グレモリー眷属vs紅神眷属の戦いは序盤戦に双方の騎士が相討ちになったことから事態が動き始めた。
グレモリー眷属は木場の脱落から一度イッセー以外を呼び戻して再編成を考えたが、逆に紅神眷属はその隙を突いて北と南から東陣地へと砲撃を浴びせていた。
忍はリアス達に中盤戦を捨てさせて、一気に終盤戦に突入させるべく手を打ったと言える。
この一手で状況は終盤戦の総力戦へと移行した。
中央の湖で繰り広げられる戦い。
忍とイッセーの一騎打ち。
両眷属の最大戦力のぶつかり合いとなる。
だが、価値としては兵士8個分の得点が大きいイッセーと倒されれば即負けが確実な王である忍。
一見すれば忍の方の判断ミスとも取れる采配に上流階級の悪魔達はどのような判断を見せるだろうか?
リアスが率いるグレモリー眷属と智鶴が率いる紅神眷属のチーム戦。
今のところは数で勝っているグレモリー眷属だが、北と南から残りの紅神眷属も集結しつつある状況はかなり厳しいと言える。
グレモリー眷属の攻撃要員はリアスを含め、朱乃、ゼノヴィア、小猫、ロスヴァイセの4人が主軸となるだろう。
残ったアーシアとギャスパーは後方で身を隠してるか、サポートに徹することになるだろう。
紅神眷属の攻撃要員は智鶴、エルメス、中央で合流した吹雪とラピスになる。
萌莉はその性格上、騎士だが戦闘には未だ参戦出来ない状態にあるから西陣地でお留守番。
さらに北からは砲戦要員として送られたクリスを含めたシア、ラト、シルフィーの4人、南からはフェイト、暗七、ティラミスがそれぞれ中央を目指して移動を開始している。
………
……
…
~バトルフィールド中央・湖上の戦い・チーム戦~
「吹雪ちゃん!」
「はいはい!」
バサリと漆黒の翼を広げると同時に吹雪の容姿が変化する。
「忘れてもらっちゃ困るけど、私はこれでも冥王と堕天使、二つの面があるのよ!」
冥王と化した堕天使は湖上の表面を氷で覆っていく。
「これで移動しやすくなりました」
魔法陣から降りたラピスが靴の底に小さな魔法陣を作り出しながら凍り付いた湖上を滑るように移動する。
「っ!」
それを見てリアスが目を細めた。
これでグレモリー眷属は空中戦を余儀なくされることになる。
下手に着地すれば、湖上表面の氷に足を取られかねないからである。
「ですが、魔力攻撃なら容易に氷は破壊出来ます!」
そう言って朱乃が空から雷光を放とうとする。
「させるか!」
それに吹雪が即座に対応する。
氷の上に着地すると態勢を低くし、両腕を交差させるようにしながら氷に手を付ける。
「リフレクト・ミラージュ!」
その瞬間、吹雪を中心にして氷上が鏡のような輝きを見せる。
「これは!? ダメです、朱乃さん!」
吹雪の展開した魔法を一目で看破したロスヴァイセが朱乃の雷光を雷属性の魔法を使って阻止する。
「ロスヴァイセさん!? 一体何を…?!」
まさか、味方に邪魔されるとは思わず、ロスヴァイセを見る朱乃。
「ちっ…失敗か」
それに対して吹雪は舌打ちをする。
「どういうこと?」
リアスがロスヴァイセに尋ねると…
「雪白さんが使ったのは氷を媒介にした反射系の魔法です。もし、朱乃さんの雷光が反射されてたら…悪魔に転生してもいない彼女達はともかく、悪魔である私達には致命的なダメージになりかねなかったからです…」
「「「っ!?」」」
それを聞いてリアスと朱乃、小猫は吹雪達を見る。
「ま、ご名答ってことで。実際は看破されちゃったけど…」
「そっちの娘(ラピス)が自由に動けることとこちらが不利になりそうな足場を作ったこと自体…ブラフだったの?」
吹雪のあっけらかんとした答えにリアスは智鶴に問う。
「ブラフではないけど、実際問題として空中戦は必須でしょう? でも私達は基本が人間だから、空中戦は不利なの。だから氷の属性に長けてるしぃ君、吹雪ちゃん、ラピスちゃんが中央の湖を利用しようって…そうしたら自然とそういう副産物も出来たの」
智鶴の返答にリアスは内心で舌打ちを打つ。
「(迂闊だったわ。相手に氷使いがいることはわかってたのに…誘いに乗り過ぎた。紅神君はそこまで計算してたの?)」
忍本人がイッセーと戦ってる以上、その真意は見抜けないがともかくこの場は…
「ゼノヴィアは智鶴を、小猫は雪白さんを相手して! 私と朱乃、ロスヴァイセで後衛を務めるから!」
「「「「了解!」」」」
リアスの言葉に即座に動き出し、ゼノヴィアが智鶴に斬り掛かり、小猫が吹雪に突撃する。
リアス、朱乃、ロスヴァイセは少し下がって援護攻撃を見計らっていた。
「前衛は私と吹雪ちゃんで押さえます! エルメスちゃんとラピスちゃんは援護をお願い!」
「了解!」
「「はい!」」
スコルピアを纏った智鶴が右手に次元刀を抜き、左手にスティンガーブレードを持ちながら指示を出し、それに応えて吹雪は小猫の相手を、エルメスとラピスは下がる。
「ここは相手の女王を取るチャンス! 先輩だとしても容赦はしない!」
ゼノヴィアがエクス・デュランダルを振りかぶって智鶴に肉薄する。
「(ゼノヴィアちゃん相手に剣の勝負は不利よね…)」
パワー傾向が強いとは言え、相手は生粋の剣士。
智鶴は普通に相手するには不利だと当然ながら考えていた。
「フライヤー、展開」
スカートアーマーと化していたテイルフライヤーの一部、4基が切り離されて小型自律砲台ユニットとなってゼノヴィアの周囲を飛び交い、四方から魔力レーザーを照射する。
「っ!?」
それをまともに受けつつゼノヴィアは智鶴を見る。
「ごめんなさい。でも、ゼノヴィアちゃんを相手に今の私じゃ勝てる気がしないの。だから、ここは"時間を稼がせてもらう"ね」
そう言って次元刀の連結機構を利用した中距離攻撃を放つ。
「ちっ!」
エクス・デュランダルで次元刀の斬撃を弾きつつフライヤーを意識して回避に徹しようとするが、オールレンジ攻撃をそう簡単に回避できるはずもなく、被弾しながら徐々に後退させられてしまうことになる。
「雷よ!」
そこに朱乃が魔力による援護攻撃を仕掛けてフライヤーの軌道を阻害する。
「朱乃ちゃん…!」
「智鶴、時間稼ぎはさせませんわよ」
そう言ってゼノヴィアを援護し、フライヤーを迎撃する。
「朱乃副部長、助かる! これなら…!」
ゼノヴィアも再び智鶴に肉薄してエクス・デュランダルを振るう。
ガキンッ!!
「くぅ…!?」
デュランダルの威力と破壊の聖剣の相乗効果に次元刀とスティンガーブレードをクロスさせて何とか耐えるが、完全に智鶴の方が押し負けている。
「これで9点は頂く!」
「えぇ、確実に…!」
ゼノヴィアも朱乃もここで智鶴を討つ気満々であった。
「智鶴さん!?」
エルメスも智鶴の援護に向かいたいが…
「させないわ!」
リアスの消滅魔力を鉄壁属性の魔力と龍気の混合防御陣で用いてかろうじて防いでいて手が離せなかった。
「くっ…こちらの弱い属性を…」
「氷単体なら私だけで十分に抑えられます!」
ラピスもどちらかと言えば、ロスヴァイセの多彩な魔法攻撃を受け、ほとんど動けない状態にある。
「大丈夫、最速でも彼女は来てくれる…!」
だが、今向かってる眷属の中でも、忍に次ぐスピードを持つのは…
「トライデントスマッシャー!」
と、智鶴と鍔迫り合いをしているゼノヴィアの横合いから雷属性の魔力砲撃魔法が放たれる。
「「っ!?」」
その声と砲撃にゼノヴィアと朱乃が驚く。
驚いた拍子の間に背後にゲートを開き、智鶴はゼノヴィアの剣撃の力を利用し、その中へと素早く消える。
「しまった!?」
「くっ!」
完全な無防備を晒すゼノヴィアに対し、朱乃が素早く移動して魔法陣を展開する。
チュドォォンッ!!
朱乃の展開した魔法陣に砲撃が直撃する。
「くぅ…」
その威力に朱乃は片腕を押さえる。
「朱乃副部長!?」
「平気ですわ。それよりも…」
ゼノヴィアの心配の声を制し、視線を砲撃が来た方へと向ける。
「はぁ…はぁ…間に合いましたね」
少し肩で息をしているバリアジャケットがソニックフォームと化しているフェイトがいた。
キィンッ…
その右前方にゲートが開き、智鶴が吹き飛ばされるような形で出てくるとスカートアーマーのブースターを使って上手く姿勢制御する。
「ありがとう、フェイトちゃん。おかげで助かったわ」
「いえ…それに、暗七さんやティラミスさんを置いてきてしまいました…」
フェイトの速度は忍の神速に次ぐ速さを有しており、暗七とティラミスを置いて先行してきたのだろう。
少し体力の消耗もあるが、素早く合流出来た点で言えば上々かもしれない。
「この場合は仕方ないわ。ともかく、フェイトちゃんはゼノヴィアちゃんの相手をお願い出来るかしら?」
「はい。彼女とはさっき戦ってましたので…何とかしてみます」
「お願いね。私は朱乃ちゃんを押さえるから…」
短く言葉を交わした後、2人も動き出す。
「確か、時空管理局の執務官だったか? 木場も時空管理局の騎士と一騎打ちをした手前、私も負けるわけにはいかないな…!」
「騎士の相手は慣れてます。ですが、油断はしません!」
フェイトとゼノヴィアの高速戦闘が始まる。
「お互い9点同士…でも、朱乃ちゃんの方が女王としての経験が勝ってる」
「でも、性能で言えば智鶴も破格のモノを手にしてますわ。どちらが勝っても9点が入る。でも、他の紅神眷属が来る前に勝負を決めなくてはなりませんもの…」
「得点を総なめしても兵藤君が取られれば逆転は可能よ?」
「イッセー君が負けるはずがありませんわ」
「それはしぃ君も同じよ」
そう言い合ってから智鶴と朱乃の女王対決も始まる。
………
……
…
~バトルフィールド中央・湖上の戦い・狼と龍~
グレモリー眷属と紅神眷属のチーム戦が行われている東寄りから離れ、西寄りの湖上では…
「でやぁぁッ!!」
龍の翼を広げたイッセーの回し蹴りが忍に放たれる。
「はぁッ!!」
それに真っ向から受けて立つように忍は気・妖・龍の三種の力をミックスさせて右足に足具のような装甲を纏った蹴りで迎撃する。
ブワアァァァ!!
ザザアァァァ!!
その衝突した衝撃で湖上に波が立つ。
バキバキッ!!
「「ぐっ…!!?」」
互いの装甲が音を立てて破壊される程に2人の威力は拮抗していた。
「お前、いつからそんなにパワーを上げやがった!?」
「そっちもパワーの質が跳ね上がってるじゃないか!」
イッセーは忍のパワーが上がったことに驚き、忍もまたイッセーがさらにパワーに磨きをかけたことを指摘していた。
「ならこいつはどうだ! ドラゴンショット!」
一旦距離を開けたかと思えば、間髪入れずに散弾式のドラゴンショットを放つ。
「ブリザード・ファング!」
それを忍はブリザード・ファングで迎撃しつつ、別の着弾点にブリザード・ファングの魔力を収束する。
「ついでに、ブリザード・ファング・エクシード!!」
神速で移動した忍はその収束した魔力体を殴って収束砲撃並みの砲撃をイッセーに放つ。
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』
「
イッセーはその砲撃を体内の火種を増幅させて吐き出した炎で相殺する。
「ちっ…(熱吸収が出来なかったか…)」
紅蓮冥王の冥王スキルを発揮させるチャンスだったが、相殺されてしまっては使う暇もなかったらしい。
「(ならば…)氷雪冥王」
真狼から氷雪冥王へと姿を変えた忍は…
「訪れよ、我が氷河期。アイス・エイジ!」
忍を中心とした空間の温度が急激に低下していき、周囲に白い
「ちっ…忍十八番の氷地帯か!」
「ここは俺達、氷使いにとっては都合のいいフィールドだからな」
忍、吹雪、ラピス。
紅神眷属には氷の使い手が3人いる。
「(ま、それだけじゃないんだけどな)」
周囲の温度を低下させると同時に、忍はイッセーの体温も少しずつ低下させていた。
「(やっべ…そういや、前に言ってたっけ。やろうと思えば相手の体温も低下させて動きを鈍らせることも出来るかもって…)」
それにイッセーも気づくと…
「(相手は向こうの王。なら、やることは決まってる!)龍星の騎士!!」
『Change Star Sonic!!』
イッセーも短期での決着を想定し、速攻を仕掛ける。
「確かに速いが、動きが直線的だ!」
自身も高速戦が得意な忍はイッセーの動きを読んで回避行動に移るが…
「んなことは俺が一番わかってんだよ!!」
ズガガガ…!!!
氷上に拳を突き立てて無理矢理軌道を修正すると忍に突貫する。
「なにっ!?」
その行動に忍も理力の型を使ってなかったことから予測が出来ず、対応が遅れる。
バキッ!!
「がっ!?」
その拳が忍の顔面を捉え、後方へと吹き飛ばす。
「まだだ!!」
さらに加速すると忍へと肉薄し、体術コンボを決める。
「ぐっ!!?」
吹き飛ばされながらも霊鎧装を瞬間的に展開した忍だが、イッセーの打撃力に圧倒されてしまう。
「これで決める! 龍剛の戦車!!」
『Change Solid Impact!!』
体術コンボを決めたイッセーはさらに加速し、忍を追い越すと戦車形態へと変化して拳を振りかぶる。
「うおおぉぉぉぉぉッ!!!」
バキッ!!
「ソリッドインパクト!!」
吹き飛んできた忍の背中に特大の拳が激突し、さらに肘部分の撃鉄が作動して忍の体を打ち上げる。
「ぐがぁぁっ!?!」
戦車状態の一撃をまともに受け、忍も苦悶の叫びをあげる。
「ラスト! 龍牙の僧侶!!」
『Change Fang Blast!!』
イッセーの背中にバックパックが出現し、チャージが行われる。
「ぶち抜け! ドラゴンブラスター!!!」
ゴオオオォォォォッ!!!
そして、二門の砲口から龍気の収束された砲撃が忍に襲い掛かる。
「ッ!?!?」
チュドオオォォォォンッ!!!
盛大な爆発と共に忍が爆炎の中に消える。
「ぜぇ…はぁ…ぜぇ…はぁ…」
元の禁手状態に戻ると、イッセーは体力の著しい消耗から息を切らせていた。
「(涙を使われる隙は与えなかったつもりだ。これならいくら忍でも…)」
そう思って上空を見ながらアナウンスを待つが、一向にアナウンスが流れない。
つまり…
「(耐えたってのかよ!? 俺のトリアイナのコンボに…!?)」
その事実を突きつけられるように…
「ブラッド・レイン!!」
爆炎の中から血の雨が弾丸のようにしてイッセーに襲い掛かる。
「ッ!?」
それを両腕をクロスさせながら防いでいると、爆炎が晴れていき…
「ぐっ…がぁっ…!!」
吸血鬼の姿になった忍が苦しそうにしていた。
いくら忍でも先のイッセーのコンボは堪えたらしいことが窺える。
しかし、それと同じくして…
ゴキュ…グギュ…
何やら忍の体内から異様な怪音が聞こえてくる。
「確か…霊接脈…だったっけ…?」
それは忍の深層記憶に眠っていた邪狼だった頃の狼夜との戦いの記憶…その終盤に狼夜が使っていた霊力を用いた自己回復系の異様な霊術。
それを妖力も用いて自らの体内を修復するという荒業を忍は以前使っていたが、それは暴走状態での出来事であり、忍自身は覚えてなかったはずである。
しかし、窮地に追い込まれた瞬間、その出来事が急にフラッシュバックし、今この瞬間に使用を可能にしていた。
「がぁ…!?!」
しかし、受けたダメージは予想よりも深く、霊接脈だけでは到底回復が追いつけなかった。
バキッ!!
従って忍は頭上でフェニックスの涙の小瓶を握り砕き、その中身を浴びていた。
「これがフェニックスの涙…なるほど、こりゃ重宝される訳だ…!」
体力までは回復しないまでも傷を完治させるには十分だった。
「くそ…! 仕留めきれなかったか…!」
湖上表面の氷を殴りながらイッセーは悔しそうな声を漏らす。
「いや…正直、ノックアウト手前だった。意識も飛びかけたが…何とか踏ん張りが利いたみたいだ…」
そう言いながら忍は氷上に舞い降りる。
だが、氷雪冥王から吸血鬼に移行したことでイッセーの体力をこれ以上奪うことは出来なかった。
いや、正確にはなれるにはなれるが…体力切れで勝負が着いては忍の中の何かが許さなかった。
「そっちもそろそろなったらどうだい? 紅の鎧に…」
ダメージの比に対して体力も奪われてる状況で忍はイッセーに紅の鎧になることを勧める。
「ッ!」
その瞬間、何かを感じ取ったイッセーがその場から跳び上がると…
ビィィ…!
一筋の紅い閃光がイッセーに届く。
それと同時にイッセーの龍気が回復していく。
「これが噂の……………2人の絆か…」
言葉を選んでからイッセーとリアスの絆を目の当たりにする。
「なら、お望み通りに見せてやるよ。我、目覚めるは…」
「王の真理を天に掲げし赤龍帝なり」
「無限の希望と不滅の夢を抱いて王道を往く」
「我、紅き龍の帝王と成りて」
「汝を真紅に光り輝く天道へ導こう!!」
『Cardinal Crimson Full Drive!!』
赤から紅の鎧に変化したイッセーを前に忍は目を閉じ…
「異世界の龍の始祖よ。同じく異世界の龍の力を宿した騎士の狂気を御し、我に一時の力を貸したまえ…!」
封印していた力を解放する。
ゴアアアッ!!!
忍を中心に龍気が溢れ出し、その体を鎧のような甲殻が覆い始め、顔の目元には龍の頭部を模った仮面を着け、背中から一対の龍翼と臀部から龍尾が生えた姿となる。
しかし、その鎧は石化したように灰色で所々が罅割れており、胸部、両肩、両掌、両膝の計七ヵ所には同じく石化したような七つの宝玉が嵌め込まれていた。
それと比較して龍翼と龍尾は白銀の鱗に包まれた綺麗なものとなっており、仮面も白く何かが抜け落ちたような仕様となっている。
「な、なんだそりゃ…!?」
その何とも言えない残念な風体にイッセーも言葉が出ない。
「始龍との邂逅で制御下に置いた龍騎士…のはずなんだが…やはり、完全には御しきれてないようでな。それでも龍気の扱いならこの形態が一番出力が高いんだ」
ゲーム前に一度どのようなものか試していたが、この形態での顕現であった。
龍気を扱うエルメスの意見も聞いてみたが、何か抜け殻の様に感じるという見解を頂いていた。
忍も龍騎士のような戦意や狂気に満ちた感覚はないが、力を託してくれたはずの始龍の息吹も感じられなかった。
忍がまだ完全に掌握出来ていないからなのか、はたまた他に条件でもあるのか…それは謎であった。
しかし、この形態では龍気の出力が他の形態よりも桁違いに跳ね上がるので、対イッセー対策として準備していたのだ。
………
……
…
・ドーム側
『冥王を始めとした異能の力を宿した狼と、純粋なドラゴン…』
アザゼルは忍とイッセーをそう評していた。
『終盤戦もいよいよ大詰めか!? この戦いの行方がゲームの勝敗を大きく分けるのか!!』
ナウドもまた絶叫気味に叫んでいた。
『ま、その男の勝ちを信じて女達も戦ってるんだがな』
アザゼルの視線の先にはイッセーと忍の勝ちを信じて戦うリアスや智鶴達の映像があった。
………
……
…
・忍vsイッセー
「正直に聞くけど…そっちのフェニックスの涙はイッセー君が持ってるんじゃないかな?」
「ッ…」
ズバリ言い当てた忍にイッセーは隠しても無駄だと懐からフェニックスの涙を出す。
「真紅の赫龍帝を二回倒す、か…なかなか骨が折れそうだ」
それを言ってからしばしの間が流れ…
バッ!!
『Star Sonic Booster!!』
ほぼ同時に動くと共にイッセーの方が速く忍の間合いに入る。
『Solid Impact Booster!!』
「はぁッ!!!」
そして、右腕が龍剛の戦車の形態へと変化すると一撃を加えようとする。
「猛牙墜衝撃・改、『
それに合わせるようにして忍は右手に龍気を中心に残りの四つの力を収束した掌底を放つ。
ゴオオオォォォォッ!!
お互いの一撃が衝突すると、氷結していた湖上の氷を破壊しながら強い衝撃波を生み出し、最初の激突時とは比べものにはならない波を生み出す。
ビキビキ…!!
その余波を食らい、忍側の鎧がさらに罅割れる。
「見た目通り、耐久性は低いみたいだな!!」
「だが、力は振るえている!!」
忍は鎧の破壊を気にせず、次の一手を打つ。
「
それは自らの鎧を破壊することで至近距離での鎧の欠片を散弾のように放つ自壊技。
今回、忍は右腕の鎧を腕に通した魔力で破壊していた。
「なっ!?」
その光景にイッセーも思わず、反射的に顔を腕で覆う動作をしてしまう。
人は誰しも危険と感じた時には思わず危機回避の反応をしてしまうもの、それが人型ドラゴンの転生悪魔だとしても…人間基準なイッセーならなおの事…。
「(隙ありだ!)」
ゲシッ!!
それを好機と見て忍はイッセーの腹を思いっきり蹴り上げる。
「しまっ…がっ?!」
今度は逆に打ち上げられたイッセーに…
「
忍は口内に龍気を収束させ、それを吐き出すような形で龍気の砲撃を放つ。
威力はイッセーのドラゴンブラスターよりも低いが、その代わり貫通力に秀でた砲撃となっている。
「ッ!?」
それを龍剛の戦車形態の両腕をクロスさせて耐えようとする。
ズゴゴゴゴ…!!!
「ッ!?!」
シュゥゥ…!!
予想以上の貫通力に分厚い籠手から煙が上がる。
「こなくそっ!!」
両腕を広げるようにして龍の咆哮の軌道を無理矢理逸らす。
「忍は…!?」
忍の方を見ると、その周りには五つの球体(魔力、気、霊力、妖力、龍気)が漂っており、龍気を中心に他の四つの力が再び収束していくのが見えた。
「砲撃勝負なら…!!」
イッセーもまた翼から砲身を出し、チャージを開始する。
「「(この一撃で決める…!)」」
互いにこの一撃で勝負を着けようとしていた。
「『
「クリムゾンブラスタァァァァァァ!!!」
『Fang Blast Booster!!』
ゴオオオォォォォッ!!!!
どちらも龍気を練られた砲撃…。
衝突した時の爆発で忍もイッセーも巻き込まれてしまう。
その衝撃は近いようで遠くで戦っていた女性陣にも伝達される。
「イッセー!?」
「しぃ君!?」
一時的に手が止まったチーム戦は、2人の男がいると思われる…衝撃の激突した方向へと目を向けざるを得なかった。
そして、響き渡るアナウンス。
『リアス・グレモリー選手の「兵士」、リタイヤです。さらに女王への昇格を確認しましたので72点が紅神眷属に入ります』
「そんな…!?」
イッセーの敗北。
その事実と得点の差にリアスは驚く。
が、続くアナウンスで…
『紅神 忍選手、撃破。よってこのゲームはリアス・グレモリー選手の勝ちとなります』
忍の撃破も確認されていた。
「しぃ君が…!?」
忍の敗北に今度は智鶴が驚く。
つまり、このゲーム…。
忍とイッセーは試合に引き分け、勝負に忍が負けた。
…ということになる。
こうして冥界初の異種対抗ゲームは悪魔側チームの勝利に終わった。
しかし、このゲームの内容と結果がどのように悪魔業界で話題になって評価されるか…。