の鎧を装着して相手の攻撃に備えることにした。

 

「うふふ…せいぜい楽しませてちょうだいな♪」

 

ギラリと目から怪しい輝きを放ちながらカーネリアは光の槍を作り出す。

 

「カーネリア。一応、聞いとくけど…援護は?」

 

「いらないわ。私は私で楽しませてもらうもの」

 

「だと思ったわ。忍には一応連絡しとくから…」

 

呆れたように吹雪が念話で忍へと連絡を入れる。

 

「いいんですか? そんな勝手なことをしても…」

 

ラピスが吹雪に尋ねる。

 

「いいのよ。赤龍帝が相手なら私やアンタの魔法も効かないだろうし、ここはカーネリアに任せるのがいいのよ。それにあの変態技が使われないだけでもマシな方だし」

 

「へ、変態技…」

 

資料映像を思い出してか、ラピスは自分の胸を隠すように両腕で守る仕草をする。

 

「変態技とは失敬な! アレは少ない魔力の才能を注ぎ込んだ俺なりの成果なんだぞ!」

 

吹雪の言葉が聞こえたのか、イッセーが抗議する。

 

「余計に質が悪い…」

 

「最低です…」

 

そう言って吹雪もラピスも冷ややかな目でイッセーを見ていた。

もっとマシな才能の活かし方はなかったのだろうか?

 

ともかく、中央ではイッセーとカーネリアの戦いが始まろうとしていた。

 

………

……

 

・東側、グレモリー眷属陣地

 

「イッセーを狙わず、三方からの同時攻撃…ってとこかしら?」

 

リアスは通信機で送られてきた情報を基に忍の戦略を考え、予測していた。

 

「奇しくも、どちらも三方からの同時進行になり、それぞれ遭遇戦になった感じね…」

 

「お姉さま。どうしましょうか?」

 

「慌ててはダメよ。こういう時こそ冷静に…遭遇戦になったのならそれに対応すればいいのよ」

 

アーシアの心配そうな声にリアスは考えを巡らす。

 

「とにかく、今はそれぞれの戦況が動くのを待ちましょう。それが序盤戦なら尚更にね…」

 

序盤戦が遭遇戦になった以上、それぞれの戦果報告を待つしかないと考えたリアスは朱乃とロスヴァイセにいつでも動けるように指示を送っていた。

 

………

……

 

・西側、紅神眷属陣地

 

「イッセー君が1人?」

 

吹雪からの念話を聞き、忍は考える。

 

「向こうは中央から進撃するイッセー君を囮に北と南からの挟撃を狙ってたのか?」

 

「もしも、そうなら…木場君やゼノヴィアちゃんがそれぞれ北と南で動いてるのも頷けるわ」

 

「それぞれサポート役もいるようですし…攻撃の要はその二チームだったのでは?」

 

忍の考えに智鶴とエルメスが答える。

 

「とは言え、残りの女王と戦車がいないのはきな臭ぇ…」

 

「あ、アーシア、さんは…リアス、せ、先輩と…い、一緒…?」

 

「まぁ、アーシアさんについてはほぼ間違いなくそうだろうな。姫島先輩とロスヴァイセ先生は…防衛か、温存か…どっちにしろ。まだまだ序盤…短期決戦と言えどもまずはこの遭遇戦を制さないと動かないだろうな…」

 

クリスと萌莉の意見に忍はそう返していた。

 

「(得点的には…北側は3+5対3+3+1+1、中央は8対5+1+1、南側は3+3対3+1+1…。数字的にはやはりこちらが取る点数の方が大きいな。それに戦闘面や個人での質も加味されるからな…)」

 

内心で点数を考えてから空気の匂いを嗅ぐ。

 

「問題は中央のイッセー君と北側の木場君か。鎧を着たイッセー君に吹雪やラピスの魔法は通じ難いだろうし…木場君は魔剣群を使ってきたら朝陽も手を焼くような気がする。シアをつけて正解だったか?」

 

北と中央の戦闘場面を考えていると…

 

「南は?」

 

クリスから質問が来る。

 

「ギャスパー君もそうだけど、ゼノヴィアさんも強化されたエクス・デュランダルを持ってるからな。油断は出来ない。唯一の救いは彼女はパワー傾向が強いからフェイト達なら上手く捌いてくれるだろう。第一、彼らはゲームに関してはこちらよりも経験豊富だし…グレモリー先輩の動き方も気になる…」

 

ふと忍は思った。

これまでのゲームを振り返ると、リアスは必ずと言っていいほど動いてくる、と…。

 

「グレモリー先輩は中盤の最後か、終盤戦で動いてくる可能性が高いと俺は読んでる。その時は智鶴…頼めるか?」

 

「うん。リアスちゃんの相手は私達がするから、しぃ君は…」

 

忍の意図を汲み取り、智鶴は頷いていた。

 

「イッセー君と木場君…仮にその両方が生き残ってたら俺が取りに行く…!」

 

グレモリー眷属のエース(木場)と大黒柱(イッセー)を叩こうと冥王は言う。

 

 

ゲームはまだ始まったばかりにも関わらず、図らずも遭遇戦となった両眷属。

果たして、この序盤戦を制し、中盤戦を有利に進めるのはどちらの眷属か!?

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