遂に始まったグレモリー眷属vs紅神眷属のゲーム。
グレモリー眷属は中央を進ませるイッセーを囮に北と南からの攻撃を想定して動き出す。
紅神眷属は中央の湖を制しに行かせるチームと、北から攻めるチーム、南から奇襲を仕掛けるチームの三チーム体制で動いていた。
しかし、その動きによって奇しくも三方向での遭遇戦になってしまった序盤戦。
その中継は冥界全土だけでなく、天界や妖怪世界、協力体制にある他勢力の他、地球の特異災害対策機動部二課の仮設本部や時空管理局の特務隊執務室にも届けられていた。
………
……
…
・特異災害対策機動部二課の場合
「司令からの呼び出しということで来てみれば…なんですか、これは?」
翼は若干目くじらを立てながら仮設本部ブリッジの正面モニターに映されるレーティングゲームの様子を指差して聞いていた。
「あ、一誠さんだ! なんかカッコいい鎧を着込んでますよ!」
モニターに映るイッセーの禁手化を見て響がはしゃぐ。
「もう、響ってばはしゃぎ過ぎだよ」
何故か、未来も一緒についてきていた。
「これが悪魔世界の少数精鋭制度によって成り立つ仮想戦闘『レーティングゲーム』だ。冥界でも初めてだと言う異種対抗ゲームを見られるように特殊回線を使っている」
弦十郎がそんな説明をする。
「私が聞きたいのはそういうことではなく、何故本部でこのような戦いを娯楽の様に扱うモノを見ているのか、ということです!」
防人としてのプライドか、レーティングゲームにあまり良い印象を持ってなさそうな翼の怒鳴り声がブリッジに響く。
「そう怒るな。お前の気持ちもわからんでもないが、このゲームには見ての通り弟子でもある一誠君や、クリス君も出ているんだ」
「雪音が!?」
弦十郎の言葉に翼が驚く。
「あ、ホントだ! なんだか、渓谷っぽいとこに忍さん達と一緒にいますよ!」
画面が移ったのだろう、西側の紅神陣営で待機してる忍達の姿が映し出されていたが、それも一瞬で戦いを行っている場面に移る。
「装者が私的な理由でシンフォギアを使うなど! それに相手は悪魔だろうが、人の姿をしてるではありませんか!」
翼の言ってることももっともだろう。
「まぁ、翼もよく見ていろ。お前も剣を扱う者なら、この一戦を見て損はない」
そう言って弦十郎が視線を向けた先の画面では、朝陽と木場の一騎打ちが中継されていた。
………
……
…
・特務隊の場合
「朝陽さん!?」
特務隊執務室でも同じ場面が映っていたのか、ジェスが声を上げる。
「ふむ。相手の少年…なかなかの手練れだと見受けられるな」
エリザは朝陽の相手をしている木場の力量を映像を見て判断していた。
「あの、隊長…? これは一体…? それに何故高町教官達までお呼びになったのでしょう?」
真面目なシルヴィアがこの映像の事を尋ねると同時に執務室にいるなのはと八神一家に視線を移す。
「あはは…お邪魔してます…」
「というか、確かになんでやろね…」
なのはとはやてが困った表情で用意された椅子に座って観戦していた。
「これは悪魔世界で行われている一種のゲームだ。名を『レーティングゲーム』と言い、少数精鋭制度で作られた眷属同士が様々な状況下やルールによって仮想戦闘を行うものだ。今回は冥界初の異種対抗ゲームの様子を特別回線でこの世界でも視聴出来るようにした。お前達も今後、このような異種族と戦う機会が増えるだろうしな。見ておいて損はないだろうという俺の判断だ。もちろん、そこの高町や八神も例外ではないということだ」
ゼーラが簡潔に説明していると場面が変わり…
「あれ!? フェイトちゃん!?」
「何故、テスタロッサまで…?」
なのはが驚き、長身ポニーテールの女性『シグナム』が眉を顰めていた。
そこには親友の1人が2人の女性(暗七とティラミス)と共にゼノヴィアとギャスパーを相手に戦闘していた。
「イリスさんまで…!?」
ティラミスの存在にシェーラも驚いていた。
「執務官もまた自ら選んであの道にいる。それは新米のイリスとて同じ。同じ王に己の力と命を託したんだ。今後、お前達にも似たような選択を迫られることがあるかもしれない」
そう話すゼーラに執務室内の全員が注目する。
「多次元世界は今、戦乱期の兆候にあると俺は踏んでいる。いずれ大きな戦いが起きるだろう…。その時、己の力を託すに値する人間を見極めることもお前達、未来を担う若者共には必要だということだ。それを知った上で、このゲームを見ることだな。異種族と戦う、その覚悟を持つためにも…」
そう語るゼーラの眼には果たして何が映っているのだろうか?
………
……
…
~バトルフィールド北側・騎士の一騎打ち~
「魔剣群は使わないのかしら?」
朝陽の挑発的な物言いに…
「生憎と、まだ色々と研究中でしてね。今は手に馴染んでる聖魔剣の方が戦いやすいんですよ」
木場はクールに返す。
「そ、なら別にいいわ。魔剣群を使わなかったことを後悔させるだけだから!」
そう言って先に仕掛けたのは朝陽だった。
ギィンッ!!
「ッ!」
「(こいつ…!)」
聖魔剣でセイバーを受け止める木場に朝陽が剣を通して何かを感じる。
ギギギギギンッ!!!
だが、そんなことはすぐさま切り捨て、高速の激しい剣戟戦へと突入する。
「(これが時空管理局に所属する騎士! 僕らのスタイル基準で言えば、テクニックとウィザードの中間といったところか。しかも彼女からはパワーの要素も感じさせられる! 三種のスタイルを兼ね揃えた騎士…!)」
「(伊達に場数は踏んでないか…。これだけの力量…才能と努力で積み上げてきたに違いない。赤龍帝に目が行きがちなグレモリーの評判はこの騎士の支えがあってこそかしら?)」
剣を交え、剣を通し、互いにそのような感想を抱いていた。
「セイバー!」
カシュッ!!
『バイパーフォーム』
一旦距離を離したかと思えば、朝陽はセイバーを連結剣状態にして木場に振るう。
「ッ!!」
ジャキンッ!!
聖魔剣の刀身にセイバーの刀身が絡みつく。
しかし…
バッ!
木場はすぐさまその聖魔剣を手放すと、新たな聖魔剣を二振り創り出して二刀流で朝陽に接近する。
「っ!!」
朝陽もまさか剣を捨てるとは思わず、反応に若干の遅れが出る。
「(もらった!)」
この一撃で決めようとする木場だが…
「甘い!」
朝陽はセイバーの刀身を"聖魔剣ごと"引き戻すと…
ギギィンッ!!
「ッ!?」
朝陽もまたセイバーと聖魔剣の二刀流で、木場の二刀流を受け止めていた。
「剣は簡単に捨てるもんじゃないわよ!」
「くっ!」
朝陽の言葉に苦い表情をする木場。
「(とは言え、これは相手の得物…いつ消されてもおかしくないわね)」
朝陽は手元の聖魔剣がいつ消えるか気にしつつ…
カシュッ!
『ライトニングカートリッジ、ロード』
「プラズマホールド!」
属性カートリッジを消費し、セイバーの刀身から相手の剣へと電気エネルギーを伝達させて木場に流し込む。
「がッ!?」
思わぬ雷撃に木場も怯んでしまう。
「卑怯だなんて言わないわよね? デバイスも神器も種類としては違うけど、結局は使い方次第なんだから」
ゲシッ!
そう言って朝陽は木場の腹を踏み台代わりに蹴って距離を開けながら聖魔剣を投擲する。
「ぐっ!」
ギンッ!!
木場は左側の聖魔剣で投擲された聖魔剣を受けるが、手が痺れてしまっていたのか聖魔剣を手放してしまう。
「グレモリーの支柱の片割れ、取った!」
カシュッ!!×3
そう言って朝陽はカートリッジを炸裂させて決めに掛かる。
『わぉ、カートリッジミックス、トリプルロード!』
ノーマル、炎熱、疾風の三種のカートリッジを消費し、連結剣と化したセイバーの刀身から風で強化された炎が噴き出していた。
「フランベージュ・サーペント!!」
業炎の連結剣の刀身は蛇のような軌道を辿って木場に迫る。
「ッ! 禁手化!!」
それを見て木場は聖魔剣から龍騎士団へと禁手をチェンジさせ、龍騎士団の鎧を盾に後退しようとする。
「往生際が悪い!」
セイバーを軽く振るい、刀身を鎧の横へと滑らせて回避しながら木場へとさらに迫る。
「ッ!」
その瞬間…
ギィンッ!!
木場はセイバーの刀身を阻む剣を亜空間から取り出していた。
「っ!」
その剣の名は…魔帝剣グラム。
「遂に出したわね…」
刀身を引き戻しながら朝陽は呟く。
「出さざるを得なかった…というのが正しいとこですね。忍君対策の一つでもあったグラムをこの段階で出すのは予定外でした」
そう言いながら木場はグラムを両手で構える。
「この一撃で決めます。全力で防御してください」
木場は後のことを考えるのを止め、この一戦で朝陽という戦力を削ることに集中したらしい。
「冗談。ここで逃げたら騎士の名折れよ。セイバー、こっちもこの一撃に全ての力で行くわよ!」
『ラジャー!』
セイバーのカートリッジの内、消費した5発を取り換えながら朝陽も真っ向勝負を挑むようだ。
「グラム!」
「セイバー!」
カシュッ!!×6
『ライトニングカートリッジ、フルロード!』
バッ!!×2
木場と朝陽が同時に駆け出す。
お互いに最大の一撃を相手に与えるために…。
「はぁぁッ!!」
「
閃ッ!!
二つの剣閃が交差し、互いに背中を向けたまま剣を振り抜いた状態で立ち止まっていた。
「朝陽さん!?」
「……祐斗先輩!?」
それを見守っていたシアと、ラトとシルフィーの相手をしていた小猫が同時に声を上げる。
………………………………。
ひと時の静寂の後…
「くっ…」
「がっ…」
木場と朝陽からリタイヤを意味する帰還の発光現象が起きる。
「すみません…部長、イッセー君……僕はここまでのようです…」
胸に雷撃による焦げ目と斬撃の傷を負いながら木場は悔しそうに語る。
「はっ…グレモリーのエースは取ったわよ、忍…」
バリアジャケットを斬り裂かれながら鮮血を流す朝陽は逆に少し笑い気味に呟きていた。
「まさか、バリアジャケットが容易に斬り裂かれるなんて…魔剣最強の名は伊達じゃないのね…」
「それはこちらの台詞ですよ。グラムを相手に真っ向勝負するなんて…騎士の誇り、見せてもらいました…」
そう言い合ってから互いに仲間の方を向き…
「小猫ちゃん。ここは一旦退いて部長達と合流するんだ」
「シア、後は頼むわね。あと、そこの猫娘を逃がすんじゃないわよ?」
それぞれ最後の言葉を仲間に言い放ってから消えていった。
『リアス・グレモリー選手の「騎士」一名、リタイヤです。3点が紅神眷属に入ります』
『紅神 忍選手の「騎士」一名、リタイヤです。3点がグレモリー眷属に入ります』
そのアナウンスがフィールド上に響き渡った。
………
……
…
・中央側
「ッ!?(木場か!? それともゼノヴィアか!?)」
アナウンスを聞いてイッセーの動きが一瞬だが止まる。
「隙あり♪」
その隙を見逃さず、カーネリアは光の槍による鋭い突きの一撃をイッセーに見舞う。
「ッ!?」
それを寸でのところで回避しながらイッセーは通信機に少しだけ意識を回す。
『祐斗がやられたようだわ。小猫を下げるために朱乃、小猫の援護に向かってちょうだい』
『了解ですわ』
「(木場が!? じゃあ、向こうの騎士と相討ちってか?!)」
通信の内容にイッセーは少なからず動揺していた。
「ふふ…そっちはエースを欠いた状態でどこまで持つかしらね?」
「ちっ…!」
カーネリアの言動に少しイラッときたイッセーの龍気が上昇する。
「いいわ。力の質が高まったわね。感情的になればなるほど龍は強くなる…!」
戦闘狂染みた発言にイッセーはカーネリアから薄ら寒い感じを抱いていた。
………
……
…
・南側
「木場が取られた!?」
騎士の特性と天閃の聖剣の力を利用したゼノヴィアとバリアジャケットの仕様をソニックフォームにしたフェイトのスピード勝負の中、ゼノヴィアが驚いていた。
パワー傾向の強いグレモリー眷属の中でも貴重なテクニックタイプの木場が撃破された事はグレモリー眷属にとってはかなりの痛手と言えよう。
『ゼノヴィア、ギャスパー、一度戻って! 作戦を変更するわ!』
「っ! しかし、このまま目の前の相手を放っておくわけには…!」
ギィンッ!!
エクス・デュランダルとバルディッシュが交差する。
『祐斗がやられた以上、テクニックタイプに一番近いのはあなたよ! あなたまでやられたら立て直しが困難になるわ!』
「くっ! 了解。ギャスパー!」
「は、はい!」
ゼノヴィアの声に合わせてコウモリと化したギャスパーの眼が紅く光る。
「っ!?」
それに当てられたフェイトがその時間を停止させる。
「ちっ…時間停止の邪眼か!」
右腕を肥大化させて盾代わりにした暗七は右腕だけを停止させられていた。
「ティラミス! そこから先に踏み込むんじゃないわよ!」
「わ、わかりました…!」
暗七の剣幕に近付こうとしたティラミスも足を止める。
「よし、一旦退くぞ!」
ゼノヴィアとギャスパーはその場から撤退する。
「……………はっ!? な、なにが?」
ギャスパーの撤退で停止の邪眼の効力が消えたのか、フェイトの時間が元に戻る。
「ギャスパーの時間停止にやられたのよ。追撃は…難しいかしら?」
そう言ってフェイトに近寄る暗七だった。
既に姿が見えないゼノヴィアとギャスパーに対して少しやられたと感じていた。
「とにかく、エースは朝陽が取ったのよ。それだけでも収穫は大きいわ」
暗七はそう言って忍に次の指示を仰ぐのだった。
………
……
…
・特異災害対策機動部二課
「アレが…異界の剣士の戦い…」
そう呟きながら無意識に翼は右手を握り締めていた。
防人としてノイズと戦ってきた翼だが、木場と朝陽の一騎打ちを目の当たりにして何か感じるものがあったのだろうか…?
「そうだ。例え、理由が異なろうとも剣を扱う者同士…互いの信念を賭けて戦いに挑んでいる。それがこのような見世物であっても…自分達の意志で戦っていたんだ」
弦十郎はそう言って翼の肩を叩く。
「いつか、お前も自分の意志でその剣を抜く時が来るだろう」
「それは…防人として、ですか?」
「いや、風鳴 翼という一個人としてだ」
「私自身の意志…」
そんな会話の後…
「さて、次は一誠君がどこまで成長してるか見てみるか」
弦十郎はイッセーとカーネリアの一戦に注目していた。
「私は…」
翼は握り締めていた手を開き、その手を見つめる。
………
……
…
・北側
「っ!」
シア、ラト、シルフィーの3人に包囲された小猫だったが…
「雷よ!」
空から朱乃が落雷を起こして援護し、小猫の周りを土煙で覆って視界を奪う。
「……朱乃先輩!」
「一度、退きますわよ!」
「……はい…!」
悪魔の翼を広げて小猫も朱乃に合流し、東陣地へと後退していた。
「逃がすか!」
それに対し、土煙から飛び出したラトが駆けだそうとしたが…
「ラトさん!」
シアがラトの手を引いて引き留める。
「なんでさ、シアちゃん!? 追撃のチャンスでしょ!?」
不満そうなラトに対して…
「相手は女王と戦車です。迂闊に飛び込めば相手の思う壺です!」
シアは強めの口調でラトを諫める。
「それよりも次の中盤戦に対する命令を忍さんから貰いませんと…」
そう言っていると…
『(シア、ラト、シルフィー、聞こえるな?)』
忍から念話が飛んでくる。
「(あ、はい。忍さん)」
そこから忍の新たな指示が下る。
………
……
…
・ドーム側
『序盤戦はなんと! 両眷属の騎士が相討ちという形で決着を迎えてしまった!!』
ドーム内にナウドの実況が響く。
『これはグレモリー眷属にとっては痛い展開ですな。得点的には痛み分けとも見える訳だが、グレモリー眷属はエースを早々に失ったと考えるべきでしょう。立て直すために作戦を練り直す必要性が出てきましたな』
そんなアザゼルの解説に…
『だからこそおっぱいドラゴンを残して他の眷属を呼び戻したと?』
ナウドが尋ねる。
『赤龍帝の相手は堕天使。相性的に分が悪いが、赤龍帝の鎧でそれも少ない損傷で済むと踏んだんでしょうが…紅神眷属側がこのまま静観してるとも思えませんからねぇ』
アザゼルの言う通り、忍は既に次の手を打とうとしていた。
………
……
…
・東陣地
今は中央でカーネリアと戦っているイッセー以外のグレモリー眷属が集結して作戦を練り直していた。
「祐斗が取られた以上、時間はかけられないわ。ロスヴァイセは中央のイッセーの援護に行ってちょうだい。私達はその内に北と南から再度攻め込むわ」
「王自らの出陣ですか? 些か速い気もしますが…」
「そうも言ってられないわ。相手は同じくらい実戦経験を持ってるのよ。ここは私が動かないと…」
ロスヴァイセの心配そうな発言にリアスがそう答えていると…
「……っ?! 何か、飛んできます!」
異常を察知した小猫がそう叫ぶ。
「え?」
驚くのも束の間…
チュドドドド…!!
陣地の周辺で突然の爆発が起きた。
「これは…!?」
北側から飛来する小型ミサイル群と、南側から飛来する魔力弾。
「アウトレンジからの攻撃…!」
「ということは…北は雪音さんね…!」
「ですが、南側は誰が!?」
リアス、朱乃、ロスヴァイセが魔法陣を展開して防御する中、攻撃してきた人間を推測していた。
「でも、これで私達に選択の余地はなくなったわね…!」
リアスが少し苛立ったように言う。
「中盤戦を捨てての中央での総力戦…!」
「加えて、中央に行けば私達は三方から同時攻撃を受けますね…!」
朱乃とロスヴァイセがそれに続くように言う。
「話が決まったなら動いた方がいい。互いに昇格が出来ない以上、こちらは向こうの王か、一人でも多くの眷属を倒すしかないのだから!」
ゼノヴィアがエクス・デュランダルで魔力弾を打ち落としながら叫ぶ。
「なら今の内にアーシア、回復を!」
「はい!」
移動する前に全員の傷を癒すアーシア。
「あとはイッセーをと合流して中央突破を仕掛けるわ!」
リアスの号令で、一斉にその場から飛び立つ。
………
……
…
・西陣地
「北と南からの砲撃によって中盤戦を捨てさせ、一気に中央で総力戦を持ち込ませる…」
「相手の突破力を考えたら無謀かと思うけど…そこに三方から仕掛けたらどうなるかな?」
エルメスの呟きに忍はそう答えていた。
「しぃ君…なんだか悪い顔してる」
「これはゲームだが、どちらも本気でぶつかり合ってこそだからな…使える手段は有効に使わないとね」
智鶴の言葉に苦笑しながらも忍は決意に満ちた眼で中央を見据え…
「さて、ここからが本当の
忍はリアスが出てくることを予測し、先にそうするように仕掛けた。
例え、それでどのような評価を受けようと…忍は後悔することはない。
それはまるで…覇道の如く…。
………
……
…
・中央側
……………ッ………ッ…
「っ!?(なんだ? 後の方からなんか聞こえ…)」
後ろの遠方(東陣地)より聞こえる不可解な音にイッセーが気を散らす。
「ふふっ! また隙ありよ!!」
ズドドドド!!!
光の槍が無数に空から飛来し、イッセーの鎧に突き刺さろうとする。
「くっ!?」
それを殴って弾き飛ばしながら僅かに後退していく。
カーネリアの攻撃は苛烈さを増していた。
「破壊、破壊しましょう! 全てを!」
イッセーを相手してから少しカーネリアの様子が変化していく。
「な、なんだか危ない気配が…」
「ありゃちょっと様子が変ね…」
近くにいたラピスと吹雪もカーネリアの異常に気付き始めた。
すると…
「はっ!」
バシッ!!
「っ!?」
いきなりの打撃にカーネリアは背後を見る。
「これ以上はダメだ。カーネリア」
そこには真狼状態の忍が立っており、それだけ伝えていた。
「坊や…!!………ッ!!?」
戦いの邪魔されたことに怒りを感じたカーネリアが動こうとするが、上手く体が機能しないことに気付く。
「眠ってください。今だけは…」
そう言ってカーネリアの額に霊力を込めた手を当てて、強制的に眠らせる。
「すみませんが、戦車を一名リタイヤさせます。得点も加算してくれて構いません」
その要請に従い…
『紅神選手の戦車一名、リタイヤです。グレモリー眷属に5点が入ります』
了承したのか、グレイフィアが宣言する。
「なっ…」
いきなりの出来事にイッセーも驚く。
「イッセー君との戦いでカーネリアの本能が刺激されたみたいだったからね。彼女には強制退場をしてもらったんだ…」
そう語る忍の眼はどこか悲しそうであったが、すぐに決意に満ちた眼に変わる。
「君の陣地を砲撃させてもらった。すぐにグレモリー先輩達も来るだろう」
淡々とした口調で話す忍。
「砲撃って…忍、お前…!!」
それを聞いて僅かながらに怒りを覚えるイッセー。
「吹雪とラピスは智鶴達に合流して迎撃準備。ここは俺達の領域だ。存分に力を発揮してやれ」
「わかったわ」
「わかりました」
吹雪とラピスは忍の指示に従い、智鶴達と合流すべく東側の方へと向かう。
「ここからは中盤戦を省いた終盤戦の総力戦だ。全力で君達を取らせてもらう!」
「忍ッ!!」
その言葉を切っ掛けに忍とイッセーの戦闘が始まる。
………
……
…
・ドーム側
『はて、これはどういうことでしょうか。紅神選手は自らの戦車を自滅させてしまいました!』
その実況にドーム内も困惑する。
『いや、俺は良い判断だと思うぜ?』
唯一、アザゼルの見解は違うようだ。
『と言いますと?』
『紅神眷属の戦車の1人は堕天使。俺の元部下だった奴なんだが…ちょっと精神的に不安な部分がある奴でな。簡単に言えば、破壊衝動に忠実なんだよ。赤龍帝との戦いでそのタガが外れそうになったんだろうよ。そうなっちゃゲームは台無しになってただろうからな。そこで紅神選手は自らの手で退場させたんだろう』
『なるほど。しかし、破壊衝動ですか』
『誰しも多かれ少なかれ持ってるもんだが、奴はそれが異常でな。普段は快楽主義的な言動で安定してるように見えるんだが、一度タガが外れると手に負えないんだよ。敵味方関係なく破壊しようとするだろうな』
『そんな危険な選手だったとは…大丈夫だったんでしょうか?』
ナウドの心配そうな発言にアザゼルは…
『問題ないだろ? 実際に紅神が手を打ったし、今の紅神の実力なら恐らくは問題ないだろう』
そう答えていた。
『なるほど。では、このおっぱいドラゴンと紅神選手の戦いの方は?』
『そこは何とも言えん。どっちも成長率が高いからなぁ…』
イッセーと忍…どちらも異常な成長を見せてきたからこそアザゼルもこの勝負の勝敗はわからなかった。
………
……
…
・中央、湖のフィールド
ゴオオオッ!!!
忍の拳とイッセーの拳がぶつかり、その衝撃によって湖に激しい波が立つ。
「得点上、こちらが負けている。なら、ここで君を倒してダメ押しさせてもらう!」
「それはこっちの台詞だ! お前を倒して俺達が勝つ!!」
互いに己の信念を賭けた男同士の勝負。
「智鶴…!」
「待ってたよ、リアスちゃん」
リアス率いるグレモリー眷属と智鶴が率いる紅神眷属。
「紅神君はよくもやってくれたわね」
「ごめんなさい。でも、真剣勝負だからこそしぃ君も色んな手を使って勝ちに行くの」
リアスの言葉に智鶴は謝りながらも忍の勝つ想いに応えようとしている。
「でも、ここまでよ。イッセーが紅神君を取るはずだから!」
グレモリー眷属の王は大黒柱たる兵士の勝ちを信じ…
「しぃ君は負けない。きっと勝ってくれる…!」
紅神眷属の女王は王の勝ちを信じていた。
どちらも互いに好いた男の勝利を信じて揺るがなかった。
「増援が来る前にあなた達を撃破させてもらうわ!」
「させないわ。しぃ君が信じてくれてるんだから…!」
グレモリー眷属は残りの紅神眷属が集結する前に目の前の智鶴達を倒さなければならなかった。
今、終盤戦の幕が上がった。